【ダブリン澤田克己、福島良典】クラスター爆弾の禁止条約締結を目指す軍縮交渉「オスロ・プロセス」ダブリン会議の条約案に、日本が29日、同意する方針を決めたが、事前に米国との調整を重ねた上で決断した模様だ。英仏独など米国の同盟国も、同様に対米関係を重視。条約に参加しない米国との共同軍事作戦を容認する条文が入ったことで受け入れを決断した。「共同作戦条項」が今回の条約案の成否をわける分水嶺(ぶんすいれい)となったようだ。
日本はダブリン会議にあたり、(1)禁止されるクラスター爆弾の例外に自衛隊が保有し、不発率の高い「改良型」を含める(2)米軍との共同軍事作戦を可能にする条文を条約案に盛り込む(3)使用禁止までの猶予期間を設定する--という3点を重視。「改良型」と猶予期間の要求は満たされなかったが、共同作戦について「締約国の軍人・国民は非締約国との軍事協力・作戦に関与できる」との条文が追加された。この条文追加には非政府組織から批判もあったが、日英など米国の同盟国がプロセス離脱もちらつかせつつ、強硬に追加を主張し、認められた。
条文追加を受け、参加国のうち北大西洋条約機構(NATO)の加盟国は、条約案受け入れに傾いた。さらに英仏両国は保有するクラスター爆弾の廃棄・配備停止を発表した。
28日には英仏独などが条約案に賛同する姿勢を示し、日本もこれに同調。30日の条約案採択に向けて会議の流れが決定づけられた。
ダブリン会議の議長を務めるアイルランドのダヒー・オキャリ大使は毎日新聞の取材に「この(共同作戦参加の)問題が解決されたことが、NATO加盟国だけでなく多くの国にとって重要な節目となった」と振り返った。
日本政府が条約に署名・批准した場合、自衛隊が現在、保有するクラスター爆弾はすべて禁止対象になり、8年以内に在庫を廃棄しなければならない。だが、条約が発効した後でも、米軍がクラスター爆弾を使用する可能性のある日米共同作戦に自衛隊は参加・協力することができる。
毎日新聞 2008年5月30日 東京朝刊