世界中の人々から見て「日本ブランド」といったとき何を思い浮かべるか??
トヨタとかソニーとかキャノンとか出てくると思うかもしれませんが、アメリカ辺りだとソニーはアメリカの会社だと思っている人がたくさんいますのでそうはなりません。
私の知る限り、彼らが日本ブランドと呼ぶ、或いは日本の力の源泉だ、と思っているポイントは「正確さ+お金に惑わされない正直さ」に尽きると思います。トヨタにしてもキャノンにしてもその日本人の力が製品に反映されているのです。
その意味で今回の吉兆の使いまわし事件はまさに日本ブランドを危機に陥れる一大事件だと考えていいと思います。携帯の電池が爆発するよりはるかに深刻な問題なのです。
よく、日本は労働生産性が悪い、効率が悪い国だと批判されますね。OECDの統計などでも労働生産性が15位とかだったりする。でもちょっと待って欲しいんですよ。それ、お金に現れるものだけで量っている訳で、お互い信用がベースでスムースにお金のやりとりができたり仕事が任せられるという、「信用」というポイントには全く考慮されていません。
例えば手形。これは日本にしかありえません。
100万円を90日後に払うよ、と私が誰かに出す訳ですね。悪い奴がいれば明日換金しちゃえ、なんてことがすぐおきそうですが、みなさん商習慣として90日をキチンと守る。
その代わり裏書をすることで次の人に譲れる。つまり100万円の価値を裏書で生み出していく。これはお互いよほど信用が無ければできない訳で中国はおろか、アメリカでも絶対に通用しない究極の信用システムです。
でもそのおかげで中小企業は資金繰りができる。丸紅とかが出した手形なら安心なので(最近社員が詐欺を働くのでそうでも無いみたいだけどね)丸紅は丸紅で長めのサイトの手形を発行する事で資金繰りが楽になる、というこれをまさに「ウィンウィンの関係」と言うわけです。
こういった信用想像力は手形にとどまりません。
例えば前にも登場していただいたワンさん。
日本に来た当初、ビエラが欲しいと言うので秋葉原に連れて行きました。そして感激して「よし、買おう!!」となった。
でもワンさんは今、そこの目の前で移っている奴(つまり見本で飾ってあってみんながべたべたさわった指紋だらけの商品)じゃなきゃ、だめだ、と言って聞かない訳です。
いやいや、ワンさん、あとで新品のきれいなものがきちんとクロネコで送られてくるからその方がいいよ、といっても聞いてくれない。いま目の前できちんと移っているという確証のある商品を自分で持って帰るのだ、といって聞かない訳です。
なぜなら、中国ではまず電気店が粗悪品にすり替えて送ると言うリスク、そしてクロネコが粗悪品にすりかえるというリスクが存在する。それを避けずになぜ、こんな高額な商品が買えるのか、とおっしゃる訳です。百歩譲って、全てを家に持ってきてすえつけてきちんと移ってからじゃなきゃ、お金は払えない、とおっしゃる。これでは手形は流通しませんね(笑)。
なるほど、ワンさんがレストランでイセエビをご馳走してくれる時には必ずイセエビを持ってこさせて、自分の選んだイセエビのひげを折るのです。そして折った位置を指ではかる。つまり厨房で違うやせたイセエビに摩り替えられるのが日常茶飯事なのでこういうことが必要だと言う訳です。
今回の吉兆の事件をみると日本でもこういうとが必要な気もしますが、ともかく日本ではこういうったことは全て信用ベースで処理され、信用を裏切る事が今まではなかった。
そしてワンさんは日本と中国でビジネスをして、この信用できない、と言う事に払うコストの膨大さに比べれば日本は本当に効率がいい、と考えるようになった、というのです。
それはそうです。いちいち相手の持ってくるものがインチキかどうか、チェックしなければならないという社会的コストは膨大なものです。しかも商売の相手だけではなく、中国人従業員に対しても同じような心配をしなければならない、そのための苦労と精神力は膨大なもので、日本語の出来るワンさんは結局いま上海事務所の20人のうち、18人が日本人になってしまった、と笑っている訳です。
まじめにうそをつかずにきちんと働く、こんな給料ならこの程度の仕事で当然だろう、と言うことが日本人にはない・・・これが究極の日本ブランドです。
アメリカや中国のマクドナルドに行かれたことがありますか?
どっちが客だかわからん態度をとられ、挙句の果てマニュアルにはねーだろー、くらいの焼け焦げたハンバーグにはみ出したレタス。これはドッグフードか、と思うようなものが平気で出てきますね。
私のアメリカ人の友人は初めて日本にきてまずマクドナルドに衝撃を受けた、という奴が多い。 まず、店員がみんな若くてかわいい(まあ、これは単なるスケベだね・・・笑)。更にとにかくにこにこしている。そして何よりレタスがはみ出してないハンバーガーが出てくる。唯一、ボリュームが少ない(日本人向けに少なくしてあるからね。日本ではビッグマックを3つ食う、ってやつが居ます)のが唯一の欠点だと言う訳です。
世界中のサービス産業で忌み嫌われるインド人の話をしましょうか。
なぜ彼らは嫌われるか・・・彼らは伝統的にサービスに対する要求水準が高い。エアラインなどで一番要注意はインド人旅客とよく言われますね。
インド人の親友のラージから教わった思わずうなった、究極の手段があるのです。あまり悪用して欲しくないのですが、要する彼は飛行機に乗ったらすぐにコメントカードを取り寄せるというのですよ。
普通、サービスがひどいとかCAの態度が悪い、とか腹を据えかねてコメントカード下さい、と成る訳。エアライン側もそんなもん出されたらディモーションの対象になってしまうので必死に誤って勘弁してもらう、ってことになる。ところがラージは乗ってすぐリクエストするという。
何もサービスをされていないうちにコメントカードよこせ、と言う訳だからなぜですか、と必ず聞かれますね。そうすると「
いや、いいサービスを受けた時に好かったよ、とコメントしなきゃいけないから先にもらっておくんだよ」、と答えるのだそうです。
インド人、恐るべし。これでは文句のいいようがありませんし、あの客は先にコメントカードを握っていると思えば嫌でもケアせざるを得ないですよね。本当に頭がいい、というとともにラージは「こうでもしないとインド人は絶対に働かないんだよ」、と言う訳。
そして日本のエアラインであればそういう必要は全くないけどね、というのです。僕から見るとJALもANAも不満だらけですが、世界的にはすばらしい水準という事ですね。 事ほど左様に日本人のきちんとしたお金を意識しないサービスと言うものは世界中に認識されており、それは金融機関も同じです。
この程度の給料しかもらってないんだから窓口で1円計算間違ったっていいじゃん・・・という銀行のテラーはいない。アメリカで同じサービス水準を求めたら日本人の倍くらいのお金を払わないとそういう人材は確保できないんじゃないだろうか、と思うくらいですね。
ということで、だんだん麻生さんに似てきちゃいましたけど、日本ブランド、それは信用力、お互いが信頼できる社会力にあるということを再認識して欲しい、と思う今日この頃であります。それだけに許せんぞ、吉兆。
でも僕は付け合せのキャベツはいつも食べません・・・・