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歌舞伎:幸四郎が対照的な2役 「新薄雪物語」の兵衛、「生きている小平次」の太九郎

 ◇完璧な人間と人殺し--歌舞伎座

 松本幸四郎が6月の歌舞伎座に出演し、2役をつとめる。昼の部で義太夫物の大作「新薄雪物語」の園部兵衛、夜の部で鈴木泉三郎作の新歌舞伎「生きている小平次」の太九郎という対照的な役だ。【小玉祥子】

 「新薄雪」の兵衛は初役。兵衛の息子・左衛門と幸崎伊賀守の娘・薄雪姫の恋が、天下を狙う秋月大膳に利用され、2人は無実の罪を着せられる。自分の家に預けられた相手の子を助けるため、兵衛と伊賀守は腹を切って犠牲となる。

 「現代劇なら性格やテーマで役を絞れますが、歌舞伎劇は肚(はら)と武士の格調に情を加えて、完璧(かんぺき)な人間を見せなければならない。一朝一夕にはできません。兵衛はその最たるものでしょうね」

 先代中村勘三郎の兵衛、父の松本白鸚(はくおう)の伊賀守、六代目中村歌右衛門の梅の方の舞台が目に焼き付いているという。今回は中村芝翫(しかん)の梅の方、中村吉右衛門の伊賀守だ。「皆さんと何とかいい芝居をお見せしたい」

 「生きている~」は87年以来の上演。囃子方(はやしかた)の太九郎は、妻おちかの浮気相手の役者・小平次を殺す。ところが、死んだはずの小平次が家を訪ねてきた。小平次が何度殺しても現れるという心理的な恐怖が見どころである。

 出演者は3人のみ。中村福助のおちか、染五郎の小平次の配役で、演出も九代琴松(きんしょう)の名で幸四郎自身が担当する。

 「小平次は生きているのか、死んでいるのか。優れた短編小説のような粋な小品です。何をしていなくても、役者や囃子方らしく見せられなくては、歌舞伎役者ではありません。2人の若い役者には、大いに実力を発揮してもらいたい」

 3日から27日まで。問い合わせは03・5565・6000へ。

毎日新聞 2008年6月2日 東京夕刊

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