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【社説】

改正道交法 新ルールを守りたい

2008年6月2日

 改正道交法の施行で、自動車の後部座席でのベルト着用や高齢運転者の「もみじマーク」表示などが義務付けられた。悲惨な事故の抑止が期待される。罰則化は先でも、新ルールはぜひ守りたい。

 一日から施行された改正道路交通法のうち、乗用車の運転者や同乗者に影響が大きいのは、後部座席でのベルト着用の義務付けだ。妊婦や著しい肥満者らを除いて「車内では全員がシートベルト着用」となった。

 違反した場合は運転者が一点減点となるが、当面は高速道路や自動車専用道路で適用される。後部座席のベルト着用はなじみが薄く、一般道でも取り締まるには周知期間が必要との配慮だ。

 警察庁と日本自動車連盟が昨年行ったシートベルト着用調査では、一般道での着用率は運転席95%、助手席86・3%と高かったが、後部座席は8・8%だった。

 「めんどうくさい」「後部座席なら安全だろう」という気持ちが働くからだろう。ところが、着用と非着用では、死亡事故の場合に歴然とした差が出ている。

 昨年の交通事故死者のうち後部座席に乗っていたのは二百人で、うち百六十八人がベルトを着けていなかった。後部座席から車外に放り出された事故の死者四十五人のうち、着用していたのは一人だけだったというデータもある。

 シートベルトをしていれば命が助かったケースもあったはずだ。命を守るためには、後部座席での義務付けもやむを得ない。

 七十五歳以上のドライバーには「高齢運転者標識」(もみじマーク)表示が義務付けられた。このマークを付けた車を見かけたら周囲の車は進路を譲ったり、車間距離に注意しなくてはいけない。

 高齢ドライバー保護の狙いがあるが、最近はアクセルとブレーキを踏み間違え、歩行者を死なせる高齢者の事故が少なくない。高速道路での逆走事故もある。

 違反者は一点減点、反則金四千円が科される。だが、七十五歳という線引きが後期高齢者医療制度と重なっていることで、高齢者を刺激したくない与党の意向で実際の取り締まりは一年間、先送りされた。

 運転者からは「年齢だけで線引きするな」「職業運転手に配慮がほしい」などの意見が出ている。

 高齢者にも個人差はある。プライドを守りつつ、運転能力について個別に判断し、場合によっては運転を規制するといった事故防止策も検討しなければならない。

 

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