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2008年6月2日

◎理科支援員の拡充 「科学大好き」の礎つくろう

 小学生の理科離れに歯止めをかける一助として、大学生が授業を補助する「理科支援員 」の派遣事業が二年目を迎え、富山県教委では、時期を初年度より三カ月早めて今月からスタートし、人員も増員して配置校を拡大するという。現場では児童の理解が深まるなどの効果が出てきており、石川県でも、「科学大好き」の子どもを育てる礎を築くために、一層の拡充を期待したい。

 理科は、ノーベル物理学賞受賞者の小柴昌俊氏が、「教科書だけでなく、子供が自分で 実験をやって初めて面白さが分かる」と述べているように、物理や化学の実験、野外観察といった体験学習が生命線と言え、本来は各教科の中でも、子どもが楽しさを実感できる授業であろう。

 ただ、近年は小学校教諭が理科以外にも幅広い教科を教えなければならないため、手間 のかかる実験などを省略する傾向があるとされ、授業の厚みが薄れてきたことも子どもの理科離れの遠因になっているかもしれない。

 理科支援員は、外部の人材を実験の補助員として配置する文部科学省の事業で、各地で 大学生らが小学校高学年の授業に加わり、実験器具の準備や後片づけをサポートする。石川県内では昨年度、金大や県立大、金沢学院大などの三十四人が三十一校に派遣された。

 昨年度、富大生六十九人を配置した富山県教委では、授業内容の充実度が高まり、「個 別指導が必要な場合にも助かる」との声も寄せられ、今年は全体で八十人程度に増員して募集したという。石川県でも、まだまだ現場の需要を満たすほど十分な配置とは言えないだけに、昨年度の実施評価を分析し、できるだけ増やす方向で検討してほしい。

 文科省は、教育振興基本計画の中に、今後五年間で三万五千人の教職員の定数増を盛り 込むことをめざしているが、新学習指導要領に対応するため授業時間数が増加するだけに、教職員を補佐する人員の必要性は、今後ますます強まるだろう。そうした時代の先陣を切る役割を担うためにも、理科支援員を地方の責任として定着させたい。

◎バイオ燃料見直しへ 食料高騰させ投機招いた

 今月三日からローマで始まる国連食糧農業機関(FAO)の「食糧サミット」でバイオ 燃料の見直しをめぐって論議が沸騰しそうである。結論からいえば、見直しもやむを得まい。

 このサミットを視野に開かれた、先の国連経済社会理事会や国連人権理事会の特別会合 で食料危機への対策が話し合われた。そこでは地球温暖化対策の一つとして進められた穀物からつくるバイオ燃料の大量生産が投機マネーの対象になり、食料価格を高騰させ、途上国を窮状に陥れているとの報告がなされた。バイオ燃料の見直しが食糧サミットで必至になったのである。

 欧州連合(EU)や日本は見直しに賛成だが、世界のバイオ燃料生産の37%を占め、 最大の生産国といわれる米国は見直しに反対だ。輸出国のブラジルなどは「サトウキビを原料とするのは食料危機にならない」と主張している。

 FAOによると、〇八年に世界の食料全体の輸入量は初めて一兆三百五十億ドルに達し た。うち被援助国など八十二カ国のそれは全体の16%だが、価格は前年より約40%も上がった。投機の対象にされ、食料の価格高騰や逼迫(ひっぱく)を招いた結果である。

 森林を農地化してバイオ燃料の原料を栽培する傾向だが、一方で森林などを減らし、他 方でバイオ燃料の生産を増やすのは地球温暖化対策として理屈に合わない。枯渇しない植物を原料とし、その植物が成長する過程で二酸化炭素を吸収するため、燃やしても放出される二酸化炭素は差し引きで増えないのがバイオ燃料だとの主張に疑問が生じてきた。

 製造から供給までの過程で化石燃料からつくった化学肥料やガソリンなどを使うため、 温暖化対策としてはあまり意味がないと、みられるようにもなった。車一台分のガソリンタンクをバイオ燃料で満タンにすると、人ひとりを一年間養うだけの穀物が要るとの指摘もある。見直しとともに、国連経済社会理事会が提言するように、途上国への緊急食料援助を速やかに行い、途上国の農業分野への投資を増やさねばなるまい。


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