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ボケと泪と男と女(完結)
日時: 2006/10/12 21:43
名前: きらら

どうもきららです。前回の経験を経て、書く楽しさを覚えてしまいました。二作目ですね。



それでは本編を・・・。



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「〜♪」


 時は二月下旬。所は三千院家屋敷。まだまだ肌寒さを感じるとはいえ、陽気が草木や小鳥達を優しく暖めている、そんな午後三時。

 あまりにも、無駄にも思える広さの庭をこれもまた陽気に、ご機嫌の様子でその屋敷の執事、綾崎ハヤテは掃除をしていた。本当にポカポカしていて、真冬のこの季節にしては少々暑いくらいだった。

「いや〜、いい天気だな。このままもっと暑くなって・・・春も乗り越えて、三月頃には蝉が鳴き始めたりしたりして・・・。いやーはっはっはっ、そんな事ある訳ないか!」

にぱっとした笑顔でハヤテは誰かに語りかける訳でも無く・・・もはや、一人舞台だ。



 ・・・だが、相方がいなかった彼に、ツッコミを入れる猛者が一人。



「当たり前じゃボケェー!!」

「ぐはっ!」

ふと後頭部に鋭い衝撃を感じたハヤテ。しかし、彼も只者ではなく、打たれ強いのかすぐさま振り返りそのツッコミを入れた人がいるであろう方向を向いた。

「お前、そんな弱々しい一人ツッコミで笑いが取れると思うな!笑いをなめんな、笑いを!」

「・・・って、咲夜さん!?」


そう、一人ボケツッコミをしたハヤテに本気の蹴りで、ある意味『突っ込んだ』のは、ハヤテの主人である三千院ナギの親戚の女の子でナギの親友でもある愛沢咲夜だった。

「い、いつからここに・・・?」

「それや!『い、いつからここに・・・?』じゃ芸人としての覇気が感じられへんわ。・・・まぁええわ。ここに来たのはついさっきや」

「はぁ、そうなんですか」




(・・・別に芸人を目指してはいないんですけど)




とハヤテは言いたかったが、そうすれば咲夜の蹴りが飛んで来るのが目に見えていたので、心の中に呟くだけにして生返事を返した。


(・・・そういえば)


 この日はハヤテは朝から一人だった。ナギとそのメイド、マリアと三千院家の執事長のクラウスは、ナギの唯一の肉親、三千院帝の家に行っており、ハヤテは一人、この屋敷で三日間留守を任されていた。そのハヤテは三日間も一人だというのにサボると言う事はせず、この日もせっせと執事としての職務を果たしていた。


「でも・・・お嬢様達は、おじい様の所に一時帰宅という事でここにはいないんですよ、三日程」


だがハヤテはそこで疑問が一つ。それならば、この少女はここに来る必要が無かったのでは?・・・もしかしたら、知らないのかも・・・。






 ・・・しかし、その予想は『ハズレ』だった。




「知っとる」



「・・・・・・へ?」

じゃあ何でここに?それは当然の質問だった。



「せやから私がここに来たんや。借金執事も、三日間一人は寂しいやろ?」




―――ああ、そう言う事か。僕が一人なのを気にして、こうして咲夜さんは遊びに来てくれたんだ。正直、嬉しいな。一人は慣れていたんだけれども、さすがにこの大きな屋敷でずっと一人では寂しかったから・・・。ありがとうございます、咲夜さ・・・






・・・え?





そこでハヤテの思考がストップした。





それは、咲夜が持ってきた荷物の量。そこに少し大きめのトランク・・・ボストンバックがあった。




―――・・・そ、その荷物の量はいったい・・・?
もしかして、い、家出?ダメですよ、咲夜さん!何の事情があるのか知りませんが、たくさんいる弟妹たちを置いて家出なんて・・・。



「三日間、ここに寝泊りする」



「・・・え゛?」



と、爆弾を投下した咲夜にさすがのハヤテも、漫画で言うでっかい汗マークを描いた。



「・・・え゛?やない!言うたやろ!?そんな反応じゃ天下は取られへん!そういう所を私が鍛え直してやるから、覚悟しとけよ」



―――ひょっとしてそれは、既に決定事項ですか?僕が生まれてくる前から与えられた試練なのですか?それとも猿から人間に進化する際に与えられた神のイタズラなのですか?う・・・でもしょうがないか。お嬢様の為に一流の執事になるには・・・やはり笑いも磨かなくてはならない・・・うん、そうだ!ハヤテ、お前なら出来る!


少しハヤテも壊れてきたみたいだ。



「・・・それに・・・可憐な少女が三日間も・・・一緒にいてやる言うてんのに・・・普通は喜ぶんが筋とちゃうか・・・?」



ハヤテの反応に少しムスッとした咲夜は、少し赤い顔でそう一人ボソっと呟いたが、何故か自分の世界に入っているハヤテには聞こえる由もなかった。















・・・どうやら咲夜には、事情がありそうだ。











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「はい、どうぞ」

「お、サンキュ」

あれから自分の世界で、一流の芸人とは?と脳内会議をしてボ〜っと突っ立っていたハヤテに咲夜は早速(何故か鞄の中に入っていた)ハリセンでツッコみ、復活したハヤテに案内されて居間にて紅茶のアールグレイを呼ばれていた。

「でも・・・咲夜さん、何でまた急に?」

何となく聞きたかった事を尋ねてみる。

「せやからさっき言うたやろ?三日間、寂しくて死んでしまいそうなかわいそうなウサギを、頼りになるねーちゃんが面倒見に来たんや。・・・何や自分、イヤなんか?」

「いえ、嫌って事ではないですけど・・・」

この咲夜の性格上、それ以外にも理由はあるのだろう。ハヤテはそう思って怪訝な顔をしていた。


(・・・そう言えば・・・この事をお嬢様は知っているのかな?きっと・・・知ってるよな・・・?)


さすがに知らないまま、という訳にはいかないだろう、ハヤテはそう踏んでいたのだが。





「知らん。言うてへん」





「――え゛」



本日何回目かの凍結。頭の中では『ビーッ!!』というエレベーターの乗り過ぎを知らせるような警告音が鳴り響く。咲夜は、そんなハヤテにニヤリと笑みを浮かべ、更に言い放つ。


「そっちの方が・・・面白そうだからや!!」


ビシィッ!!という効果音を出しそうな勢いで、咲夜は人差し指を立てた。


「はは・・・ははは・・・・・・・・・・・」



もう、ハヤテには苦笑いをする事しか出来なかった。




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Re: ボケと泪と男と女 ( No.1 )
日時: 2006/10/12 21:48
名前: きらら

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「もうダメや・・・」







「そ、そんな咲夜さん!最後まで諦めたら駄目ですよ!」







「・・・アカン。ウチ、もうダメみたいや・・・」







「そ、そんな事言わないで下さい!皆・・・皆が待ってるんですよ!?」







「もう・・・遅かったんや・・・借金執事・・・後は頼むで・・・」







「さ、咲夜さーーーーん!!」



























『マンマミーア・・・』











・・・情けないマ○オの声が無駄に大きいスクリーンのスピーカーから流れた。


「あかん。また死んでしもた」

「この面難しいですね」

咲夜とハヤテはス○パーマ○オ(三千院家特別Ver)に悪戦苦闘していた。ナギが、任○堂に頼んで特別な面を作らせたゲームで、ちなみにハヤテが言ってた皆はキ○ピオ達。ゲームが得意なナギ専用である為、難しさは飛びっきりである。



「だあああぁぁぁぁ!!!!!何でノ○ノコが火ぃ吹くねん!?」


「うわ・・・テ○サがメンチ切って真正面から襲ってきますよ」


「こっから足場がないやんけ!」


「何でピ○チュウがいるんですか・・・」



二人の会話からすると、常人ではクリア出来なさそうなゲームらしい。本来出る筈の無いキャラクターもモンスターとして登場している。だがそんなゲームもその持ち主の少女の手にかかれば二時間もしない内にクリアしてしまう。

「あんさんの主はスゴイ物持ってんなー」

「・・・僕も驚いています」



というか、呆れていた。






―――ゴーンゴーンゴーンゴーン・・・。





時計の鐘が鳴り、それは五時を知らせていた。


「咲夜さん。僕は夕食の買出しに出掛けて来ますね」

ハヤテはそう言うと、上着を着て出掛ける準備をし始めた。・・・すると、咲夜もハヤテに続いておもむろに立ち上がり上着に手をかけた。

「私も行くで」

そんな咲夜にハヤテは少し慌てる。

「えっ、さっ、咲夜さん。咲夜さんはお客様なんですから、ここで・・・」

「・・・うっ・・・」

「さ、咲夜さん・・・?」

「私を一人にするんか・・・?」

そこでハヤテははっとした。何時も明るいあの咲夜が・・・震えている。背中を向いているが、その震えた声に・・・。

(そうか、そう言えばここには今誰もいないんだ。僕が行けば、咲夜さんは一人に・・・咲夜さんもなんだかんだ言って女の子だから・・・不安なのに・・・僕は何て事をしようとしているんだろう。・・・くっ、僕はなんて馬鹿なんだろう。これじゃ・・・執事失格だ・・・)



「分かりました、咲夜さん。それでは一緒に行きましょう」



いつもならたくさんの妹弟達がいる咲夜だが、本日は誰もいないのだ。常に賑やかだったが、急に一人になるのは不安なのだろう。

ハヤテはそんな咲夜の気持ちを汲んだのか、その言葉を発した。






「ほな、行くでー」





「えっ?」




さっきまでの雰囲気とは打って変わって何時もの咲夜だ。戸惑うハヤテに咲夜は「ニシシシシ・・・」という、東大を目指す浪人生を描いた某漫画の糸目の酒好き女のようなイタズラっ子の笑みを浮かべ、ハヤテの方を向いた。

「ほら、早くせんと日が暮れてまうがな」

とハヤテの腕を掴み咲夜は歩き出した。



(・・・お、女の子って分からないーーー!!!)



引っ張られるハヤテは、そんな咲夜に心の中で叫ぶしかなかった。




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Re: ボケと泪と男と女 ( No.2 )
日時: 2006/10/14 00:03
名前: きらら

13日の金曜日・・・何かありそうなそんな週末いかがお過ごしでしょうか?w


続けます。





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―――ガヤガヤ、ガヤガヤ。



「今日は何にするんや?」


三千院家の近くにある大型デパート『ジャ○コ』に着いた二人。五時半という時間帯は主婦、仕事帰りの人、学生達で賑わっていた。食品売り場を目指して二人は歩いていた。


「咲夜さんは何が食べたいですか?」

「・・・そうやな。カレーが食べたい」

意外と庶民的な注文にハヤテは少し驚いていた。お金持ちのお嬢様だから、フォアグラ!とかキャビア!等を使った料理を想像していたが、違ったみたいだ。

「カレー、ですか。少し時間掛かって、食べるの遅くなりそうですけどいいですか?」

「ええよ」

心なしか、カレーが決まった事に咲夜は少し嬉しそうな雰囲気だ。

「それにしても、何で買出しに来てるんや?」

咲夜の質問も、相手が三千院家の人間ならば当然の質問だった。何故なら、あの広すぎる庭に植物は勿論、魚、動物等も全て調達できるのだ。証拠に、マリアは池で魚を釣っている。

「気分ですよ、気分♪」

「・・・はあ?」

「今まで僕は借金取りに追われてて、物を買いに行くなんて事はできなかったんですよ。・・・まあ借金取りがいなくても、物を買うお金もなかったですけどね」

「・・・」

「だから、こうして外に出られる事が結構楽しみなんですよ。まあ僕にとってはすごい贅沢な楽しみですけどね」

そこで咲夜はハヤテの横顔を見た。





―――そう言えば・・・コイツも苦労してるんやな。小さい頃から追われて、自分の好きな事も出来ずに・・・。





「ですから、お嬢様にはすごい感謝してるんですよ。今ではもう、毎日が楽しくて楽しくて・・・って、咲夜さん、僕の顔に何か付いてますか?」

そこで咲夜はずっと自分がハヤテの顔を見ている事に気付いた。ハヤテは、不思議そうな顔をしている。



目が合う。



咲夜は急に恥ずかしくなったのか、はっとして目を逸らした。

「あれ、咲夜さん風邪ですか?顔が赤いですよ」

ハヤテは手を咲夜のおでこに当て、体温を確かめた。

「うっ、ウチは大丈夫や!ほな行くで!!///」

とその手を掴み、咲夜はさっさと歩き出した。




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「ルーはこれでいいかな・・・っと」

「これもいるな」

と咲夜はハヤテの持っている籠にう○い棒をどっさり入れた。

「さ、咲夜さんこれは・・・?」

「なんや、知らんのか?たこ焼き味めっちゃ美味いで。阪神の血が騒ぐ味や!」

「いや・・・知ってますけど」

お金が無かったハヤテにとって、1本10円という値段に随分と助けられたハヤテ。最近は食べてなかったのだが、久しぶりに食べたいなという欲求も出て来た。

う○い棒は別にいいのだが、問題は咲夜が『箱ごと』持って来た事だった。




(な、何故こんなに?しかも全部たこ焼き味!?)





「今日はこんなもんか」

「きょ、今日は?」

まさか一日だけでこれ全部食べると言うのか?と叫ばんばかりの量だった。



(・・・まぁ・・・いいか)


あっても困らない物だったので、ハヤテはそのままにしておく事にした。






「さて、そろそろ行きましょうか」

「ん」

買いたい物を全部籠の中に入れ、二人はレジに向かおうとすると・・・。












「あれ・・・ハヤテ君?」



「げっ、あの時の執事」



ハヤテの耳に聞いた事がある女の子の声が飛び込んできた。







「あ、西沢さん。・・・と、一樹君・・・でしたね」







そこには普通のうっかり姉弟が同じく買い物籠を持ってレジで並んでいた。


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Re: ボケと泪と男と女 ( No.3 )
日時: 2006/10/14 21:58
名前: きらら

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「ハヤテ君・・・」



(・・・もしやこれってチャンス!?運命!?ディスティニー!?こんなお買い物中に偶然出会って、そっから何でか知らないけどデートが始まって、それを宗谷君達に見られて、周りの皆公認のカップルになって・・・)








恋する乙女は暴走中。目をグルグルと回し始めた。心なしか、息遣いが少々荒くなっている。



「またねーちゃんの妄想癖が始まったよ・・・」


弟はそんな姉を見ながら呆れていた。



「ハヤテ君とお買い物・・・納豆と、ポ○チとコ○コーラとお買い物・・・

 どれとお買い物するかは・・・」






一人でブツクサ呟く歩(少々壊れ気味)に特にツッコミを入れる者も無く(というか、気味が悪くて入れられない)数秒が経過。













「自由だあああぁぁぁぁぁ!!!!」











叫び、そして何故か片手を上げてサングラス掛けた某お笑い芸人(サ○ンナの片割れ)如く。上げた手は籠を持っていた方の手であった為、中に入ってた物は全て落ちた。それはまるで、天空の城の某アニメの「見ろ!人がゴミのようだ!」のワンシーンのように。




「(何故犬○ヒロシなんだ――――!!??)」




「うわっ、いきなり何なんだよねーちゃん!?」




余りにもその声が騒がしかった為、周りの視線はこの集団に向けられた。




「・・・す、すみませんすみません・・・」



そこでやっと我に返った歩は周りにペコペコと頭を下げて、それから落ちた物を拾い集めていた。






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ジ―――――。



「うんしょっと・・・」



ジ―――――。



「よしこれで最後・・・っと!って、うん?」



歩は視線を感じた。その方向・・・ハヤテの後ろを見ると、可愛い部類に入るであろう少女を見つけた。

「あれ・・・この子は誰かな?」

歩は咲夜の姿を見て、ハヤテにそう尋ねた。



「ああ、愛沢咲夜さんと言って・・・」



「綾崎ハヤテの彼女や」



咲夜はそう言い、自分の腕とハヤテの腕を絡ませた。







「「「えっ!?」」」







そして腕どころか、身体全体をハヤテに押し付け。


「えっ、ちょっ、咲夜さん!?」

さすがのハヤテも慌てふためいた。

「ちょっ、咲夜さん!離れて下さいよ!」

「何や自分、あんなに激しかった夜をナシにするんか?・・・初めてやったんちゅーのに」

「お前・・・ナギさんといい、やっぱりロ○コンだろ」

「さ、咲夜さん!ありもしない事を言わないで下さいよ!ほら、西沢さんも・・・?」



ハヤテは助け舟を出したが、歩はじっと動かない。先程とは逆に、今度は歩が咲夜の顔を見つめていた。




「ええええええええええええぇぇぇーーーーーー!!!???」


































そして女の子の絶叫。


































「関西弁――――――――――――!!!!????」





「「「ってそっちかい!!」」」




その騒ぎで四人は再び注目を浴びる事になったのは言うまでも無い。



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Re: ボケと泪と男と女 ( No.4 )
日時: 2006/10/15 16:26
名前: きらら

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「で、結局の所その子は・・・?」

やはり歩も女の子だろうか。想いを馳せる人に付き添っている人を見て気にせずにいられなかった。

「愛沢咲夜さんって言いまして、お嬢様の親戚であり、又親友なんですよ」

「まあ、おねーさん的存在やな」

「へーそうなんだ。でも・・・何でハヤテ君と一緒に?」

「同棲し始めたんや」

「「「え゛っ?」」」

再びの咲夜の爆弾発言で凍結する三人。ハヤテは慌てふためき、一樹の方はジト目でハヤテを見る。

「咲夜さん!?誤解を招くような言い方はしないで下さいよ!」

「だってそっちの方が面白いやん。その証拠に・・・ほら」

そして凍結三人目の少女は・・・。







「あわわわわわわわわわわ・・・・・・・・・」






前項でも取り上げた東大ラブコメディーの某漫画の主人公に好意を寄せる料理好き少女如く、歩は目をグルグルグルグルグルグルグルグルグル・・・(以下略)と回していた。





「もぉー・・・、ほら西沢さんも目を覚まして下さい」

「ク○リンの事か・・・ってハヤテ君?」

「「「(何故にド○ゴンボール!?)」」」

意味不明の言葉を発しながらも現実に回帰してきた歩。どうやらさっきは咲夜の冗談だとようやく分かったようだ。




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外は既に日の光が届かない程暗くなり、買い物も終わった四人は帰路に着いていた。



「でも・・・何でハヤテ君と?」

(一緒にいるんだ?このガキ・・・)


















とは『思わない』のが歩で、ただ二人でお出掛けという状況を羨ましがっていた。



「実はお嬢様が三日間いないので、留守番なんですよ」

「へえ・・・そうなんだ」

それに答えたのはハヤテで、歩はそう返事を返しつつまた別の事を考え始めた。




(えっ?じゃあ今あの大きな屋敷にはハヤテ君だけって事?三千院ちゃんがいない今が・・・チャンスって事かな?)



恋する乙女ならではの考え。・・・だが。



「そう言えば、何であんさんはそれに付いて行かなかったんや?」

(・・・そういえばこのコがいたわ・・・)



とは思いつつ、その少女の質問に同感を覚えた歩。



「えーと・・・実はですね・・・」



そこからハヤテは昨日の事を振り返った・・・。




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Re: ボケと泪と男と女 ( No.5 )
日時: 2006/10/15 20:37
名前: 条夜
参照: http://hinayume.net/hayate/subnovel/patio.cgi?mode=view&no=479

こんばんは、条夜です。
きららさんが新作を書いていたことに気づけなくてすみません!!
まず、おめでとうございます!!そして、ありがとうございます!!
僕はきららさんのファンですから嬉しい限りです。
今回は感じが180度違いますが、面白いです。
ネタ自体が面白いですし、ここでそのネタをもってくるかという面白さもあります!!
しかし、気になる点が1つ・・・
やはり咲夜の言葉使いですね。
買い物に行くというときも「ウチ」ではなく「私」になっていますし。
やはり関西人というのは、やはり書きにくいものなんでしょうか?
けど、咲夜のキャラや動きはピッタリで面白いですが!!
では、これからも応援しておりますので頑張ってください!!
寒いので風邪などひかれぬようお気をつけください。
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Re: ボケと泪と男と女 ( No.6 )
日時: 2006/10/15 23:34
名前: シグマ

こんばんはきららさん。シグマです。
遂にきましたきららさんの新作!!もっと早くに気づいてたんですが、ある程度進行しないと書けない性質で・・・(いまさらコメントの言い訳じゃないよ。イヤほんと)
今回はギャグ、ラブ、その他を空気中の窒素、酸素、その他の比率位でしょうか。咲夜・西沢姉弟と早速ギャグ要員が出てきて期待大!!ナギがいない間に何やらかし、歩はどんな波状を広めていくんでしょうか。涙は悲しみか嬉かツッコミにやられ死ぬ直前の痛みか!!?

さて、条夜さんも言われていることですが、咲夜の一人称が気になりました。原作でも咲夜の一人称ってコロコロ変わってるんですよね。「私」も確かに使ってます。1,2回・・・。ただ圧倒的に「ウチ」「ワイ」「ワシ」が多く、どんなときにどの一人称を使っているのか?は万人が研究の余地大幅にありだと思います。

そこだけで、あとは動き方も咲夜って感じですから、楽しみです。ないと思いますけど、17,18の線は越えないように。きららさんがここに居られなくなったら悲しいですよ?
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Re: ボケと泪と男と女 ( No.7 )
日時: 2006/10/16 23:24
名前: きらら

こんばんは条夜さん!こんばんはシグマさん!

咲夜の一人称の事なんですけど、実は僕も悩みました。登場した回だけは「私」を使ってたから・・・。まあ御都合主義に任せていこうかなとw

『17、18の線は越えないように』との事ですが、自信がありません(笑)というのは冗談で、一応人としての節操は持ってます(つもりです)w

そしてコメントありがとうございますー!


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―――――ナギ達が出発する前日の夜。


「・・・なあ、ハヤテ?」

夕食を摂り終え、居間にて寛いでいたナギがそうハヤテにふと尋ねた。

「はい、何でしょうか?お嬢様」

「私の事・・・どう思う?」



「・・・へ?」



とは言いつつ、何の事だかさっぱり分からないハヤテ。

「私の事、どう思う?と聞いておるのだ」

だが・・・やはり分からないハヤテ。そのナギの顔は真剣そのものだった。・・・が、それはハヤテには不機嫌そうに見えた。

(僕・・・また何かしちゃったのかな?でも・・・はっ!あれは!)

ふとナギの持っている物・・・漫画本に気付いた。

(そうか・・・またお嬢様漫画を投稿して・・・かすりもしなかったんだ!・・・そうか、前にもこんな事があって、その時は人生経験が足りないという漠然としたアドバイスだけで・・・今度は僕が的確に言ってあげないと!)

そこでハヤテはナギの為を思って言葉を探した。




一方、ナギが手にしていたのは恋愛の漫画。素敵なハッピーエンドに胸が一杯になって、『私もこんな恋愛がしたい』という気持ちだった。そんな漫画のワンシーン。



『私の事・・・どう思っているの?』

『・・・好きさ。これ以上無い位に。君さえいれば、僕はそれで十分さ』

『本当?』

『本当さ』

『本当に本当?』

『本当に本当さ。もう君を・・・離さない』

『嬉しい!』

そしてお互いを抱き締め、その背景の夕日はお互いを祝福するかのように綺麗に光り輝いていた・・・。



(よし、この手でハヤテとハッピーエンドだ!)

そしてナギは冒頭の質問をした。





「お嬢様の(作品の)事?」

「そうだ」

「・・・そうですね。面白いと思いますよ」

「・・・は?面白い?可愛いとかじゃないのか?」

「(ああ、あの星のキャラクターか・・・)はい。面白いです。まあ『ある意味』では可愛いと思いますね」

「あ、ある意味?」

「はい♪(ブリトニーちゃんが)名前の割にはゴツいし、意味不明な所が分かる人には分かると思います」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「何から何まで『支離滅裂な所』がとっても面白いと思いますよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「後は・・・そうですね・・・ってお嬢様、どうしました?」

「ハヤテのバカアアァァーーーーーー!!!!」


バシーン!!(何があったかは擬音で想像して下さい)


「な・・・何故・・・?」












「・・・という事がありまして、お嬢様から付いて来るなと言われたんですよ」

そしてシクシクと落ち込むハヤテ。

「「「へえ・・・(汗」」」

三人は、そんなハヤテに掛ける言葉が見つからなかった。







「じゃあ私達、こっちだから」

ある交差点に差し掛かると、歩と一樹の住む団地が見えていた。

「あ、はい。西沢さん、一樹君、さようなら」

「ほな」

「おう」

「またね、ハヤテ君、咲夜ちゃん。おやすみなさい」

帰り際に歩は思った。―――まだまだチャンスはあるよね、と。

そして自宅にて、風呂上がりの楽しみのコーラを開けたら先程落とした衝撃のせいか、ブシュッ!と噴き出して衣服にかかり、また風呂に入る羽目になったのはまた別の話。


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Re: ボケと泪と男と女 ( No.8 )
日時: 2006/10/22 13:30
名前: きらら

「ただいま戻りました―――って誰もいないか」

「腹減ったなぁ」

ハヤテ達が屋敷に戻ると、既に時刻は七時を周ろうとしていた。

「あっ、もうこんな時間だ!急いで夕飯作って来ますから、咲夜さんは待ってて下さい!」

と、ハヤテはピュ〜っと風のように調理室に向かって行ってしまった。

「んな!ちょいと待ちぃな!・・・ってアイツ速いなぁ」

そして咲夜はその場で置いてけぼり。辺りは物静かに、何も聞こえない程・・・否、シーン・・・と言う音さえ耳にするような気がする程静かだった。

「あーあ、行ってもうた。こっちは何もする事が無いっちゅーねん、つまらんやんかぁ・・・」

独り言をブツクサ呟く咲夜。この広すぎる屋敷を探索すると言う手もあるのだが、知り尽くしている咲夜にとってその選択肢は無かった。



「あ―――」



と、ふと咲夜の頭の上の電球が光った。・・・どうやら何かを思いついたようだ。


「せや!アイツの部屋にまだ潜入した事なかったわ!女顔しとるが、所詮男や。『えっちぃ本』の一つや二つは持ってるやろ」

実に嬉し楽しそうな『ニタァ〜』っという顔をして、アイツ・・・ハヤテの部屋に向かった。






ハヤテの部屋の前まで来ると、咲夜は『コホン』と一つ咳払い。・・・別にする必要はなかったのだが、その顔は宝を目の前にした盗賊の顔付きだった。

「むっふっふ・・・、邪魔するでぇ」

その忍び足で入って行く様子は、傍から見ればまるで空き巣のようだ。



「・・・なんや、アイツ綺麗にしとるんやな」

入ってみたのはいいが、意外と綺麗な部屋に咲夜は少し落胆していた。綺麗と言うか・・・何も無い。ベッドと、机と、小さい本棚とタンスと・・・小さいテレビだけだ。ビデオデッキも無く、壁にはポスターの一枚さえも見当たらない。まあ、それも当たり前といえば当たり前で、ハヤテは自室には寝る事以外殆ど入らないのだ。


「デッキが無い・・・という事はエ■ビデオも無い・・・となれば」


咲夜の目がキュピーンと光った。

「そこや!」

と本棚に飛び付き、本を洗いざらい全て放り出す。しかしそれは全て白皇学院の教科書で埋め尽くされていたらしく、お目当てのような本は見当たらなかった。

「ちっ、じゃあタンスの衣服に紛れ込ませてるんやないか?」

そしてタンスを開けて上から一段目・・・ハヤテの下着類が入っていた。

「///!!」

初めて間近で見る男物の下着にドキドキしながらも、手を伸ばそうとする・・・が、やはり咲夜も女の子か、少し躊躇われた。

「えーい、ままよ!///」

そしてがばっと掴み、中身を全て出す。・・・しかしここにも何も無かった。

「・・・///」

そして赤い顔のまま無言で仕舞い、続けて二段目、三段目と同じように調べた。



「・・・アイツ、何も持っとらんのか?」


調べ尽くした咲夜は、その事実に肩を落とした。・・・だが、それにまた少し嬉しさを感じたのも事実。いやらしさが少しも感じられない部屋に、咲夜は何故かホッとしていた事に気付いた様子だった。

だが。

「・・・まさか女顔だからと言って、ほんまに男好きなんか?」

と言う疑念もちょっぴり抱いてしまった咲夜だった。

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Re: ボケと泪と男と女 ( No.9 )
日時: 2006/10/21 23:07
名前: きらら

「腹減った〜」

家宅捜索(?)を終えた咲夜が調理室に向かった頃、時刻は七時半を過ぎていた。

「いざ進めやキッチン〜めざすはジャガイモ〜♪」

ふと中から、ご機嫌そうな歌が聞こえて来る。

「ゆでたら皮をむいて〜グニグニとつぶせ〜♪」

そのメロディと歌詞・・・聞いた事があった。確か、それは・・・。

「さあ勇気を出し〜みじん切りだ包丁〜♪」

確か発明好きの小学生が主人公のアニメ・・・。

「タマネギ目にしみても涙こらえて〜炒めようミンチ 塩・コショウで〜混ぜたならポテト 丸く握れ♪」

でも確かその歌は・・・。

「小麦粉・玉子に〜パン粉をまぶして〜♪」

カレーではなくて・・・。






「揚げれば『コロッケ』だよ〜♪」






「キャーベツーはどうしたー・・・ってアホか―――!!」

そしてハヤテの後頭部に咲夜の蹴りが炸裂。

「ぷろっ!?」

意味不明な悲鳴を上げて、思わずカレーの鍋の中に頭を突っ込みそうになったが、さすがは執事だろうか(関係ありません)あと少しの所で堪えた。

「キ○レツのお料○行進曲って自分、カレー作っといてコロッケの歌かいな!」

「いつつつ・・・あ、咲夜さん。もうすぐできますよ」

何故か蹴られた事に一つも文句も言わず、ニコッと笑いかけて経過を報告するハヤテ。そして咲夜の鼻にカレーのいい匂いが香った。その匂いは咲夜の空腹度を上昇させるには十分過ぎた。

「待ち切れんて〜」

とハヤテの隣に立ち、鍋の中を覗き込む。・・・いい色だ。

「おお、うまそうやな」

「ハヤテ特製ですからね。その辺のカレー屋さんには負けませんよ」

自信を持って、エヘンと胸を張るハヤテ。エプロンを掛けているその姿は、執事と言うよりもメイド服の方が似合っていそうな程、彼の顔にマッチしている。何となく、何故ナギやマリアがハヤテに女装を勧めるのか分かった気がした。

「・・・ん?どうしました?咲夜さん」

「自分、ほんまに女顔しとるなー」

そしてハヤテの顔に手を伸ばし、自分の顔を近づけてまじまじと見る。

「えっ、さ、咲夜さん・・・」

目の前の年上の小さな顔が赤くなっていくのが分かった。

「なぁ・・・」

そして条件反射からか、ハヤテは目を瞑った。

「えっ・・・・・・・・・・・・・・」








―――ムギュ。



「くくく・・・あっはっは・・・」

「・・・んあ?」

ハヤテが感じた感触は・・・鼻にだった。

摘んでいる咲夜は、笑いを堪えきれない様子だ。相手が執事とはいえ、年上の男を手玉に取る事は咲夜にとって面白味がある物らしく、満足気な顔をしていた。

「どーして目ェ瞑ったん?」

「え・・・だってそれは・・・咲夜さんが・・・」

「ウチがどうしたん?」

「あう・・・」

「あはは、ほんまに可愛いやっちゃなー」

「もぉ・・・、できましたよ。さっ、食べましょう!」

「おお、さよか」

二人で用意して、席に着き食事を摂る事にした。
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Re: ボケと泪と男と女 ( No.10 )
日時: 2006/10/22 00:42
名前: シグマ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・っっっっぷっっっくくくくくあっはっはっはっは。
逆に器用だよハヤテ。ポテト丸く握れとか歌いながら灰汁取ってるの?揚げればとか言って
おきながら煮込んでるの?サイコーーー。っっっくくくっくくくくっくっくっく。
いやー。盲点を突かれました。しかし、このネタをやるにはこの二人でないとダメでしょう。
ナギやマリアやヒナだとなんとも言いがたい空気になったり・・・・・でも咲夜だから多分最高級の笑顔で♪キャベツ〜は?って・・・・くあぁぁ〜〜〜

この言葉だけは残したい。きららさんGJ。
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Re: ボケと泪と男と女 ( No.11 )
日時: 2006/10/22 13:28
名前: 乖離

どうも。乖離です。

「ボケと泪と男と女」楽しんで読ませて頂いています。
このスレに感想を書き込むのは初めてということになるのでしょうか?‥‥‥すみません、いつも拝見させて頂いているというのに。
何というか、作品のクオリティが高いので、僕なんかが感想を書くのは少し憚られたんですが‥‥
ここまで面白く、上手な作品を目にして何も残さないのは失礼だと思い至りました。
以後これからは、可能な限り感想を残そうと思います。
うん、こういうのは何よりきっかけが大事ですからね!

