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【主張】「きぼう」実現 日本の宇宙技術の結晶だ
スペースシャトル「ディスカバリー」が国際宇宙ステーション(ISS)を目指して飛び立った。日本人で6人目のシャトル飛行士、星出(ほしで)彰彦さんらが乗り組み、日本の宇宙実験棟「きぼう」用の「船内実験室」が搭載されている。
ディスカバリーは日本時間の3日にISSへ到着し、4日にロボットアームを操作して星出さんが船内実験室を取りつける。
船内実験室は、バスほどの大きさで、内部には実験装置がずらりと並ぶ。3月に土井隆雄飛行士が設置した船内保管室と合わせて、きぼうの大部分の完成だ。宇宙飛行士は普段着で、無重量環境を利用した特殊な実験が行える。
今回のフライトで、日本は悲願としてきた自前の「宇宙の家」を手に入れる。米国からISS計画への最初の参加呼びかけがあったのは1980年代の前半だ。
四半世紀におよぶ歳月と総額で約7000億円をかけ、ついに日本の努力が実るときが来た。度重なるスペースシャトルの事故で、一時は、きぼうの完成が危ぶまれたこともある。
この間、開発組織も宇宙開発事業団(NASDA)から宇宙航空研究開発機構(JAXA)に変わった。きぼうの開発に携わった人々に「ご苦労さま」と言いたい。世界15カ国が力を合わせて建設しているISSの各施設の中で、きぼうは最大規模のものである。
そして、日本のものづくり技術の結晶でもある。宇宙空間での創造的な研究に活用し、成果を地上の生活に反映してもらいたい。
きぼうが機能を開始すると、日本が開発したばかりの無人宇宙貨物船「HTV」が、ISSに食料や生活物資を運ぶようになる。定期輸送の第1便は、来年夏の予定だ。日本は米露の「お客」から対等のパートナーへと変わる。
防衛と産業振興に道を開いた宇宙基本法の成立と合わせ、日本の宇宙開発は今、新たな局面に立っている。将来、日本は自力の有人飛行に進むのか、それとも無人技術に磨きをかけるのか。そうした決断も必要になってくる。
さらに、2016年以降は米国がISSの運用から撤退する可能性がある。日本は米国が次に目指す月面計画と、どのようにかかわっていくかを検討する時期にもさしかかっている。きぼうの実用を機に、次代の日本の宇宙開発のあるべき姿を考えたい。