全日空ボンバルディア機が昨年三月、高知空港で胴体着陸した事故は、前輪部分の修理時にボルトを一本付け忘れたことが原因だった。

　人間は、まさかと思えるようなミスをする。ボンバルディア社は修理作業時に具体的な作業内容を作業員に指示する手順書を作っていなかったというから、品質管理上の不手際がミスを誘発したともいえる。

　先ごろ、無人探査機を火星に着陸させた米航空宇宙局（ＮＡＳＡ）のかつての失敗例を思い出した。やはり火星探査で、一九九九年九月、観測衛星を近くまで送り届けながら、周回軌道入りの直前に衛星が行方不明になった。

　原因は「フィート」と「メートル」の取り違えだった。衛星の製造企業はフィートを、ＮＡＳＡ側はメートルを使い、換算なしに制御システムが組まれていた。当時の本紙は経費節減で出張旅費が抑えられ、打ち合わせが不十分だったとも伝えている。

　単純なミスが巨費を無駄にし、時に幾多の人命を奪う。人間はミスをするものであり、その可能性をゼロにできない事実を認識することが、事故やトラブルの一番の防止策かもしれない。

　希望は人間が失敗から教訓を学び、進歩できることだ。鍵をかけ忘れても一定時間たつと勝手にドアがロックされる愛車は、しばしばミスをカバーしてくれる。