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2008年06月02日 

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絶好調ソニーでさえ大赤字!
薄型テレビ市場の「大消耗戦」

 一方、テレビ事業で約1兆円を売り上げる松下電器産業は、「販売台数は計画を下回ったものの、営業黒字」と公表している。また、国内を中心に約8500億円を売るシャープも、テレビ事業の営業黒字を誇る。

 ただし、松下もシャープも隆々たる黒字体質というわけでは、むろんない。年平均で約20%も下落する、収まることを知らない価格破壊に晒されているのは、どのメーカーも同じだ。市場シェアで大きく見劣りする東芝、日立製作所の“ジリ貧”は容易に想像できる。日立は08年3月期の決算において、リストラ費用を含む約1000億円の薄型テレビ事業の損失を計上した。2期連続の最終赤字を招く最大の要因となっている。

今期に続々立ち上がる
大型最先端パネル工場

ソニーと松下電器が過去最高益 それでも各社はテレビ事業にしがみつき、前のめりになる。年率30%も成長する市場は、テレビをおいてほかにないからだ。付け加えれば、他社はもちろんソニーですら、ハードウエアを柱とした従来のビジネスモデルを転換する成長戦略を描き切れなかった。

 松下は2800億円をつぎ込み、09年5月に兵庫県尼崎市で世界最大のプラズマパネル工場を稼働させる。加えて今年8月、兵庫県姫路市で総事業費3000億円の液晶パネル工場を着工する。ソニーは液晶パネルの安定調達のため、サムスンとの合弁に約1000億円の追加投資を行ない、シャープは大阪府堺市に計画中の液晶パネル新工場に約1000億円を出資する。

 立ちはだかるのは、世界トップシェアのサムスンだ。今年度中に2500万台の薄型テレビの販売を計画しているといわれる。対するソニーの販売計画は、液晶パネルの調達が間に合わず、1700万台にとどまる。松下のそれは全テレビで1100万台と見劣りする。

 薄型テレビ市場は黎明期を通り抜けた。いよいよ“規模の経済”が頂上決戦の勝敗を左右することになる。実に過酷な消耗戦である。

(『週刊ダイヤモンド』副編集長 遠藤典子)

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