さて上記にも残しましたが、きららさん‥‥以前からもそうでしたが、文章のクオリティ高すぎですよ!
物凄く自然で、情景が目に浮かぶようです!
どうしたらこんな綺麗な文が書けるんですかね〜、不思議です。
ハヤテの言動は、とても原作に近くて生き生きしています。
いや、原作でキ○レツのお料○行進曲を歌うかは別にして‥‥(笑
そして何より、咲夜のキャラがめっちゃ生きてます!
そこはもはや、感動の領域です!
これからも二人の凸凹コンビを推奨します。

それではこれを契機に二人の間に親交が結ばれることを、願いつつ。
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Re: ボケと泪と男と女 ( No.12 )
日時: 2006/10/23 17:18
名前: きらら

シグマさん>ありがとうございます。あのエンディング、ハヤテがやっても違和感ないなぁと思ったり思わなかったりw

乖離さん>ありがとうございます。って、乖離さん、褒め過ぎです。乖離さんの作品の方が、学ばせられる事はたくさんあるんですよ〜w

みなさん、ありがとうございます。乖離さんの言葉を少しお借りしますが、みんなの間に親交が結ばれる事を、願います。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




「おお、うまいやんか!」

「はは、ありがとうございます♪」

「具も丁度良い大きさに切られ、そして何よりもこのルー!市販のカレールーにプラスαほんのり甘さが・・・これは何かの果物か!?丁度いい具合にマッチして・・・








 う――――ま――――い――――ぞ―――!!よくやった、ヨ○イチ君!」




「って何所の漫画の王様ですか・・・」

某料理漫画の王様如く叫んだ咲夜にハヤテは大袈裟だなぁと思いつつ、おいしいと言ってくれた少女にハヤテは感謝した。

「おかわりや!」

「はいはい」

余程おなかが空いていたからなのかも知れないが、自分の作った料理を平らげていくのを見て、ハヤテもとても充実感を感じた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「なあ、明日はどうするん?」

口の中で咀嚼しているジャガイモを飲み込み、咲夜はそう口を開いた。

「明日・・・土曜日ですね。学校もお休みですから、特にする事も無いのですが・・・咲夜さん何所か行きたい所とかあります?」

「そうやなぁ・・・ってなんや、デートに誘ってんのか?」

「!!」

そこで思わぬ咲夜の攻撃に、ハヤテは思わず口の中の物を飲み込み損ねた。

「ごほっ・・・ごほっ!」

「ホレホレ、水」

咲夜はニヤニヤしながらハヤテに水の入ったコップを手渡すと、ハヤテはそれを掴み一気に喉に流し込んだ。

「ふぅ〜、助かった・・・」

詰まったからなのかは分からないが、ハヤテは赤い顔をしていた。

「デートに誘ってるんか?」

それに咲夜は追い討ちをかけるかのようにハヤテに更に問い詰める。しかし、次の言葉は咲夜を豹変させるのに十分だった。

「咲夜さんと一緒だと・・・お嬢様と一緒のような気がして・・・」



―――ピキ。



「何だ?今の音は・・・」


―――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・。



「き、気がどんどん膨れ上がっていく・・・!」



まるで気が感知できる達人のように、この雰囲気が只者ではない事を感じ取ったハヤテ。それは・・・目の前の少女から発せられていた。

「よし、箸を置け〜」

何故こんな雰囲気になったのか分からないハヤテ(自分のせいです)は、そんな咲夜に圧倒されて箸を置いた。

「ひと〜つ。愛沢家、家訓」

「・・・」

「繰り返せ。ひと〜つ。愛沢家、家訓」

「ひ、ひとーつ。あ、愛沢家、家訓・・・」



(あれ・・・これってめ○ゃイケ?)



テレビか何かで見た事がある状況だ。



「頼りになるねーちゃんを子供扱いする奴は・・・」

「た、頼りになるねえちゃんを子供扱いする奴は・・・・・・・・・・・・」







「借金が二倍に膨れ上がってしまえ」

ヒュ〜〜〜チュド―――ン!

爆撃に為す術無しのハヤテ。『借金』という言葉をもう聞きたくなかったハヤテにとって、痛かった。そしてすかさず咲夜はハヤテの後ろに回り込み。



―――ギュっ。



「ぐえっ」

チョークスリーパーを決めた。意外ときつく締められている。その強さに、ハヤテの顔中に血が上ったのか、顔が一気に赤くなった。

「さ、さぐ、やさん、くるじ・・・び・・・」

「言うたやろ、子供扱いすんなって」

苦しさに、首に巻かれている咲夜の腕を何度もタップするが、咲夜は力を緩めない。

「デートやろ?」

「さ、ぐやさん・・・む、胸が・・・」

「デートやろ?」

再び望む答えを催促する咲夜に、ハヤテはもはやブンブンと頷くしかなかった。

「はぁ、はぁ・・・」

「もぉ・・・またウチをそんな風に馬鹿にしおって・・・」

力を抜いたのだが、体勢はそのままの咲夜は、ハヤテにガッカリしたような雰囲気だった。

「はぁはぁ、咲夜さん・・・、気を悪くさせて、しまったなら・・・、申し訳、ありません・・・」

ようやく解放されたハヤテは、息を整えながら一つ一つ言葉を紡いだ。

「お嬢様と一緒で、とても楽しくなるだろうなって意味で言ったんですよ」

「・・・え?」

「それに・・・」

そしてハヤテは赤い顔のまま俯いて、続いて口を開く。

「前の温泉の時にも言いましたが、咲夜さんの事、子供扱いしてませんよ・・・。その・・・女の子なんですから・・・」

「・・・」

「その・・・、む、胸の感触が・・・」

「///!!」

背中に感じている咲夜の身体に、ハヤテは更に顔を赤くしており、何所を見ればいいのか分からない状況のようで、視線を泳がせている。咲夜の方も、先程は気にならなかったが密着した事に少し恥ずかしさが込み上げてきた。さすがに咲夜も女の子。咄嗟に離れ、両腕で胸を隠す仕草をして、ジト目でハヤテを睨む。

「や、そういう意味じゃなくて!その・・・何と言うか・・・」







 しかし、自分で言った言葉に慌てているハヤテを見て、咲夜にはもうハヤテに怒る気などなかった。ちゃんとこうして話してくれるから。慌てるって事は、女の子だって意識してくれている証拠だろうだから。咲夜はそんなハヤテにクス、と笑い。

「スマンな」

と、色々な意味を込めて一言だけ告げた。

そしてハヤテはその言葉に俯いていた顔を上げて、咲夜の顔を確認した。・・・笑っているその顔にハヤテはとても安堵した。

「いえ、こちらこそすみませんでした。それでは咲夜さん、明日の『デート』は何所へ行きましょうか?」

ニコッと笑いかけるハヤテに咲夜は少しだけ頬を染めて。

「そうやな〜――――」

そして食事を再開しつつ、翌日の予定の話に花を咲かせた。


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Re: ボケと泪と男と女 ( No.13 )
日時: 2006/10/24 02:52
名前: だれん◆/OSILN3kj3k

咲夜! 咲夜! 咲夜!
あ〜咲夜、可愛いなぁ(o´∀`o)


咲夜が好きなので、読んでてすごく楽しいです。

・・・感想を文章にするのって難しいですね。
短く簡単な表現しか出来ないのが残念ですが、
続きを楽しみにしている気持ちは、たぶん誰にも負けません。

ワクワクしながら、次の更新を待っております。




――ツッコミ――

三千院家のあると思われる練馬区には『ジャ○コ』はありません。




たぶんなかったはずです。
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Re: ボケと泪と男と女 ( No.14 )
日時: 2006/10/25 00:07
名前: きらら


だれん◆/OSILN3kj3kさん、はじめまして!

・・・そうか無かったか〜、田舎者だから・・・w でもツッコミありがとうございます!

またよろしくお願いしますね♪ 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「ごちそーさん」

「はい、お粗末さまでした」

同時に食事を終えて、ハヤテは片付けに入った。

「・・・ふぅ」

ハヤテが淹れた、熱いお茶を少しずつ吟味しながら、喉の奥に流し込む。視線は・・・後片付けをしているハヤテの背中にあった。

「・・・よう頑張るな―」

その声は自分にしか届かない程小さな声で呟く。本当に、年上だが自分の執事よりも遥かに若い少年の一日の働きに感嘆していた。もし自分が誰かに仕える身だったならば―――こんなにも一生懸命になれる自信は無かった。

・・・もし、ハヤテの執事だったならば―――。





『ハヤテ様、お帰りなさいませ』

『あ、うん、ただいま』

『もう夕食の準備が出来ていますが、先に夕食を摂られますか?お風呂になさいますか?それとも・・・

 ア・タ・シ?』





「!!///」

そこで、咲夜は自分が何を考えてしまっているのだろう―――と、顔を赤くして自問した。

(アホかウチは!これじゃ新婚ホヤホヤのカップルの会話やないか!///)

だが幸い、背中を向いてせっせと食器洗いに励むハヤテに赤い顔を見られなくて済んだようだ。




―――それにしても。咲夜は考えた。

(ウチ・・・アイツの事、借金執事としか呼んでへんな。こう呼ばれて・・・アイツもいい気分じゃないやろうに、イヤな顔一つせえへん)

少し前から気になっていた。果たして『借金執事』でいいのだろうか、と。彼の現在の状況に合ってはいるが、それを名前を呼ぶ度に嫌味たらしく言うのはどうなのだろう。もし自分が彼と同じような状況なら・・・と考えると、あまり嬉しい呼ばれ方ではない。だがハヤテは、自分がそう呼んでも気にした様子も無く普通に接してくれる。

「――やさん・・・」

だが、急に呼び方を変えるのもどうかと思うのだが。

「――くやさん」

何か、きっかけが欲しい。

「咲夜さん・・・?」

「うーん、どないしたもんやろか・・・?」

「咲夜さん!」

「ふおっ!?」

気付けば、考えていた人の顔が目の前に広がった。突然の事で驚き、ドキドキドキドキ・・・と心臓の動きを中々抑える事ができない。


―――そして。



「どうしたんですか?それよりお風呂が沸いていますが、入ります?」



(な、なぬっ!?)



咲夜の思考はストップした。何故なら・・・。



『お風呂が沸いていますが、 “一緒に”入ります?』

と、動揺していたせいか、そういう風に聞こえてしまった。最も、ハヤテはそう言ってはなかったが。

「・・・そ、それはアカンて!まだ早い!///」

「・・・はぁ、まだ早いですかね?」

ハヤテは時計に目をやるが、時刻は八時半になりつつある。入浴の時間なら、至って普通のような気がするんですけど、と首を傾げているようだ。

「と、とりあえず今日のところは一人で入るさかい、ほな!!」

そして咲夜は脱兎如く急いでその場を後にした。

「???」

その場に残されたハヤテは、ただ頭の中に?マークを浮かべているだけだった。


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Re: ボケと泪と男と女 ( No.15 )
日時: 2006/11/06 00:26
名前: きらら

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

―――カポーン。

まるで大型銭湯のような大きさの浴室で、丁度良い温度の湯船に肩まで浸かりながら、咲夜は先程の言葉が頭の中で響き渡る。

『一緒に・・・僕と入りませんか?』(←違います)

(アイツ・・・あんなに積極的だったか?///)

赤い顔も半分湯の中に入れ、ブクブク・・・と泡を作る。

(まぁそれはそれでうれs・・・ってアホか!)

一瞬不埒な事を考えてしまったが、ポカポカと自分の頭を叩きその考えを叩き壊した。

・・・でも。

(アイツから見たら、まだまだウチなんか子供なんやろか・・・。マリアサンやさっきの面白いねーちゃん、更にアイツの同級生達と比べて・・・子供なんやろな)

せめて、あと二年早く生まれてきていれば・・・だがそこで咲夜は考えるのをやめた。

(・・・まあそれでもナギの奴には勝っているやろな)

流石にお気楽お嬢咲夜と言った所か、そう思うと同時に俄然元気が出て来た。身体も温まり、気分も大分楽になったようだ。

(・・・まぁ考えるのヤメにして、楽しむ事が先決やな)

そして「ウシっ」と気合を入れて、シャンプーに手をかけた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「上がったでー」

「352・・・353・・・354・・・」

咲夜が風呂から上がると、ハヤテは居間にて腕立て伏せならぬ、指立て伏せをしていた。その数えている数から、相当の数をやっていると思われる。

「あ、咲夜さん。上がりましたか?」

「おう、ええ湯だったわ」

「よかったです」

ニッコリと笑いかけ、傍に置いてあった缶ジュースを咲夜に手渡した。

「どうぞ」

「お、サンキュ」

指を変えて再び取り組むハヤテ。咲夜はソファに座り、プシュっとジュースを空け喉に流し込んだ。風呂上りの火照った身体に、丁度良い冷たさの液体が染み渡った。

「へー、やっぱちゃんと鍛えているんやな。毎日やってんのか?」

「あ、はい。小さい頃からの日課みたいなもので」

そう言いながらもその身体は動きを休めない。既に回数は五百にいかんとしていた。

「よし・・・500っと!」

「お疲れさん」

すると咲夜は何所から出してきたのか、同じ缶ジュースをハヤテに投げてよこした。

「あ、ありがとうございます」

ハヤテはそれを受け取ると、同じように缶ジュースを飲み下していく。

「まだ九時半か・・・。咲夜さん何かしましょうか?」

時刻は九時半になりつつある、そんな夜。寝るにはまだ早く、ハヤテは一つそんな提案を出した。

「うーん、そうやなぁ・・・」

やる事が無い訳ではない。というか、何でも揃うこの三千院家の屋敷にいれば、何をしようか、と言うのが悩み所だった。

「そや、今度学校の体育で卓球があるねん、卓球でもせえへんか?」

「いいですよ」

「結構ウチ強いで?」

「僕もそんじょそこらの卓球少女○ちゃんもどきには負けませんよ。負けた方が何か一つ言う事を聞く―――というのはどうでしょう?」

「面白い、受けて立ったるわ」

何故か二人闘志を剥き出しにして、『三千院家卓球室』へと足を進めて行った。

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Re: ボケと泪と男と女 ( No.16 )
日時: 2006/10/29 00:36
名前: きらら




「サーブは咲夜さんからでいいですよ」

「ウチでいいんか?魔球が襲い掛かるで?」

「どんなサーブなんですか・・・」

三千院家卓球室にて、ガチンコバトルが今繰り広げられようとしている。―――絶対に負けられない戦いが、そこにはあった。

最初は咲夜から。妙に自信たっぷりの咲夜が構え、それにハヤテも臨戦態勢になった。

「地球の皆、オラに力を分けてくれ!くらえ、元○玉!」

「何故に悟○―――!!??」

そして咲夜は打った。玉には回転がかかって、歪な弧を描いてハヤテに襲い掛かる。

「―――!!やりますね!」

面白い!と言った顔でハヤテの方も返す。

「ウチの玉を受けるとは、なかなかあんさんもやるやないか!」

そしてラリーが続く。お互い相手の様子を窺いながらで、しばらく続いた。

「ここやッ!」

「うわっ!」

ハヤテの一瞬の隙を突いて、先取点は咲夜が奪取した。


「咲夜さん上手いですね。・・・でも、負けませんよ」

その意外な咲夜の実力に驚きつつも、寧ろ楽しそうにハヤテは構える。

「行きます!」

「よしゃ、来いや!」

そして二人の死闘は幕を開けた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

二人の戦いは、咲夜が点を取り、そしてハヤテが点を取る・・・と言った追いかけっこだった。始まりから既に一時間が過ぎようとしていたが、点数が同点になり、延長戦の延長戦まで来ている。

「はぁ、はぁ・・・。キリがないな」

「・・・そうですね」

どれだけやっても、咲夜とハヤテが交互に点を取っていた形だった為、中々試合が決まらなかった。

「・・・そうやな、次で点取った方が勝ちにしようか」

「む、ゴールデンゴール方式ですね。分かりました」

二人共痺れを切らし、その決着に委ねる事にした。

「よっしゃ、行くで!」

「返り討ちにしてあげますよ!」

そして最後の玉がその場に放たれた。








―――結局。

「タイガ○アッパーカットォォォォ―――!!」

「うわっ!?」

軍配は。

「よっしゃ、やったで!」

「やられちゃいましたね」

咲夜の方に上がったみたいだ。

しかしお互い白熱したいい勝負で、全力を出し合った満足感さえ感じ取れていた。

「あっはっは、ウチの方が上だったっちゅー事やな」

咲夜は勝者の微笑で、本当に嬉しそうだった。

「・・・ほな約束通り、一つ言う事を聞いてもらおうか」


―――そういえば、そんな約束したんだっけ。と、ハヤテの方はすっかり忘れていた。そして思い出すと同時に、どんな命令を下すんだろうと不安になりつつあった。咲夜の事だから、とんでもない事を・・・。

「むっふっふ・・・、そうやな・・・」

しかし自分が言い出した手前、撤回する事は不可能なのだ。

「・・・ごくっ」

ハヤテは、裁判官が判決を下す時のように固唾を飲み込み、咲夜の次の言葉を待った。



「・・・・」



「・・・・」



沈黙が包む。



・・・・・・・・・・。




「明日言うわ」

「・・・・へっ?」

その咲夜の言葉に、ハヤテは何だか拍子抜けした。とてつもない事をやらされる、と想像していたが、取り敢えず命拾いをしたようだ。

・・・だが、問題は先送りになっただけ。寧ろ不安な気持ちを抱いて夜を過ごすかと思うと、眠れなくなりそうだな、とハヤテは考えてしまっていた。

「楽しみにしといてな。・・・ふあ〜あ、眠くなってきたわ・・・」

安心感からか、咲夜の方は欠伸をし始めた。

「あ、じゃあもう寝ましょうか?」

「・・・そうやな、明日出掛けるんやし、もう寝るわ・・・」

「はい、おやすみなさい」

と、咲夜はその場を後にして、ハヤテの方は後片付けをする。と言っても本当に片付けるだけで、ほんの一分もかからずにハヤテも卓球室を後にした。







・・・・・・・・・・こうして、波乱の三日間の一日目が幕を閉じた。





あっ、ちなみに。先程ハヤテは不安で眠れなさそう・・・と記したが、彼はものを忘れやすい為、結局グッスリとその日は眠れたそうです(^^)


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Re: ボケと泪と男と女 ( No.17 )
日時: 2006/11/01 00:09
名前: きらら




「ふあ〜あ・・・」

カーテンの隙間から朝陽の光が零れてハヤテの顔を照らす時刻、そんな六時半。休みの日だと言うのにも係わらず、執事の仕事に勤勉で真面目な彼は当たり前だと言わんが如く、寝具から起き出した。そしてカーテンを開け、部屋の中に暖かい日差しの侵入を許すと、如何にもそれが気持ちがいいと言わんばかりに欠伸をかく。


・・・だが、だが何か『違和感』と言うものを感じる。それはこの身体に感じる違和感なのか、それとも仕えるべき主が今此処にはいないという精神的なものなのかは分からないが、どことなく。


もしかしたら、この今幸せな生活にそれを感じているのかも知れない。三、四ヶ月前からの自分の生活からは想像できないような平穏な日々を送っている。借金と言うものに脅かされる毎日。迂闊な睡眠さえも許されなかった、あの生活から。本当は、これは夢なのではないだろうか。きっと、今これは夢であって、次に目を覚ました時には、またあの狭いアパートにいるのではないだろうか。そう考えてしまう自分もいた。そこで頬を抓ってみた。


「・・・痛い」



やはり、夢ではない。豪邸の一室で目を覚ました今この瞬間は、少なくとも現実だった。・・・だからこそ、怖い。またこの幸せな瞬間を奪われる時が来るのだろうかと思えば思うほど、思考がどんどん下の方向に向いてしまう。



「・・・いかん、いかん。何を考えているのだろう僕は」



だが前向きがモットーのこの主人公は、幼い頃既にそんな考えは捨てた筈だ。常にどんな状況でも、いい方向を見ていればそれは必ず実現する―――そう自分に言い聞かせて生きてきた。例えそれがどんな毎日であっても、そうしてきた。


なら今自分に感じる『違和感』は何なのだろうか?見慣れた部屋、景色。ハンガーに掛けられている執事服。何も変わらない筈なのに、感じるこの『違和感』とは―――。


だが考えるのを止めた。人間、一人で思い詰めれば詰める程、悪いイメージしか出来なくなってしまうという話を風の噂で聞いた事がある。どうせなら、いいイメージだけを持って生きていこう。


と、寝具の乱れた掛け布団を直そうとした。


・・・が、先程感じた『違和感』と言うものをそこでハヤテは目の当たりにした―――!

















































「なんじゃこりゃ――――――――――――!!!!????」
















某刑事如く叫んだハヤテの目には、同じベットで寝ていたと思われる見慣れた少女の姿が・・・。







「アカンて、寒いがな・・・」





完全に寝呆け、ハヤテから布団をひったくって、さも我が物のように被る。そして二秒も経たない内に再び寝息が聞こえてきた。その瞬間に見えた咲夜の格好。大き目のワイシャツと、そこから伸びる白い足。

『・・・・ブッ』と鼻血が出そうになるのを何とか堪え、必死に現在の状況を再確認。


「うーん、ムニャムニャ・・・」


やはり咲夜は此処にいる。と、言う事は・・・。













「僕・・・もしかしたらとんでもない過ちを犯してしまったのか・・・?」








誰でもそう思うだろう。前向きがモットーの主人公・・・と言ったが、彼にとってさすがにこの時ばかりは『犯してしまった過ち』を頭の中から拭い去る事は、バット無しでホームランを打つ程の難易度だった。

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Re: ボケと泪と男と女 ( No.18 )
日時: 2006/11/02 17:19
名前: hesi

初めて拝見させていただきました。原作さながらのコミカルな展開とても
気に入りました。特に卓球勝負なのにタイガー◯ッパーカットというのが
笑えました。(ス◯リートファイター以外に元ネタあったらごめんなさい
ところでハヤテが実在したら『卓球少女◯ちゃん』と同じ年なのはご存知
でしたか?
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Re: ボケと泪と男と女 ( No.19 )
日時: 2006/11/06 00:25
名前: きらら

hesiさん、はじめまして。“タ○ガー〜”はハイ、サ○ットですよw
あ、実在したらタメなんだ、気付かなかったですw

ありがとうございます!では続けw

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


人間と言う生き物は、とても複雑な生き物である。考え、会話し、友好的であるかと思えばそのまた逆も然り。見た目が美しい者もいれば、心が美しい者もいる。賢い者もいれば、無知な者も。色々な種類の人間が互いに共存し、助け合い苦しめ合い、舐め合い傷付け合い・・・本当に複雑だ。そんな複雑な人間を、16年間過ごしてきた少年・・・更に他の16歳とは違い、人生経験が豊富な者でさえも、いまだかつて無い状況もある。


「どうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



それが現在の綾崎ハヤテの状況だった。朝起きてみれば、見慣れた異性の少女が同じ床で、しかもあられもない(訳でもないのだが)姿で寝ている。普通の人間なら、覚えの無い事に戸惑う。ハヤテもそんな一人だった。


胸の高鳴りを抑えることが出来ない。人一倍優しい彼は責任さえも感じていた。

「罪と罰と背徳と責任と恐怖と焦燥と・・・」

悪い言葉だけが頭の中でグルグル回り、更にネガティブを深くしてしまう。



「う〜ん・・・」

「ビクッ!」



隣の少女のうなりに一々ビクつきながら打開策を考えるハヤテ。

「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり・・・沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす・・・驕れる者久しからず、ただ春の夜の夢の如く・・・猛き人もついに滅びぬ、ひとへに風の前の塵に同じ・・・」

何故か平家物語を暗唱し、自分を落ち着かせようと精神統一。・・・しかし。










「なァ・・・ハヤ、テぇ・・・」

ぴと。

「春はあけぼのぉぉぉぉ!!!!????」




身じろぎ、ハヤテの脚に身体を巻き付けた咲夜。その発した言葉は寝言だろうか、それ以外何も発しない。平家物語から何故か枕草子へと移ったハヤテは、咲夜の寝言に何か気付いた点があった。

「ん?ハヤテ・・・?」

ハヤテは咲夜に名前で呼ばれた事が無かった。『借金執事』や、『三千院家の執事』・・・としか。驚き、咲夜の顔を見る。

「スー・・・スー・・・」

規則正しい寝息が聞こえる。その顔は・・・まだあどけなく。ハヤテはそんな顔を見て、先程までの焦りは収まったようだ。自分の脚を抱きかかえながら眠る咲夜に、ハヤテは微笑んで頭を撫でる。

そんな優しい時間が流れた・・・。




































と、思われたが再びハヤテにピンチが訪れた。

「ト、トイレ・・・」

襲い掛かる猛威に、咲夜がしがみついている為に為す術無しのハヤテ。やはり彼の人生には神様は何かを仕掛けているみたいだ。

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Re: ボケと泪と男と女 ( No.20 )
日時: 2006/11/06 00:03
名前: ナツキ

お久しぶりです!ナツキです
最初から読ませていただきましたが
面白いです!!
咲夜の元気でちょっとイタズラなところが
読んでいてとても面白いと思いました!!
しかしハヤテはピンチですね・・・
トイレ・・・どうするんだろう?
と言う訳で続きがすごく楽しみです!!
更新頑張って下さい!
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Re: ボケと泪と男と女 ( No.21 )
日時: 2006/11/10 00:09
名前: きらら



人間とは、常に進化していく生き物だ。かの有名なライト兄弟も、空を飛びたく、周りから変人扱いされながらも飛行機と言う物を発明した。発明王エジソンもそうだ。試行錯誤した上で、色々な物を発明し、そしてそれは現代に生き残る。そう、人間に不可能は無いのだ。今、アメリカで遺体を冷凍保存し、生き返らせる科学が発展したら、この世に再び呼び戻す・・・というビジネスさえある程、世の中は進化していく。人間とは、そういう困難を克服していく・・・そういう生き物なのだ。

・・・だが、現在のハヤテの状況は、そうはいかなかった。


「う・・・、もれ、そう・・・」


脚に巻きついている咲夜をどうにかする・・・と言ったものだが、それはハヤテにとって至極、難しいもののように思えてしまう。既に膀胱は破裂する寸前、『危ない』状況だった。


「咲夜さん・・・咲夜さん・・・」


そしてゆさゆさと揺さぶるが、咲夜は起きる気配を見せない。寧ろ、揺らした事によって自分の脚も動く事になり、更に尿意を催す。

「・・・!!」

第一陣通。そこはどうにか堪える事が出来た。問題はただ一つ、咲夜にどいてもらう事だ。

「う・・・、連れて行く・・・ってイカン、僕は何を考えt・・・!!」

第二陣痛。無理矢理にでもどかそうと思えば出来るのだが、咲夜の安眠を妨害できない優しい彼は、その選択は無いようだ。でも、もしこのまましてしまえば・・・。


『変態』の烙印が押される事は間違いない。咲夜の事だ、口外するに決まっている。そしてそれはハヤテの一生の汚点として残るに違いない。

「・・・う!!」

第三陣痛。限界点が目の前だった。そこで、ハヤテは覚悟を決めた。

「咲夜さん、ごめんなさい!!」





守りたいんだ、(僕を)―――。誰よりも早く駆け付けて(トイレに)―――。

疾風の如く!




