ホーム > きょうの時鐘


2008年6月3日

 マラソン競技を人生に例える人は多いが、短距離の百メートル走も、加速度や力の配分などで示唆に富んでいる

ジャマイカのボルト選手が出した9秒72の新記録は、世界最速男といわれたゲイ(米国)を抑えての快走である。話を分かりやすくするために仮に百メートルを10秒弱で走ったとする。平均秒速10メートルになるが、超一流選手でもスタートから最初の10メートル区間は秒速5メートル台しか出ない

そこから段々加速して、60メートルから70メートル地点で秒速12メートルに近い最速状態になるのである。この最速状態を最初から出して最後まで維持できれば百メートル8秒台も可能になる。そうならないのは人生同様にピークは一瞬で、最高状態はいつまでも続かないからだ

最速時をレースの中程後半に置くのがポイントで人生に例えれば「中年後半が勝負所」となる。サラリーマン競争でもスタート時にトップに立ち、後半消える者がいる。出だしは重要だが、中程後半の踏ん張りが大切なのだろう

くたびれたとぼやく中高年も、人生中程の後半を過ぎただけで、百メートル走なら、まだゴールまで30メートルある。「体力の限界」などと言ってはおれまい。


ホームへ