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アカボウクジラ:根室に2頭漂着 潜水艦音波で内耳損傷か

2頭目に漂着したアカボウクジラの回収作業=根室市浜松で2008年5月26日、本間浩昭撮影
2頭目に漂着したアカボウクジラの回収作業=根室市浜松で2008年5月26日、本間浩昭撮影

 北海道東部の根室半島太平洋側で、珍しいアカボウクジラ2頭の死骸(しがい)が相次いで打ち揚げられた。道北の日本海側でも約3週間前にアカボウクジラとみられる1頭が見つかっており、短期間に3頭が漂着したことになる。いずれも死因は不明。研究者は、高出力の潜水艦の水中音波探知機(アクティブ・ソナー)で内耳が損傷し、急浮上したことによる「潜水病」の可能性もあると指摘している。

 鯨類を調査している「ストランディングネットワーク北海道」(松石隆代表)によると、根室市の三里浜にアカボウクジラが打ち揚げられていると5月22日、住民から連絡があった。体長約3メートル、性別は不明。4日後の26日には約8キロ離れた砂浜で体長6.15メートルのオスが見つかった。いずれも死後かなり経過しているとみられる。5月8日には留萌管内初山別村でもアカボウクジラとみられるメスのクジラが漂着した。

 アカボウクジラは浮上時に、潜水時のほぼ半分の速度でゆっくり上がって来る傾向がある。潜っている途中に近くで低周波ソナーなどが発せられると、大音響に驚いて急浮上。窒素が気泡となって血管をふさぐ潜水病になるとみられている。潜水病かどうかは、内耳の損傷や組織破壊などが指標となる。死後1~2日であれば血管や心臓、肺の気泡で確認できるが、今回は腐敗が著しく解剖は行われなかった。

 昨年3月以降、ネットワークが確認した道内の鯨類漂着は計81件。このうちアカボウクジラ科は今回を含め9頭しかない。国立科学博物館の山田格(ただす)・動物研究部脊椎(せきつい)動物研究グループ長(海棲哺乳=かいせいほにゅう=類)は「同じ海域に複数のクジラが漂着した場合、潜水艦による出力の強いソナーの影響も検討しなければならない」と話す。米国では環境保護団体が、海軍に対して軍事演習でのソナー使用禁止を求める訴訟が起きている。【本間浩昭】

毎日新聞 2008年6月2日 2時30分(最終更新 6月2日 2時30分)

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