「んがっ!?」

脚に巻きついている咲夜を吹き飛ばし、言葉通り、一瞬で部屋を出て行った。










それは、正に天国だった。我慢に我慢を重ねた末に、やっとの想いで念願を叶えた少年。まるで三日も飯にありつけなかった野獣が肉を貪る様に・・・ハヤテは満たされた。


「はぁぁぁぁ〜〜・・・・・・・・」


気付かぬ内に溜息がどっと出る。安心感と共にソレを一気に放出し、幸せな気分に浸るハヤテ。正に、楽園の頂上に上り詰めた気分だった。


「助かった・・・よかった」


その顔から滲み出る微笑み。今の彼の微笑みは、正に人を惹き付ける魅力がある程・・・それ程いい顔をしているのだが、それが便器の前でとなると、今此処に誰かいればきっと怪訝な顔でその様子を見るだろう。


「〜♪」


そしてご機嫌気分になったハヤテは手を洗い、自室に取り敢えず戻る事にした。


「〜♪」


その陽気な鼻歌は、静まり返った屋敷の中で誰も聴く事無く、春の朝陽の光の中に溶け込んでいった。

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Re: ボケと泪と男と女 ( No.22 )
日時: 2007/04/08 20:16
名前: きらら

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


自室に戻ると、布団と咲夜が床に転がっていた。先程ハヤテは咲夜を吹き飛ばしたのだ。その事を思い出し、急いで咲夜の方に駆け寄ると。・・・どうやら気絶をしているみたいだ。

「えっと・・・すみません、咲夜さん」

その声は咲夜には届いてはいないと思うのだが、何となく言葉を掛け、ベッドに寝かす為その身体を持ち上げた。

「・・・軽いですね」

その軽さに少し驚きながらも、所謂お姫様抱っこでベッドの上に寝かせた。そしてその上に布団を掛け、ハヤテは咲夜の寝顔を見る。

「・・・おやすみなさい、咲夜さん」

と、そのあどけない寝顔に挨拶して、ハヤテは自室を後にした。




「やー、今日もいい天気だな・・・」

玄関先でお日様の光を全身で浴びて、軽く伸びをする。気持ちが良かった。

「さて・・・今日もいい一日になりますようにっと!」

そして気合を入れ、朝食の準備にかかる事にした。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コーヒーの香りに包まれながら、トーストを頬張る。バターが塗られ、噛み付くと『サクッ』っといい音がなる。

「うーん、やっぱりパンは○熟だね」

某CMみたく、その味を噛み締める。そんな朝の食事を久しぶりに一人で摂る。いつもはマリアと一緒なのだが、留守を任されている為故の一人だった。最も、今気絶している咲夜を起こすのは忍びないと言う事でハヤテは一人なのだ。

二月下旬とはいえ昨日と同様気温は中々高いようで、窓から射し込む朝陽の光は春の訪れを感じさせるような暖かさだった。・・・すると。

「うーん、むにゃむにゃ・・・」

寝ぼけながら、咲夜が起きてきた。

「おはようございます、咲夜さん」

「ああ・・・おはよーさん・・・」

この広い三千院家の中だが、一発で執事の食堂を当てた咲夜。さすがこの屋敷に入り浸っている・・・とまではいかないが、相当の回数出入りしているこの屋敷を咲夜は知り尽くしているようだ。

「ふあ〜あ・・・」

と咲夜は伸びをするのだが・・・。

「ぶっ!?」

咲夜の格好は先程説明したまんま・・・大き目のワイシャツ『だけ』・・・と言う事はシャツがずり上がる為、白い太ももが更に眩しく。

「さ、咲夜さん!服、ちゃんと着て下さいよ!」

「ん?・・・ははーん、ウチのカラダ見てドキドキするんか?」

顔を真っ赤にして顔を背けるハヤテに、咲夜は嬉しそうだ。・・・因みに彼女の顔も少し赤みがかっていたが。
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Re: ボケと泪と男と女 ( No.23 )
日時: 2007/04/10 12:41
名前: ナマツ

どーも、咲夜が好きで最初から読ませてもらってます。 ナマツです。

買い物での西沢さんの暴走ぶりボケっぷりがおもしろかったです♪

年下は興味無いハズのハヤテを惑わす咲夜の色気。 

確か、アニメのエンディングでも咲夜はワイシャツ一枚だったような……

あぁ、ハヤテが羨ましい……

咲夜の家出、珍しいですね。 普段はナギの役なのに……

「ボケと泪と男と女」というタイトルもどっかで聞いた事があっておもしろいですね。

ナギが帰って来てこの状況を見たら……

咲夜とハヤテのおもしろおかしい夫婦漫才はまだまだ続く!?

続きの更新がんばってください!

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Re: ボケと泪と男と女 ( No.24 )
日時: 2007/04/22 00:40
名前: きらら

おお、ナマツさんありがとうございます!こっそり更新したのですが・・・やっぱり読んで下さる上に感想まで入れて下さると嬉しいですな(^_^

更新は不定期ですが、何とか完結させようと思います。

では続きを・・・。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ほな、どないしよ?」

咲夜の朝食も終え、今日一日の予定をハヤテに尋ねた。

「ええ・・・と言っても、土曜日で学校はお休みですし、特に用事も無いので・・・」

とハヤテが言った瞬間、咲夜の目が『キュピーン』と光を放った(気がした)。

「むっふっふ・・・。ほな、今日一日ウチと付き合ってもらうで。昨日の卓球勝負もウチが勝ったんやし、昨日も『デート』してくれる言うたしな」

「えっと・・・何をやらされるんですか?(汗」

ニヤケ顔で言う咲夜に、少しハヤテは不安そうだ。

「やらせるって、自分人聞きの悪い事言うなや〜。ホンマ、付き合ってもらうだけやで」

そんなハヤテに不満そうな声を咲夜はあげたのだが、今日一日の楽しみの方が大きいみたいでどうにも嬉しそうだ(まあ、それがハヤテにとって『ニヤケ顔』に見えたみたいだが)。

「ほな、早速外出ようや。ちょっくら、準備してくるわ」

「あ、はい」

咲夜はそう言い、腰を下ろしていた椅子から立ち上がると、ハヤテも後片付けを始めた。

「あ、そや」

咲夜がドアノブに手をかけようとした時、ハヤテに声をかけた。

「何ですか?」

「自分、執事服やなくて私服に着替えてな。・・・そっちの方が『デート』っぽいやろ・・・?///」

半身を翻した状態で、顔を赤くして咲夜はそう告げると。

「・・・そうですね、分かりました」

ハヤテもまた後片付けの最中なので、半身を返してニッコリと笑いかけると、咲夜の顔も更に赤くなり。

「ほな、着替えてくる!」

と、その場を脱兎如く後にした。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ハヤテは着替えを終え、居間にて来るべき人を待っていた。いつもの執事服ではなく、ジャケットを着て細身のジーパンというラフな格好で。相変わらず二月とは言えども、外の気温は高そうで上着を着て行くかどうか迷ったのだが、念の為と言う事で着ていく事にした。


―――コチ、コチ、コチ、コチ・・・。

静かな朝の中、刻む時は10の数字を指しつつあり、時計の針の音がやけにゆっくりと、そして大きく感じられた。既に20〜30分くらい待っているのだが、待つ事に対してハヤテの方は痺れを切らす事無く、窓の外から射し込む光に包まれて穏やかな景色を眺めていた。

「今日も素敵な一日でありますように・・・」

この三千院家に拾われてから、幸せな生活を過ごしているな・・・と、ハヤテはそう感じている。本当に前とは比べ物にならない幸せ、追われる事の無い日々、三食キチンと摂れる暮らしに主であるナギという少女には勿論、彼女に仕えるメイドのマリアや執事長のクラウス、暮らしには直接関係は無いのかも知れないが白皇学院のクラスメイト達、仲間達には心から感謝をしている。

 ・・・もちろん、直に姿を現す咲夜にも。本来なら赤の他人である筈の人。しかも、名高い富豪の娘であり自分とは関係のある筈の無い人と、一日と言う時間ではあるがこれから一緒に時を共にする・・・本当に人と人は繋がっているんだなぁと感じていた。

『チュンチュン、チュンチュン』

と、小鳥達が窓の外の手摺に停まり、気持ち良さそうに日の光を浴びる。それを微笑みながら見ていると・・・。


―――ガチャ。


居間の扉が開いた。そしてハヤテはその方向に振り返ると―――。


ハヤテの時が止まった。










「お待たせ♪」










そこにいたのは・・・綺麗な格好をした咲夜・・・ではなく、何故かメイド服を着た介護ロボ、『8(エイト)』がいた。










・・・え?どうしたって?











殴った。










それはもう、再起不能な程に。









「ぐはっ、ちょ、ちょっと待って下さいよ!」

「爆発オチなのはもう見え見えですよ・・・、って何であなたが此処にいるんですか?」

と、言いつつもどす黒いオーラを放ちながら攻撃の手を休めないハヤテ。

「ツインテールの少女に頼まれたみたいで、牧村さんから家事を手伝って来いって頼まれたんですよ!」

「ほー、そんな見え透いた嘘が僕に通じるとでも―――」

「本当ですって!ってああん、そこ蹴らないで・・・(ぽっ)じゃなくて!これを見て下さい!」

そうしてエイトは満身創痍の身体から手紙をハヤテに差し出した。それにハヤテは攻撃の手を休め、手紙の内容に目を通し始めた。




『ハヤテへ。
 家事から掃除からお疲れだな。私達のいない間、とりあえずそのロボットに任せてお前も羽を休めると良い。バージョンアップもしたみたいで、何とか職務はこなせるみたいだから、そいつに任せてこの三日間お前は休んでおけ。その代わり・・・私が帰ったらた―っぷり遊んでもらうからな!
                           ナギより』



 そこに書かれている文字は正しくナギの字であり、文章からは彼女らしさが滲み出ていて正真正銘彼女が書いた手紙みたいだ。

「コレは・・・お嬢様の文字。と、言う事はコイツの言っている事は本当なんですね」

「やっと分かってもらえましたか。先程廊下で咲夜様にお会いしまして、ハヤテ様に挨拶しとけと言われましたので伺ってみたのに・・・酷いです」

そう言いシクシクと泣くポーズをするエイト。その姿を見ると、ハヤテの方にも段々罪悪感が込み上げてきた。

「さっきはすみません・・・。何しろ、前にあった出来事がどうにも衝撃的で・・・」

ハヤテがエイトにいきなり殴りかかったのは無理も無い。彼らが一緒に出る回は必ずと言っていい程、戦闘になるからだ。それに、ハヤテにとっては理不尽な形で。

「まあしょうがないですね、あの時はワタシもやさぐれてましたから・・・。おっと、そろそろ待ち人が来たるお時間ですね。それではワタシはここで・・・」

と、エイトはそう言うとその場を後にした。





―――ガチャ。

そして再び居間の扉が開き、ハヤテは視線をその方向に向けた。



先程とは違う意味で、ハヤテの時間が止まった。



「お待たせ。・・・コレ、どうや・・・?///」

少しおめかしした様で、大人っぽい服で着飾られた咲夜に・・・ハヤテは少し見とれてしまっていた。

「・・・」

顔を赤くしてハヤテにそう聞いた咲夜だが、その当人は言葉が出ないようだった。

「あ、ああ、ええ、とってもお似合いですよ。・・・見とれちゃいました」

だが次の瞬間、ニッコリと笑いかけ咲夜にそう告げた。その言葉にまたまた顔を赤くした咲夜。そのハヤテの言葉が取って付けたような言葉ではなく、本当にそう思って言ってくれているのを感じ取った咲夜はこの上なく満足気だった。・・・まあ、そう言われる事は分かっていたのだが、実際に見せた相手から言われると物凄く嬉しいものらしい。顔の方にもほんのり化粧がしてあって、元々可愛い部類に入る咲夜の魅力を更に引き出しているようだ。

「そな、ありがとさん///」

満足気な顔でその言葉に答えた咲夜も、一方ではハヤテの初めて見る私服姿に見とれたのも事実。

「準備はできましたか?」

「おう、もう行けるで」

二人の『デート』と言う名のお出掛けがこういう風にして始まった。


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Re: ボケと泪と男と女 ( No.25 )
日時: 2007/04/29 18:06
名前: きらら

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「では、行ってらっしゃいませー」

介護ロボ『8(エイト)〜○ista Ver〜』に見送られながらハヤテと咲夜は屋敷を出た。

「やっぱ今日も暖かいな〜」

「そうですねー、でも今日何所へ行くんですか?」

「そうなや〜、定番っちゃ定番やけど・・・、遊園地でも行こうやないか」

「え゙、もしや・・・」

ハヤテの脳内に再び三千院家の敷地内にあるあの遊園地が蘇ってきた。あれはもう思い出したくない過去の産物として、脳内のゴミ箱へとthrow awayした筈なのだが復元機能は完備されているらしいが、それでも復元機能は完全ではなく所々嫌な部分しか再生されなかった。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・・


『斬新なアトラクションだね』

『まさか飛ぶとはね』




『なななな、何すんですかー!!』

『いや、驚かさないと・・・』

『驚かされる前に死んじゃいますよ!!』

『でもほら・・・みね打ちにするし・・・』

『(みね、ついてないっすよ、その武器・・・)』


・・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・


「咲夜さん!どうせ出るなら敷地内ではなくてどっか遠出でもしましょう!!」

思い出したくないモノを思い出してしまい、内心汗ダラダラで必死に提案するハヤテに、少々咲夜は首を傾げて何が何だか分からない様子。ハヤテにとってそこだけは避けたい所だ。

「そうやなー、夢の王国、東京ネズミ王国とかどうや?」

おっ、それなら大丈夫じゃん!・・・そうハヤテは思いながら咲夜に向かって思いっきり首をブンブンと縦に何度も振った。

「そこです、そうしましょう!!」

と咲夜の手を掴むとそそくさと歩みを進めた。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


―――ガタンガタン、ガタンガタン・・・。

ネズミ王国へと向かう電車に揺られながら、咲夜とハヤテは他愛の無い話をしていた。

「・・・にしても、さっきは何であんなに慌てたんや?」

やはり先程のハヤテの態度から疑問を覚えた咲夜は、ふと口にしてみた。

「えーと・・・色々ありまして・・・」

ズーンという効果音がしそうな程暗くなっていくハヤテを見て、関西の血が騒ぐ程面白そうな事が聞けそうやと・・・頭の中に思いを張り巡らしたのだが、これから遊ぶと言うにそんな辛気臭い顔されると・・・と思い、咲夜はこれ以上追求するのを止めた。・・・まあハヤテにそんな顔をしてほしくない、というのも大きな理由の一つでもあった。

「ま、今日はそないな暗い顔せんと思い切り楽しもうやないか」

そんなハヤテの気持ちを汲み取るような咲夜の言葉に、ハヤテは安堵の色を見せいつもの顔色に戻ってきた。

「そうですね、それがいいです」

「そんでな、前通ってる学校でこんな事があってな・・・」

「へー、どんな事です?」


・・・とそんなやり取りをしている内に、直に目的地が見えてきた。

「何や、結構早く着いたな」

「そうですねー、でももうすぐお昼ですが、先に摂りますか?」

「そうやなー、とりあえず入場しといて中で食うか」

「そうですね、そうしましょう」

と、二人は先に入場を済ます事にして、昼食はその中で摂る事にした。

「・・・にしても、やっぱり広いですねー」

「そうか?あんさんがいるあの屋敷と同じぐらいやないの?」

「まぁ・・・そうですね(汗」

言われてみれば自分の住む屋敷も滅茶苦茶の広さを誇る事を思い出し、苦笑いを残しつつ歩みを進めた。


・・・・・・・・・・・・すると。



咲夜が腕を絡めてきた。その腕は細く、自分よりも一回り小さい少女の顔が近くにある。やはり・・・咲夜は可愛らしい。今までその強烈な性格に圧倒されまじまじと見る事は無かったが、・・・やはりとハヤテは思った。

「えっ・・・咲夜さん・・・?///」

「まあ折角来たんや。思いっきり楽しませてもらうでー」

と気丈に振舞う咲夜だったが、よく見るとやはりほんのりその頬には赤の色が存在した。ハヤテはそれに気付く由も無かったが。

「・・・そうですね。先ずは何所に行きます―?」



と、再び歩み出そうとした瞬間。







「待てぃ!」






と声が二人の耳に届き。振り返ると――――。







「何故私とじゃなくてその女となんだーー!、綾崎ぃー!」






ハヤテにとって一番会いたくない男が何故かその場にいた。
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Re: ボケと泪と男と女 ( No.26 )
日時: 2007/04/30 19:36
名前: ナマツ

あれ、更新されてるのに上に行ってない……? どーも、ナマツです。

多分、誤字だとは思うんですが……

>「『そな』、ありがとさん///」

『ほな』の方が正しいと思います。


>「ハヤテにとって一番会いたくない男」

多分、あの変態執事の事だと思いますが、あの男がハヤテと出会うのは「三月」からです。
(しかもその後すぐに逮捕されるから出てくるのにさらに時間が経つ)

この小説の時間軸は、最初の記事を読むと、『二月下旬』と書かれてありました。
もしこのまま登場させたいのならば、そこを修正しないと矛盾が起きてしまいます。

まあ、二次創作だし、多少の時間のズレや矛盾はしょうがないとは思いますが・・・

虎鉄が登場したのは三月から、しかしそれに合わせると学期末試験でハヤテは遊んでる暇は無いし、
その後、ハヤテ達は下田旅行に行って、帰ってきたと思ったら、
咲夜からの呼び名が「ハヤテ」に変わってるイベントが起きてるし・・・

とりあえず、対策としては、『三月下旬』に修正して、
咲夜の「借金執事」という呼び名を、「ハヤテ」または「自分」に変えるのが一番かと・・・

ま、虎鉄のシーンを全カットすればそこまでする必要は無いんですけどね。

なんか勝手に人の作品にいろいろ言ってスイマセン・・・


さて、感想です。

咲夜、かわいいよ咲夜!!

おめかしした咲夜、超かわいいよ咲夜!!

・・・ていうか出会っていきなりエイトを殴るハヤテは結構ヒドイな・・・

ネズミ王国(笑)でのデートが楽しみです♪


続きの更新頑張ってください!

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Re: ボケと泪と男と女 ( No.27 )
日時: 2007/05/04 12:29
名前: きらら

・・・はっ、しまった!時間軸とか考えずに書いていたら矛盾だらけではないかー!?

ナマツさんありがとうございます!そうですね、対策方法としては・・・次の年の二月・・・と言う事でよろしいでしょうかw

二次創作だしと言う事で、多少の矛盾点は流してください(ヲイw


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「何故私とじゃなくてその女となんだーー!、綾崎ぃー!」

振り返れば奴がいた。

「あ、あなたは!ひな祭り祭りの時、お嬢様を攫って、そして伊豆の下田温泉であからさまに女湯だと書いてある所に混浴と間違えたつもりで女の人の裸を持ってるエロカメラで盗撮した変態!」

「・・・おい、オレはそこまでしてないぞ・・・って隣の女!軽蔑した目でオレを見るな!事実無根だ!それに変態じゃなくて虎鉄だ虎鉄!!」

ハヤテの魂の叫びに信じ、『うわぁ・・・』というような顔付きで見てきた咲夜に虎鉄もまた魂の反論をした。思ってもみない脇役の登場で「誰が脇役だっ!」心底嫌そうな顔をしているハヤテ。

「なーなー、このおもしろそーなにーちゃん誰や?」

「咲夜さん、この人に近寄っちゃ駄目ですよ!菌が移ります、変態の菌が!」

何か知らんが面白いモン見つけた!というワクワクした顔付きでハヤテにそう尋ねた咲夜だが、ハヤテはそれをさも病原菌かのように扱い、咲夜を必死に虎鉄から離そうとしていた。

「っておい、綾崎!人をばっちいモノの様に言うな!私は至ってノーマルだ!」

はっきり言ってノーマルではない。

「ほう、貴方がノーマルなら何がアブノーマルなんですか?」

「む・・・そうだな、例えば腐○子向けの同人誌とか・・・」

「今貴方がしている事じゃないですか」

会話が段々危ない方向に進んでいる事にも気も留めず、あーだこーだ言い合う二人は傍から見れば浮気がバレた夫と妻の別れ話のように見えなくも無い。相変わらず咲夜は面白そうに二人を見ていた。

「とにかく!何故貴方がここにいるんですか!?・・・もしかして追って来たとか、ストーカー紛いの事を!?」

「偶然だ偶然!たまたまお暇をもらって好きな電車を撮りながら旅をしようと思った矢先にお前らを見かけたんで付いて来ただけだ!」

「やっぱストーカーじゃないですか!」

「本当に偶然だっつーの!何となく後ろにいたら腕を組んだので声を掛けたまでだ!それよりも綾崎!その女とじゃなくて私と腕を組んで楽しもうじゃな・・・」






プチっ。





そこで何かが切れた音がした。それは大半の予想通り・・・ハヤテの方からだった。




「気色の悪い事を・・・」


「ま、待てあやさ・・・」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・という黒いオーラを放ちながらゆっくり虎鉄に近づくハヤテ。近づいてくれるという行為自体、虎鉄にとって嬉しい筈なのだがこの時ばかりは意味合いが違っているみたいだ。




「言うなぁーーーーー!!!!!」



「ギャアアァァァァ――――!!!」


ドガッ、バキッ、ボスッ!!!!


(大変お見苦しい場面である為、ハヤテのごとく!のオープニングテーマでも頭の中で流しながらしばらくお待ち下さい・・・)




「何所か遠くに・・・」


ボロボロの布切れみたいになった虎鉄に、とどめの一撃をかます為の力を溜めるハヤテ。心なしか、その手から光が放たれているように見える。



「消え失せろぉ――!!」



ドオオォォォーーン!!!!!




「オレの出番これだけ――!?やな感じ――!!」


・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・



キュピーン。『○○、ゲットだぜ!』という某人気ゲームのアニメに出てくる『ロ○ット団』のようなセリフを吐いて、虎鉄は星になった。


「・・・何やったんやろな、アイツ(汗」

「気にしたら負けですよ、咲夜さん。さあ行きましょうか」

さも何も無かったかのように咲夜の手を掴んで、さっさと歩き出すハヤテに咲夜は呆気に取られながらも付いて行った。そしてこの瞬間少女の中である一つの結論を再び見出す事が出来た。



・・・それは。




「(普段怒らない奴が怒ると・・・怖い)」



それは以前にも一度実感した事実であった。
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Re: ボケと泪と男と女 ( No.28 )
日時: 2007/05/06 15:27
名前: きらら

「咲夜さん、着きましたよ」

やっと入場を済ませ、レストラン街らしき場所へと足を運んだ二人。ハンバーガーショップやらインド料理やらイタリアンやら目移りする程色々あり、ハヤテはどのお店にしようかな〜とお店を見比べていた。

「・・・・・・・・・・・・///」

しかし話しかけた相手からの返事が無い。

「・・・・・・?」

と、ふとハヤテは気になり咲夜の方を向いた。・・・するとそこには顔を赤くして少し俯く咲夜の姿があった。いくら鈍感のライセンスが備わっているハヤテと言えども、咲夜の変調には気が付いたようだ。

「咲夜さん、どうしました?顔が赤いですよ?」

風邪かな?と首を捻らすハヤテ。だけど今日の咲夜を見る限り体調が悪そうな雰囲気は少しも見受けられない。・・・もしかして、先程の変態とのやり取りで何か咲夜さんの機嫌を損ねるような事をしてしまったのかな、という思考も頭の中で働かせていた。





・・・・・・・・・一方、咲夜の方では。ハヤテの手に繋がれた自分の手をじっと見ていた。

 実は先程虎鉄を殴り飛ばした後、ハヤテは咲夜の手をずっと握ってここまで来たのだ。ネズミ王国の門までも、入場も、ここまで来る道のりも。そして今もギュッとハヤテの手にしっかり握られている。

「・・・・・・・・///」

急展開で、何すればいいのか対処法が分からなくなった咲夜。意外と積極的な行動を取ったハヤテに咲夜は嬉し恥ずかし気分だった。

(何や何や、この積極性は!?///脈アリって事でいーんか!?///)

暴走を始める少女が一人。赤い顔が更に赤くなり繋がれていない方の手をモジモジさせている。・・・それがハヤテにとって強烈なパンチとして襲い掛かってきた!

(ぐはっ!?///)

普段見ることは絶対にない咲夜のモジモジ攻撃(?)。こういう仕草はしない咲夜だからこそ、今この瞬間が余計に可愛く見えてしまう。

『パパー、何見てるの??』

『ぽーっ///』

それは見知らぬ小さい子供連れのパパの理性にも強烈なダメージを与える程の強さみたいだ。

『あのお兄ちゃんとお姉ちゃん、手繋いでナカヨチだね♪』

『・・・///はっ、ってこらこら。人を指差すの止めなさい』

どうやらこの子がいたからパパは理性を保つ事が出来たのかもしれない。もしこの子がいなかったらいつまでも見続けていただろう(ヲイ








・・・・・・・・・

『手繋いでナカヨチだね♪』

「・・・ん?」

そういう声が聞こえて、ハヤテはもしやと思って自分の右手を確認。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぶほっ!?」

自分の手がしっかりと咲夜の手を握っているのを見て、加藤浩○みたいなある意味悲鳴を上げた。

「す、すみませんすみません!!」

と、ハヤテは咄嗟に咲夜の手を離してしまった。・・・どーやらハヤテの方は無意識だったようだ。



その行為がどうやらいけないスイッチを押してしまったようだ。



「・・・・・・・・・なぁ」

やけに冷酷な声がハヤテの耳に飛び込んで来た。さすがのハヤテでも嫌な予感がしてくる。

「・・・・・・あの、どうしました・・・?」

赤い顔を俯かせ、ブルブル震える咲夜。

「・・・自分、ウチの手ぇ掴んどいて何も意識せぇへんやったんか?」

その声は聞くからに怒りに満ち溢れているようだった。

「へっ!?そっ、そうですねー、無意識でした。・・・多分、迷子にならないように掴んだのかと・・・」



―――プチ。



何かが切れた。

「こんの・・・・」

「えっ、さ、くやさん・・・?」

「鈍感へっぽこ執事が―――!!」

「ごぅふぅっぺっ!!??」

バコッ!という大きな音を立てて空を飛ぶハヤテ。綺麗なアッパーカットが決まったみたいだ。そしてドサッという効果音と共に地面に倒れこんだハヤテだが、さすがに鈍感のライセンス、何故殴られたのか全然分かってないみたいだ。

「・・・いつつつ、あの、どうしたんです・・・

「うっさいボケ!今のはマジでムカツいたわ!ウチをそんな気持ちにさせといて無意識やなんて・・・・このボケッ!カスッ!」

ふんっ!と腕を組み、ハヤテから身体をそむけた所謂プンプンポーズ(?)その姿は見る人から見れば萌え〜な仕草なのだが、いかんせんハヤテにとっては危機を感じていた。

「全く・・・」

咲夜にとって、ハヤテの中に自分がいないのでは?という焦燥感と悔しさが滲み出てきた。

(・・・やっぱりウチは子供扱いされているんやろか・・・。『迷子にならないように』って・・・)

それが悔しくて悔しくて泪が出そうになる。・・・こんな事は生まれて初めてだった。











そして少しの間、沈黙の時間が続く。そしてふとハヤテが口を開いた。

「咲夜さん・・・気を悪くさせてしまったのなら申し訳ありません・・・。迷子にならないように手を繋いだのも・・・ただ・・・やっぱり咲夜さんはお嬢様にとっても僕にとっても大切な人なのですから」

ニコッと咲夜に笑いかけ、ハヤテは気持ちを伝えた。そして咲夜はハヤテの顔を見ると・・・。

「・・・・・・///」

一点の雲も無いその自然な笑顔は・・・咲夜の怒りを静めるには十分だった。

(やっぱ・・・ウチ・・・コイツ、『ハヤテ』の事・・・)

「ほな、ありがとさん///」

すっかり機嫌を良くした咲夜はまた満面の笑みでハヤテにお礼を告げた。

「まー、今日は思いっきり楽しもうなやいか!腹減った〜、何食おう?」

そして今度は咲夜の方からハヤテの手を掴み、昼食のお店選びを始めた。


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Re: ボケと泪と男と女 ( No.29 )
日時: 2007/05/07 19:23
名前: 10月

はじめまして。10月と申します。
おもしろいです。加藤浩〇みたいな悲鳴ですか。
表現がすばらしいと思います。
子連れのパパ・・・いったいなにやってんですか?
続きがたのしみです。
頑張ってください。
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Re: ボケと泪と男と女 ( No.30 )
日時: 2007/05/08 22:12
名前: ナマツ

どーも、自分の小説に感想送ってくれてありがとうございます! ナマツです。

虎鉄はさっさとフェードアウト……

怒りにまかせてたせいか、無意識に咲夜の手握ってたんか!?

