■食品各社、付加価値で収益
食品値上げが加速するなか、付加価値をつけて価格を高く設定したプレミアム商品が好調だ。通常商品の値上げや特売回数の減少で価格差が縮まっているためだ。消費者の間では、普段はスーパーの安いプライベート(PB)商品ですませ、ちょっとぜいたく気分を味わいたいときはプレミアムというすみ分け現象が起きている。食品メーカー各社は原材料の高騰で収益が圧迫されるなか、付加価値で稼ぐプレミアム商品に一段と力を入れる考えだ。(松岡朋枝)
≪あと100円で健康≫
「少し高くても、健康にいいものを選びたいという消費者が、『買いやすい』と感じる値ごろ感が出てきた」
家庭用油最大手、日清オイリオの担当者は、プレミアム人気の理由をこう解説する。
特定保健用食品の認定を受けたコレステロールを抑える機能がある同社の「ヘルシーコレステ」は、3〜4月に前年年同期比37%増と大幅に伸びた。
食用油市場全体は3〜4月に2%減と落ち込んだが、こうした健康系油は10%増と好調。最大の理由は価格差の縮小だ。
日清の場合、通常のサラダ油は昨年から計7回も値上げした。これに対し、健康系油は原材料高を付加価値による高価格で吸収する余裕があるため、1回しか値上げしていない。
この結果、1・5キログラム入りのサラダ油の店頭価格は、それまでの300円程度から500円程度まで上昇。一方で健康油は600円程度で売られており、あと100円出せば買える。
ハウス食品のカロリーを抑えたカレールー「プライムカレー」も好調。店頭価格は300円前後だが、通常商品との価格差がそれまでの150円程度から100円程度に縮小。最近ではカレールー全体でシェア5%を占める人気を誇る。
≪PB商品に対抗≫
プレミアム人気は、スーパーの特売の減少も一因。安売りの原資を協賛金の形で負担していたメーカーが、原材料高で収益が悪化し協賛金の削減や打ち切りに動いていることで特売が減少。スーパー側はそれを補うため、安いPBを拡充している。
PBは生活防衛を強める消費者の支持を集めているが、一方で、「メーカー品を買うならプレミアム」という消費行動を促す要因になっているようだ。
メーカー側も、PBが売り場の棚を占領するなか、「PBにはまねできない付加価値商品を出さないと生き残れない」(大手菓子メーカー)と、さらにプレミアムに力を入れる。
江崎グリコでは、チーズの量を50%に増やした焼き菓子「チーザ」を2月に189円で発売したところ、注文が殺到し販売の一時中止を余儀なくされる人気となった。
17日にはカロリーを25%減らした「ポッキー〈マイカロリー〉」を発売する。価格は38グラムで138円と、72グラムで150円程度の通常品に比べかなり高いが、「オンリーワン商品なら選ばれる」と自信満々。
キリンビールは、従来のプレミアムビールよりも350ミリリットル缶でさらに20円程度高い「ザ・プレミアム無濾過(ろか)〈リッチテイスト〉」を5月28日に発売しラインアップを強化した。
原材料高に沈静化の兆しがみえないなか、メーカーの生き残りをかけたプレミアム商品はさらに増えそうだ。
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