世界中で読まれている名作小説「赤毛のアン」が誕生して今年で100年。日本にもファンは多く、“100歳”を機にちょっとしたブームが起きている。今年初めに刊行された翻訳文庫本の新装版は飛ぶような売れ行きで、物語の舞台であるカナダ東部のプリンスエドワード島を訪ねる記念ツアーも好評。DVDやミュージカルも人気で、物語の素朴な味わいが見直されているようだ。(横山由紀子)
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【写真で見る】 「赤毛のアン」を演じるのは「亜麻色の髪の乙女」のあの人
赤毛のアンは1908年6月、カナダの女流作家、ルーシー・モード・モンゴメリ(1874〜1942年)が出版した。孤児院から引き取られたアンが、自然の美しい島で感受性豊かに成長する姿を描いた物語で、22カ国語に翻訳され、日本では昭和27(1952)年に紹介された。誕生100年の今年は海外のみならず、日本でもさまざまな企画が組まれている。
アンを日本に初めて紹介した翻訳家、村岡花子氏の文庫シリーズを持つ新潮社は、原文の省かれた部分を補完し、表紙の絵柄も刷新した新装版全10巻を今年2月から刊行。第1巻は重版を経て約8万5000部を発行、前年の約6倍のペースで売れている。「アンシリーズは多くの人が関心を持っているようで、新装版は飛ぶように売れている」と同社広報宣伝部の森史明さん。
アンの洋書を集めたコーナーを設けた大阪市北区の旭屋書店本店でも「問い合わせが多く、売れ行きは上々」という。
一方、旅行各社はアンの島を訪ねるツアーをこぞって組んだ。近畿日本ツーリストはベストシーズンの6〜10月に、アンの家のモデルとなった屋敷や作者の生家などを回るツアーを東西で4つ用意。大阪発ツアーを企画した同社の片岡美帆さんは「カナダ方面の予約状況は例年の2倍。カナダ観光といえば西部のカナディアンロッキーが主流ですが、今年は東部の同島が注目を集めている」と話す。
またNHKは4月から、テレビの外国語講座「3か月トピック英会話」で赤毛のアンを取り上げている。原書を読み進めながら島の魅力を紹介する内容で、4月号のテキストは3年前に始まった同シリーズでベスト3に入る約13万部の売り上げを記録した。
このほか、松竹が3月に全編英語字幕付きの新装丁で発売した映画3部作のDVDも売れ行き好調。劇団四季が5年ぶりに公演中の赤毛のアンのミュージカル(東京)も順調に客足を伸ばしている。
松竹映像商品部の坂崎美子さんは「記念の年に書籍やDVDなどを通じて、名作をたどる人が増えているようです。100年経っても、アンの愛すべきキャラクターは永遠に不滅ということですね」と話している。
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