Back Number 7
Q80:声優はすっごーく大変だと聞いたんですが、
どの辺が大変なんでしょうか?
A:どの辺が大変か?と言うのは漠然としてますね・・・。
でも整理して答えることにしましょう。
1)演技について。
細かい技術的なことをココで書いてもしょうがないので
演技における僕の持論を書きましょう。
他のどんな役者が演じるより、確実に名演技が出来る役が一つあります。
それは「自分自身」という役です。
これは他人がどう旨く演じようが負けることは有りません。
幾らモノマネが旨くても本人にはかないませんよね。
逆説的に言えば、役者本人が魅力的な存在ならば、
表現者として魅力的で有り得るということです。
ですから演技の究極はあらゆる意味で自分を磨くことだ僕は思ってます。
そのために何をするか・・・それを自分で考える。
ただ魅力的とは「性格や人柄が良い」という単純な意味では有りません。
例えば「悪女は魅力的」といったことの方が近いかも・・・。
2)生活について。
恐らく質問の意味はこちらでしょうか?
まず「確率」で書いていきましょう。
僕の所属する事務所の養成所には毎年50人ほどが入学してきます。
そこから声優の仕事を一回でも出来る人は3人ほどで6%。
声優として生活出来るようになる人はその内1人いるか?2%弱。
10年生活出来る人となると更に減り0.5%。
20年以上生活出来る人は0.1%かな。
1000人の志願者に1人くらいでしょうかね。
東大に入学、卒業後大蔵省くらいの競争率かも(笑)
これは「生活出来るだけの収入を得られるか」という意味での確率です。
日本俳優連合外画動画部会の新人基本ランクは30分番組1本15.000円。
それに放送使用料(詳細略)として0.8を掛けて上乗せした額、
27.000円が最低のギャラです。
そこからマネージメント料(事務所手数料)20%と源泉(税金)10%の
30%を引いた18.900円が新人手取りのギャラ。
これでは月10本仕事しても20万いきません。
また声優のギャラはベテランと新人にあまり差がありません。
10年以上仕事している人でも基本ランク16.000〜18.000円という人が
全体の半分以上。これは新人にとっては不利な条件ですよね・・・。
声優というのはサラリーマンと違うので、
事務所に所属したからといって給料を貰える訳ではありません。
自分の仕事した分がそのまま収入になります。
完全能力主義で男女の差別も全くありません。
生活に関しては本人の価値観の問題です。
月に1本の仕事では生活出来ませんが、
アルバイトしながらでも声優がしたい人はそれでも良い。
芸能の世界を志す人はほとんど似たようなものです。
声優に限ったことではない。
また一生続けようと思わなければもっと気は楽です(笑)
30才くらいまでそれなりに仕事して、後は別の仕事に就いても良し。
一生続けるというのはプロ野球選手が現役引退後、
監督やコーチ、またマスコミの解説者やタレントになるのと
同じように大変なことです。
でも現役時代に良い選手として人々の記憶に残るというのは
声優として良い作品を世に残すことと同じです。
現実的な話で夢をうち砕いたかな?
それでも声優になるだけの価値や面白さは充分ありますよ。
それに何よりもスキなことが出来るというのは素晴らしい!
また待遇はこれから改善されると思います。
僕も出来れば一生続けたいですね。
Q79:アニメの中で、 時々キャストさんが変わることがありますよね。
あれってどういう時に変わるんですか?
A:「犬夜叉」ではかごめの爺ちゃん役の松尾銀三さんが急逝したため
キャストが変わりました。キャストがお亡くなりになった場合や体調不良により
継続的な出演が出来なくなった場合、キャスト変更はあり得ます。
しかし僕が今まで参加したアニメ作品で途中でキャストが変わったのは
犬夜叉以外は有りませんので時々というほどは無いと思います。
原則的に作品の途中でキャストが変わるというのは、
何か余程の理由が無い限りはあり得ないと思います(不勉強?)
期間をおいて、再スタートする番組なんかは有るかも知れません。
その場合は制作体勢が変わるか、声優のスケジュールが合わない場合でしょう。
CDドラマからアニメになるときにキャストが変わることは良くあります。
これは音響制作会社や演出が変わるからでしょうね。
Q78:辻谷さんが声変わりしたのはいつ頃なんですか?
また自分が話している時の声と、
周りの人が聞いた自分の声って違うじゃないですか。
そういうのって、アフレコの時にいろいろ気にしたりするもんですか?
A:声変わりしたのは小学6年くらいの時かな?
あまり記憶が確かではありません(笑)
自分の声をテープに録音したりすると確かに違和感を感じたりしますよね。
これは恐らく共鳴や反響の関係でしょうね。
人間の発する声は、例えば部屋なら部屋の壁に反響した音が
耳に入るわけですが、口は顔の前にあるのに対し、
耳は横にあるので反響の仕方が違うのでしょう。
また人間の身体そのものも共鳴するので、
それが音として本人だけに聞こえ違和感を感じるのかもしれません。
科学的な根拠はありませんが・・・。
アフレコ時に気にすることは今は有りません。
最初仕事を始めた頃はテレビ等を観て
「これ俺の声??」なんて思ったことも有りましたが
最近は流石に慣れました(笑)
Q77:「樹」というキャラクターを担当された時の
感想とか思い出などもしあれば教えて下さい。
A:樹役は結構苦労した記憶があります。
役の性格が掴みづらいというか、とても漠然としていて・・・。
何を考えているのか良く分からなかった、今でも良くわからない(笑)
ただバイセクシャルなイメージがあったので、
中性的な(これも感覚的なものですが)感じを意識しました。
つまり男であるけど女みたいな・・・。
う〜ん、やっぱ感覚としか言えない!