天然ジゴロ発動……?

咲夜の気持ちも知らんと……子供扱いしてキツイ一撃ざまーみろ!(笑)

まあ、なんとか機嫌は取り戻したみたいですね。

「大切な人」なんて恥ずいセリフをよくあっさり言えるなぁ〜あの天然は……

デートでメシを喰うといったらやっぱり定番のアレでしょ!?

「あ〜ん♪」でしょ!?

続きが楽しみです。 更新がんばってください!
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Re: ボケと泪と男と女 ( No.31 )
日時: 2007/05/20 00:22
名前: きらら

10月さん、はじめまして!子供連れのパパの目を引く程、咲夜は魅力的だった・・・って言う事ですよw

ナマツさん、どうも!ナマツさんの感想に励まされていますw そう!定番ですよ定番!僕はやった事が無いアレ・・・(爆

お二人とも、ありがとうございます!

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・・・それは、傍から見れば恋人同士に見えたのかも知れない。

「あ〜ん♪」

「あーん・・・///」

ハンバーガーショップにて、ポテトが咲夜の手からハヤテの口へと運ばれる。

「うまいか?」

「はい・・・おいしいです・・・///」

否、訂正しよう。確実に恋人同士に見える筈だ。それもラブラブなホヤホヤのカップルに。

(は、恥ずかしい///)

何故、そうなったのかと経緯を説明すると・・・。






『なあ、昨日の勝負の約束覚えているか?』

昼食選びの最中咲夜はふとハヤテにそう切り出した。

『・・・はぁ、あの卓球勝負ですか』

それを聞いた途端、ハヤテに不安が脳裏をよぎる。咲夜の事だ、とんでもない命令を下すに違いない・・・と言う事で、どんな事をさせられるのかとハヤテはオドオドしていた。

『ほな、今日一日はまずラブラブカップルとしてウチと振舞ってもらう』

『え"・・・』

『拒否は許さんで。約束やからな』

とんでもなく上からの態度でハヤテに咲夜は告げた。・・・しかし、ハヤテは『勝負に負けたら何でも一つ言う事を聞く』という約束を自分から切り出した手前、引く事は出来なかった。

『・・・まずは、マク○ナルドでポテトの食べさせ合いや!』

ニヤリという咲夜に、ハヤテは若干約束した事を後悔した。・・・そんな恥ずかしい事を、とハヤテは(まぁマリアにはしてもらったのだが)女の子とそういう経験が全く無かった為免疫が無いのである。正しくハヤテにとって、未知の領域だった。






 ・・・つまりはまぁ、そう言う事だった。

「・・・じゃあ、今度はウチに食べさせてーな」

と言い、咲夜はあーんと、その小さい口を開けて待っている。

(・・・うっ///)

不覚にも、そんな咲夜にドキドキしてしまうハヤテ。その咲夜の仕草が兵器並みに可愛らしかった。やはり滅茶苦茶恥ずかしい。・・・しかしやはり拒否する事は許されなかった。

「じゃあ・・・あーん・・・と///」

自分の手から相手の口にポテトを与える。

「・・・あの、おいしいですか?///」

これもどうやら言わなきゃならないようで、恥ずかしがりながらもハヤテは咲夜にそう尋ねた。

「うーん、何か一段と美味い気がするわ〜」

「・・・ごふっ!!///」

その咲夜の言葉に、ハヤテは更に顔を赤くさせてしまった。今二人が座っている席は、とても周りから見える席。

(クッソー、何だその仲良しカップルの会話はぁー!!)

手近に皆様の声を代弁するツッコミがいなかったので、先程注文した際に対応した店員さんにツッコんでもらいました・・・と言う風に二人は注目を浴びる程の雰囲気を醸し出していた。

『ラブラブカップルっぽい』と言う事で咲夜の作戦は大成功なのだが、やはり咲夜も恥ずかしくない訳は無かった。本人は気丈に振舞っているが、顔を見れば赤いのが分かる。・・・しかしハヤテはテンパっている為、咲夜の顔をまじまじと見る事が出来ず、咲夜のそんな様子にも気付く事が出来なかった。

(・・・恥ずかしい!!///早く昼食を終わらせないと!)

と、ハヤテはいつもよりも三倍早くハンバーガーを口の中に放り込み、三倍早くセットで注文したコーヒーを喉へ流し込んだ。・・・それはもうコーヒーが熱くて火傷をしそうでもお構い無しな程に。

(・・・これから、どんな凄い事があるのだろう・・・?)

と不安を覚えた、そんな昼食だった。
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Re: ボケと泪と男と女 ( No.32 )
日時: 2007/05/24 00:01
名前: きらら

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「はー、うまかったな」

「・・・///」

ルンルン気分の咲夜とは対照的に、無言のまま恥ずかしさで俯いていたハヤテが店から出て来た。ある意味、見ているこっちが『ごちそうさま』というような雰囲気であった。

「なーなー、これからどうする?」

「・・・///」

ウキウキな咲夜とは裏腹に、『いっそ僕を・・・殺してぇ・・・』と言わんばかりの様子のハヤテに咲夜は問い掛けた。

「・・・ん?」

と、咲夜はハンバーガーショップの横に置いてあるパンフレットに目が行った。

「お、何やろコレ・・・?」

興味津々と言った様子でそのパンフレットに目を通す咲夜。・・・読んでる内に次第に目がキランキランしてきた。それはどうやら入場の際に貰った地図には載っていない、このネズミ王国の新しいアトラクションの紹介のパンフレットだったみたいで、ふんふん・・・とくまなく読んだ。

「何々・・・?おお!美少女と薄幸の執事が行くと、必ずラブラブになれるアトラクション・・・『ラブ&ピース・バトラートレイン』やと!面白そうやないか!」

「何ですかそれは・・・」

ハヤテはそのアトラクションを生み出したこのネズミ王国にいささか疑問を覚えた。何故そんなものが・・・という思いなのだろう、少し呆れていた。

「続きがある。うーんと、何々・・・・・・・・・っ!!??///」

いきなり言葉を失った咲夜。そんな咲夜にやはりハヤテは尋ねる。

「あの、咲夜さん・・・どうしたんですか?」

「・・・///」

パンフレットに目を通す咲夜の顔が見る見る内に赤くなった。・・・どんな事が書いてあるのだろうと、首を傾げて咲夜の持っているパンフレットを覗き込もうとすると・・・。

「あっ、いや、何でもないんや!気にすんな!///」

と、持っていたパンフレットを咄嗟に折り曲げて、さっさと持っていた鞄の中に仕舞い込んでしまう。『あっはっは〜///』と誤魔化す咲夜に、ハヤテは何なんだろうと冷や汗を浮かべた。

「えー、でも気になりますよ。教えてくださいよ〜」

ここは漢として聞かねば・・・というか、これから自分の身に降りかかるであろう何かをハヤテは聞きたがった。・・・でなければ覚悟が出来ない・・・と言う風に。・・・まあ、でもハヤテにはイタズラ好きな神様がいる訳で。

「・・・ふっふっふ〜、着いてからのお楽しみや〜♪///」

と、ハヤテの手を掴み早くその場所に行きたいのか、咲夜は駆け足でそのアトラクションがあるであろう所へ向かった。





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「お、あったで」

咲夜がそう言い、指を指す先には『お待ちかね!ハッピーを迎えたいあなたの為のアトラクション、ラブ&ピースバトラートレイン!』という可愛い文字ででかでかと描かれた看板があって・・・何と言うか、アトラクションへの門がハートマークで形成されていた。

「う・・・これはまたあからさまに・・・」

ハヤテは身に降りかかるであろう出来事に覚悟しようとしたのだが、やはり出来ずにその門を目の前にしていた。何しろ、でっかいハートの門がある。周りにもいかにもカップルだと言わんばかりのアベックしかおらず、しかも皆何故か抱き締めあっていた。

「・・・コレは何かの儀式なんでしょうか・・・」

「どうやらそうみたいやで〜///」

「ですよね・・・ってええ!何ですか儀式って!?」

咲夜の方を見てみると、門の横に設置されている看板を読んでいるようだった。しかも彼女の顔は何故か赤い。ハヤテもまた同じく看板に目を通すと―――。

『このアトラクションを乗り終えた後、二人の距離はもっとも――っっと縮まる筈。この門をくぐる前に抱き締めあえば更に効果はUPします!普通のカップルが言っても効果はあるのですが、相手が薄幸の執事さんならばなおさらよん♪』

しゅうううう・・・ぷすぷす・・・という効果音を出しながらハヤテはずっこけた。何か・・・狙われたような気がしてきて、もう言葉も出なかった。

「もぉ・・・何なんですかコレ」

いまだに起ききれないハヤテ。自慢のリカバーもさすがに今回は時間を要するようだ。

「・・・更に効果はUPする、やって///」

咲夜はそんなハヤテに赤い顔をして先程のモジモジ攻撃で攻めてきた。

「・・・うっ///」

やっと起き上がったハヤテが待っていたのはそんな咲夜の攻撃。その仕草がもう可愛らしくて可愛らしくて・・・。

「・・・『ハヤテ』///」

そしてとどめの一言。咲夜に(今朝の事は抜きで)初めて名前で呼ばれたハヤテは、どうやらそんな彼女にやられたみたいだ。

「・・・咲夜さんっ!」

そして勢い良く――がばぁっ!!と抱き締める。

「・・・!!///」

いきなりハヤテから抱きついてきた事に驚いた咲夜は、急の事でストップしてしまったのだが、数秒後咲夜からもハヤテに背中にその腕を回した。



・・・・・・・・・・・・そんな二人を祝福するかのように場内の音楽は優しく・・・そして暖かく流れた・・・。









               [ 完 ]



























(・・・っていやいやいやいやいやいや、終わりじゃなくて!っていうか僕は今何をしてしまってるんだぁ―――!!??)

・・・ちっ、このまま行けば綺麗に終われたのに・・・。

(今舌打ちしたでしょあなた!ってそうじゃなくて!何雰囲気に流されて抱き締めてしまってるんだ僕ぁ―――!!)

・・・それにしても、その少女からいい匂いがするだろう?

(・・・あっ、本当だ。ほのかにシャンプーの匂い・・・いい匂いだ・・・じゃなくて!何サラッと流そうとしてんすか!?)

また、その少女いい身体しているだろう?

(・・・そ、そういえば///咲夜さん結構胸あるんだなぁ///って違―――う!!と、取り敢えず落ち着け僕!)

いっぱいいっぱいのハヤテには、もう為す術が無いみたいだった。
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Re: ボケと泪と男と女 ( No.33 )
日時: 2007/05/26 22:51
名前: きらら

雰囲気に飲んで飲んで飲まされまくったハヤテ。今自分がしている事にパニクっている様子だ。

(落ち着け僕、明鏡止水だ・・・心頭滅却すれば火もまた涼しだ・・・)

適当に諺を唱えるハヤテ。・・・だが所詮諺で、心境を落ち着かせるのは中々難しい所であり、あまり効果があるような気はしなかった。耳を凝らすと、水○しげるのような歌唱力をもった歌が聞こえてくる。

『レッツハーグ!レッツハーグ!抱き締め合おう、地尽きるまで〜♪』

(何なんですか、この歌は・・・)

余りにもの熱唱ソングにハヤテは少し呆れ気味になり、この歌とアトラクションを生み出したこのネズミ王国に対して少し不信感を抱いてしまった。

 ・・・結局の所、抱き締めた手をどうする事も出来ずにそのまま数分間が経過した。

「・・・そろそろええか?///」

「は、はひぃぃぃ!」

その咲夜の言葉にハヤテは何故か異常反応し、パッと身を剥した。その際、咲夜の顔を見ると実に名残惜しそうに、赤色が存在し非常にご満悦な表情だったらしい。

「・・・じゃー、そろそろ行こか///」

「はい・・・///」

恥ずかしさの余り、反応が薄いハヤテだが何故か咲夜はやたらと嬉しそうだ。

・・・それは。

(あんなにドキドキしてくれたら、こっちが嬉しくなるやないか///)

身体を密着させる事によって、ハヤテの心臓の動きを身体で感じ取れた咲夜は、自分でドキドキしてくれたと思い込んでいた。・・・まぁ、最もハヤテの方は違う意味でもドキドキしていたのだが、結局咲夜はそれに気付かずにいた。それはある意味ハヤテにとっても幸せな事であったかも知れない。


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門をくぐって、中へと通路を進む二人。一方では何があるのだろうとワクワクしながら、一方では何があるのだろう・・・と不安になりながらだった。



 ―――その時。



「キャアァァ――!?」

「うわあぁぁ――!?」

と言う、明らかに尋常ではない悲鳴が先から聞こえて来た。その声に二人はビクッ!と反応し、何事かと身構える。

「・・・な、何や今の?」

「・・・さ、さぁ、何でしょうね・・・?あまりいい気はしませんが・・・」

流石の咲夜も正直、不安を掻き立てられた。・・・というか、いかにも死ぬ直前の様な叫び声を聞いて冷静でいられる人間もいまいと思うが。ハヤテもハヤテで、「・・・どうして僕ってこんなに不幸なんだろ・・・」と、何故か自己嫌悪に陥っていた。

 ・・・結局そこで二人が辿り着いた答えは。

『死にゃーせんだろ』

という事で乗る事にした(ほぼ咲夜の意見)。





 通路を歩いて行くと、ハヤテと咲夜の前に二人乗りの列車が姿を現した。

「これに乗るんやな」

「そうみたいですね」

「お、また注意書きが」

「えーと、何々・・・乗ったら二人手を握り合い、降りるまで離さないでね。もし離したら薄幸の執事さんの不幸が倍に♪って・・・」

「随分と薄幸の執事にこだわるなコレ」

「そ、そうですね・・・」

ハヤテはもう完全に呆れている。というか、「トホホ・・・」と落ち込んでいる様にも見えた。

「ほな行こか」

(はぁ、やっぱやるしかないか・・・)

ハヤテもハヤテで覚悟を決めたみたいで、運命に身を右から左へ受け流す事にした。

 そして二人はその列車に乗り込み、出発の時を待つ。

「ほれ、手」

「あ、はい」

と、お互いの手を握り合うのも、至極自然に見えた。


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何故先程あんな悲鳴を耳にしたのか・・・その理由が分かった。先ず一つ、その列車はとんでもないスピードを出す事。体感速度はまるで新幹線並みに。

「は、速――っ!」

「咲夜さん、大丈夫ですかー!?」

咲夜は驚いていたが、ハヤテはそのくらいのスピードは自転車でいつも出していた為に慣れていた。







 ・・・しかし、それはまだ序の口で、真の恐怖と言うのはまだ鳴りを潜めていた。










「・・・うん、何かが吊るされている!?」

前方に『何か』を見つけたハヤテが先ず叫んだ。

「何や、あれは!?」

それに気付いた咲夜が続けると。






『滅殺だニュ♪』




という妙に物騒な言葉が二人の耳に飛び込んだ。よく見ると、それはウサギの形をしていて・・・。






「ケレ・ナグーレ―――!?」

「何やその名前は―――!?」



ハヤテがかつて会った、とんでもないアイツだった。
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Re: ボケと泪と男と女 ( No.34 )
日時: 2007/05/27 16:15
名前: きらら

何故、ケレ・ナグーレがこんな所に・・・?疑問を持つのは当然の事だが、今はそんな事を考えている暇は無い。進み続ける列車は、そろそろ奴がいる地点まで到達してしまいそうな程近づいていた。・・・ところが、ケレ・ナグーレに近付くに連れて何故なのか、少しスピードを落としていった。

『切り刻んであげるニュ♪』

「!」

落ちたスピードでゆっくり進む中、そう言う吊るされているケレ・ナグーレの手には・・・見るからに真剣があった。そして列車はそこを通過しようとするや否や、ケレ・ナグーレは持っている剣を思いっ切り振りかぶった。

『おんどりゃああ!!』

そして躊躇無く二人に切り掛かって来た!

「咲夜さん、伏せて!」

襲い掛かる剣先にハヤテは咲夜の頭を抱え込む様にして伏せる。

―――ブオン!

と言う効果音が、頭の数ミリ上で聞こえてきた。

「うわ!?アイツ、本気で切り掛かってきたで!?」

殺意の感じるその一振りに、咲夜がそう驚くのも普通の人間なら無理ではなかった。もし伏せていなかったら・・・確実にやられていたのだ。

『・・・ちっ』

結局勝負はその一振りだけで、そうして列車はケレ・ナグーレを通過し何とかやり過ごす事が出来た二人は安堵の溜息を吐いた。
 ・・・通過する際、耳に届いた舌打ちは聞こえなかった事にしよう。

「あ、危なかった・・・」

難を逃れた事を確認すると、ハヤテは抱えていた咲夜の頭を離して顔を上げさせる。

「ホンマ、危なかったな・・・」

奴を通過して大分経ってから、後ろを振り向き確認しながら咲夜は呟いた。

「ええ、咲夜さん大丈夫でしたか?」

ハヤテも同じく後ろを振り向き、何も無いと確認をして咲夜に答えた。

「アイツ・・・普通に殺す気やったで」

「もう忘れましょう・・・アハハハハ・・・(汗&涙」

もはや忘れたい記憶が更に追加してしまったハヤテは苦笑いをする事しか出来なかった。




 ・・・結局。その後は何事も無く普通に列車はスタート地点に戻り、二人は降りる事にした。

「・・・コレ、何だったんでしょう?」

「・・・さぁ、何やったんやろな?」

二人してただ恐怖を味わうしか無かったこの『ラブ&ピース・バトラートレイン』。当然の事ながら、再び乗る気は起こる筈も無く。・・・もはやクレームものだったが、呆れてものも言えなかったので二人は放っとく事にした。
 ・・・そこで、咲夜はあるモノを見つけた。

「ん?何かコレ、彫ってあるで?」

それは列車の車体に、彫られたアルファベットがあった。

「な・・・何て彫られてあるんですか?」

それに妙に気になったハヤテ。聞かずには居られなかったらしい。

「うーんと・・・『S.Makimura』・・・やって」

「・・・ん?」

どうやらそこに彫ってあったのは誰かの名前だったようだ。・・・しかし、ハヤテはそれを聞いた途端とてつもない既視感に襲われた。

(絶対何所かで聞いた事があるぞ?Makimura・・・マキムラ・・・牧村・・・はっ、まさか!?)

・・・そう。それは抜群に頭は良いが、何所か抜けていたり・・・誰かの担任教師をしていたり・・・ロボットを作ったはいいが、制御チップを付け忘れてやたらと暴走するロボットを生み出したりした人で・・・。

「マッドサイエンティスト―――!?」

そのアトラクションの滅茶苦茶さに妙に納得してしまったハヤテは、無意識の内にそう叫んでしまっていた。











「何とか無事に出れたな」

時間にして入って数十分なのだが、さも久々かの様に外の空気の美味しさを堪能する二人。何故かとても清々しい気分みたいで、咲夜はそこで伸びをした。

「んんっ・・・と」

「何でしょうか、この開放感は・・・」

生きて還れた事にハヤテも充実感を覚えたらしく、眩しそうにやけに光っている様に感じる青空を見上げた。

「喉、渇きませんか?」

取り敢えずカラカラの喉を潤したく、ハヤテは自販機を目で探す。

「おお、そうやな」

咲夜も丁度そう思っていた所で、二人休憩する事にした。
 そこで二人一緒にベンチのある方へ歩き出すと、咲夜はハヤテの手に自分の手を絡めた。

「さ、咲夜さん・・・?///」

「んー?」

手を繋ぐ事に対して咲夜は既に慣れた様な素振りを見せるが、ハヤテの方はどうやら慣れる事は無かった。

(ホンマはウチも恥ずかしいんやけどな///)

しかし咲夜もやはりハヤテと手を繋ぐ事にちょっぴりドキドキし、その頬もほんのり赤く染まっていた。


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「ふー、これからどうするんや?」

二人ベンチに座り、缶ジュースを飲みながら休憩をしていた。時計を見ると、既に三時を過ぎようとしていて、その青空もいよいよオレンジ色に差掛かろうとしている時だった。

「咲夜さん、他に何所か行きたい所はありますか?・・・出来れば安全そうな所で」

先程のアトラクションの衝撃から、ハヤテ的にはここを脱出したい気分だったが、何分自分よりも他人の意見を尊重する優しき少年。決定を咲夜に委ねる事にした。

「そうやなぁ・・・」

そう言う咲夜の目にはあるアトラクションが映っていた。





  о/(・∇/)→ 数分後・・・ → (\∇・)\о




「へぇ・・・結構高いんやな」

二人の乗った観覧車は、ゆっくりと昇って行き、次第に天辺へと行かんとしていた。そこからの景色はネズミ王国を一望でき、その敷地の外までも・・・遠くの海の水平線までもが見えていた。

「・・・綺麗ですね」

それにハヤテも感動したのか、それから目を離さないでいた。

「・・・」

そんなハヤテを咲夜はじっと見つめていた。ハヤテのその、優しく慈愛に満ちた微笑を。
 咲夜の方はある決心をしていた。前からずっと思っていた事を。

「あんな・・・」

そこでハヤテの目線は、外から咲夜へと移る。

「何ですか?咲夜さん」

ハヤテの方は、咲夜の言おうとしている事の想像がつかない。ただ、咲夜を見つめて次の言葉を待った。

「・・・その、あのな・・・」

珍しく咲夜にしては歯切れが悪い。そんな咲夜にハヤテはほんの少し戸惑いつつも、それでも優しく見つめていた。

「・・・これからな、『ハヤテ』って呼んでええか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

しかし、そこでハヤテの言葉は止まってしまった。・・・もしかしたら、嫌だったのか。今まで散々嫌味たらしく『三千院家の執事』だの、『借金執事』だの呼んでいた相手に、急に名前で呼ばれたくはないのであろうか?と、そんなハヤテに咲夜はどうしようもなく不安になった。

 ・・・何故だろうか。こんなに不安がる事は無いのに。ハヤテの事になると、いまいち自分というものを見失ってしまう。自身のノリで自分というものを貫ける筈なのに。・・・こんな事は初めてだ。今までかつて自分が持ったことの無い感情に、咲夜は戸惑っていた。

「嫌、やったか・・・?」

ハヤテの口から否定の言葉が出るのが・・・怖い。「嫌です」と耳に届いてしまいそうなのがどうしようもなく怖かった。・・・何故、気持ちがこんなにもキュンとして切ないのだろう。

「・・・スマン。忘れてくれ・・・」

気付けば自分からその言葉を口に出していた。・・・自分から言い出した事なのに。そうしたい筈なのに。
 ・・・だがそれ以上にハヤテに嫌われたくはなかった。こんな我儘に付き合ってくれただけでもいいじゃないか。

 
 咲夜はその気持ちを、この観覧車を揺らす風と共に空へと流そうとしたのだが。








「いいですよ」


―――ふと、咲夜の耳に届いたその言葉。・・・紛れもなくハヤテの口からだった。

「・・・い、今何て・・・?」

聞き間違いかと思った咲夜は、思わず聞き返していた。

「ですから、僕の事『ハヤテ』と名前で呼んで下さるのでしょう?・・・大歓迎ですよ」

今度はハッキリと咲夜も聞き取る事が出来た。・・・OK、と。

「ホ、ホンマか!?」

咲夜にとって、予想していた以外の言葉が返ってきた。それは咲夜にとって、いい意味で・・・だった。

「ええ、もう好きなように呼んで下さい。咲夜さんが困った時は・・・いつでも飛んで行きますから♪」

 その言葉を聞いた瞬間・・・咲夜は思った。・・・どうしてこの人はこんなにも優しいのだろう。どうしてこんなにも暖かいのだろう。




 ・・・そこで、咲夜は自分の気持ちにやっと確信が持てた。




(・・・そうか。やっぱウチ、『ハヤテ』の事・・・好き、なんや・・・)




その気持ちと共に咲夜は告げる。

「・・・ありがとな、『ハヤテ』」

その言葉にハヤテはやはり優しく微笑んだ。それはそこから見える景色よりも輝いて・・・咲夜の目にはそう映った。


(また改めて言うわ。・・・このウチのキモチ・・・)
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Re: ボケと泪と男と女 ( No.35 )
日時: 2007/05/29 00:34
名前: ナマツ

どーも、咲夜、きゃわいいよ咲夜!! ナマツです!

途中、[ 完 ]なんてあったから「終わり!!?」なんて一瞬ビビリました(笑)

咲夜はどっかの「引き篭もりお嬢様」と違ってとても発育がよろしいようで・・・

ハヤテもいっその事、そのまま若さにまかせて燃え尽きちまえばよかったのに・・・(笑)

若さとは振り向かない事だと宇宙刑事も言ってたんだし、
そのまま早熟お嬢様と大人のハイウェイを走り抜けちまえば、あとは野となれ山となれ・・・(笑)


>「いいですよ」

>「ですから、〜〜〜・・・大歓迎ですよ」

>「〜〜咲夜さんが困った時は・・・いつでも飛んで行きますから♪」


ここだけを見てたら告白をOKしたようにも見えますよね〜・・・♪

こうして咲夜とハヤテの関係は2、3歩ほど前進したという事ですね。


これからの二人に期待です♪

続きの更新頑張ってください!
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Re: ボケと泪と男と女 ( No.36 )
日時: 2007/06/10 01:21
名前: きらら

ナマツさん、ありがとうございます!

