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社説:TICAD閉幕 「アフリカ型開発」を見たい

 横浜市で開かれていたアフリカ開発会議(TICAD4)は、横浜宣言や横浜行動計画などを採択して終わった。

 90年代まで経済発展から取り残されていたアフリカも、2000年代に入り成長が高まってきた。今回のTICADはそうした動きを後押しすることで、アフリカ諸国の自立的な発展につなげることに狙いが置かれていた。

 具体的な支援を盛り込んだ横浜行動計画では、貿易・投資や保健、農業、教育のみならず、環境分野でも13年以降の温暖化防止の枠組みへのアフリカ諸国の積極的関与にも言及している。会議の所期の目的は達成したといっていい。

 今回のTICADは折からの原油や食糧の価格高騰の中で開かれた。「元気なアフリカ」が基本メッセージであるとはいえ、アフリカ諸国自身も構造転換を求められている。エネルギーや食糧の問題に適切に対応することなしに、持続的な発展はないのだ。

 具体的には、アフリカ諸国もエネルギー多消費型の成長では、遠からず限界が来る。また、食糧自給が経済発展の基礎的条件ということもより明確になった。

 これまでのアフリカ支援は旧宗主国である欧州諸国が行ってきた贈与が主流だ。ところが、80年代から90年代にかけて、東アジア諸国が経済発展を遂げる中、長い停滞を経験した。

 いま、年率5%程度の成長をたどっているが、停滞期の教訓は、経済発展には諸条件整備が不可欠ということである。それは道路や港湾、鉄道など産業・生活両面のインフラ整備や、国内資源開発のための資金、技術、人材の育成などである。感染症対策や母子の健康などの必要性である。

 横浜行動計画はこうした分野を網羅している。国連機関や世界銀行など国際開発金融機関との連携も打ち出されている。

 次はこの計画がどこまで実施されるのか、どれだけの成果が表れるのかである。言い換えれば、アフリカ諸国が持続的発展を遂げることだ。

 この観点からも、目標をフォローアップする仕組みが有効に機能しなければならない。開発支援の会議は、具体的な援助を約束すること以上に、その後をどうするかが大事なのだ。

 同時に、援助を受ける側が自立的な発展に向けたプログラムを作り、行動することも欠かせない。温暖化対策も忘れてはならない。

 こうしたプロセスを着実に踏み、5年後のTICAD5では「アフリカ型の経済発展」のモデルを見せてもらいたい。

 日本は政府開発援助(ODA)の倍増や民間投資の倍増を約束した。自立、自助に基づいた経済発展を支援する観点から、無償資金協力や技術協力と合わせて、返済を伴う援助である円借款の効果的な活用を図っていくべきだ。

毎日新聞 2008年6月2日 東京朝刊

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