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【主張】船場吉兆廃業 「食」再考の機会にしたい

2008.6.1 03:30
このニュースのトピックス主張

 大阪の高級料亭「船場吉兆」がついに廃業に追い込まれた。牛肉の産地偽装表示で経営が悪化、民事再生手続き中に発覚した料理の使い回しが致命傷となった。

 客の食べ残しを温め直したり、盛り直したりして別の客に出すというのは、高級の冠がつく店であろうとなかろうと、到底許されない。それが全店でほぼ毎日行われていた。

 そんな船場吉兆が客からそっぽを向かれたのは当然だ。もはや料理店を経営する資格はない。廃業もまさに自業自得であろう。

 使い回しが前社長の「もったいないという指導の流れだった」というのも言語道断だ。食べ残される料理に対して「もったいない」と考えたならば、まず持ち帰りを勧めるべきであろう。客が食べきれるように全体の量を減らすという選択肢もあった。

 しかし、そうはせずに、あたかも作りたての料理であるかのように別の客に提供し、平然と正規料金を請求していたのだ。

 これでは名店とされる店が持つべき、食への敬意や客をもてなす心はまったく見えない。それどころか、料理店としての最低限のモラルさえも欠落している。船場吉兆にあったのは「吉兆」という「のれん」に対する誇りではなく、おごりだったのである。

 その一方で、指摘したいことがある。客の側にも、そんなおごりを助長した部分がなかったかという点だ。

 一億総グルメ時代で食にかんする膨大な量の情報が、日々メディアを通じて流されている。そうした情報の洪水に経営陣、客の双方がのみこまれてしまったのではないだろうか。

 この結果、「高級料亭・船場吉兆」の虚像が独り歩きして、経営陣を「何をしても許される」という体質にしていたことも否定できまい。

 船場吉兆の不始末に、国民は吉兆グループだけでなく、ほかの料理店でも使い回しが行われているのでは、と不信感を抱き始めている。迷惑な話ではあろうが、すべての料理店が危機感を持って信頼回復を図るしかない。同時に、客も「のれん」やメディア情報に惑わされず、厳しい目で接する態度を養いたい。

 名店の墜落を日本人が「食」について再考する機会にすることで、世界に誇るべき日本の食文化を守らねばならない。

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