感染症予防法成立記念映画
福江島

1918年、新型インフルエンザであるスペイン風邪が世界中で猛威をふるい、2,500万人もの死亡者を出しました。これは、第一次世界大戦の戦死者854万人の3倍にあたります。現在でも、世界的な流行を繰り返しているインフルエンザは、エイズなどの新型感染症と共に、21世紀、最も恐れなくてはならない感染症として注目を集めています。
ところで、我が国の感染症対策は、ワクチン接種や研究体制など、欧米先進国と比べて非常に遅れているというのが現状です。このままの防御態勢では、イザという時、ただ犠牲者が出るのを指をくわえて眺めているだけということにもなりかねません。
 そうした中、1998年9月25日、国会において感染症予防法が成立しました。この法案成立を記念して、感染症の恐ろしさと、防御態勢・臨床研究の重要性を広く国民のみなさま方に訴えるために、新型インフルエンザをテーマとして医学サスペンス映画を制作いたしました。
 美しい映像と音楽で綴る、スリルあふれる医療現場の人間模様を通して、みなさまも感染症について考えるきっかけとなさってはいかがでしょうか。


 長崎県五島列島・福江島。隠れキリシタンゆかりの美しい情景の中を、澄んだピアノの音色が響きわたる。市民ホールの舞台で、一人の女性がピアノを奏でている。彼女こそ、福江島が生んだ架空の音楽科・北風りんたろうのひ孫である新進のピアニスト・北風さやかである。りんたろう没後80年記念演奏会に向けてのリハーサルである。洗練された音色に聞き入る関係者達の中に、福江島出身の東都大医学部教授・五島英一と孫の真弓の姿がある。
 ちょうどその頃、三井楽町の、普段は静かな診療所が、急に慌ただしくなった。重症のインフルエンザ患者が救急車で次々と運び込まれて来たのだ。小さな町がパニックに陥る。
 一方、中国奥地でも、これまでにない悪性の新型インフルエンザが蔓延しているという。東京の日本感染症センター。真弓の父である医師・五島守が、研究者の小泉医師から、中国奥地のインフルエンザウイルスの塩基配列が、スペイン風邪とそっくりであることを告げられる。実は、北風りんたろうも、80年前にスペイン風邪で死亡したのだった。
 福江島から帰郷した真弓が急に高熱を出した。どうやら、島でインフルエンザを移されたらしい。守は、真弓を感染症センターに入院させる。肺炎を併発しており、かなり重症である。真弓のウイルスを検査したところ、中国奥地のものと同じ香港X型ウイルスの反応が出た。
 五島英一は、厚生省で、福江島で流行し始めたインフルエンザが香港X型であるとの報告を受け、今後の対策について話し合うが、解決策は見いだせない。我が国では、ワクチン接種が義務づけられなくなってから製造ラインも縮小したため、ワクチンの早急な製造は不可能なのだ。
 小泉医師は、香港X型の蔓延を防ぐためには、今自分が開発中である特殊なワクチンでなければ不可能であるということを守ると英一らに訴える。その特殊なワクチンとは、鼻から噴霧するいわゆる「鼻ワクチン」で、小泉医師は、これを自らに投与して福江島に救援活動へ行き、ワクチンの効果を実証して厚生省を動かそうとしていることを告げる。そんな人体実験は許されない、と責める上司や関係者たち。だが、守は小泉の話を聞いた時から密かに決意を固めていたのだった。

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■スタッフ
      監督:木裕己 
      脚本:木裕己/水島広子 
      プロデューサー:長谷川聡 
      撮影:堀田泰寛 
      照明:外岡 修
      録音:井上幸雄
      美術:江波裕二
      編集:足立 浩
      スクリプター:津島由起江
      キャスティング:吉川威史
      助監督:湯澤利明
      製作担当:砂川浩二
      湖情景撮影:清水良雄
      音響ディレクター:田中道博
      清音:福田 伸
      ネガ編集:山本晴彦
      助監督:川津一修/斉藤克康
      撮影助手:秋葉清功/松根広隆
      照明助手:近藤裕康/志村和夫
      録音助手:照井康政
      美術助手:関根 章
      メイク:瀬畑奈央
      衣装:山本 繭
      スチール:津田賢治
      演技事務:石垣光代 
      制作進行:岡 元太/近藤ツヤ
      制作デスク:外川光子/黒田郁子
      

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