中途半端な所で終わらせてたまるか!と言う訳で続けますw

またよろしくお願いしますね♪




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観覧車を降りると先程よりもまして、辺りは夕方のオレンジ色へと変わりつつあった。二月下旬のこの時期の日は短く、時は四の数字を刻もうとしていた。陽は相変わらずこのネズミ王国を照らしているのだが、冬らしくほんの少しだが冷たい風が二人の間を吹き抜けた。

「咲夜さん、寒くないですか?」

ハヤテはそんな冬の風に、咲夜が冷えないか心配でそう声を掛けた。

「んー、まだ大丈夫や」

咲夜の方もまだまだ大丈夫だと言わんばかりに手を広げてハヤテに主張をした。

「・・・やけど」

咲夜は続けて言葉を発してハヤテに近付く。

「やっぱ暖かい方がええわ///」

と、手をハヤテのそれに重ねた。

「・・・///」

そんな咲夜にハヤテはやはり恥ずかしそうにするのだが、有無も言わずその手を優しく握り返した。



 その後、二人はお土産コーナーを見て廻り、商品について色々あーだこーだ言い合った。虎の人形を見つければ、「おお、タ○ガースや!」と咲夜が興奮して、「これはテоガー(某熊のキャラクタの仲間の虎)じゃないですか・・・?」とハヤテがやんわり否定したり。それ以外の可愛いぬいぐるみを手に取れば、「妹弟達にこんなお土産どうや?」とお姉さんぶりを見せる咲夜に、「あ、いいじゃないですか。きっと喜びますよ」とハヤテも一緒に選んだり。ほんわかな雰囲気を作りつつ二人はお買い物を楽しんだ。


 ふと時計を見ると、既に五時を回っていた。

「そろそろ帰りますか?咲夜さん」

外もすっかり暗くなり、ネズミ王国も照明無しではその華やかさを表せなくなりつつあった。

「おお、そうやな。・・・今日は楽しかったなぁ」

ハヤテに同意し、咲夜は今日一日の感想を漏らした。

「・・・まぁ、変なのもありましたが、今日は楽しかったですね」

ハヤテも咲夜に同調して今日一日を振り返った。

「・・・また来ような」

しかし・・・ほんの少し寂しそうにする咲夜に、ハヤテもまた繋がれている手をぎゅっと握り返して。

「ええ・・・また来ましょう」

と優しく微笑んだ。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

帰りの電車の中では、咲夜がハヤテの肩に頭を乗せて眠りについたりして、それにドギマギしたハヤテは眠れる筈がない。気付けば、列車は降りるべき駅に到着していた。

「咲夜さん、着きましたよ」

ハヤテは咲夜の肩を揺さぶり、そっと起こした。

「ん・・・もう着いたんか?ってウチ寝てたんや・・・」

と、ハヤテの肩に乗せた頭を起こした咲夜。実は結構疲れたのであろうか、自分が眠った事に気付かないでいた。

「ええ、ぐっすりと眠っていましたよ」

少し嬉しそうにハヤテは言って立ち上がった。そして咲夜もそれに続いて立ち上がり、二人列車を降りた。





 列車を降りてホームを歩く二人。これからの予定をどうするか話し合っていた。

「夜ご飯はどうします?このまま食べて帰るのも良いですけど」

時刻も時計を見ると六時過ぎ。夕食の時間には少し早いのだが、ハヤテはそんな提案を咲夜にした。

「うーん、それもいいんやけど・・・昨日はハヤテが作ってくれたやろ?せやから今日はウチが作ったるわ」

料理は得意やし・・・と付け加えて笑顔で囁く咲夜に、ハヤテは少しドキッとしてしまう。

(う・・・そんなキラキラした目で見つめられると・・・///)

いつまで経ってもそんな女の子の仕草に慣れる事は無かった。・・・きっとこれじゃこのまま慣れる事は無いだろうなぁと思いつつ、咲夜に夕食をお願いする事にする。

「あ・・・はい、ではお願いします///」

「ほな、では早速買い出し行こーか」

と、咲夜はハヤテの手を握り、自らが先導する様に歩き出して行った。
















「・・・ん?あれってハヤ太君ではないか?」

そんな二人の様子を、一人のある少女が見ていた事により、ハヤテには後程とんでも無い状況が待ち構えていたのだ・・・。



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夕食の買出しで、ハヤテと咲夜は屋敷近くの大型スーパーにて食材を選んでいた。
 ・・・ゾク。ハヤテはそこで妙な寒気を感じた。

「・・・ハヤテ?どないしたん?」

敏感にその様子をキャッチした咲夜は恐る恐るハヤテに尋ねた。

「いえ・・・ちょっと悪寒が走ったと言うか・・・」

苦笑いしながら答えるハヤテ。

(・・・はぁ、こういう時の悪い予感は結構当たるからなー)

そんな風に思い、先行き心配になってしまう。

「まー、ウチの作った料理食べれば元気出るでー。美味いっちゅー自信はあるさかい」

胸張って言う咲夜、相当自信を持っているようだ。・・・と言うか、実際ハヤテは咲夜の手料理を一度食べた事がある。その料理の美味しさに舌を巻いた事があり、またそれを食べれるという楽しみから、いつの間にか感じた悪寒は咲夜の言葉を聞いている内に飛んでいってしまっていた。

「・・・そうですね。では楽しみにしています」

心から楽しみにしているハヤテの笑顔で、咲夜も腕を奮ってやろうと、更にヤル気が増した様だった。











「・・・ほう。あの二人、手なぞ繋いで随分と仲良さげだな」

そんな二人を傍観する少女。商品棚の影にその身を隠しながら尾行する姿はまるで隠密(というかGメン?)。二人には完全に気付かれずにいるのだが・・・。

(・・・ヒソヒソ、ヒソヒソ)

他の客の目からすれば非常に怪しかった。だがそんな事はお構いなしに、その少女は兎に角興味津々といった様子で二人を追っていた。

「うーむ・・・いい雰囲気を醸し出しているではないか、ハヤ太君め。・・・しかし、隣にいるあの少女は誰なのだ?何所か見た事がある様な気がするのだが・・・」

まぁそれもその筈。あの下田の温泉で顔を合わせてはいたのだが、実際に話した事はなかったし、初めて見る人間も多かったので、そこから思い出すの事は中々難しい所であった。

「・・・どれ、少しちょっかいかけてみようか」

非常に愉快と言った顔付きで、その少女は徐にポケットから携帯電話を取り出した。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「さ、買うもんかったしそろそろ行こか!」

レジにて会計を済ませ、荷物を全て買い物袋に入れ終わると咲夜はハヤテにそう声を掛けた。その手つきは物凄く手馴れていて、相当な回数をこなして来たと見られる。

「・・・慣れたもんなんですね」

そんな咲夜を見て、ハヤテは思わずそう口に漏らしていた。

「まーそうやな。やっぱウチ、妹弟達がたくさんおるやろ?色々なお手本にならなあかんねん。せやからこう言った経験も色々積んでんねや」

少し満足気に話す咲夜にハヤテもまた更に感心した様子だった。

「ま、一番上のウチがしっかりせなあかんからな」

続けて咲夜はエヘンと胸を張って主張した。

「妹弟達がいると、そんな苦労もするんやでー」











 ただ、何てことは無い家族を内容とした普通の会話。・・・だが、それはそれは家族とのいい思い出が無い者・・・ハヤテにとっては、実に重く辛い内容であったかも知れない。暗い過去の記憶を呼び起こすには十分な起爆剤だったのかも知れないのだ。

「兄弟・・・か」

ハヤテはその咲夜の言葉を繰り返す。しかしその顔は、儚くて・・・今にも崩れてしまいそうな・・・それでも笑顔を作っている、そんな寂しそうな表情を作っていた。

(・・・しもた!)

そんなハヤテを見て、咲夜は自分自身を咎めた。
 ・・・咲夜はハヤテの生い立ちを知っている。まだ幼い頃からあの両親の為に働かされたのも、生き別れた兄がいるというのも、挙句の果てには一億五千万もの借金を押し付けられたのも全て聞いていた。そんな辛い過去を自分が思い出させてしまった。忘れたくても・・・悪夢として今だハヤテを縛り付けている思い出を・・・。咲夜は自分を責めた。

「何か自分だけ・・・ごめんな」

辛い思いをハヤテにさせてしまった・・・と咲夜のその様子はいつもの雰囲気とは全く違い、自分の過ちを受け止めていた。
 ・・・悔しい。ハヤテにそんな顔をさせてしまった事がたまらなく悔しかった。自分の持ち前の明るさとノリを持って接すれば、ハヤテも笑顔でいてくれる・・・そう思って取った言動が今の結果。優しいハヤテはきっと許してくれるだろう。ただ、自分が自分に対して許す事が出来なかった。こんな事なら、ハヤテにこんな気持ちをさせた自分をいっその事罵ってほしい。蔑んでほしい。ただ、嫌いにはならないで。
 ・・・其れ程までに咲夜の気持ちはハヤテに向いていた。







 ハヤテは、そんな葛藤している咲夜を見つめていた。・・・その顔付きは、先程の様な顔とは全く違っていて、温かみのある優しい微笑みだった。

「・・・ありがとうございます、咲夜さん」

「・・・えっ?」

咲夜に代わりに返って来た言葉は、罵倒や痛罵では無く・・・感謝の言葉だった。この状況で感謝の言葉を掛けられるべきでは無いと思っていて、ただ純粋に咲夜は驚いてしまった。

「多分ですけど、僕の事で悩んで下さっているのでしょう?」

少し思い詰めただけで、この少女にも大分辛い思いをさせてしまった。その事にハヤテは酷く心を痛めたのだ。・・・自分が耐えれば良かっただけなのに。この人は悪くない。だから何とか元気付けてあげなくては・・・。

「・・・それだけで、僕は十分嬉しいんです。今までそんな風に僕の事を考えてくれる人なんていなかったから・・・だから咲夜さん、そんな顔しないで下さい。咲夜さんには・・・やっぱり笑顔が一番似合いますから」

本当に月並みな言葉しか出ない自分の語彙を呪いながらも、気持ちは伝わったかなと少し心配になったハヤテ。

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

しかし、咲夜はそこで無言でハヤテの胸にその身体を預けた。

「わっ、さ、咲夜さん?///」

急な咲夜の行動にハヤテは思い切り慌てふためく。全くの予想外の展開に、どうすればいいのか分からなかった。

「・・・ホンマ、ハヤテは優しいなぁ。少し優し過ぎやへんか?」

ハヤテの胸に頭を添えて、咲夜はそう言い放った。そんな咲夜にドキドキしながらも、思う。・・・自分は優しくなどない。優しい・・・と言うよりかは、もっと相応しい言い方が似合っている・・・と。

「えっと・・・優しいと言うか・・・自分で言うのも変なんですけど、優柔不断なだけですよ」

そう言いながらハヤテは咲夜の頭に手を乗せて、その髪を優しく撫でた。優柔不断・・・本当に自分でそう思っていた事だった。

「・・・ったく、そーゆー所が優しいっちゅーねん///」

「えっ?」

次の咲夜のボソッとした言葉は、ハヤテの耳にはしっかりと届く事は無かった。
 ・・・でも、どうしてだろう。この咲夜の前では、気付かない内に本当の自分と言うのを曝け出してしまっていそうな気がする。それは安心と言うか、そういう意味からであった。








「若いっていいわねー」

「・・・最近の若いモンは・・・(ブツブツ)」

「見て見てー、あの二人抱き合っているわよー」









「「・・・はっ!」」

その声が二人の耳に届いた瞬間、二人は同時にバッ!と離れた。そーいえば、忘れていたが今は買い物の途中。と言う事はスーパーの中には他にも客は沢山いる。ハヤテと咲夜の二人はその客達の見物の的になっていて・・・つまりその場にいた全員が全員二人を見ていたのだ。

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・///」」

その痛い程の視線に何も言えなくなった二人。

「い、行こか・・・///」

「そ、そうですね・・・///」

そして二人そそくさとその場を逃げる様にして後にした。
























「うーむ・・・、これは予想以上の展開だな・・・///
 これはヒナ・・・よりも先に美希達に報告するか」

他の客達と一緒に見ていた少女は、二人の様子に開いた口が塞がらない様だったがすぐに気を取り直し、黒く真っ直ぐに耳にかかった髪を掻き分けて携帯電話を耳に当てた。

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Re: ボケと泪と男と女 ( No.37 )
日時: 2007/06/13 23:45
名前: ナマツ

どーも、自分の小説に感想送ってくれてありがとうございます! ナマツです!

咲夜とハヤテの「あったか」通り越して「アツアツ」な展開♪

しかぁ〜し・・・!

ついにここで、あの三人娘の内一人の「ブラック」にも目撃されてしまう!

教訓・・・動研の三人の内、誰か一人にでも見つかった場合は、その場で他二人にも情報が伝わってしまう事を覚悟せよ。

まずは前菜としてブルーに密告、そして生徒会長とご主人様はメインディッシュですね♪

さてさて、幸せな時を過ごしたハヤテにこのまま幸福が続く事は、
この世から犯罪がなくなるくらいありえない事なのです。

咲夜と甘い日々を過ごした分、そのツケは不幸という形になってしまうものです・・・

なにも知らない借金執事は咲夜と共に愛の巣(笑)へと帰っていく・・・

咲夜、きゃわいいよ咲夜!

さて、更なる展開が楽しみです♪

続きの更新頑張ってください!
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Re: ボケと泪と男と女 ( No.38 )
日時: 2007/06/24 02:44
名前: きらら

おお、ナマツさんこんばんは!

『さてさて、幸せな時を過ごしたハヤテにこのまま幸福が続く事は、
この世から犯罪がなくなるくらいありえない事なのです』

ですけど・・・・間違い無いw ハヤテ=不幸という方程式も成り立っていますから(可哀想)、もうちょいハヤテ君には苦労してもらいます(酷w

ありがとうございますー!!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「もしもし・・・美希か?私だが」

『おお、どうしたのだ?』

「実は・・・かくかくしかじか・・・なんだが」

『何、本当か!?それで今何所なのだ?』

「今からそのスーパーを出る所だ」

『ふむふむ・・・そうか。取り敢えず理沙は尾行しててくれ。近くに行ったらまた連絡する』

「わかった」

・・・『理沙』と呼ばれた黒髪の少女はそう返事をすると、携帯電話をポケットに仕舞いハヤテと咲夜の二人の尾行を続けた。











「いやー、さっきは恥ずかしかったですね///」

「そやな///」

あの後、スーパーを逃げる様にして出て来た二人は屋敷への道程を歩いていた。先程の事で二人の顔はほんのり赤く染まっていて、それでも嫌な気分ではなかった。

―――ヒュー・・・。

 やはり二月。昼間とは打って変わって冷たい風が二人の間を吹き抜けた。

「・・・へくちっ」

「大丈夫ですか?咲夜さん」

「あ、ああ・・・やっぱ夕方になると少し冷えるなー」

くしゃみをした咲夜を心配するようにハヤテは声を掛けた。普段より大人っぽくキメた咲夜の格好はどうやら薄手だったみたいで、自身を抱え込む様に腕を組んだ。

(あちゃー、やっぱもうちょい厚着してくるべきやったな)

自分自身に反省をしつつ、もう屋敷も近いので我慢をしようと咲夜は思った矢先。

――ふわさ・・・。

と、咲夜の肩にジャケットが掛けられた。その掛かったジャケットは・・・やはり、ハヤテの物であった。それからは温もりを感じ、咲夜を暖めてくれるのだが。

「ありがとさん。でも・・・ハヤテの方が寒いやろ?」

咲夜は遠慮するつもりだった。何せ、上着無しで来ていたのも自業自得だったからだ。その掛かったジャケットを脱ごうとするのだが・・・ハヤテに止められる。

「いえ、咲夜さんが着てて下さい。咲夜さんに風邪を引かせる訳にはいきませんから」

「けどな・・・」

「いいんですよ。僕は大丈夫なので、咲夜さんさえ温まってもらえれば」

「ハヤテ・・・」

そんなに優しく言われると・・・咲夜はそんなハヤテの優しさを踏み躙りたくなかった。それに、ハヤテの体温を感じる事が出来るこのジャケットにも物凄い魅力を感じた事で、咲夜はハヤテのその言葉に甘える事にした。

「あ、ありがとな・・・///」

「いえ、どういたしまして。さ、行きましょうか」

ハヤテの方も自分が役に立てた事で非常に嬉しく顔を綻ばせた。













「ふーむ、お二人さんよ、随分と見せ付けてくれるな」













急にそんな二人の背中に誰かの言葉が届いた。

「「!」」

二人してその声に反応し、その方向へ振り向いた。そこにいたのは・・・黒いスーツを着てサングラスをし、少し長めの黒髪を後ろで縛った・・・いかにも怪しい人物だった。

「・・・誰です?」

ハヤテは努めて低く、冷たい声でその人物に返事をした。その人物の格好は・・・幼い頃・・・否、最近までハヤテを追い掛け回していた借金取りを彷彿させる様な感じだったからだ。

 ・・・何故今でも追われるのか?といった疑問がハヤテにはあった。またそれも今の主に借りたものなのだが、一億五千万という借金は確かに完済した筈なのに。だからもうそういう人物に声を掛けられる事は無いと思っていたのに。

 ・・・しかし、ハヤテはすぐに合点がついた。

(・・・ああ、そうか。三千院家の財産を狙う者は、先ず僕を狙ってくるんだ・・・)

過去に自分が言った言葉から、自分が狙われるのは当たり前なんだ、と思い直した。・・・結局借金が消えても、僕は追われる人生なんだと自嘲に思いながらハヤテは臨戦態勢を取る。

「・・・いいですよ。何所からでも掛かって来て下さい。後一人程、そこの物陰に隠れている様ですけど、まとめて相手をしてあげますから」

「・・・なっ!?」

ハヤテに相手が二人いる事に既に気が付いていたのだ。そして咲夜を自分の背中に隠す様にして一歩前に出てそう告げた。せめてこの人だけは・・・関係の無い、咲夜だけは守らねば、と。

「この人に一つでも傷を付けてみて下さい。・・・死ぬ以上の苦しみを味わってもらいますから」

咲夜を守る・・・という気合が殺気という形で表に出る。尋常では無い程の感情でその黒服は圧倒された。

「ま、待て・・・」

それを感じた相手は身じろぎをし出した。その恐ろしい程の殺気に、どうやら恐怖を感じている様だった。

「・・・来ないのならこちらから行かせてもらいますよ」

その様子を見て、相手はさほど大した事は無いのが分かったハヤテ。一気に早めに終わらそうとその足を一歩踏み出した。











・・・だが。











「ま、待てハヤ太君!」










「・・・え?」

その声に、ハヤテは妙に聞き覚えがあった。・・・声と言うか、その呼び方に。

「わ、私だ私!」

とその人物は慌てた様子で変装を解く。するとその現れた人物の顔は・・・ハヤテがよく見知っている顔、だった。








「あ、朝風さん?」






・・・そう。そこにいたのは、ハヤテのクラスメイトの朝風理沙の姿だった。





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Re: ボケと泪と男と女 ( No.39 )
日時: 2007/06/24 19:07
名前: きらら



「そ、そうなのだよハヤ太君!気付いてくれたか!」

冷や汗を掻き、非常に焦りながら理沙は弁明をした。

「・・・じゃあそこにいるのは・・・」

と、ハヤテはもう一人いるだろう方向へ顔を向けると。

「わ、私だハヤ太君。花菱だ」

そう同じく焦りながら姿を現したのは・・・また同じクラスメイトの花菱美希だった。










「いや、そんな怖い顔をせんでくれハヤ太君」

ハヤテの顔を見ると、未だに警戒心たっぷりにしかめていた。三千院家の財産を狙う輩では無い事が分かったのだが、ハヤテはまた別の意味でも不審に思っていたのだ。
 ―――何故ここにいる?と言う事と、この二人のやる事にハヤテはあまり良い思いをした事が無い事と。

「ハヤテ、このお二人さんは?」

そこで咲夜がやっと口を開いた。先程のハヤテの雰囲気に圧倒されたのか、咲夜にしては慎重な面で尋ねた。

「僕のクラスの人達なんですよ」

「花菱美希だ」

「ミハミハ・・・否、朝風理沙だ」

ボケようとしたのだが、こんな雰囲気の中言えなかった様で普通に自己紹介をした。

「それにしても・・・何故お二人はここに?」

聞きたかった事を何となく尋ねる。

「私は理沙に面白いものが見れると呼び出されただけだ」

「なっ、美希・・・!?」

裏切るのか?と言った顔で美希を睨む理沙。だが大しても間違ってもいない為、ろくに反論も出来なかった。

「ぐっ・・・卑怯だぞ、美希」

どうしても同犯に仕立て上げたかった理沙なのだが、その言葉しか出て来なかった。

「ふっ・・・ただ私はありのままの事実を述べているだけだが」

「と言う事は今回の首謀者は朝風さん、と」

論戦で上手く躱す美希に加えて、ハヤテもまるで審判を下す裁判官の様に理沙に言い放った。

「どうせ僕達を盗撮でもして、それをネタに僕をまたゆすろうと考えているのでしょう?」

冤罪だと言わんばかりに無実を主張する理沙だが、ハヤテはそれもお見通しかの様に畳み掛ける。

「お・・・恐るべき洞察力・・・」

思ったよりも鋭く突っ込むハヤテに理沙はタジタジになる。縋る様に助けを求め、美希に目をやるが。

「(・・・スマン。何だか今のハヤ太君は怖い)」

という風に理沙に囁き、首を横に振った。

「・・・で、朝風さんはどうしてここに?」

「まぁたまたま偶然にちょっと買い物に来てただけだが」

「・・・本当に?」

ハヤテも、どうしてもこの動研メンバーには疑り深くなってしまっている。

「本当だとも!・・・その、何だ、おじいちゃんの入れ歯の洗剤を買いに・・・」

そう言う理沙の手には格好と同じ、黒い鞄があった。そこから本当だと言う風にビニール袋を取り出し、中の入れ歯の洗剤を証拠品としてハヤテに見せた。

「・・・」

それを見たハヤテは、本当なんだなと信じた。

「それでは・・・何故そのような格好を?」

確かに疑問点はそこ。それならもっと普通の服を着ている筈なのだ。

「・・・まぁ私の趣味だと思ってくれ」

「そ、そうなんですか」

実際はハヤテ達を尾行する為、その大型スーパーの中の一つのテナントで咄嗟に服を即買い、着替えまでした事は言えなかった。いくらなんでも茶化しすぎだ。









「何言ってるんだ理沙。そんな服が趣味とは聞いた事が無いぞ」

しかし、そんな理沙の思惑を吹き飛ばす人物が一人いた。

「お、おい、美希!?(話を合わせてくれ!」

親友である筈の美希だ。いつもなら即座に場の雰囲気を見切って、話を合わせてくれる筈の人物が今回ばかりは違った。

「(悪いな理沙。こっちの方が面白そうだ)」

さもイタズラ好きな子供の様に顔をニヤっとさせて理沙を見やる美希。それに理沙は裏切られた気持ちになった。

「・・・へー、つまりどう言う事か聞かせてもらいましょうか、朝風さん・・・」

先程の様なドス黒いオーラを再び放ちつつ、理沙に尋問した。

「ぐ・・・分かった、言うよ。言えばいいんだろ!?」

「って逆ギレですか!?」





「――――!」

「――――!?」




――――

―――

――






 咲夜はそんなハヤテと理沙と美希達の会話をただ見つめていた。その見ている咲夜の顔は、楽しそうでもあり、・・・また寂しそうでもあった。ハヤテの生い立ちを知っている咲夜は、それでも明るく振舞えてたくさんの友達と学院生活を送っている事が嬉しかったのだ。
 ―――嬉しい。嬉しい筈なのに・・・。


 ・・・こんなに胸が苦しくなるのは何故なのだろう・・・?


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Re: ボケと泪と男と女 ( No.40 )
日時: 2007/07/01 00:39
名前: きらら

『あはははは!』

『ひどいですよ、もー!』

いつに間にか形勢逆転されているハヤテ。しかし、それでもハヤテの顔を見ると・・・やはり楽しそうで。自分の知らないハヤテをこの年上の彼女達は知っている。・・・どんな学校生活を送っているのか、どんな会話をしているのか。自分以外の異性達と楽しそうに会話をするのを見ていると、胸がキュンと苦しくなってしまうのだ。

(・・・重症、やな)

つまり、ここまでハヤテの事を好きになるとは思ってなかったのだ。まさか親戚であり、親友である少女が拾ってきた薄幸の少年にここまで恋心を抱いてしまうとは。・・・誰が予想出来たろう?自分自身にも分からなかった事なのだ。

 ・・・だから、負ける訳には行かない。恐らくうじうじしている内にこの少年を取られてしまう。きっと本人に自覚は無いが、気付かぬ内にその魅力に虜になる女もいるだろう。自分がそうだった様に。・・・そうなる前に、自分が奪えばいいのだ。

「ハヤテ、そろそろ行こーや」

彼の腕に自分の腕を絡ませて、いかにも『付き合ってますよ』と言う雰囲気を出した。

「「おー!!」」

「さっ、咲夜さん!?///」

「やはり二人は・・・」

「付き合っているのか!?」

「付き合ってませんよ!」

「いずれはそうなるかも知れんで」

「えっ!///」

「「おー!!」」

(ニヤニヤ)

よし、この作戦は成功か。・・・と、思われた次の瞬間。
















「何やってるの?ハヤテ君達」

「きゃーヒナちゃん、綾崎君よ」

「・・・お義母さん、変にはしゃがないで///」











咲夜にとって、最大の敵が迫っていたとは気付かなかった。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「何やってるの?ハヤテ君達」

ふと背後からした声にハヤテ達全員が振り返ると。・・・そこには容姿端麗、完全無欠の生徒会長様・桂ヒナギクとその義母の姿があった。

「なっ!?」

「ヒっ、ヒナっ!?」

「あ、ヒナギクさん。・・・とお母さまも」

冷静に普通に反応したハヤテに対し、何故か驚いた様子の美希と理沙。

「(おい理沙、もう呼んでしまったのか?)」

「(いや、呼んでないぞ)」

コソコソと会話する二人。・・・ここにヒナギクが登場してしまった事に少し驚いている様子だ。

「・・・!」

そこでハヤテと咲夜の二人を見たヒナギクはピシっと固まった。

「(おっ、ヒナの目線がハヤ太君達の腕に!)」

「(怒り狂うのか?怒り狂うのかヒナ!?)」

本人にしては失礼極まりないヒソヒソ話なのだが、ヒナギクの顔は、その通りに般若になっていく。

「・・・綾崎君?その手はどぉ言う事か説明してくれるぅ?」

「・・・ヒッ」

今までに感じた事の無い程の重圧がヒナギクの方から押し寄せてくる。確かに咲夜と腕を組んでいる事はその感触から分かる。・・・しかし、それで何故ヒナギクが御立腹なのかいまいち分からなかった。

(・・・いかん!何故だか分からないが、好感度がケ○カに丸焦げにされるガ○トラ皇帝みたいに御臨終なさっている!ここは気の利いた事を言わないと・・・)

想定外の自分のピンチを切り抜ける為に、頭の中から色々な事を搾り出す。

「えっと。実は・・・



















羊ってうし科なんですよ」
















『・・・は?』








そのハヤテの突然な無駄知識に、ヒナギクだけではなくその場のほぼ全員が見事にシンクロした。

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Re: ボケと泪と男と女 ( No.41 )
日時: 2007/07/01 19:43
名前: きらら

「・・・ほう、そうなのか」

「ふーん・・・」

「そうなんや・・・」

「綾崎君物知りなのねぇ・・・」



















「・・・って納得するな―!」




四人が感嘆する中、一人だけムキーッと反論するヒナギク。質問の答えになっていなかった為、納得できる訳が無かった。

「ってかハヤテ君もハヤテ君よ!ト○ビアで誤魔化せる訳無いでしょ!」

「あ、やっぱりヒナギクさん知ってましたか」

「そうじゃなくて!」

ハヤテの返答に苦った表情を見せるヒナギク。

「・・・でも、どうしてヒナギクさんそんなに怒ってるんですか?」

「うっ・・・///」

しかしそのハヤテの言葉に、ヒナギクの猛攻は止まってしまった。

(さすが天然ジゴロ。・・・鈍感だなぁ)

ハヤテ以外の四人は同時にそう思った。咲夜に至ってはさすが同じ女の子なのだろうか、ヒナギクと会って間もないのだが彼女が憤る理由を瞬間的に感じ取っていたのだ。

(しかし面白い切り返しだな。次にヒナがどう出るか・・・だ)

と思った美希だけでなく、その場にいた全員がヒナギクの次に言う言葉に注目する。

(綾崎君をゲットするチャンスよヒナちゃん!)

誰にも言っては無い筈なのだが、同い年から年下から、更には義母にまで見透かされている彼女の気持ち。・・・何所まで分かりやすい性格なのだろうか。

「べっ、別に怒ってなんかないわ!・・・その、あれよ!生徒会長として、生徒達の不健全な行動を注意しているだけよ!///」

「そうなんですか。大変なんですね」

(逃げたな・・・)

ヒナギクの言葉を真に受けているハヤテ以外の、その場の四人にはヒナギクの弁明は言い訳にしか聞こえなかったみたいだ。








「・・・で、本当の所何をしてたの?」

ふー、と溜息を吐き出してヒナギクは再び尋ねた。少し落ち着けたみたいで。

「買い物をしてたんです、夕食の。この咲夜さんが作ってくれるので、楽しみなんですよ♪」

本当に楽しみにしているかの様にニッコリと笑うハヤテ。名前を出された咲夜は、少し恥ずかしいのか顔を微かにだが赤らめていた。

「ほー・・・愛情たっぷりの手料理か。あの大きな屋敷での二人きりの時間はさぞかし嬉し恥ずかしの出来事がいっぱいなのだろうな」

「「えっ///」」

「えっ」

美希のおちょくりが混ざった言葉に反応したのは三人。・・・その内の一人は意味合いが違ったみたいだが。

「ってもしかして・・・本当に二人きりだったのか?」

美希としては冗談で言ったつもりだった。しかし二人の反応を見ると、肯定以外の何物でもない。

「ナ、ナギとかマリアさんは・・・?」

「・・・お嬢様達は、お嬢様のおじいさまの所へ一時里帰りと言うか・・・この三日間いないんですよ」

「そ、そうだったの・・・」

何故かヒナギクは動揺して答えた。・・・否、『何故』では無く。ハヤテとこの咲夜と言う少女が二人きり・・・と言う所を考えると、狼狽せずにはいられなかったのだ。

(じゃあ、あの屋敷には本当にこの二人だけ・・・)

『二人きり』という言葉に妙に反応するヒナギク。恋する乙女にとっては羨ましい・・・というか、何故か許せないという彼女の心境。何故かは分からなかったが、そういう気持ちだった。



「ねえねえヒナちゃん」

そこで口を開いたのは意外な人物、ヒナギクの義母だった。何かいいものでも思いついたのか、やたらと嬉しそうで。

「ヒナちゃんもその夕飯作りを手伝ったらどう?この前生徒会の仕事、綾崎君に手伝ってもらったお礼をしなきゃねって言ってたじゃない」

「おっ、お義母さん!///」

年頃の娘をからかうなぞ、何たる事だと思ったヒナギク。だが実際色々な成り行きで、ハヤテに仕事を手伝ってもらったのは事実なのだ。・・・まぁそれもこの場にいる生徒会メンバーがサボタージュをしたせいでもあるのだが。

「ねっ、いいわよね綾崎君」

ハヤテの手を取り、目で訴えかけたヒナママ(もうこう呼ぶ事にした)。

「うっ・・・」

ヒナママの見た目は随分と若い。少し前までは全然年相応だったのだが(実年齢を知らないが)、・・・どんな事をしたのか分からないが美容院のおかげで前よりも十歳・・・否、言ってしまえば二十歳くらい若返っていた。いやそれはもう言い過ぎなんかでは無く。その若いヒナママから手を握られたハヤテは返答に困った。やはり彼は女性に弱いのだ。
 ・・・隣を見れば咲夜の少し不満そうな顔。ハヤテの方もゴタゴタを起こしたくなかったので、何とか断ろうと口を開きかけると。














「ほら、この前家に泊まらせてあげたじゃない」









「ぶほっ!?」

「「「はっ!?」」」

「わー!///何言ってるのよお義母さん!///」





核爆弾並みの内容の言葉を発したヒナママ。それに反応を示さなかった人間は誰一人としておらず、各々の中で色々な想像が頭の中を駆け巡った。

「まさかヒナとハヤ太君がそこまでいってるとは・・・」

「「何もしてない(してませんよ)!!///」」

「だがお泊りとは、相当仲良くないと出来ない事だぞ・・・」

「だから何も無かったんだってば!///」

「そうですよ!ただ僕が少しの間屋敷を締め出された時に、途方に暮れてた僕をヒナギクさんが拾ってくれただけですよ!///」

誰にも内緒にしていた事実が、まさかこういう風にして、しかもこの少女達の前で晒されてしまう事になるとは露とも思っておらず、ただハヤテとヒナギクは二人して狼狽するだけ。・・・故に、あまり説得力が無い様な気がする。

「それに・・・私とハヤテ君はまだそんな関係でもないんだから・・・」

ふう、と溜息を吐いて言ってしまったその言葉。脱力感から、気が抜けてしまっていたのか・・・。

「「「まだ?」」」

美希、理沙、ヒナママが即座にヒナギクに聞き直した。心なしか、本音が混じった気がしたからだった。

「あっ、いやっ、その、そういう意味じゃなくて!///」

(じゃあどういう意味なんだ?)

