東京都江東区のマンションで会社員の東城瑠理香さん（２３）が行方不明になった事件で、東城さん宅に押し入った２軒隣の星島貴徳容疑者（３３）が暴行目的の住居侵入容疑で逮捕されてから１日で１週間。警視庁深川署捜査本部は、東城さんを殺害し、遺体を解体してトイレに流したとの供述に基づき、下水道から骨片などを発見した。殺人と死体損壊・遺棄容疑の解明に向けて捜査が大きく動きだした形だが、立件には徹底した証拠隠滅を覆し、いかに物証を収集できるかがカギとなる。
・
【写真で見る】 報道陣の取材に答える星島貴徳容疑者
■徹底した箝口令
警視庁は東城さん宅から星島容疑者の指紋が検出されたことで逮捕にこぎつけたが、殺害などの立証には「物証を積み上げる必要がある」（捜査幹部）。このため、逮捕前から徹底した捜索に踏み切った。
逮捕前日の２４日、星島容疑者宅を捜索し、玄関やリビングの床から血痕を採取し、血液反応を確認した。
床の血痕は、ＤＮＡ鑑定で東城さんのものと一致した。
殺人事件の解明につながる初の物証だった。
この捜索は隠密裏に行われた。マンションの９〜８階のフロア全体が隠れるようにブルーシートで覆い、「マスコミに気付かれないよう、東城さん宅の検証を装った」（同）。
別の捜査員は「徹底的に箝口（かんこう）令を敷かれた」と打ち明ける。
■下水道から骨片
「細かく切断し、骨まで砕いてトイレに流した」「一部は出勤途中に数回にわけ、近くのマンションのごみ置き場に捨てた」
遺体の処理に触れた供述の柱は、この２点だ。江東区などによると、ごみ置き場に捨てられた場合、すでに焼却された可能性が高く、捜査本部は捜索の力点をトイレに流した物証に置く。星島容疑者宅から便器やトイレ、風呂場など水回りの配管も押収。血液反応などを調べたほか、マンションの汚水槽も調べた。
逮捕から３日後の２８日、マンションの北約１００メートルのマンホールに鑑識課員が入り、下水道管に沈殿した汚泥をバケツですくい上げたところ、４〜５センチの東城さんのものとみられる骨片が見つかった。
捜索は半径数百メートルの範囲で２９日未明まで続行。別の場所で、東城さんの名前の一部がローマ字で入ったプラスチック片も発見した。東城さんの所持品のカード類を切断しトイレに流したとみられている。
■１週間で早退２回
「大丈夫だよな。かかわっていないよな」
４月２１日朝、星島容疑者の勤務先の社長（３９）が、東城さん失跡後初めて出勤した星島容疑者を見て軽い口調で声を掛けた。星島容疑者は笑みを浮かべながら答えた。「そんなわけないじゃないですか」
だが、日増しに疲労の色は濃くなっていく。「警察やマスコミがたくさんいるから眠れない」とぐったりうなだれることもあり、１週間で２回も早退した。勤務先からは「普段は持ち歩いていない」（関係者）バッグも押収された。
「殺すつもりはなかったが、警察が捜査を始め、騒がしくなったので殺した」「誰でもよかったが、たまたま隣に住んでいたので襲った。ひとり暮らしなのでばれないと思った」
星島容疑者の供述には二転三転している部分もあり、今後の捜査は「供述で犯行の流れを確定させ、物証で裏付けていく」（警視庁幹部）ことになる。
一方、当初からマンション“内部”での犯行が疑われながら、任意段階での星島容疑者宅の調査や、ごみや荷物の運び出しのチェックが適切だったか、検証も求められそうだ。
【関連記事】
・
江東２３歳女性不明 マンション近くに名前入りプラスチック片
・
江東女性不明 汚水槽から骨片発見、男の供述裏付けか
・
「騒ぎになり殺した」 星島容疑者 指紋消す細工も 江東区の女性不明
・
星島容疑者 主人公願望と不安同居 不可解なパフォーマンス
・
「誰でもよかった」星島容疑者、数日前から暴行計画 江東の女性不明