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築地移転にっちもさっちも 汚染除去1000億円也

2008年05月31日15時01分

 首都圏の台所・築地市場の移転計画が揺らいでいる。移転予定地から大量の有害物質が検出されたからだ。食の安全をどう守り、1千億円超ともされる汚染除去費をどうするのか。移転の是非論まで再燃し、魚河岸の先行きは迷路の中だ。

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豊洲新市場予定地(手前)=東京都江東区、本社ヘリから、中里友紀撮影

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 築地市場は老朽化を理由に東京都中央区築地から、2013年に江東区豊洲の東京ガス工場跡地への移転が予定されている。敷地は約40ヘクタール。新市場建設の総事業費は3700億円超の見通しという。

 しかし、予定地の土壌から、発がん性が指摘されるベンゼンが最大で環境基準の4万3千倍、毒性の強いシアン化合物も860倍の高い数値で検出された。

 東京ガスによると、豊洲地区では56〜76年、石炭から都市ガスが作られ、その過程で生じたタールで土壌が汚れた可能性があるという。工場は88年に閉鎖された。

 都は当初、移転事業費とは別に、670億円の税金を投入して地下2メートルまで汚染土壌を取り除き、盛り土をするなどして済ませる予定だった。

 しかし、汚染の深刻さに、都の専門家会議は「食の安心・安全を考えると全部をひっぺがすしかない」(座長の平田健正・和歌山大教授)と、(1)予定地すべての土壌入れ替え(2)地下2メートルより深い部分の汚染土壌の処理(3)地下水の浄化、という案を提示。事業費は1千億円超とされる。

 土壌汚染対策法では、工場を廃止する場合の土壌調査や対策は定めているが、法施行前に廃止された工場跡地への対応までは規定がなく、東京ガスが汚染原因者でも除去費を負担する必要はない。それでも同社は「正式に要請があれば対応を考える」としている。

 しかし、東京ガスから漏れてくる本音は、必ずしも都に協力的ではない。ビジネス街として発展し始めた豊洲でホテル用地にする案も一時あったが、都が売却を求めたとされる。「色々と言われるなら、都以外に売る方がずっといい」との声もある。

 仮に汚染除去費を税金でまかなう場合、どこまで支出してもいいのか。「そのバランスが難しい」と都幹部も頭を抱える。

 さらに、計画通り80万立方メートルにも及ぶ汚染土壌を除去した場合、どこへ持って行くのかという問題もある。

 築地市場の移転は20年以上もの間、曲折をたどった。80年代には、新設される大田市場(大田区)への移転案が出たが、「遠い」という業界団体の反対で見送られた。

 都は88年、現地で営業を続けながら12年で建て替える案を作った。だが、営業と並行しての工事は手間がかかり、事業費も3千億円超に膨らむ見通しになった。96年、整備計画の縮小案を示すと、市場内から移転案が再浮上。候補地が比較的近い豊洲だった。

 いまも移転に反対する約200の仲卸業者がつくる「市場を考える会」は土壌汚染問題をきっかけに、「都民が安心できない場所に中央卸売市場をつくるのがふさわしいのか」と訴え、「築地ブランド」維持のために改めて現地建て替えを求めている。

 しかし、もう一つの市場汚染問題がある。築地市場の建材に使われているアスベストだ。当初の除去対象面積は3万平方メートル以上。都は少しずつ除去しているが、一部は施設解体時まで残る。

 対策を話し合う専門家会議は31日午後にあり、協議を重ねて7月に改めて提言をまとめる。都は8月に対策を決める方針だが、石原慎太郎知事の腹づもりはどうか。

 「築地にはアスベストがいっぱいある。早く移転しようとなったが、移転先にとんでもない汚染があった。早く安く改修できる技術がないか、いろんな領域の技術者に意見を聞いている」と話す。(根本理香、野村雅俊)

     ◇

 〈築地市場〉 日本橋にあった魚市場が関東大震災で焼失し、1935年に築地に移った。広さは東京ドーム五つ分の約23ヘクタール。青果も取り扱う。水産物の1日平均の取扱量は06年実績で2090トン、販売金額17億9千万円で世界最大級。しかし、スーパーなど量販店が産地や商社から直接買い付ける市場外流通の増加に伴い、ピーク時の取扱量2800トン(87年)、販売金額26億円(90年)と比べ、いずれも落ち込んでいる。

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