通勤の途中、ささやかな季節感を味わっている。麦秋である。田植え前の殺風景な農地の一角に、透き通るような黄金色をした麦の穂が輝きを増す。
昔は米と麦の二毛作が多かった。この時期になると、辺り一面の麦畑が初夏の風に波打っていた。今ではそうした光景をほとんど見かけなくなった。麦価の低迷や兼業農家の増加などで、麦を作らなくなったからだ。
世界では麦やトウモロコシなどの食料不足が一気に表面化してきた。アフリカやアジアなどの途上国では飢餓が深刻化し、暴動が発生する事態に陥っている。
異常気象による不作、中国やインドなど新興国での需要増、バイオ燃料への転用に伴う供給減など食料不足の原因は複雑にからみあう。穀物生産国では、自国民のために輸出を規制する動きも活発化している。
各国の危機感は強まり、六月三日からローマで国連食糧農業機関による「食料サミット」が開かれることになった。日本は食料購入の資金援助や農業技術の指導などを打ち出す。もちろん対外的な支援は大切だが、国内対策はどうなのか。
日本の食料自給率は39%しかない。世界有数の食料輸入国であり、アフリカなどの飢餓を悪化させる一因になっている。抜本的な対策の一環として、本格的な麦秋を早急に復活させたい。