この場にいる全員がそう思った。

「ハヤテぇ・・・お泊まりってどういう事なんや・・・(ゴゴゴゴゴゴゴ」

「うわっ、絶○!」

一連の会話を聞いていた咲夜。初めて聞かされたその事実に咲夜は込み上げてくる切なさと、沸々と沸き上がってくる怒りを隠し切れなかった。

「おいピンクのねーちゃん!」

そして怒りの矛先をヒナギクに変える。『ピンク』・・・きっと髪の色を見てそう言ったのだろう。ビシッと咲夜は指を指した。指されたヒナギクは少し不満そうな表情を浮かべて。

「私には桂ヒナギクという名前があるわ」

「ほな鬘のねーちゃん」

「字が違う!被ってなんかないわよ!・・・で、何?」

咲夜は感じ取ったのだ。一番の敵は・・・コイツだと。だから何とか叩き落さなければならない。













「ウチと料理で勝負しぃ!」











「「「おお!?」」」


高らかに挙げた宣戦布告。美希と理沙とヒナママは盛り上がったが、ただハヤテだけはこの場をどうすればいいのか全く分からず、おろおろしているだけだった。
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Re: ボケと泪と男と女 ( No.42 )
日時: 2007/07/11 14:26
名前: きらら



「ウチと料理で勝負しぃ!」

「「「おお!?」」」

その咲夜の宣戦布告により、美希、理沙、ヒナママは盛り上がるのだが、思わぬ方向に話が進んで行ってるのに戸惑いを隠せないハヤテ。

 ・・・一方ヒナギクの方は落ち着き払っていた。いきなり申し込まれた勝負。しかしヒナギク自身、勝負事になると彼女の性格上負けず嫌いなので断る事をしなかった。

「・・・いいわ、料理勝負ね。私に勝負を挑んだ事を後悔させてあげるわ!」

尤も、勝負というよりはハヤテも自分の料理を口にすると言う事に張り切っていたのだが。


・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・


『わー、ヒナギクさんの料理が一番美味しいです!』

『そ、そう・・・?///』

『こんな美味しい料理を作ってくれる人が僕の理想の人だったんですよ。・・・ヒナギクさん、僕と付き合ってください!』

『ハ、ハヤテ君・・・/// 嬉しい!』


・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・


「///」

勝った場合の自分の未来を想像し、悦に浸るヒナギク。彼女の頭の中ではどんな事が行われているのであろうか・・・顔を真っ赤にしていた。

(ヒナちゃん、がんば!)

ヒナママは思う。ヒナギクに勝ってほしい、と。この流れの根本を生み出したのはこのヒナママだった。手伝えとは言ったものの流れ的に勝負へと発展している。まぁヒナギクがハヤテの夕食を作れれば今回の任務は完了!とそれはそれでよかったのだ。

 ・・・ヒナママにとって、どんな形であれヒナギクとハヤテがくっ付いてほしいと願っていた。自分の娘がこんなに想っている・・・多分、これが娘の初恋なんだから。『初恋は実らない』と言うけど、それでも応援したかったのだ。愛くるしい娘が初めて家に連れ込んで来た男・・・印象は『可愛い』という事だった。外見的には、別に娘を誇示する訳でもないのだが、娘に比べて至って普通の少年。『格好悪くは無い』という様な顔立ちで。・・・しかし心はとても純粋だった。

 ―――私が凄い感心したのが、聞けば勤めている三千院家の執事業も、主人の為に物凄い一生懸命らしいし、やたらと強いのに誰に対しても笑顔で優しく接するみたい。木に登って下りられなくなったヒナちゃんを助けたり、時計塔から落ちそうになった雪ちゃんを助けたり、夜の旧校舎にて苦手な幽霊に襲われそうになった所を助けたり。そんな彼の優しく、そして今までにいなかった頼もしい男の人の姿にヒナちゃんは惹かれたんだわ。・・・うん、綾崎君ほどの子も中々いないと思うし、ヒナちゃんいい子を見つけてきたわね。

 ・・・え?ドコまで知っているのかって?・・・ふふ、野暮な事聞いちゃって。秘密よ。まぁ恐らくヒナちゃんは、綾崎君のそういう所に惹かれたんだと思う。あのコ、男勝りであのコより強い子なんていなかったから。

 だから恐らくヒナちゃんのこの恋は、きっと初恋。こんなに可愛い娘だもん、応援しなくちゃ♪


「ヒナちゃん、がんば!綾崎君がおムコさんでも全然OKだからね!」

「ぶっ!?おっ、お母さま!?///」

「お義母さん!からかわないで!///」


 だから願う。この二人の未来に幸あれ、と。






「「おおおお!!ヒナのお義母さんからの了承が!!」」

「ハヤテのアホォ――!」





それによって少女三人が騒ぎまくったのは言うまでもない。


Re: ボケと泪と男と女 ( No.44 )
日時: 2007/07/25 00:27
名前: きらら

あ、桜小路さんはじめまして。このままハヤヒナがいい・・・それもいいかも(爆

続けます

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


場所は三千院家の屋敷の前。来たる決戦を前に、二人の少女は対峙していた。

「勝負内容は簡単や。どっちの料理が美味しかったかハヤテに決めてもらう。選ばれた方が笑者・・・もとい、勝者や!」

「シンプルね。ふふ、久々に腕が鳴るわ!」

そう言う咲夜のバックには虎が見え、ヒナギクのバックには鷲が見えた・・・気がした。

「あの・・・、少し気になってるんですけど」

ふと二人を客観的に見ていたハヤテがそう言い、後ろを振り向いた。

「何故花菱さん達がここに・・・?」

ハヤテの言う通り、美希、理沙、そしてヒナママまでもが三人に付いて来ていた。

「何を言うハヤ太君」

「私達も審判員なのだよ」

「私はヒナちゃんの保護者として出席させてもらうわ。丁度あの人も今日は出張でいないから」

(((それに面白そうだし・・・)))

多分、否、きっと最後に三人同時に思った事が本音なのだろう。
 ヒナママの言うあの人とはヒナパパを指している。ヒナママの言う通り、ヒナパパは本日不在なので、この場に出席する事にした。・・・まぁ仮にいたとしてもきっと来ていただろうが。

 そんな会話を屋敷の前でしていると。

「やっほー、皆―!」

一際明るい声が六人に届き、一斉に声がした方へ振り向いた。そこには紫色の髪の毛を靡かせ、笑顔で走ってくる少女の姿があった。

「せ、瀬川さん!?」

「泉、どうしてここに!?」

そう、やって来たのは生徒会メンバーの最後の一人・瀬川泉というハヤテとまた同じクラスの女の子だった。

「遅いぞ泉。もう少しで始まってしまう所だったんだぞ」

「えへへー、ゴメンなのだ♪で、その噂の女の子というのは・・・」

美希がそう言い、泉は軽く返事をした。そしてお目当ての少女を探し目が合った瞬間。

「あ、このコかー。私、瀬川泉だよ♪よろしくね」

「さ、さよけ・・・愛沢咲夜や」

なんともフレンドリーに握手を求める泉に、標的だった咲夜はそのハイテンションに圧倒されたのかキョトンとした様子で、ほぼ無意識にその手を握った。

「花菱さん、これは一体どういう・・・」

いつの間に美希と泉は連絡を取り合っていたのだろうか。ハヤテはいきなりの展開に付いていけず、話の流れからして美希に尋ねた。

「何、気にするなハヤ太君。食事は大勢の方が楽しいだろう?」

「いや、気にするなと言われましても・・・」

何食わぬ顔でひょろんと言い切る美希にハヤテは戸惑った。・・・勝手に屋敷に人を入れていいのだろうかという考えが頭の中にあるのだが、今更断る事など出来なかった。きっと何か言っても、躱されるんだろうなと思いつつ運命を成すがままに委ねた。

 ・・・しかし委ねてしまう事により、とんでもない事になるとはハヤテは思ってなかったみたいで。






「ハヤテ君?」







「に、西沢さん・・・」



「あ、歩・・・」







更なる激動の瞬間が彼女の登場によって作り出されようとしていた。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「に、西沢さん・・・」


「あ、歩・・・」


ハヤテとヒナギクが言ったその先には、先日と同様に買い物袋を持った歩の姿があった。歩の方はでっかい屋敷の前で、七人という人数の男女(ほぼ女だが)がワイワイ騒いでいるという事に圧倒されたのか、少しオドオドしている様子だった。

「に、西沢さん・・・何故ここに?」

確かに気になった。その買い物袋を見る限り、買い物に行った帰りだと見受けられるのだが。行った事があるので分かるのだが、歩の家から買い物に行くとしたらわざわざ三千院家の屋敷の前を通る必要は無い。もっと近くに買い物できる所がある筈なのだ。

「えっ、えっとね!うーんと、うーんとその・・・そう!あっちの方のスーパーじゃないと買えない物があって、それを買いに来てたの!」

・・・非常に動揺しながら、明後日の方向に指を指して答える歩。あせあせとしているその姿は少し怪しかった。

(・・・まさか歩、ハヤテ君と会えるかもっていう可能性があるからこっちの方にまで来たのかしら)

そう思ったヒナギクも恋する乙女。歩はまだ知らないが(まぁ気付いているのかも知れないが)、ライバルであり、親友でもある彼女の性格を知っているヒナギクは、彼女ならそうし兼ねないと思ったのだ。

 ・・・一方歩むの方は。

(・・・ここでハヤテ君に会えるなんて、やっぱりディスティニー!?まかさ・・・もとい!まさかやっぱり二人は結ばれる運命に!?)

なんて思っていたりしていたから、先程のハヤテの質問には落ち着いて答える事が出来なかったのだ。ハヤテ君に会えるかも知れないからこっちの方まで来ちゃいましたと言えば、ストーカーの様に思われちゃうかもね〜と危惧しながら。
 ・・・つまり、ヒナギクの読みは当たっているのだ。行動パターンがもう読めてしまう彼女に、少し笑ってしまいそうなのだが・・・よく考えると凄く積極的だなと感じていた。

(積極、か・・・)

その積極性を、ヒナギクは少し羨ましいと感じた。もし自分が歩の様に出来ればもしかしたら・・・と言う思いが頭の中をよぎるのだ。うっかりしていると・・・多分気付かぬ内にハヤテを持って行かれそうで。

(・・・あ)

そこでヒナギクにある考えが一つ浮かんだ。これなら穏便に決着が付けられるかも知れないと。




『あのね、歩。・・・私達一緒に夕食を作る事になったの。よかったら、歩も一緒に・・・どう?』

一緒に作る・・・と言う事にしておいて、勝負の事実は隠して伝える。そして歩の知らぬままに勝負は行われ、勝敗が付けられる・・・と言う計画で進めようとしたのだが。







(・・・そんなの、フェアじゃない)





そう、それだと不公平なのだ。料理に本気も何も無いのだが、気持ち次第で作る味は全然変わってくる。料理とはそんなものなのだ。
 ・・・ヒナギクは正義感が強かった。そんな事をしてしまったら、歩に対する裏切りだと・・・否、寧ろハヤテに対しても失礼だと言う気持ちがヒナギクの中にあって、そう誤魔化して言う事はヒナギクには出来なかった。






「・・・歩、これから暇?」

「えっ?あっ、うん、これから帰るだけなんだけど・・・」

「そう。・・・なら私達と勝負をしましょう。一番美味しい料理を作った人が勝ちよ!」

「えっ、えええ!?」

「ヒ、ヒナギクさん!?」

「・・・」

急過ぎる展開に付いていけない歩と、独断と決めるヒナギクに戸惑うハヤテは同時に声を上げた。ただ咲夜は、その様子を黙って見ていた。

「・・・ほう、面白いやないけ」

そしてやっとその口を開いた。ライバルであるヒナギクに助長する様に歩の参加を認めたのだ。
 ・・・思えば、歩もハヤテを狙っているみたいで。本人の口から直接は聞いてはいないのだが、歩のハヤテに対する言動は明らかに好意を持っているとしか見えなかったのだ。

(・・・一気に叩き潰せる絶好の機会やな)

得意科目にて畳み掛けようと仕掛ける咲夜。・・・今回はどうしてもこの勝負に勝ちたい。否、勝たなければならないと念じているのだ。相手にとって不足は無い。この勝負に勝ってこそ、ハヤテの横にいるに相応しいと思っている。本当はこんな勝ち負けでは無くハヤテが誰を選ぶかなのだが、確固たる自信を付けたかったのだ。

「な、何かよく分からないけど分かったわ!(?)とにかく美味しい料理を作るのね」

「ふふ、歩、咲夜ちゃん・・・負けないわよ」

「ふ・・・力の違いと言うのを見せたるわ」

・・・買い物して来て、帰らなくてもいいのか?と一瞬ハヤテは思ったのだが、この意思のまとまった三人を見てそう言う勇気が無かった。

「ほな、行こか」

「そうね、行きましょう」

((((わくわくわくわく・・・・・・・・・・))))

(・・・はぁ、覚悟を決めるしかないか)

妙に張り切る三人と、それを面白そうに傍観する四人と、溜息を吐きながら屋敷の鍵を開ける一人の図はどの視点から見ても不思議な光景だった。

 そして、全員が門の中に入りきろうとした瞬間!







「ちょっと待ったぁぁぁ―――!」





大分暗くなった夕暮れをある酒乱の声が切り裂いた。

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Re: ボケと泪と男と女 ( No.45 )
日時: 2007/07/25 13:49
名前: 柴之介

初めまして、きららさん。

甘すぎる展開から、修羅場っぽく!?
ちょっww咲夜とヒナギクってメッチャ料理得意そうなのに、普通が取り柄の西沢さん参戦ですか!
意外な展開に……なりそうなのかなぁ…。

西沢さんは、もう物凄いハヤテLoveじゃないですか!
てかストーカ……、じゃないですよね、まだ。
脱普通! といった所でしょうか?

な! しかも観覧者多すぎww
ハヤテがオマケのように見える……(ぇ
……って最後にあの方ですか!!
オチ担当のあの方登場?! 

この小説は咲夜が活き活きしてて、読んでて面白いと思いました。
話がややこしくなりそうなお方が登場しましたが、頑張ってください。

では!
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Re: ボケと泪と男と女 ( No.46 )
日時: 2007/07/27 19:43
名前: ナマツ

どーも、お久しぶりです! ナマツです!

ヒナギクと咲夜の料理勝負!!
ハイスペックな二人のハヤテを賭けた女の戦い・・・

わくわくわくわく♪

ヒナママはものすごい楽しそうですね♪

で、後から西沢さんも参戦!
普通のスペックを持つ彼女には双璧が高すぎるんじゃないのか?

ハヤテを想う気持ちでは負けてませんがね・・・
(それでもストーカー紛いの行為はダメだろ・・・)

悪乗りしているギャラリーが見守るなか、
さらにあの酒乱教師が登場!

さてさて、ハヤテを巡る戦いはどうなるのか!?

続きが楽しみです♪

更新頑張ってください!!
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Re: ボケと泪と男と女 ( No.47 )
日時: 2007/08/05 00:11
名前: きらら

柴之介さん、初めまして!ギャラリー増えすぎ・・・確かに自分もそう思いますw書き切れるか心配(ヲイw

ナマツさん、こんばんわ!あの二人に西沢さんを導入するとどうなるか・・・書いている自分も想像がつかない状態で・・・(ヲイ!w

そしてありがとうございます!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「お、雪路」

「あ、桂ちゃん」

「お、お姉ちゃん!?」

八人の耳に届いたのは・・・ヒナギクの実の姉であり、白皇学院の教師でもある、桂雪路の声だった。

「・・・」

「っておいそこ、綾崎君!無言で門を閉めるな!」

ハヤテはその声を耳にしたとしても、問答無用で鍵を締めた。

「・・・」

「そんなに嫌そうな顔するな!何、お前はアレか!?カレーの中に嫌いな人参が入ってても、好き嫌いせずに食べなさいと言われた子供の様な心境なのか!?」

・・・例えがよく分からなかった。

「何でお姉ちゃんがこんな所にいるのよ!?」

「たっ、たまたまよ!つい諭吉の匂いを嗅ぎ付けていたらここに辿り着いただけよ!」

まぁ確かにこの三千院家には、見た目からしてお金の匂いがプンプンするのだがそれはそれで怖かった。

「何変な事言ってんのよ!・・・まさか私かお義母さんにお金を借りる為に後をつけて来たんじゃないでしょうね!?」

「な、何を言うヒナえもん!ナギちゃんやマリアさんに言えば何とかなるって・・・」

「なおさら悪いわ!ちゃんと教員としてのお給料貰ってる筈なのに何でそんなにすぐ無くすのよ!?」

「えー、だって・・・だって・・・」(注※ 使いまくるからです。主に酒、酒、酒、酒・・・以下略)

白熱した言い合いをする二人に、ハヤテは苦笑いするしか無かった。
雪路はハヤテの担任でもあるのだが、そのハチャメチャな性格にハヤテは苦労させられまくっていた。

 ・・・初めて会った時、三千院家の執事だと言うのに不審者扱いされたり、白皇編入試験の際、試験管である彼女に妨害されたり、教師と言う立場にあるのに関わらず生徒にお金をせびったり・・・。有能な妹とは正反対で、付いていけないその性格にハヤテは手を焼いていた。・・・まぁヒナギクの方もある意味手をつけられない性格をしているのだが。

(・・・苦手だなぁ、この姉妹)

どうもこの二人に対して(・・・まぁ女性全般そうなのかも知れないが)苦手意識を持ってしまう。特に雪路の傍若無人な奇行には手に負えず、ハヤテ自身彼女に教師として・・・否、人として人間性を求める事を諦めてしまっている。

「話は聞いたわ綾崎君!ここは確かな味覚を持っている美人審判員が必要じゃなくて?」

・・・何所から話を聞いたのだろうか?

「結構です。間に合ってますから」

「っておいこら!即断るお前はアレか!?セールスマンが嫌いな主婦か!?」

「あのー・・・、先程から何を言ってるのかよく分からないんですが」

つまりはあれだ。雪路の狙いはタダで夕食をゲットする事だった。しかしそれをモロに言ってしまうと物凄い確立でNOになるだろう。故に言えなくて、何とか切り抜けようと有耶無耶にしながら打開策を練っていたのだが。

「桂ちゃんはタダでご飯を食べたいだけだよね」

「そうだな。そしてあわよくば、屋敷に置いてある酒を盗み飲みするつもりだろうな」

「最悪、持って行ってしまうのかも知れんな」

「ぐおっ!?」

考えていた事を一寸の狂い無く言い当てられた雪路。そう、正しく少しも違わない完璧な解答例如く。狼狽しながら、生徒会三人娘にその観察力やら洞察力を勉学面で発揮してほしいと願った。



「ふーん、そうだったんですか、桂先生・・・」



ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・・とダークなオーラを放ちながら雪路に詰め寄るハヤテ。北○の拳の主人公如く、手をポキポキ鳴らすその姿は普段の様子とは全く違う雰囲気なのだが、その圧倒的な殺気のおかげで違和感は無かった。

「ケ、ケン○ロウ・・・」

「北斗百・・・」

「ま、待って!それ以上は著作権的にも待つのよ!」

後ずさりながら雪路は思った。どうすればこの場を巧く切り抜けれるのか・・・を。否、もう巧くなくてもいい。兎に角どうしても手に入れたい物があるのだ、それに対しての執着心は物凄いモノがあった。








「(・・・ええい、苦肉の策よ!)あたしもその勝負混ぜて頂戴!」










「「「「ええええええ!!??」」」」








雪路の突然の参戦表明に、その場にいた者で驚かない者はいなかった。
 ・・・それもその筈だ。歩はまだ気付いてないが、今回の勝負の目的はハヤテなのだ。勝者がハヤテとイチャつく(?)事が出来るという勝負に雪路は分かっててそう言っているのであろうか。

(ふふ、我ながらいい作戦だわ。兎に角潜り込めれば私の勝ちだから)

・・・当然の事ながら雪路は分かっていなかった。









 一方ヒナギクの方は気が気ではなかった。

(えっ、お、お姉ちゃん・・・もしかしてハヤテ君の事・・・)

もしかしたら姉が・・・年の差や、教師と生徒という立場の違いを踏まえてまで、ハヤテ争奪戦に参戦しようとしているのかとヒナギクは危惧していた。ヒナギクにとってハヤテの魅力は其れ程までにあると感じていて、その容姿から年上まで気付かぬ内に落としてしまっている天然ジゴロさんだしねと納得してしまっている部分もあった。

「おい、雪路、分かっててそう言ってるのか・・・?」

流石の美希も雪路の言動に驚き、そして戸惑っていた。

「分かってる分かってるって」

雪路にとっては勝負は二の次。兎に角潜入すれば酒が手に入る・・・つまり勝ちなのだ。
 実際三千院家には色々な事にこじつけてパーティをする為、来賓様にワインやらその他諸々のお酒が貯蔵してあるワイン庫というモノが存在する。あまり三千院家に出入りしない雪路なのだが、前にハヤテの白皇入試試験合格パーティで行った際、三千院家にはやたらと人が集まる事があると知ってそれくらいあるだろうと見越して今回この勝負に臨もうという気持ちだった。
 ・・・その行動力を教師という彼女の立場で、本職で発揮してほしいと願う場面だろうか。

「ま、そう言う訳だからさっさと始めない?もう辺りは暗くなっちゃったわよ?」

挙句の果てにはまるで大会の主催者如く、この場を取り仕切り始めた。流石は雪路だった。


「え、ええ・・・」

「お、おう、そうやな・・・」


ヒナギクは心に受けたショックからか、咲夜も雪路にタジタジな心境で曖昧な相槌を打つしか出来なかった。


「「「「・・・・・・・・・・・」」」」


その他の四人も、雪路の奇行に黙りこくるしかなかったみたいだ。

(・・・まさかここで雪ちゃんが出て来るとは・・・)

流石のヒナママも予想外・・・過ぎる展開に冷や汗を隠し切れなかった。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「うし、ほな始めるで。ハヤテは誰が何を作るかみたらあかんで。料理を食べてみて、一番美味しかった料理を選んでもらう。これなら平等に勝負着くやろ?」

ホテルの調理室かよ!と思わせる位の広さを誇る三千院家調理室にて、咲夜がそう告げた。先程は雪路に驚き戸惑っていたのだが、もはや咲夜にとって関係は無かった。とにかく勝負の相手を叩きのめす・・・それだけの事なのだ。

「ええ、そうね」

「うん、まだよく分かんないけど頑張るよ!」

そんな咲夜に同調しながら闘志を燃やすヒナギクとハム沢「だっ、誰がハム沢かな!?」。
 ・・・その中で一際目立つオーラを放つ輩がいた。


「よっしゃ、やるか―――!!」


雄叫びを上げ、潜入出来た事がこの上なく嬉しく思っているらしい雪路。それは勝負に対してなのか、それとも酒に対してなのか・・・否、雪路という人間からしてみれば一目瞭然だとは思うが。
 ・・・そんな雪路に、本意を知らないヒナギクはやはり複雑な心境を持っていた。

(でも考えすぎよね。お姉ちゃんがハヤテ君の事を・・・だなんて)

自己解決を試みる。だが考えれば考える程、どつぼに填る様な気がして。気が気ではなかった。

(・・・でも、ここで聞いておかなきゃやっぱり納得できないわ!)

そこでヒナギクは勇気を振り絞る事にした。



「・・・お姉ちゃん、ちょっといい?」


「ん、何?ヒナ」


雪路を連れて調理室の隅へと二人一旦場から離れた。

(おっ、ヒナが)

(桂ちゃんを連れてったよ!)

(ここは姉妹の修羅場、血を見る事になるのか!?)

三人として、まるで昼ドラを見ている様な気分でこれからの展開を面白がりながら傍観していた。



「(ひそひそ、ひそひそ・・・)」

「(・・・!ひそひそ・・・)」



調理室の隅っこにて傍から見れば言い争っている様にも見えるヒナギクと雪路。

「・・・しかし、何を話してるのか気になるな」

「そうだね。でも後で聞いても教えてくれなさそうな雰囲気だけど・・・」

「ううむ・・・聞き耳立てても無理か・・・」

手に入れたいモノがそこにあるのに手に入らない様な、そんな歯痒い気持ちで三人は悔しがった。


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Re: ボケと泪と男と女 ( No.48 )
日時: 2007/08/05 17:25
名前: きらら

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ねえ、綾崎君・・・否、もうハヤテ君でいいや、ハヤテ君ってどんな女の子がタイプなの?」

「言い直さなくてもいいですよお母さま・・・(汗」

一方、ヒナママはハヤテにそんな質問を投げ掛けていた。しかしヒナママは自分の娘達の様子が気にならないのであろうか?否、気にならない筈が無かった。
 ・・・だからこそ今、渦中のハヤテにそんな質問をしたのだ。初めて娘の心を奪った(もう雪路はそうでは無いと感付いている)少年の事がヒナママはとても興味がある様で。

「・・・で、ハヤテ君はどんな女の子がタイプなの?」

「タ、タイプですか・・・」

(えっ、って言うか何故僕にそんな質問を?もしかして気付かぬ内にお母さまEDのフラグが・・・












っていやいやいやいやいやいや!それはダメだハヤテ!何と言うか、人としてダメだ!第二のペ○ジーニになってしまう!・・・あ、否、別にペ○ジーニが人としてダメと言う訳ではなくて・・・って言うか何を考えてしまっているんだ僕はぁ!?)



捉え方一つで感じ取る意味合いは全く違ってくるものだ。



「そっ、そうですね・・・タイプ、ですか。うーん、しっかりしている人・・・ですかね」

「あら、ヒナちゃんなんかピッタリじゃないの」

(あ、やっぱりそっちだったか)

そこでヒナママが何故その様な質問をしたのかが分かり、ハヤテは少しホッとした。・・・しかし、よくよく考えてみればそのヒナママの言葉はヒナギクを勧めている様に聞こえて。

「えっ、えっ・・・」

「ねっ、ヒナちゃん生徒会長も努めている事だし、しっかりしていると思うわ」

ハヤテは戸惑った。会話から状況を察すると、ヒナギクと付き合う事を容認・・・と言うかそういう流れにされていそうな気がするのだ。

「結構お似合いだとは思うけど」

更に爆弾を投下していくヒナママ。まるで言葉の戦闘機みたいだ。

「ハヤテ君はキライなの?ヒナちゃんの事」

「いっ、いやっ、そう言う訳じゃ・・・。そりゃ好きか嫌いかって言ったら、嫌いな訳無いし・・・憧れてると言うか・・・ってお母さま!ヒナギクさんの気持ちを少しは考えてあげて下さいよ!僕みたいな男とヒナギクさんが釣り合うなんて思ってもないんですから」

ハヤテにとって、ヒナギクと付き合うなど地球が引っくり返る様なモノで、万が一にもありえない事だと思っていた。あの同級生、上級生問わず絶大過ぎる程の人気を誇る才女と、借金まみれの甲斐性の無い男が合う筈が無い。・・・だからこそ、そういう言葉をハヤテは選んだ。

 ・・・だが。


「あら、ヒナちゃんはそうは思ってないみたいよ?」

しかしヒナママはハヤテのそんな考えをかき消すかの様な言葉を紡いだ。

「・・・え?」

見事に考えをかき消されたハヤテは、そんな生返事しか出来なかった。
 ・・・否、ハヤテはそこで冷静に考えてみた。そんな事は普通に考えてある訳が無い。あの誇り高き白皇の生徒会長・ヒナギクが自分ごときに関心を持つ理由が見当たらないのだ。

 だが次の言葉でまたまた引っくり返される。



「だって家にいる時の会話がハヤテ君についての事が多いんだもの」



「「えっ?」」


さすがにそれに反応したのはハヤテだけでは無く、二人の会話を傍聴していた歩までもが反応した。


(ヒナさんって・・・やっぱりハヤテ君に、恋、してるんだ)


何となく、何となくだが感付いていた。だって、好きでもない男を家に上がらせ、そして泊めまでする訳が無い。でも確信が無かったのだ。

 ・・・否、本当の所その事実を知るのが怖かったのかも知れない。何しろ、勝てる要素が見当たらない。容姿、知性、性格、その他諸々・・・どれをとっても自分は『普通』にしか過ぎず、比べる対象は『極上』モノだと歩は劣等感を感じてしまうのだ。そしてそんな最高級の完璧少女を陥落させた程の元クラスメイトこそ、自分とは不釣合いだと感じてしまっていた。

(でも・・・でも!)

