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新しい為替レート

2008年05月31日

 円高ドル安が、国内の製造業にとって再び脅威となってきたといわれる。

 世界の主要通貨が変動相場制に移行して以来、米ドルはどんなに価値を下げても、世界の基軸通貨であり続けている。世界各国の通貨は、いずれも対ドルレートが価値の基準となっている。

 ユーロをはじめ豪ドル、NZドルなどの通貨は00年以降、対米ドルのレートが約2倍になっているが、円は15%ほどしか上がっていない。もしこれらの先進国と同じように円が評価されるなら、円の対ドルレートは60円程度といったところだ。従って、現在の1ドル=100円台半ばの水準は、ドル以外の通貨と比較するなら円安である。

 なぜ、円は評価されないのか。国内政治の混乱、外交問題に対する哲学の欠如や官僚組織の堕落といった我が国の状況を海外から見れば「低迷する三流国家」としか見えないからだ。

 いま世界で起きている原油、穀物などの急速な価格上昇は、投機マネーの流入による資源バブルとしての分析も可能である。だが、こういった価格高騰も円高になれば多少は緩和される。

 このまま「円安」が続けば日本国民は過去からの蓄えを失い、消費生活は貧弱になってしまう。まもなく中国の人民元もレートを上げるだろう。そうなれば家電製品や繊維、食料品などの中国製品も、これまでのような低価格では手に入りにくくなる。

 今日の世界経済は、円とドルだけではなく、他の通貨との関係も見ておかないと判断を誤ってしまう。

 「強い円」の実現には、足腰の強い経済の実力こそ必要だ。政府・日銀は、日本経済の道筋を今こそ具体的に、しっかりと示すべきだ。(樹)

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