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【社説】

生物多様性会議 名古屋からの発信を

2008年6月2日

 生物多様性条約第十回締約国会議(COP10)は二〇一〇年、名古屋市で開催されることが決まった。「いのち」の恵みの大半は都市部で消費されている。都市住民も無関心ではいられない。

 人間は一個の生き物であり、無数の「いのち」の恵みを受けて生きている。「生物多様性」とは、地球上のすべての生き物が、バランス良く共存できる状態だ。

 その人間に他の生き物は乱獲され、森林は乱伐されて、バランスが急激に乱れ始めた。対象にされた約四万種の生き物のうち、三分の一以上が「絶滅の恐れあり」と判定された調査もある。多様性を失うに連れ、人間自身の存在も危機にひんすることになる。

 それに歯止めをかけようと一九九二年、ブラジル・リオデジャネイロで開かれた地球サミットで、生物多様性条約が調印された。生き物をただ保護するだけでなく、持続可能な利用や、食料や医薬品など生物資源、遺伝資源の公平な分配にも力点を置いた取り決めだ。今年現在、百九十カ国と欧州連合(EU)が加盟している。

 気候変動で動植物の生育環境が変わり、食料不足が深刻化するなど、温暖化と表裏一体の問題として、広く注目を集め始めた。

 締約国会議は、二年に一度開かれる。名古屋のCOP10では、生物種保全の国別数値目標「ナゴヤ・ターゲット」を定める方針で、京都議定書を採択した九七年の温暖化防止京都会議同様、環境史上の重要な節目になる。まずホスト国が率先して、具体的な目標を提示すべきだ。

 一方、開催市名古屋がこの機会に強調するのが「都市からの発信」だ。条約に基づいて策定された「第三次生物多様性国家戦略」も、地方、企業、非政府組織など多様な主体の参画を求めている。

 条約が「保護」だけでなく、持続可能な「利用」を重視する以上、生物資源を日々大量に消費して暮らす都市住民の参画は欠かせない。「いのち」の恩恵をだれもが末永く受けられるよう、サイドイベントなどを通じてライフスタイルを振り返り、身近な「里山」を象徴に、山、川、里、海とのつながりを考え直す名古屋会議にしたい。

 京都議定書は、観光都市京都を「環境都市」に染め上げた。会期が終了した後も、「ナゴヤ・ターゲット」を持続可能な街づくりの「資源」として残せるような演出を、市民と一緒に工夫しよう。

 

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