消えつつあるラブホテルの夢空間を記録

「ラブホテル」都築響一著（アスペクト　２０００円）

　セックスの場所を提供するホテル＝ラブホテルは世界各地に存在するが、おなじみの円形の回転ベッドや鏡張りの壁など、さまざまな趣向を凝らした部屋の設備・装飾は日本でしかお目にかかれないという。しかし、新風営法の施行で「ラブホテルらしい設備を備えたラブホテル」の営業は今やわずかなエリアでしか許可されず、新築や改装がままならないのが現状だ。

　本書は、姿を消しつつあるそんなラブホテルのユニークな空間を記録した異色写真集。首都圏と近畿圏の２８ホテルの６１室分を収録する。

　ページを開いて真っ先に飛び込んでくるのは、ホテル・ザ・リッチのスペースシャトル型ベッド。部屋に置かれた日焼けマシンの未来的なデザインと宇宙を再現した内装が独特の空間を演出する。他にも、２階部分のベッドから１階のプールにウオータースライダーで直行できる部屋（ロンシャン）や、スワッピング仕様で２つの寝室をつなぐ小部屋にまで拘束具が備えられている部屋（アンジェロ・ベーゼ　キタ店）、壁から天井、備品にいたるまでサイケデリックな絵が描き込まれたアートな部屋（インターユー）など、その何でもありの世界に圧倒される。

　オーナーたちのこだわりと創意によって作り上げられた個性豊かな空間は、マンネリ気味のカップルをも非日常の世界へと導いてくれることだろう。

「失ってからその大切さに気がつく前に」パートナーと出かけよう。利用に便利な各種データも添えられ、ガイドブックの役割も果たしてくれる遊び心に満ちた夢空間への招待状だ。

【2008年5月29日掲載】