違法な「地下銀行」を通じて今年4月までの16年間に国内から流出した資金が、摘発された事件分だけで計約7700億円に上ることが警察庁のまとめで分かった。捜査当局は「摘発された金額は氷山の一角」と分析。地下銀行が不法滞在などの違法行為を下支えしているとみて警戒を強めている。
地下銀行は、銀行法に基づく免許を受けずに、依頼された資金を海外に違法送金する組織。正規の銀行から海外送金する場合は窓口で身元確認があるため、不法滞在がばれるのを恐れて地下銀行を使う外国人が多い。
また正規の海外送金では国内より格段に高い手数料がかかるが、地下銀行は依頼人から受け取る手数料を割安に設定。このため、正規に国内で働く外国人労働者でも、母国の家族への送金を依頼するケースがある。
警察庁などによると、80年代末から在日外国人が増加したのに伴い、各出身国別に組織ができたとみられる。国内で初の地下銀行摘発とされるのは、大阪府警による韓国人グループ摘発(92年)。その後、今年4月末までの16年間で摘発された事件は全国で約90件、送金先は摘発が多い順に▽中国▽韓国▽タイ▽フィリピン--など14カ国に上る。
送金規模は数億円から数十億円が大半だが、最も多かった大阪府警による韓国人グループ摘発(05年)では、送金額は約1000億円に上ったという。
地下銀行の基本的な流れは(1)送金依頼を受ける(2)本国の仲間に連絡(3)仲間が本国のプール資金から指定額を受取人に支払う。依頼人から受け取った資金は正規の銀行を通じて本国へ送るが、たまった段階で送るため手数料は低く抑えられる。資金を直接持って本国へ運ぶ場合もある。
中国の地下銀行が個人か家族単位で運営される場合が多いのに対し、韓国はレンタルビデオ店、タイは飲食店や雑貨店を拠点にするなど国別の特徴がある。最近は依頼人を会員登録制にしたり、母国語の雑誌やケーブルテレビで「早くて安心、安く送金」などと宣伝していたケースもあるという。【桜井平】
毎日新聞 2008年6月1日 2時30分