福田康夫首相は1日からドイツ、英国、イタリアの欧州3カ国を訪問する。7月7日からの主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)を前にしたサミット参加国首脳との顔合わせと、ローマでの国連食糧農業機関(FAO)主催の食糧サミット出席が目的だ。
首相は北海道洞爺湖サミットの議長として、原油高や地球温暖化、食糧高騰など広範な問題について議論をリードしなければならない立場だ。単なる“名刺交換”の旅に終わらせず、しっかりと存在感を示してきてもらいたい。
日本でサミットが開かれるのは5回目だ。8年前の九州・沖縄サミットの際、当時の森喜朗首相は事前に参加7カ国すべてを訪れた。
福田首相も5月の大型連休を利用して英仏独の3カ国歴訪を計画したが、道路関連法案の国会審議のため中止せざるを得なかった。
首相は最初の訪問国のドイツでメルケル首相、次の英国でブラウン首相、最後の訪問国のイタリアでベルルスコーニ首相と、食糧サミットに出席するフランスのサルコジ大統領や潘基文(バンギムン)国連事務総長らと個別に会談する。
サミット議長として最も手腕が問われるのは地球温暖化問題のさばき方だろう。昨年の独ハイリゲンダム・サミットでは「全世界の温室効果ガス排出量を2050年に少なくとも半減させる」との目標を真剣に検討することが合意された。今回はこれをいかに前進させるかが課題となる。
先日、神戸で開かれた主要8カ国(G8)環境相会合の議長総括には先進国が国別総量目標を掲げて取り組むことが盛り込まれ、途上国の行動の必要性も指摘された。しかし、中期目標については具体的な道筋を示すことができなかった。
サミットの際は、中国やインドなどの新興国が参加する会合も同時に開かれる。立場が大きく隔たる米国と欧州勢の間をどう調整し、排出量が急増する新興の国々をどう取り込むか。今回の欧州4カ国首脳との会談は首相が近く公表するという「福田ビジョン」作成の参考になるはずだ。
一方、サミットの緊急テーマとして食糧価格高騰問題が浮上している。首相は3日からローマで開かれる食糧サミットでの演説で、途上国への緊急追加支援のほか、人材育成やインフラ整備、コメ生産倍増などの中長期的な支援を表明する方針という。サミット本番で途上国の共感が得られるビジョン、対策をまとめられるかどうかにも議長の力量がかかる。
首相は今回、日本以外のサミットメンバー7カ国のうちカナダを除く6カ国の首脳との顔合わせを済ませることになる。サミットを建設的で有意義なものにするためには首脳間の信頼関係が重要だ。今回の訪欧を、そうした関係を築くための機会として生かしてもらいたい。
毎日新聞 2008年6月1日 東京朝刊