そんな自分でも・・・そんな自分だからこそ、負けては無い・・・否、負けたくない『想い』があった。

(ハヤテ君を好きだっていう気持ちだけは・・・譲れない!)

気持ちを再確認した歩。・・・その顔は、希望に満ちている様だった。







「だから家でもハヤテ君、ハヤテ君って言ってるのよ」

「えっ、そっ、そうなんですか?」

聞かされた意外な事実にハヤテは驚き、戸惑った。

「そうなのよ。今日生徒会の仕事手伝ってもらっちゃったーとか、ハヤテ君の淹れてくれた紅茶はおいしかっ・・・、・・・っ!」

そこでヒナママの言葉は詰まった。

「・・・どうしました?お母さ・・・ひぃっ!?」

そんなヒナママの様子が気になったハヤテも、固まっているヒナママの目線の先を辿ってみると・・・ハヤテも固まった。


「・・・お二人さんは何を話しているのかな・・・?(ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・」


そこには・・・鬼の様な形相をしたヒナギクがいた。


「あら、ヒ、ヒナちゃん。い、いつから聞いてたの?雪ちゃんとの話は終わった?」

そんなヒナギクに少しタジタジになりながらも恐る恐る伺うヒナママ。しかしこめかみに怒りのマークを浮かべたヒナギクは取り合わなかった。

「・・・で?私が家で何を話してるって・・・?」

妙な迫力を感じた二人。口をパクパクさせるだけで巧い事言葉が出なくて。

「あっ、いやっ、そのっ、ヒナ、ギクさ・・・」

「ヒナ、ちゃん・・・別に、そのっ、何も・・・」


「問答無用ぉぉぉ!!!!」



そして二人の頭から今まで聞いた事が無い程の音量で、竹刀の乾いた音が響いたとさ。

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Re: ボケと泪と男と女 ( No.49 )
日時: 2007/08/08 00:27
名前: きらら


「さ、咲夜ちゃん、歩。そろそろ始めましょうか」

いつの間にヒナギクは竹刀を持っているのであろうか。そしてその竹刀からは少し煙が出ていて・・・。咲夜は目をヒナギクの後ろの方向に向けると、仲良く二人肩を並べて目を回しているハヤテとヒナママの姿が目に入った。

「きゅ〜・・・」

「ふぃな、ひゃん・・・ひほほはふぇんひっほんふぇ・・・」

意識的にこちら側なのか、向こう側なのか分からない世界に突入しつつある二人。ヒナママは「ヒナちゃん、見事な面一本で」と言いたかったのだが既に呂律が回らず状態で。

「ハヤテ!」

咲夜はそんなハヤテを心配するかの様に駆け寄った。否、実際心配しているのだが。

「ざ、ざぐやざ〜ん・・・」

「おー、よしよし、痛かったろうなぁ」

母親に甘える子供の様にハヤテは咲夜に縋り付いた。それを見たヒナギクは心中複雑な気分で。咲夜はハヤテの痛めた頭を擦って、そんなヒナギクに対してニヤリと笑みを浮かべた。

「―――っ」

(ふふ、甘いな・・・。もう既に勝負は始まっているんやで)

好感度を上げるのに何の苦労もしなかった咲夜に対して、ヒナギクは地団駄を踏んだ。――しまった、と思っている様子で。少ししてやられた気分になったのだ。

「―――と、とにかく!さっさと始めるわよ!」

そして居ても立ってもいられなくなったヒナギクは内心ムカムカする気持ちをどうにか抑え付け、キッチンへと背中を向けたのだが。


「・・・で、雪ちゃんとの話は終わったの?」

ヒナママの言葉に足を止めて、再び振り向いた。頭に出来たやけに大きいタンコブを気にしてないのかヒナママは至って普通にしていたが、ハヤテの方は未だに咲夜に縋り付いてピーピー涙を流していた。そんなハヤテがやはり気になる御様子で。

「終わったわよ。終わったけど・・・ってハヤテ君!いつまでそうしてるのよ!?」

今、ヒナママと会話をするよりもヒナギクとしてはとにかく咲夜とハヤテを引き剥がしたかった。

(ここから少し、ハヤテは要約ですw)

「び、びどびでぶよ、びばびぶざ〜ん・・・(約:酷いですよ、ヒナギクさ〜ん)」

「おー、よしよし。さぞ痛いんやろなー。痛いの、とんでけー」

咲夜にあやされるハヤテを見て、ヒナギクはとんでけーよりも寧ろどんだけーと言う気分だった。

(はぁ、何でこの人の事好きなのかしら・・・)

そう言う女々しい面だけ見るとそんな気分になんたのだが。やはり好きな人と異性とのそういう場面は見たくない訳で。

「ハヤテ君、ごめんね。痛かった?」

咲夜に縋り付いているハヤテに近付き、その叩いた箇所を優しく撫でる。

「びば、びぶざん・・・(約:ヒナ、ギクさん・・・?)」

ハヤテはそんなヒナギクの突然の撫で撫で攻撃に戸惑った。・・・よくよく考えると、とても恥ずべき事をされている気がして。

「・・・・・・///」

ハヤテはカァァっと自分の顔が赤くなっていく温度の変化を自分でも感じ取る事が出来た。

(・・・な、何よその反応は!こっちが恥ずかしくなっちゃったじゃないの!///)

そんなハヤテにヒナギクも自分の顔が赤くなっていくのを感じて。

「とにかく!始めるわよ。あんまり長い間こうしてると日も替わっちゃうわよ」

そうしてようやく、ようやくヒナギクは台所へと身を向け、それに歩も付いて行った。

「・・・ヒナさん。私、負けませんから」

そんな歩に対してヒナギクは笑みを浮かべて。

「ええ。正々堂々戦いましょう」

お互い健闘を祈り合う様に見えるが、当人達は火花を散らしまくっていた。

「・・・やるか。ハヤテ、待っててな」

少し複雑な表情をしていた咲夜だったが、見る見るうちに戦士の様な顔付きになり、キッチンに向かった。




「・・・そういえば、あのセンセは?」

ヒナギク、歩と共に台所の前に立つと咲夜は思い出した様に辺りを見回した。




「――っ!?」




・・・すると咲夜は何を見たのだろう、一瞬にして固まった。
 雪路を見つける事が出来たのだが、先程まであんなに存在感があった雪路は今はもう見る影も無く。



「・・・・・・」



椅子にロープで身体をガチガチに縛り付けられ、微動だにしない姿を目の当たりにしたのだ。頭からは煙がプスプス出ていて、口からは泡がブクブク出ていた。

「あ、気にしないで。ああしとくのが一番いいから」

まるで何事も無かったかの様に振舞うヒナギク。雪路には一目もくれる事無くその言葉を口にしたので。




(・・・本当に何があったんや――!?)




そんなヒナギクに咲夜はほんの少し、恐怖感を覚えてしまった。


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Re: ボケと泪と男と女 ( No.50 )
日時: 2007/08/09 13:47
名前: 柴之介

こんにちは、きららさん。

ヒナギクは恐いですねー……義母さん殴って…。
ハヤテ殴って……。
ま、二人も悪いと言えば悪いんですが。

……あ〜、ハヤテのドコンチクショー!! って殴りたいです。
咲夜にそんな事してもらうんじゃない!
仮にも年上なんですから!
…やる方もやる方ですがね。

甘い…甘いですね。
ハチミツの砂糖入りジュースよりも甘い。
でも、それが面白いんです。

ヒナギクは恐ろしいと咲夜は感じたんですけど…。
少しじゃない、少しじゃないよ! きっとだいぶ思t(ぐはっ


誰が勝つのか楽しみです。がんばって下さい!
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Re: ボケと泪と男と女 ( No.51 )
日時: 2007/08/12 18:31
名前: きらら

おお、柴之介さんこんにちは!甘さが伝わっていれば幸いですw

ちなみにヒナギクは雪路も殴っています。しかもあの雪路が一撃で沈むくらいの力でw

コメントありがとうございますね♪



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「追い出されちゃったね」

「あぁ・・・でも雪路に比べるとマシだがな」

「それにしても楽しみだな、あの三人の本気の料理」

別室の客間にて生徒会メンバー、ハヤテ、ヒナママの五人は待機していた。・・・雪路だけは縛られた椅子ごと廊下に投げ出されたままだが。

「それにしても本当に広いのね、三千院家って」

復活したハヤテにヒナママは話し掛けた。三千院家へ立ち入るのは今回が初めての事で、余りにもの想像以上のスケールの大きさにヒナママは圧倒されていた。

「ええ・・・まだ僕の知らない場所も多くあるんですよ」

三千院家の執事のハヤテなのだが、広過ぎる屋敷にハヤテはまだ全てを把握出来てなかったのだった。

「・・・それにしても、待ってるこの時間って暇だな」

料理が完成するまで待っているだけのこの時間帯は、生徒会メンバーにとって少し退屈な時間でもあったのだが。
 ・・・その美希の言葉が合図になったかの様にいきなり客間に音楽が鳴り出した。


「「「「「――――!?」」」」」


それもギターソロから始まるギタギタなヘビメタ調で。いきなり鳴り響くその過激な音楽に五人は身構えた。




『レディース&ジェントルメーン!!』




そして突然のその声。まるでラジオのDJみたいなノリのやたらと元気な声だった。


『今宵は三千院家へようこそ参った!暇を持て余しているそんなオ・ヌ・シに、とっておきのサプライズなイベントをキャリーオンしに来たでござるよ!』


・・・外人なのか、武士なのかよく分からない口調にツッコミ所満載だったのだが、如何せん五人は冷や汗を掻くだけで誰もツッコミを入れる事が出来なかった。咲夜がこの場にいれば間違い無く真っ先にツッコむのだが。

「・・・ハヤ太君、何だ?コレは」

もはや理沙もただそう聞くしか無く、ハヤテにそう尋ねる。

「いっ、いや、僕もよく分からないのですが・・・」

ハヤテも何が何だか分かる筈も無く、ただ首を傾げるだけだった。


『むー、ハヤテ様のイ・ケ・ズ♪(はぁと)ハヤテ様は拙者が誰かアンダースタンっ!?でありんすな?』


もはや言語も定まっていない。

「ほら、向こうはそう言ってるぞ」

「っていやいや!本当に知らないですから!」

本当に身に覚えの無い事で、向こうからそう言われてもハヤテはただ戸惑うしか無いのだ。
 ・・・だが。


―――ん、ハヤテさま?


その呼び方に奇妙なデジャヴを覚えた。


―――もしや・・・いっ、伊澄さん!?


主の親友の超天然おっとり少女の顔がハヤテの頭に浮かんだのだが、ブンブンと首を振り、それは無いだろうと考えをかき消した(・・・確かにこんな伊澄は見たくない)。

「・・・はっ!?」

そこでハヤテは何かを思い出したかの様に目をカッと開いた。

「・・・もしや、あなたは・・・エイト!?」

ハヤテがそう言うと客間の照明が一気に落ち、そして客間に何故あるのか分からないスポットライトが扉に当てられた。


『イィィィィエェェェスゥゥ!!』


そして某クイズ番組の博士みたくその奇声と共に扉が開いた。そしてそこにいたのは。

 ・・・朝咲夜と出掛ける際に見送っていた介護ロボ『8(エイト)〜○ista Ver〜』だった。本日衝撃な出来事が有り過ぎたが為に、ハヤテはそのエイトの存在をすっかり忘れていたのだが。

「イェーイ、ベイビ!正解でござる!」

やっと当ててくれたかと嬉しそうな声でエイトは返事をした。そして照明が再び点灯し、エイトのその格好を見ると。

(ちょんまげに、そして手に持っているのはテンガローハット・・・何故なんだ――!?)

これがもしかしたら今日受けた中で一番凄い衝撃なのかも知れない。

「ザッツライッ!拙者の名はエイトであるでごわす!」

そう言うエイトは朝会った時と明らかに口調が違い、もはやよく分からないキャラクターになっている。・・・一体、何があったのだろうか?

「DAHAHA!介護ロボとしての性能は抜群な○ista ver.でござるが、さすがは牧村主任!スベシャ〜ル・モードで上様の退屈を凌がせる為に、退屈と言う言葉を合図に拙者はミラクル・コメディア〜ンに変身するというビューティフォー!な機能まで付けて下さったでござるよ!」

コメディアンと言うかは、ハヤテには存在そのものがネタにしか思えなかった。

「へー、どんな面白い事してくれるのー?」

だが意外な食い付きを見せた泉。それを聞いたエイトは、機械なので表情こそ分からなかったが、よくぞ聞いてくれた!と言わんばかりに嬉しそうに見えた。

「ではここで一つ・・・かの有名なコンビのネタをやらせていただきます」

かの有名なコンビのネタって、パクリかよ・・・と五人は思ったのだが、自らミラクル・コメディアンと名乗るからには相当な自信を持っているんだな、と事実少し期待した。

「「「「「・・・」」」」」

しかし一人でコンビネタをやるなんて、一体どうするつもりなのだろう?

 すると今まで掛かっていたヘビメタ調の曲の音量が段々小さくなり、そしてフェードアウトした。



――――ジャンっ、ジャンっ、ジャンっ、ジャンっ、ジャンジャンジャージャージャージャー、っジャジャジャジャージャ!



そしてアコースティックのギターを掻き鳴らす音が響き渡った。

(・・・ん?これ、どっかで聞いた事がある様な・・・)

その独特なストロークに五人がシンクロにそう思った。・・・どこかで、確かテレビか何かで見た事がある感じの。








「♪何でだろー?何でだろー?」







(って、テ○トモかよ―――!!??)



歌が始まると同時にエイトは手をグルグルさせている様な、奇妙な踊りをし始めた。それは・・・赤色と青色のジャージを着た二人組みのネタだった。



(それに古っ!!)



一昔前に流行し、見なくなったネタなのだが(失礼)。

「♪何でーだ何でだろー?」

ハヤテ達からしてみればその選択をしたエイトに何でだろう?と聞きたい気分だった。

「♪原作で出番があまり無いのは何でだろー?」


(・・・使い辛いキャラだからじゃないのか?)


全員心の中だけでツッコむだけの、自虐ネタから始まったエイトの独壇場。もう暴走しているとしか見えなかった。

 もはやエイトの一人舞台だった。何故か泉だけは楽しそうにケタケタ笑い、後の四人は苦笑いという状況の中、演目は二、三十分くらい続いていった。

「以上、有難うございました!」

そして終演を迎えると、パチ、パチ、パチ・・・とまばらな拍手が起こるしかなかった。

(あの人はこれが面白いと思って作ったのだろうか・・・?)

手を(一応)叩きながら、マッドサイエンティストの笑いのセンスにハヤテは疑問を感じた今日この頃だった。

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Re: ボケと泪と男と女 ( No.52 )
日時: 2007/08/14 15:41
名前: きらら



「うわぁ・・・美味しそうですね」

テーブルに並べられた色とりどりの料理にハヤテは感嘆の意を示した。それを見ていると空腹感を更に刺激させられる様な、すぐにでも食してしまいたいと言う様な気分になった。

「ほな、早速ハヤテに食べてもらおうかいな!桂のねーちゃんに西沢のねーちゃん!準備OK!?」

「ええ、いいわよ」

「絶対私のが一番美味しいんだから!」

それぞれの意気込みは凄いみたい。そんな三人に圧倒されながらハヤテに席に着いた。

「勝負はそれぞれ一品ずつ。最初にハヤテが食べ比べて、順位を付けて貰うで。いいな?・・・よっしゃ、先ずはコレや!」

咲夜がそう言い、ハヤテの前に手始めの一品目を出した。

「これは・・・肉じゃがですね」

それは男が女性に作ってもらいたい料理NO.1(なのかな?)の肉じゃがだった。



―――試食!


某番組如く、ゲスト(ハヤテ)が先ず始めに食べる進行みたいで。それを八人(+一体)は固唾を呑んで見守る。

「いただきます」

そしてハヤテは箸を持ち、ジャガイモを食べやすい大きさに割った。


(((・・・ごくっ)))


緊張している三人にとって、そのハヤテの一つ一つの動作がやけに重々しく感じている。そしてハヤテは・・・ついに割ったそれを口の中に入れた。

「・・・(モグモグ)」

口の中で何度も噛み、その味、感触を確かめる様に何度も舌の上で動かした。




「こ、これは・・・!?」




「・・・ど、どう?ハヤテ君」




そんなハヤテに、やはり娘の勝負の行方が気になるヒナママもどうやら緊張している様で、ハヤテに感想を尋ねた。


「じゃ、ジャガイモの柔らかさは口の中で溶ける様で完璧だ!肉も丁度良い柔らかさで上手くマッチしていて・・・。

 そして何よりもこの味!甘みが程良く出ていて、それでいて飽きを感じさせない優しい味・・・思わずご飯が欲しくなるこの味!・・・う、美味いっ!」


まるで料理漫画の様な恥ずかしい解説だが、其れ程までにハヤテの舌を唸らせたのだ。


―――よしっ!

と、ハヤテの真後ろでハヤテに見えない様にガッツポーズをしたのは・・・ヒナギクだった。どうやらこの肉じゃがを作ったのは彼女らしく、そのハヤテの言葉に素直に喜んでいた。


「「・・・〜〜っ」」


そんなヒナギクに苦虫を噛み潰した様な表情をした咲夜と歩。悔しがっていた。


「ほな、次はコレや!」

「・・・って展開早っ!」


もう少しその味を噛み締めたかったハヤテなのだが、咲夜は先を急がせる様に次の一品をハヤテの前に差し出した。

「早うせんと、後に残っている料理が冷めてまうからな。早目に次行こ」

む〜と、少し不満気にしていたハヤテなのだが咲夜の言う事も尤もなので、おとなしく言う事を聞く事にした。・・・咲夜の方は、ハヤテに早く自分の料理を食べてもらいたいだけなのだが。


「次は・・・大根の煮付け、ですね」

ハヤテの前に出されたのは何とも言えない、所謂普通の大根の煮付けがあった。そして先程と同様に、食べやすい大きさに大根を割って口へ運んだ。

「モグモグ・・・こ、これは!?」

ハヤテに衝撃が走る!―――でも無く、見た目通り、普通の大根の煮付けだった。

「・・・」

何ともコメントし難い料理にハヤテは言葉を失った。見た目も味も、食感も・・・何もかもが普通だったのだ。

「お、美味しいですね」

だが優しい彼は普通の味をそう言うしか出来ず、大したコメントも無しに終わった。


―――あれ、ハヤテ君反応が薄い・・・。


ハヤテの後ろでそれを見ていた歩。この煮付けを作ったのは歩だった。本来時間を掛けて作るべき料理なのだが、何故これを選んだのだろうか?歩の方は自信作だったので、ヒナギクが作った一品目に対してそのハヤテの反応の薄さに少し意気消沈してしまった。・・・まぁ、ハヤテの思った通り、味も感触も何もかもが普通だったのだが。さすがは歩、作る料理までもが当たり障りの無い物だった様だ。


「よっしゃ、次!最後はコレや!」


そんな様子を見て咲夜はニヤリと笑みを浮かべ、最後の一品をハヤテの前に差し出した。



「・・・こ、これはっ!!??」



そしてハヤテがそこで目にした物とは・・・!!??

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Re: ボケと泪と男と女 ( No.53 )
日時: 2007/08/15 13:10
名前: きらら


最後にハヤテの前に出された一品・・・それは。

「麻婆豆腐・・・ですね」

中華料理の真髄・麻婆豆腐(作者が勝手にそう思っている)だった。赤黒いとろみと豆腐の白のコントラストがソレを正しく麻婆豆腐だと言うオーラを醸し出していて。

「・・・ん・・・!!??」

一口口の中に入れると・・・ハヤテの言葉が詰まった。

「・・・ど、どうや?」

((ってそう言う風に聞いたら分かっちゃうじゃないの!))

(あ、しもた)

思わず咲夜はハヤテにそう尋ねてしまった。・・・実際、この麻婆豆腐を作ったのは咲夜。自分の渾身の料理がハヤテの口にどう伝わったのか聞かずにはいれず、感想を尋ねてしまった。・・・それにて後ろのギャラリーにはこれが誰が作ったのか分かってしまったのだが。

「こ、これは・・・!?ピリっと辛さが来るけれども隠された甘み・・・そして何よりもこの豆腐とのコラボレーション!上手く口では表せない程の絶妙なバランス・・・!美味い、美味いぞこれ!」

ハヤテにはもはやその味に感動するだけで。そんな咲夜の様子にて誰が作ったのかを感付く事は無かったみたいだ。・・・さすがハヤテだった。






 そして三品食べ終わり、ハヤテは箸を置いた。

「ほな、ハヤテ。判定の時や。・・・どれが一番美味しかった?」

進行役の咲夜がハヤテにそう尋ねる。・・・それは、運命が決まる瞬間でもあった。固唾を呑んでその場の全員がハヤテの次の言葉に注目した。





―――運命の瞬間!!





「それでは、発表します」




「―――ゴクリ」




「一位は・・・」




「「「一位は・・・?」」」






















「全部です」












「「「・・・ほへ?」」」







そのハヤテの言葉に全員の時が一瞬止まった。


「・・・ぜ、全部て・・・?」

「はい、全部です」

想定していた言葉以外の言葉に咲夜は聞き返した。・・・予想外だったのだ。

「どれも全てが僕好みの味でしたし・・・、それに皆さんが心を込めて作った料理に順位なんか付けられません」

ハヤテは振り返り、咲夜、ヒナギク、歩の顔を見ながらそう答えた。

「せ、せやから・・・勝負なんやで?」

そんなハヤテに咲夜は再び尋ねた。自分の料理が一番美味しかったやろという自信があったのに、あえてその判定をしたハヤテに咲夜は少し戸惑っていた。

「ええ、ですから皆さんの勝ちなんですよ。参りました」

「・・・っ///」

ニコリと笑いかけて答えたハヤテに咲夜は言葉が詰まった。そのハヤテの顔は何の嘘も無い純粋な笑顔で。その顔を見てると反論する気も・・・失せてしまった。

「この三つの料理を食べ比べてみて・・・ヒナギクさんの作った肉じゃがも、西沢さんが作った煮付けも、咲夜さんが作った麻婆豆腐も・・・どれもこれも僕なんかが作る物より遥かに飛び抜けて美味しかったんですよ」

「えっ!?」

「ハ、ハヤテ君!?」

「分かってたんかいな!?」

ハヤテの言葉に三人は驚愕した。・・・何故、ハヤテは料理を作った奴が分かったのか、と。

「肉じゃがもしっかりした味で・・・ヒナギクさんらしい味ですし、煮付けも普通の素朴の味で・・・西沢さんらしいですし、麻婆豆腐もピリっとくる辛さとその後にくる甘みも・・・咲夜さんらしい味でしたし。ほら、料理にも性格が出ると言うじゃないですか。皆さんのいい所がそれぞれのいい味を出せていて・・・本当にどれも美味しくて」

「「「・・・///」」」

「「「「おぉ・・・」」」」

聞いている方は恥ずかしいセリフを躊躇い無しに紡ぐハヤテに三人は赤面をし、ギャラリーは感嘆の歓声を上げた。

「なので、この勝負は皆さんの勝ち、という事なんですよ」

そしてもう一度告げたハヤテのその意思。これ以外の順位は付けられようがないと言った具合に、ハヤテはニッコリとした。それを見た三人は・・・。



(・・・ま、いっか)



(ハヤテ君が美味しいって言ってくれたんだし)



(これはこれで良しとしとこか・・・)




 もはや順位なんかでは無く、そのハヤテの笑顔が見れた事にこれ以上の無い満足だったみたいだ。


「ま、ええか。料理で勝ち負けを決めようなんておかしな事やし」

「そうだよね。女の子はそれだけじゃないもん」

「美味しいって言ってくれたならハヤテ君には感謝しなくちゃね」


「「「ありがと(な)、ハヤテ(君)」」」


「いえいえ、こちらこそご馳走様でした」


「ほな、皆で食べようか。ウチらもお腹ペコペコやし」

「わーい、やっと食べれるの?」

「それではハヤテさま。ワタクシは準備に取り掛かりますね」

「・・・ふっ、ハヤ太君もよく言ったな」

「私達もいただくとするか」



 それからは全員で美味しく晩御飯をいただいたとさ。・・・廊下に投げ出された人物のたった一人を除いて、だが。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ご馳走様!またね!」

「ふっ・・・また学校で会おう!」

「またな」

楽しい食事の時間も終わり、それぞれが帰路に着く時間となった。泉、美希、理沙は三人一緒に帰って行った。

「送って行きましょうか、西沢さん?夜道の一人歩きは危険ですし」

ハヤテは一人だけになる歩を心配してそう声を掛けたのだが。

「大丈夫だよ、ハヤテ君。ヒナさん達と途中まで一緒だから」

「あら、そうなの歩?」

「なら一緒に帰りましょう」

ヒナギクの家を知っている歩はどうやら帰るルートが一緒みたいで、三人一緒に帰る事にした。

「またね、ハヤテ君」

「じゃあ、また学校でね、ハヤテ君」

「また今度ウチにも遊びに来てねハヤテ君」

「///もう、お義母さんったら・・・///」

お約束のパターンが出た所で、三人は帰路についていった。

「ええ、皆さんお気をつけて。おやすみなさい」

「楽しかったで。ほな」

それにハヤテと咲夜が返事をすると、皆笑顔で屋敷を後にした。




 ・・・何だかんだで、激動の一日は終わりを告げたのだ。





「ふー・・・何だか今日は疲れたな」

「そうやな・・・でもおもろかったな」

疲れの色を見せたハヤテだが、咲夜はさも嬉々としてハヤテの顔を見た。

「そうですね。今日の『デート』も楽しかったですしね。咲夜さん、晩御飯ご馳走様でした」

ハヤテも咲夜の顔を見て、ニコリと微笑んでそう言うもんだから。

「・・・///」

二月と言う寒い季節にも係わらず、熱が出そうな程恥ずかしくなって赤面し、顔をつい逸らしてしまった。

「ひ、冷えるでハヤテ/// 早う中入ろうや///」

「あ、待って下さいよ〜」

照れ隠しの為か、顔を見られまいと逃げる様に咲夜は屋敷の中へ入って行った。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


―――カポーン。


 風呂・・・なのだが、この擬音は何の擬音なのだろうか?水がぶつかり合う音?それとも洗面器が床とぶつかる音?何なのか分からないが、今湯船の中に浸かっている咲夜はそんな事は考えていやしなかった。

(・・・ハヤテ)

考えていたのは一日ずっと一緒にいた少年、ハヤテの事だった。・・・否、まぁ一日はまだ終わっておらず、これからも一緒にいるのだが。

 ・・・今日と言う日は自分がハヤテへの想いを確信した日でもあった。親友の執事の・・・それも女顔の薄幸の執事。あまり自分が好きになりそうにも無いタイプだったのだが。

(・・・ハヤテ)

今はこんなにも頭から離れない存在になってしまっていた。初めて男性に恋心を抱いて・・・手も繋いで、抱き締めあって・・・。多分咲夜にとって今日と言う日は特別、忘れられない日になっただろう。デートして、食べさせ合いして、料理を作って。それのどれ一つをとってもハヤテと言う少年の優しさを感じなかった事は無かった。

(・・・ハヤテ)

その名前も呼び方を変えたのは今日だった。今まで三千院家の執事、借金執事、と。それで呼んでいた時は何も感じなかったのだが、本当の名前で呼ぶと言う事の恥ずかしさはまた違ったものだった。

(・・・ハヤ、・・・・・・・・・ブクブク・・・)


「ぶはぁっ!危うく沈む所だったわ!」


考え過ぎていた事により、のぼせ上がる寸前まで行ったのだが何とか取り戻した咲夜は暖まった身体を湯船から出した。

 ・・・ふと、自分の身体を見た。

「・・・ウチもまだまだ子供、やな。同級生達、桂のねーちゃんのオカンを見ても・・・まぁ桂のねーちゃん自身はそうでもないねんけど」

(な、何て事言うのよ!?///)

その咲夜の言葉にヒナギクの声が聞こえてきそうで、咲夜は思い出し笑いをした。

 咲夜が自分の身体を気にするのは・・・やはりハヤテのせいだった。せめて三年・・・否、二年早く生まれていれば。何度もそう思っていた。其れ程までに咲夜の心はハヤテの事でいっぱいだったのだ。


「・・・・・・」



だが咲夜はそこで真剣な顔をして、脱衣所に向かう事にした。それは・・・

 何かを『決心』した様だった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「あ、咲夜さん、出ましたか。温まりました?」

「おう、ええ湯やったで」

風呂を上がり、ハヤテの部屋へ行くとハヤテは机に向かっていた。

「・・・何しとるんや?」

「ああ、勉強ですよ。ハッキリ言って、授業についていくのがやっとなくらいなので、予習をキチンとやらないと置いて行かれちゃうんですよ」

机の上を見ると参考書、ノートが開いていて、ハヤテは鉛筆を手に持っていた。

「熱心やな自分」

「ええ・・・落第なんかしてしまったらお嬢様に合わせる顔が無いので」

ハヤテも借金して執事と言う仕事までくれて、更には学校にまで通わせてもらっている身分。一生懸命にならない訳が無かった。

 ・・・そんなハヤテを見て、咲夜は『かっこいい』と感じていた。自分の悲惨な過去にも負けず、いつもいつも前向きに生きているハヤテを。・・・もしかしたら、出会った当初からそれを感じていたのかも知れない。だからこそハヤテにはいつもちょっかいを出していた。義兄がハヤテに襲い掛かった時も、屋敷が停電になりブレーカーを上げに行った時も、他の色んな時も。
 だからこそ、今回三日間屋敷に来た理由も確かめに来たのかも知れない。そんな自分の気持ちを。そして二日間一緒に過ごしてみて・・・疑念が確信に変わった。


