社 説

緊急地震速報/海域での観測網の整備を 

 実際に揺れる前に、地震の襲来を知らせる気象庁の緊急地震速報が“連敗”している。

 初めて速報を出した4月28日の沖縄県宮古島近海の地震では、震度5弱と予想したものの、揺れには間に合わず、実際の震度にも食い違いが出た。5月8日に関東や東北で最大震度5弱を記録した茨城県沖の地震でも、揺れてから後追いする結果になった。

 より精度の高い速報を実現させるためには、システムの再検討が必要だ。特に陸地だけの観測網に頼るだけでなく、海底にも地震計を設置することが迫られている。

 速報は最大で震度5弱以上が予想される場合、強い揺れが来る前に4以上の地域へ知らせることを目標にしている。昨年10月、テレビやラジオを通じて一般の人への提供が始まった。

 防災に役立てるには何よりも速報の信頼性が前提。当たるのかどうか、受け手側が半信半疑の状態では効果的な行動は無理だ。事前に知るといっても秒単位であり、その間に何をすべきか各人や組織が決めておかなければならないからだ。

 宮古島近海の地震では規模を示すマグニチュード(M)が実際は5.2だったのに、6.9とかなり大きく見積もったことが原因になった。茨城県沖では逆に過小評価してしまった。本当は6.7だったが、当初は6.0とみなし予想震度も小さくなった。

 速報は最初に到達する小さな揺れの初期微動(P波)から規模や震源域を計算し、各地の震度を予想する。そのためマグニチュードの誤差は速報内容に直結する。

 茨城県沖では最初のP波検知後、38秒たってからようやくM6.7と計算したが、それでも予想される最大震度は4程度で速報はされなかった。震度5弱と見積もり速報するまでさらに20秒かかってしまった。

 気象庁の緊急速報システムは現在、陸地に設置した地震計のデータだけに頼っているが、海域に設置していないことに、そもそも問題がある。

 M7を超えるような大きな地震は、太平洋沖合などが震源域となる場合が多い。近い将来の発生が確実視される宮城県沖地震などが、そのケースだ。震源域により近い海域での観測データがなければ、速度や精度を高めるのは難しい。

 直下型なら陸域だけで間に合うのだろうが、震源域が近いために強い揺れもすぐに到達し、速報の有効性自体が疑問視されている。緊急速報はむしろ、震源域が沖合で、なおかつ規模が大きい地震に対してこそ効果が期待されている。

 本当に役立つ緊急速報システムのためには、海での観測強化にも早く取り組むべきだ。
2008年06月02日月曜日