◎台湾定期便就航 ふるさとに共通の夢描けた
本当に実現すると、どれだけの人が思っていただろう。小松―台北を結ぶ定期便の就航
にあたり、改めて考えさせられたのは、ふるさとの未来に共通の夢を描き、実現へ向けて官民一体となって突き進むことの大切さである。その力強い後押しがなければ北陸に台湾便が就航することはなかったのではないか。
もう一つ、台湾便就航に際して感じるのは、かつての日本統治時代の台湾に巨大ダムを
造った金沢出身の青年技師との不思議な縁である。八田與一技師を慕う県民や議員のグループが毎年台湾を訪問し、李登輝・元総統ら台湾の政財界に太いパイプを築いていたことが見えざる力になった。八田技師が没後六十六年の歳月を越え、北陸と台湾の懸け橋になってくれたような気がしてならない。
私たちが二〇〇五年末、台湾便の誘致を提言したとき、周囲の反応はいたって鈍かった
。行政や経済界の目は、中国に向けられ、就航したばかりの上海便の搭乗率に一喜一憂していた。小松空港が自衛隊との共用空港であることから、台湾便は困難というまことしやかな声もあったほどである。
それでも台湾便の誘致運動は、最重視すべき課題だったのは間違いない。台湾チャータ
ー便は〇五年だけで、小松、能登、富山の三空港合わせて二百便を超える実績があった。上海便搭乗客のほとんどが日本人で、日本から中国へヒト、モノ、カネが流れる構造だったのに対し、台湾チャーター便は台湾から日本への一方的な「入超」だった。上海便より台湾便を重視すべきという主張は、理にかなっていたと思う。自衛隊との共用空港という問題も案ずるより産むがやすしで、さしたる障害にはならなかった。
小紙記者のインタビューに答えた許世楷・台北駐日経済文化代表処代表は、台湾便の就
航を求める地方都市が多くあるなか、小松への就航が決まった一番の理由を「地元の熱意」と語り、八田技師を通じた北陸と台湾の縁の深さにも言及した。週二便でスタートする台湾定期便が新たな刺激となり、ふるさとの魅力にさらに磨きがかかることを期待したい。
◎再就職監視委人事 「法治」にそぐわぬ不同意
政府が衆参両院に提示した国会同意人事案のうち、新設される再就職等監視委員会の委
員について民主党と共産党が不同意の方向という。候補者の適格性を理由にした反対ならまだしも、制度そのものに反対のため委員の選任に同意できないというのは腑(ふ)に落ちない。
内閣府に置かれる再就職等監視委員会は、昨年の国家公務員法改正で設置が決まった「
官民人材交流センター」を監視する機関である。官民人材交流センターで一元的に行う官僚の再就職あっせんに不正行為がないかどうかをチェックする役割を担う。センターが本格的に機能するまでの移行期間(最長三年間)は、監視委員会の承認を条件に引き続き省庁の再就職あっせんが認められており、委員会の責任は大変重い。
民主党などは、人材交流センターを「天下りバンク」などと呼んで設置に反対してきた
ことから、監視委員会の必要も認めないという立場である。いかにも首尾一貫した主張に聞こえる。
しかし、監視委員会は法令で設置が義務付けられたものである。「悪法も法なり」と言
われるが、法律が成立した以上、それを機能させるのが「法治国家」であるはずだ。人事案に反対して、法律で決まった組織・制度そのものが存在しないようにすることは、立法機関の国会自身が不法状態をつくり出しているともいえ、国民の理解を得られないだろう。
また、国会同意人事であらためて問題点を指摘せざるを得ないのは、与野党が昨年合意
した同意人事に関する新ルールである。その中に「人事案が事前報道された場合は原則として政府の提示は受けない」という項目があり、野党側はこれを盾に、事前報道された日銀審議委員などの提示を突っぱねる場面があった。
事前報道で政府の人事案が既成事実化されては困るというのが野党側の言い分であるが
、国会での人事案審議は事前報道いかんにかかわらず的確になされるべきことである。報道の自由の規制につながりかねないこの与野党ルールは見直してもらいたい。