『ひぐらしのなく頃に』原作者:竜騎士07 インタビュー
「10年早くても10年遅くても、このブームは起きなかった」
かつて50枚しか売れなかったPCのソフトが、ドラマCD、コミック、ゲームソフトを経て5月10日より実写版映画として公開される。謎が謎を呼び、メディア展開が増えるごとにファンも増えている『ひぐらし〜』。本作の原作者:竜騎士07氏に、その理由と『ひぐらし』の発想の元について話を聞いた。
――『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』と『八つ墓村』から影響を受けて物語を作られたとの話ですが。
「『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』に関してはB級の匂いがプンプンだったけどアメリカで話題になっていたこともあり、ホラーでもあったので劇場へ観に行ったんですよ。これは私だけじゃないと思うのですが『ブレア〜』を観た人の殆どが良くわからない感想を抱いていたと思うんです。帰り際に売店で分厚い資料本を買って読んでみたら『ブレア〜』の世界観にハマってしまったんですね。「逆だ、間違えた。この本を読んでから映画を観なきゃだめだったんだ!」と、フェイクドキュメンタリーという手法にすっかりやられてしまった。
『ブレア〜』がドキュメンタリーとして通じてしまうのは舞台がアメリカだからこそ、この都市伝説を観て一番面白く堪能できるようにできてますよね。日本人にとって閉鎖的寒村モノ=ブレア・ウィッチ的世界じゃないですか。つまり『八つ墓村』の世界なんだよなって思った時に『ひぐらしのなく頃に』の初期の着想に繋がったんです。この頃は自分自身がホラー好きだと自覚していなかったのですが、今は無類のゾンビ好きになっちゃってます(笑)。
結果的に『ひぐらし〜』の物語が完成するまで4、5年もの試行錯誤した時間がかかりました。まぁこのように映画から大変影響を受けやすい性格なもんで、雛見沢に巨大円盤が飛んでくるって話も作ろうとしたんですが、それじゃ『インディペンデンス・デイ』そのまんまでSFになっちゃうからどんな展開にすればいいんだよ、ってことでもちろん止めましたけど(苦笑)。
現在『うみねこのなく頃に』という別の作品を書いているのですが、市川昆監督が『犬神家の一族』をセルフリメイクしたので観に行ったら即効で影響受けちゃいまして、もちろん作中に反映させてます。ホラーやミステリーというのは物語の展開がハラハラドキドキするので王道として一番素晴らしいと思うんですよね。寒村のおかしな風習をもった、おかしな大金持ちの一族が、次々に変死体で見つかって、それがわらべ歌に沿っているとか……これぞまさに王道の素晴らしさかと。」
――『ひぐらし〜』があらゆるメディアで大ブームを巻き起こしていますが、その理由についてどうお考えですか?
「最初はPCの同人ソフトで50枚しか売れなかったモノがここまで売れてしまい、そしてあらゆる媒体へ広がりを見せるとは正直想定外でした。しかし、シリーズ4作目が1400枚売れた時、「アニメ化も決定するんじゃないの?」みたいなことをネタ的に身内で話していたんですが、それは徐々に作品に自信を持ち始めたからだったんです。で、一年後に本当にアニメ化されちゃって「次は実写映画化か?」って話をしていたら今回の運びとなったわけなんです(笑)。同人の世界でこのような突出したポジションの作品は過去に例がなかったので、今は順調かもしれないですが、今後どうなるんだか私にも読めないし見えないです。
PC同人ソフトからドラマCDへ展開、そしてコミック化して漫画になった段階で一気に広がりができました。スクウェア・エニックスさんから自社発行の漫画誌で三誌同時連載したいとの熱烈なアプローチに大きく心を動かされ、結果的に漫画も大ヒットへ繋がったのは『ひぐらし〜』の世界観そのものを理解し、大切に扱ってくれているからだと思いますね。実写映画版も同じスタッフで続編が動き始めていますので、私自身も楽しみは尽きないですね。」
文:ジャンクハンター吉田
写真:HIRAROCK
『ひぐらし』ブームとは
2002年、竜騎士07/07th Expansion名義でコミックマーケットにて発表したサウンドノベルゲーム「ひぐらしの鳴くころに 鬼隠し編」。当時の販売枚数はわずか50枚だったが、その世界観が口コミを中心に広まり、2004年5月にはネット上で考察サイトが乱立。
それを受け、2004年8月のコミックマーケットにて発表された「ひぐらし〜 鬼隠し〜暇潰し編」は、1400枚の売上となる。同年12月、「ひぐらしのなく頃に」アンソロジーが発売され、さらに2005年3月からは、ガンガンパワードにて「鬼隠し編」の連載が、コンプエースにて「外伝〜鬼曝し編〜」の連載が、月刊ガンガンウィングにて「綿流し編」が、と、同タイトルの作品が出版社の垣根を越えて連載されるという過去にない展開が起こる。2005年には「鬼隠し編」のドラマCDが発売、また、携帯電話ではEZアプリも配信開始(その後、Softbank、i-modeも配信する)。
続いて、2006年4月からは、TVアニメがスタート。フィギアやトレーディングカード、トートバッグ、Tシャツ、マグカップというグッズ展開も進んでいる。
原作となっているPCサウンドノベルゲームから始まり、コミックス、TVアニメ、ラジオ、ドラマCDやDVD、小説やムック、PS2のゲーム、そして関連グッズ、と、多種のメディアミックス化が進む「ひぐらし」。その勢いはいまも止まらない。
※サウンドノベルゲーム…ストーリーが静止画と文章にBGM、効果音が付いて表示され、ページをめくるように読み進んでいくPC版小説とも言えるゲーム。
1973年、千葉県出身。同人ゲーム作家・小説家。同人サークル「07th Expansion」代表。02年夏、コミックマーケットにて同人サークル「07th Expansion」としての処女作「ひぐらしの鳴くころに 鬼隠し編」を発表。以降、コミックマーケットにて続編を発表、その独特な世界観と謎に満ちたシナリオが熱狂的に支持を集めている。現在、「うみねこのなく頃に」続編を執筆中。
(c)2008竜騎士07/オヤシロさまプロジェクト
昭和58年の初夏、東京から来た前原は、ひぐらしの声が響くのどかな村、雛見沢村で楽しい日々を過ごしていた。しかし、彼はある出来事をきっかけに“オヤシロさま”と呼ばれる村の守り神を信仰する村の裏の顔を知る…。
[監督]及川中
[原作]竜騎士07/07th Expansion
[出演]前田公輝/飛鳥凛/松山愛里/あいか
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