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社説2 日中韓の連携は機能するか(6/2)

 韓国の李明博大統領が27日から30日まで中国を公式訪問した。胡錦濤国家主席らとの会談を踏まえ両国政府が発表した共同声明は、日本を含む3カ国の協力が「アジアの平和と安定、繁栄に極めて重要との認識で一致した」と明記した。

 李大統領が4月に来日した時の共同発表も、日中韓協力の重要性をうたっていた。今回は、中韓の首脳が日中韓をアジアの基軸に位置づけた。日本とぎくしゃくしてきた歴史認識をめぐる複雑な感情を、乗り越えようとしたとみることができる。

 日中韓は1999年から、東南アジア諸国連合(ASEAN)との首脳会議に付随する形で首脳レベルの会議をほぼ毎年開いてきた。今秋には、独立した形式では初の首脳会議を日本で開く方向で調整している。

 北朝鮮の核開発問題、酸性雨や黄砂、地球温暖化などの環境問題、四川大地震とミャンマーのサイクロンで浮上した防災協力。3カ国が連携して取り組むべき課題は多い。

 中韓首脳会談の成果は、日中韓が首脳レベルで緊密に意見交換する時代が到来したとの期待を抱かせる。問題は、日中韓の連携が本当に機能するかどうかである。

 李大統領と胡主席は中韓関係を、安全保障を含め協力を進める「戦略的協力パートナーシップ」に格上げすることで合意した。中国は北朝鮮と緊急時の相互軍事援助を定めた条約を結んでいる。中朝はいわば同盟関係にある。韓国を「戦略的パートナー」としたことで、「南北等距離」へ近づいたといえる。

 ただ、北朝鮮をめぐる思惑は複雑だ。首脳会談で胡主席は「双方の友人として南北の和解・協力を支持する」と述べ、盧武鉉前大統領に比べて北朝鮮に厳しい李大統領に、柔軟な姿勢を促した。日中韓連携の真価も、核開発問題を含めた北朝鮮への対応で問われることになる。

 李大統領の訪中に合わせるように、韓国軍機による四川大地震の援助物資の輸送が実現した。一方、自衛隊機による物資輸送は中国側が国内事情に配慮する格好で慎重姿勢に変わり、結局は見送られた。日本と中韓との関係は依然としてデリケートだ。日中韓連携に潜む難しさが改めて浮き彫りになった。

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