直感的な「勘」だけです・・・ゴメン。
Q76:声優をめざしているのですが、
今から、これぐらいはしておいたほうが良いということはありますか?
また書いてあるおすすめの本などがありましたら、ぜひ教えて下さい。
A:声優になるための実践的な訓練等は養成所とかに入学してからで充分です。
おすすめの本ですが、古今東西の小説を沢山読むことかな。
声優の本なんて読まないに越したことはない(営業妨害?)
必要のない知識まで身に付いて固定観念ができちゃう。
訓練の現場で感じることの方が重要です。
あとは沢山の芸術作品にふれること。
映画、演劇、絵画等、感性を磨くことの方が重要!
Q75:声優さんが所属事務所を辞められてフリーになられる方がいますが、
メリット、デメリットってありますか?
A:これは難しい質問だな・・・。
フリーのメリットとしては、まず「マネージメント料」が掛からない。
事務所に所属していれば通常出演料(ギャラ)の20〜25%位が
マネージメント料として掛かります。
そこから源泉(税金)10%引いた70〜75%が手取りのギャラになります。
あとメリットは比較的自分で仕事を選べるところかな・・・。
デメリットとしては営業、ギャラの交渉、スケジュール管理、経理等、
全て自分でやらなくてはいけないことです。
事務所はスケジュール管理からギャラの交渉、
そして何よりも{営業}をしてくれるのでほとんどの役者は事務所に所属しています。
{営業}してくれるということは仕事が広がる訳ですからね。
それでは何故フリーの方がいるかというと、
1)事務所の営業より本人に営業力がある。
2)本人指名で来る仕事がほとんどなので事務所に所属する意味がない。
3)あまり仕事の枠を広げようと思っていない。
4)他の事務所に所属する前にとりあえずフリーとなる。
といった感じですが、概ね2)か4)が大半です。
いずれにしてもフリーというのは自分を指名してくれるクライアントが
多数存在しないとなれませんから実力、実績のある方というのが共通項ですね。
Q74:辻谷さんはどうして声優になろうと思ったのですか?
A:「声優になろう!」と思ったことは無いんですよね・・・。
俳優の仕事の一つに「声優の仕事」があったって感じです。
僕は俳優志願でしたから。
例えば有名は俳優さんやタレントさんが声優をやることありますよね。
宮崎駿監督の作品のように。
彼らは{ドラマや映画}の仕事の比重が大きいけど{声優の仕事}もやる。
それに比べ、僕は{声優の仕事}の比重が大きいけど、
{ドラマや映画}の仕事も要請があればやります。
舞台も大好きで、ライフワークにしたいと思ってます。
テレビの初期に声優と呼ばれた人達は皆俳優でした。
「声優になりたい」という人が出てきたのは、20年くらい前からかな・・。
僕らの世代(昭和35年前後の生まれ)が丁度分かれ目ですね。
最近の新人さんは最初から声優志願の方がほとんどです。
Q73:御自分のアルバムCDなどは出されないのですか?
A:今のところ予定は有りません、今後も無いかも・・・。
歌はどうしても苦手意識が強いんですよね。
キャラクターソングもホントは恥ずかしくてしょうがない(笑)
また本当に歌が好きで訓練してるのにアルバムを出せないプロの方の
苦労を知っているので僕が出したら悪いような気がしてしまうんです。
さらに冷静かつ客観的に考えてみると
僕がアルバムを出したとしても実際売れるのは
良くて2000枚、イヤそんな売れないでしょうね。
するとレコード会社はまず儲かりません(笑)
儲からなくても作ってくれるというところも有るかもしれませんが
それなら僕自身に相当な気合いや想いがないと実現しないでしょう。
苦手意識を克服するまで練習する時間を考えたら、
他のことに時間を費やす方が僕にとって有効なんです。
舞台をやるとか・・。
キャラソンは今後もやる可能性はありますが、
ソロアルバムはまず無いかな・・・。
しかし何が起こるか分からない世の中、絶対無いとは言いきれない。
ある日目覚めて曲を作り出したりして(笑)
Q72:先日スーパーサッカー見ました!とっても早口な上、
声が弥勒さまのときと違うのにびっくりしました。
やっぱ声優さんはいろんな声が出なきゃだめなんですか?
A:声優の演技を例えて「いろんな声」という言い方をよくされますが、
「いろんな演技(芝居)」と言った方が正確かと思います。
ナレーションでもアニメや外国映画、CM、それぞれその作品、キャラにあった
演技が要求される訳ですから、全て違うようにやってるつもりです(笑)。
キャラであれば、その人物の性格などを深求することから演技が生まれます。
人それぞれ性格が違うように、役の性格も違う。
だから喋り方も変わってくる訳です。
時には似たキャラになってしまうことも有りますが(笑)
Q71:今まで少年や青年の役が多かった辻谷さんが、
何故ダンディーなおじさまアグマイカを演じる事になったのでしょう?
A:年齢的には何の不思議も無いんですがね(笑)
僕の声質はどちらかと言うと若いので、若い役が多かったのでしょうネ。
若い役というのはやはり年齢も若い方がやる方がリアルで良いと思います。
だから僕としてはホントは中年役をやりたいんですが・・なかなか。
息子役から父親役、もしくは娘役から母親役への転換というのは
役者の一つの試練なんです。旨く転換できないと用無しになってしまう。
実際この4.5年程でアニメ等の仕事はめっきり減りました(笑)
ひょっとしたら弥勒役は青年役の最後になるかもしれないですね?
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