「・・・ハヤテ」


好きなのだ、ハヤテの事が。どうしようもない位に。



「はい、咲夜さん?」



だから今にでも爆発しそうな想いを抱えて、後ろからハヤテをぎゅっと抱き締めた。



「さっ、咲夜さんっ!!??///」



予想通りの反応。それが面白くて。だけど自分の想いが少しでも伝わる様に頬をハヤテの頬にくっつけて、咲夜は『決心』の言葉を口にした。














「好きや、ハヤテ」












「へっ・・・?」





言った―――。そこから数秒間、沈黙がその場を制した。


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Re: ボケと泪と男と女 ( No.54 )
日時: 2007/08/15 20:00
名前: きらら



「へっ・・・数寄屋?」





「茶室やのうて!・・・その、好き、なんや///ハ、ハヤテが・・・///」




数秒経った後に。





「えっええええええっ!!??///」





予想通りのハヤテの咆哮。一々愉快な反応を示してくれるものだ、ハヤテは。咲夜も抱き締めたハヤテの身体が慌てふためいて、忙しなく動くのを感じてて笑みを浮かべてしまう所だったのだが。


―――言った・・・。言ってもうた・・・///


自分が口から出した言葉に咲夜もドキドキを隠し切れなかった。・・・もう、後戻りは出来ないのだ。しかし。


「すっ、す○家?」


「牛丼でもないわ!」


何だかハヤテは惚けている様で。だから咲夜は畳み掛ける様に言葉を発した。


「ハヤテの事が好きなんや!もう、どうしようも無いくらいに!ええい、これでもか!」


もはや勢いだけになった咲夜はハヤテの首を無理矢理自分の方に向かせ・・・









そして・・・、ハヤテの唇に・・・、自分の唇をグッと押し付けた。







それはもう、全てをハヤテに知ってもらいたい様に。全てをハヤテに伝えたい様に。合わせた唇からは・・・もう『この人しか愛せない』と言う想いが導かれるかの様に。


やがて唇を離して・・・だが咲夜はハヤテの顔が見れず、俯いてしまった。


「・・・っ、本気なんやで・・・ウチは。確かにハヤテに比べたらウチなんかまだまだ子供や!ナギや伊澄さんとか、桂のねーちゃんや西沢のねーちゃんとかハヤテを好きな奴なんて沢山おる!でもウチは!ウチは負けとうないんや!・・・本気・・・なんや・・・」


・・・言っていると同時に、咲夜の頬に涙が伝った。咲夜は不安なのだ。ハヤテの周りにいるのは少女だらけ・・・それも全員美少女なのだ。だからこそ咲夜は不安だった。ハヤテの目に映っているのは自分じゃなくて・・・他の誰かだと思うと、死ぬ程悔しいのだ。其れ程までにハヤテへの想いは積もり積もって・・・大きな山となって咲夜の前に立ち塞がっていた。


「こう言う事も迷惑かも知れへん。けど・・・けど!自分の気持ちを抑える事が出来へんのやぁ・・・」


だからその山も全て自分の力にすべく、ハヤテの首に回した腕をキュッっともう少しだけ強く締めて言葉を紡いだ。

「・・・」

「なぁ・・・、ハヤテ・・・」

「・・・」

「何か言ってな・・・」

だがハヤテは何もしゃべらない。何も反応が無かった。そんな様子のハヤテに・・・咲夜は希望の光を失った様な気がした。

―――ハヤテに、嫌われてしまった。やっぱり迷惑だったのだろう。普段なら優しく返事をしてくれる筈のハヤテが返答もしてくれない程・・・迷惑をかけていたのだと咲夜は思い込んだ。それを思うと・・・咲夜は言ってしまった事に後悔を拭い去る事は出来なかった。あまり咲夜は涙を流さない方なのだが、この時ばかりは違って、止め処なく溢れる涙を止める事は出来なかった。

「・・・ハヤテ・・・」










 ・・・だが。









「・・・・・・・・・きゅ〜・・・」




「・・・・・・・・・ん?」





急にハヤテの口から聞こえてきたそんな声。きゅー・・・というこの場に聞こえるべきではないその声に咲夜は顔を上げると。


「・・・・・・・・・・・・・・きゅ〜・・・・」


ハヤテは目をグルグル回して気を失っていた。

「・・・ハ、ハヤテ!?ど、どないしたん・・・?・・・・・・・・・あ」

咲夜の方もそんなハヤテを見て動揺したのだが、・・・何所かハヤテの身体の様子がおかしい。何か、妙に曲がっている様な・・・。それに咲夜はハッとなり、先程の自分の行動を思い返した。


『ええい、これでもか!』


そしてハヤテの首をこちらに振り向かせる・・・それまで背中を向けていた体勢から無理に180度回転させての・・・・・・キス。身体は前、首だけは後ろを向いている様で。






「うわあああぁぁ、す、すま―――んハヤテぇぇ!!」




キスの恥ずかしさは残っていたのだが、それさえもお構い無しに咲夜は動揺しまくった。


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Re: ボケと泪と男と女 ( No.55 )
日時: 2007/08/16 00:37
名前: タチコマ

はじめまして、タチコマです。
タイトルに惹かれて見てみたら、ハヤテ×咲夜かぁ。
うんうん。

デートのラブラブな展開から、料理勝負の修羅場(かな?)
の速すぎず遅すぎずなテンポのいい展開から。
咲夜の告白で急にテンポが速くなって、おおおっ!
と、思ったら。
ハヤテがきゅーって・・・キテ○ツも牛丼も・・・ユーモアセンス良すぎです!きららさん!!

これからも頑張ってくださいね。きららさん

              では。

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Re: ボケと泪と男と女 ( No.56 )
日時: 2007/08/16 09:03
名前: 柴之介

きららさん、おはようございます。

凄い更新量ですね…。

料理の結果は何となくですが、想像できる味ですね。
ハヤテのコメントもそうですし。
……結局雪路は食べられず…ですか?

咲夜が告白して、え…キスですか…。
大胆な///
咲夜の気持ちがひしひしと伝わる文章で、羨ましいです。

ハヤテの安否、その後の展開に期待が高まります!
では、この辺で。
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Re: ボケと泪と男と女 ( No.57 )
日時: 2007/08/16 12:59
名前: きらら

タチコマさん、はじめまして!うう・・・そういう風に言って下さると、書いた甲斐があるというものですぅ・・・グスっ、ありがとうございます!w

柴之介さん、こんにちは!ハヤテって鋭い所は鋭いと思うんですよね。

咲夜の気持ちが少しでも伝わっていれば幸いですw

コメントありがとうございます!



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



時間をほんの少しだけ戻して咲夜の入浴中。ハヤテは自室にて苦手の数学の予習をしていた・・・・・・・・・かに見えた。

「はぁ〜、今日も一日凄い日だったなぁ・・・」

ハヤテは今日一日を振り返っていた。三千院家に拾われる前も普通ではない生活を送ってきたのだが、三千院家の執事になってからの日常が物凄いものになっていて、その中でも特に今日は衝撃が大きい様な気がした。それでもただ一人でいた時とは違い、三千院家の執事になってからはそういう大変な日常もハヤテは幸せだと感じていた。

「咲夜さんとのお出掛けも、遊園地もお買い物も夕飯でも・・・冬だと言うのに汗を掻かなかった時は無かったような・・・」

思い返せば冷や汗握る出来事ばかりだったのだが、それでもハヤテは一人なんかでは無く小さい頃から常に思い描いてきた『安心できる誰か』との出来事。だからこそいつもなら不幸と感じる様な出来事も今のハヤテにとってはいい思い出だったのだ。

「・・・咲夜さん・・・か」

そしてハヤテの頭の中にいた人物・・・それは咲夜だった。不思議と彼女の前なら気付かぬ内に本当の自分というのを出している様な気がする。それは、安心、といった形で。

「・・・はぁ、どうしたもんだか」

何故なのだろう、浮かんでくるのは咲夜の事ばかり。今日と言う一日だけで咲夜の色んな顔を見る事が出来た。嬉しそうな顔も、悲しそうな顔も、悩んだ顔も、スッキリした顔も。そのどれもがハヤテにとって新鮮で・・・でもやはり咲夜には笑顔が一番だと感じているのだ。

 また咲夜がようやく自分の事を名前で呼んでくれた事に対して、素直に嬉しかった。三千院家の執事、借金執事と、間違っていなかったがやはりハヤテと言う名前があり、名前で呼んで欲しかったとも思っていて。

「・・・でも、いざ名前で呼ばれてみるとやっぱり恥ずかしいや」

はは、と乾いた笑みを浮かべた。・・・だが実際嬉しかったのは事実。証拠にハヤテの顔は純粋な笑みで溢れていた。

「おっといけない。早く予習しておかなくちゃ咲夜さんがお風呂から上がっちゃう」

そしてハヤテは止めていた手を再びノートに走らせた。






数分後。





―――コンコン。自室にノックの音が響いた。そしてガチャと扉が開き、そこには案の定咲夜の姿があった。風呂上りで身体が相当温まったのだろう、咲夜の顔は少し熱を帯びていた。

「あ、咲夜さん、出ましたか。温まりました?」

「おう、ええ湯やったで」

まだ乾かしてないのか、髪の毛が少し湿っている様で。・・・それが咲夜の雰囲気をまた少しだけ大人っぽくさせていた。

「・・・///」

そんな咲夜を少し見ていて恥ずかしくなったハヤテは目を逸らす様に机へと再び視線を戻した。

「・・・何しとるんや?」

「ああ、勉強ですよ。ハッキリ言って、授業についていくのがやっとなくらいなので、予習をキチンとやらないと置いて行かれちゃうんですよ」

その通り、ハヤテはレベルが相当高い名門・白皇学院にそうでもしなければ付いていけなかったのだ。落第する訳にはいかなかった。通わせてもらっている以上、自分が持てる力よりも努力をしていかなければならないのだった。

「熱心やな自分」

「ええ・・・落第なんかしてしまったらお嬢様に合わせる顔が無いので」

だからその言葉を紡いだ。甘える訳にもいかなかったのだ。

「・・・ハヤテ」


だが、ふとハヤテの耳に咲夜のそんな言葉が届いた。



「はい、咲夜さん?」



急に名前を呼ばれて、振り返ろうとした瞬間。ハヤテの首に柔らかく、暖かい感触が包んだ。そして背中にも感じる柔らかい感触。ハヤテは戸惑うしかなかった。



「さっ、咲夜さんっ!!??///」



振り向こうにも振り向けない。風呂上りの咲夜の髪の毛からシャンプーのいい香りがして・・・ハヤテの胸はバクバクと大きな脈を打ち始めた。気付けば頬も密着していて。スベスベとしたその肌は寒い冬にはとても気持ちの良い感触だったのだが、今のハヤテにはそれを堪能している余裕は無かった。

・・・そして。

「・・・好きや、ハヤテ」

「・・・へっ?」

ハヤテの耳に届いたはその告白。好き?咲夜が、自分を?
 ・・・否、聞き間違いだろう、そう思って聞いてみる。

「へっ、数奇屋?」

そうだとしたら何故この場この状況でそれを出したのか分からないのだが、取り敢えず聞いてみた。

「茶室やのうて!・・・その、好き、なんや///ハ、ハヤテが・・・///」

しかし今度はしっかりとハヤテの耳にその言葉が響いた。




「えっええええええっ!!??///」




信じられなかった。咲夜が自分を・・・好きだなんて。本で読んだ事があるのだが、関西の女性には男らしくしっかりしたタイプの人が人気があるみたいなのだが、自分自身を見てみると全くの逆だと思っていた。認めたくないが、女顔で甲斐性も無しの自分自身に当てはまる要素が何一つ見当たらなく、例に従って咲夜もそうなのだろうと読んでいたのだが。その予想と反して咲夜は自分を好きだと言った。

・・・喜ぶべきだった。だけど信じる事が出来なかったから。

「すっ、す○家?」

きっと咲夜は夕食も余り食べずに、お腹が空いたのだろうと三千院家の近くにある某レストランを思い浮かべたが、それもやはり違ったみたいで。

「牛丼でもないわ!」

やっぱり違いましたかと外れた予想に次の同音異句のものを探していたのだけれども。






「ハヤテの事が好きなんや!もう、どうしようも無いくらいに!」






やはり、嘘では無かった様だった。ハヤテは慌てふためいたのだが、心の奥で感じた事実―――それは。


『嬉しい』


と言う気持ちだった。素直に嬉しかった。咲夜が自分の事を好いていてくれている事に。嫌われている事は無いにしろ、まさか好意を寄せていてくれるなんて夢にも思わなかった事。
 ・・・ハヤテも咲夜が好きなのだ。友人として、人として、護るべき人として、その他諸々。

―――ありがとうございます、咲夜さん。

・・・と、その言葉を口にすべきと、喉から出かかったのだが。







「ええい、これでもか!」






その言葉がハヤテの耳に届いた瞬間、咲夜とくっ付いている方とは逆の頬に温かい感触が包んだ・・・と思いきや、ハヤテの視界はグルリと世界を半周させられた、その際。



―――グギ。


「―――○×△■#※´д`!?」


首の方からしてはいけなさそうな音がハヤテの脳を揺らし、一気にハヤテを暗闇の世界へ誘おうとした。三途の川行きのJ○Bのチケットを手にした様な。






―――チュ。




だが霞み行く意識の中、最後に感じたのは唇に感じた事の無い・・・柔らかい感触だった。

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Re: ボケと泪と男と女 ( No.58 )
日時: 2007/08/18 00:18
名前: きらら

咲夜は戸惑っていた。自分の腕の中でグルグル目を回して気を失っているハヤテを見て、これからどうしようと焦っていた。

「だ、大丈夫か・・・?」

風呂上りの身体が一気に冷える様な気がしたのだが、とりあえず呼吸を確認。・・・大丈夫だ、息をしていた。それにホッと胸を撫で下ろした。


目を閉じて静かにしているハヤテの髪の毛をそっと撫でると、そのサラサラした指抜けに咲夜は少し驚いた。頬を見ても瑞々しく、そしてその顔の形成は・・・やはり『可愛い』と言う印象だった。
 だけど・・・そんなハヤテがやはり好きなのだ。他の誰にも、渡したくない程。ヒナギクにも歩にも伊澄にも、勿論ナギにも(虎鉄にも)。

「ハヤテ・・・ったく、ウチにこう言う事を言わせといて・・・無視かいな」

返答が出来ない事くらい分かり切っているのだが、ハヤテが無事だと分かると安心しきってその言葉が自然と出ていた。

「ま、取り敢えず寝床へ連れて行かへんと・・・」

自分に持たれかかっているハヤテに、自分の非力ではハヤテを担げるのかと思っていたのだが。

「んっ、よいしょっと・・・何や、ハヤテ軽いな」

咲夜が思っていたよりもハヤテの体重は軽く、容易く担ぐ事が出来た。ハヤテの身体のその軽さに咲夜は意外と言えば意外だった。あの身軽過ぎる程の動きを見れば分かるのだが、怪物並みの身体能力を持っているハヤテなのだ。もう少し体重はあると思っていたのだが。身体を触ってみると・・・その理由が分かった。

・・・余分な肉が全く付いてないのだ。ハヤテの体脂肪率も一桁で、見た目よりもガッシリしているその身体に咲夜は感心した。

「・・・そっか、毎晩鍛えている言うてたもんな」

昨晩見たハヤテの指立て伏せ、それも片手の指一本でやるもんだから筋肉が付いてない訳が無かった。

「それにしても・・・・・・///」

そのハヤテの意外な男らしい肉体に咲夜は自分の顔が赤くなっていくのが分かった。





「よいしょっと・・・って・・・うわ!」

とハヤテをベッドの上に寝かせると勢い余って咲夜自身もベッドにもつれるように倒れ込んだ。ハヤテの上に覆い被さる様な体勢で。

「・・・・・・・・・・・・・っっ!!??//////」

咲夜が気付くと、二人の吐息がかかる程の距離だった。あと二cm程動かせば、触れ合える様な。幾度も間近で見てきたその顔なのだが、慣れる事は無かった。

どうしてこんなに近いのだろう。そして・・・どうしてこんなにも遠いのだろう。

心に感じた距離を少しでも縮めたい。近くに感じていたい。

だから寝込みを襲う様に見えるかもしれないが、その二cmと言う距離を越えさせてもらった。
 いざ唇が再び触れ合い、咲夜を秘密の夢世界へ誘おうとしたその瞬間。











「・・・なーにやってんの?」








―――ギクゥ!?


急に少し大人の女性と言うのを感じさせる声が咲夜の耳に届いた。ハヤテに覆い被さりながら、ギギギ・・・と油の切れたロボットみたいに小刻みに首を横に向けると。



「・・・セ、センセ・・・」



そこには帰った筈だと思っていた雪路の姿があった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

雪路は生徒達が全員帰路に着いてから目を覚ました。

「あいたたたたたた・・・」

やけに痛い頭を押さえ、眩暈のする目を擦ると・・・自分が今何所にいるのかを思い出した。

「そういえば、三千院家に来て・・・調理室でヒナと話して・・・あっ、そうだ、殴られたんだ、私」

思い出した事に対してスッキリし、笑顔になった雪路。・・・普通の人間なら泣く所だと思うのだが、ここはさすがの雪路だった。

「結局ご飯食べれなかったのよね〜、腹減ったなぁ・・・」

グゥ〜と腹の虫を泣き止ませる事は出来ずに、トボトボと食料を求めて廊下を彷徨っていたのだが、そこで雪路の目にある物が飛び込んで来た。

『三千院家・ワイン庫』

それを目にした瞬間、空腹の為元気が無かった雪路はまるで水を得た魚の様に活き活きとして、ワイン庫の中へ飛び込もうとした。・・・だがその瞬間。


(うわああぁぁぁ、す、すま―――ん、ハヤテぇぇ!!)


少し遠くの方から聞こえてきたその声。何だろう、と気になったのだが今は目の前の酒の方が大事だ!と言わんばかりに扉を開けようとしたのだが。


―――ビリリっ!!

「あぎゃっす!!??」


三千院家の防犯システムなのだろう。ドアノブに手をかけた瞬間、身体中に電流が流れ雪路は倒れた。

「ぴちゅ〜・・・」

床に這い蹲ったのだが、どんな精神力をしているのだろうか、雪路はすぐに立ち上がった。
既にボロボロの成り立ちなのだが。

「少し、手を伸ばせば・・・捕まえられるような獲物を・・・逃すなんて・・・出来ないわ・・・
諦めたら・・・そこで試合終了じゃ―――!!」

意気込みは物凄いモノがあった。邪魔な扉を蹴破ろうと足を上げたのだが。

『侵入者発見、侵入者発見』

と言う機械的な音声が雪路の耳に届き、上げていた足を止めてそちらの方を向くと・・・。

「げぇっ、ロ、ロボット!!??」

雪路の言う通り、全身を機械で固められたロボットがいた。それは・・・エイトだったのだが。




「これはこれは桂先生さまでしたか。こんな所でどうかされましたか?」

「えっ・・・?」



捕まえられる―――と思い込んでいた雪路に代わりに飛び込んできたのはそのエイトの言葉だった。実際雪路は気絶をしていた為、エイトの存在を知らなかったのだ。エイトの方は廊下を通過する際、雪路の存在を確認し一瞬でインプットしていた。

「どうかされましたか?」

そのエイトの言葉に雪路は正直に言える筈も無く。

「えっ!?ああ、いや、トイレは何所かな〜なんてね!」

「お手洗いですか?そこの角を曲がるとすぐ右手に見えますよ」

「あ、ありがとう!それじゃ!」

何とか誤魔化し、上げていた足をそのまま前に踏み出し、逃げる様にその場を去った雪路。後ろめたい気もするのだが、・・・この際酒は諦める事にした。




 そして次に気になったのは先程の声。あれは・・・確かさっきハヤテの隣にいた・・・関西弁の・・・と言う記憶を手繰り寄せている内に、扉が半開きになっている部屋を見つけ、中を覗き込んで見ると。

「どぉわっ!?」

中にいたのは・・・ハヤテと、そして後ろから抱き締めている咲夜の姿だった。この部屋だったのか!?と驚いたのだが、奇声を発してしまった自分にしまったと思い、口を慌てて塞ぐのだが。

―――ホっ、気付かれてないみたいね。

どうやらバレ無かった様で。それから少し監視をする事にした。

―――だって、面白そうだから!

ネタを握ったとニヤっと笑った雪路。それは誰が見ても不気味だっただろう。



するとすぐに動きがあった。少女がハヤテを担いでベッドに向かったのだ。だがそれに雪路は疑問を抱いた。

―――あれ・・・?何か綾崎君様子がおかしい?

様子が変というか・・・妙にぐったりしているハヤテに雪路は内心焦りを感じたのだが、先程の叫びを思い出した。

うわあああぁぁ、すまーん、ハヤテぇ・・・と。

大方何かして綾崎君を気絶させちゃったんでしょと踏んで、雪路は苦笑いをした。
―――え?何故そう思ったかって?綾崎君は不幸な少年だから。以上!

・・・コホン、話を戻すと雪路はそんな二人をこっそり見ていた。

「よいしょっと・・・って・・・うわ!」

そしてベッドに辿り着いたと思いきや、二人一緒に倒れ込む様にベッドの上に重なった。

それを見た雪路は『おお!』と思い、ただその様子を見ていた。

―――ん?段々近付いていってない?

そしてその事に気付くと、雪路は何故なのだろうか、身体が先に動いていた。



「なーにやってんの?」



と言った具合に。
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Re: ボケと泪と男と女 ( No.59 )
日時: 2007/08/18 00:28
名前: タチコマ

どーも、先日朝○バッ!で、み○さんや、他のメンバーから
自分の書いた感想を批判されるという、
訳のわからん夢を見たタチコマです。

前回のハヤテ視点ですか! ハヤテの心情がこと細かに書かれていて素晴らしですッ!!
なるほどー、ハヤテの首グキッ!にはそんな葛藤があったんですねぇ。

いや、それにしても三途の川行きのチケットか・・・。
さすがのハヤテも今回ばかりはヤバいンじゃ・・・。
このままあっちに逝っちゃうんじゃ・・・。(それじゃ終わっちまうぞ!?)

あぁ、そういえば桂先生がいましたね。すっかり忘れてました(アハハ)

雪路の『馬鹿にするなー』という声が聞こえてきそうな気がしますが今回はこの辺で。

           では。




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Re: ボケと泪と男と女 ( No.60 )
日時: 2007/08/19 17:19
名前: きらら

タチコマさん、こんにちは!普通は首イッたらヤバいんですけどね・・・ハヤテだし、大丈夫と言う事でw
雪路は書いているこっちも忘れていて、急遽登場でしたw

ありがとうございます!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「咲夜ちゃん・・・っつったっけ?寝込みを襲うなんていい度胸してるじゃない」

市○悦子みたいに覗きが趣味の家政婦・・・ではなく、堂々とハヤテの部屋から侵入した雪路。本当に普通に入ってきたのだが、咲夜の方は目の前の事で頭がいっぱいになっており、普段なら気付く筈の事も気付かない程注意力が削がれていた。

雪路の方もさすが担任教師。本音を言うと見ていたい気持ちもあったのだが、目の前で教え子が女の子に寝込みを襲われるのをじっと見ている訳にはいかなかった。本人に言わせれば『倫理的でしょ』と(まぁ何だかんだで給料のプライスダウンを避けたいだけなのかも知れないが)。

―――・・・それに相手はヒナの想い人だし。
大切な妹の恋敵に好き勝手やらせる訳にもいかなかったのだ。前項にて、何故だろう、身体が先に動いていた・・・と記したのだが、その理由がコレなのかも知れない。

「その辺にしといてあげて。生徒の貞操を守らなくちゃいけないから」

「セ、センセ・・・い、いつから見てはったん?」

急過ぎた雪路の登場に咲夜は狼狽えていた。・・・全部、見ていたのか、と。

「あなたが綾崎君をベッドに運ぶ所からよ。それにしても、今から何しようとしていたの?」

「・・・ぐっ、そ、それは・・・」

咲夜の方は別に何も無い、と言いたい所だったのだが、如何せんハヤテに覆い被さっている今の体勢からは全くの説得力が無く、咲夜は言葉に詰まった。そしてバッとハヤテから素早く離れて体勢を立て直した。

「こ、こうやってハヤテを近くで見ていただけで・・・やましい事なんかやっとらん」

咲夜としては、本当に間近でハヤテを見ていたかっただけ。雪路の言葉から察するとハヤテに夜這いをかけている様に見られている様で、それについては咲夜は納得がいかなかった。

「それを言うならセンセやて、こんな所で何してるんです?」

「え"・・・」

しかし今度は雪路の言葉が詰まった。

「廊下に縛られて放っとかれてよーやく目ェ覚ましたっちゅー所です?」

「ぐ・・・」

正しく図星で、雪路は反論しようにも言葉が見つからなかった。



「・・・ふふ、ふふふ・・・」



しかし不気味にも、雪路は突然笑い出した。咲夜はそれに対して少し気味が悪くなり身構えた。

「成る程、使命と使命のぶつかり合いね。ちなみに私がこの使命を帯びているのは私が飯及び酒も手に入らなかった怒りから来るモノとは無関係よ」

「は・・・?」

急に何を言い出すのだろう、この教師は。咲夜の頭の上に?マークが飛び交った。

「一応・・・もう一度名前を聞いておこうかしら」

「・・・愛沢咲夜、やけど」

どっかで見た事があると思われるこのパターン。

「ふ・・・愛沢咲夜か・・・ちなみに私は名乗らないわ!何故なら個人のプライバシーだから!」

「は・・・いや、桂雪路センセやろ?知っとるわ」

「ええ!?一体何故!?・・・はっ、今流行の個人情報流出ね!しかし一体何所から素敵な情報の流出が!?」

問題になっている事を流行り言うな雪路。流行りたくて流行った訳でも無いし。
流石の咲夜も突発的に意味不明な事を叫びだした雪路に対応に戸惑っている。・・・と言うか、先程あんなに目立ちまくっていた雪路なので、知りたくなくても情報が入ってきてしまっていたのだ。

―――うう・・・どないしよ。頼りになりそうな巻田と国枝は近くには来るなと言うてあるし・・・。
今回ハヤテと一緒にいると言う事で咲夜の付き人(執事)である巻田と国枝には愛沢家で待機させる様にしてあり、頼みの託も出来そうに無かったのだ。そして苦肉の策に、咲夜はこの言葉を選んだ。

「・・・く、しゃーない。今おとなしく引いてくれたら、今度ウチに遊びに来たら飯も酒もタダでお持て成しするで」

もう本当に最終手段と言う事で搾り出した提案。

「・・・」

―――・・・やっぱあかんか。
それに対して雪路は何の反応も見せなかった事に、咲夜はこれ以上の打つ手を失くしたのだが。



「え、いいの!?本当にいいの!?」



先程とは打って変わり、目をキランキランさせて咲夜に詰め寄る雪路。咲夜はそんな豹変した雪路に戸惑いっぱなしなのだが、その目を見る限りそれで引いてくれるんならと承諾した。

「ああ、ええで。美味い酒、用意しとくわ」

「イヤッホォォウ!ありがとう、咲夜ちゃん!ああ、ウチの妹もこんな妹ならお姉ちゃん嬉しいのにな♪」

先程妹の為を思って取った行動も何のその。さりげなく妹を卑下しつつ、この場を引く事を感嘆に認めた雪路。・・・やはり現金な奴だった。

「じゃあまた今度ね、咲夜ちゃん!綾崎君によろしくね〜」

颯爽と駆け抜けて、ルンルン気分で雪路は帰って行った。


「・・・何やったんやろ?」


咲夜は咲夜で、そんな雪路を見送りながら妙に疲れた表情だった。

「・・・ま、ええか」

しかし雪路が帰ってくれた事により、再びハヤテとの時間を作れた事に嬉々とすべきですぐにベッドに駆け寄って行った。





「スー、スー・・・」

規則正しい呼吸がハヤテから聞こえる。

「・・・大丈夫、やな」

それに咲夜は安心した顔をした。先程の自分の行動で、犯罪に手が染まってしまう事よりも、ハヤテがいなくなってしまう恐怖感の方が大きかったのだ。ハヤテの顔を見ればもう安らかな顔をしていて、それが計り知れない程の安心感を咲夜に与えていた。

「・・・ハヤテ。ウチは本気やで。嫌やからな、ハヤテが・・・いなくなって・・・まう・・・のは・・・」

その安心感からか、ドッと咲夜にも眠気が襲い、瞼を開けていられなかった。気付けばハヤテの手を握っていて。そのままベッドに倒れ込むかの様に咲夜は目を閉じた。

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Re: ボケと泪と男と女 ( No.61 )
日時: 2007/08/20 13:10
名前: 柴之介

雪路の現金さには何か素晴らしいものがありますね。

どうも、柴之介です。

最初の方の雪路は本当に教師っぽくみえたんですけど…。
最後の方では、やはり雪路だったか……と。
雪路の頭の中は酒だらけです。

隠れて見ているのは雪路の専売特許のようになってきましたね。
もちろん教え子の生徒会娘たちも同じですが…。

名前を名乗るシーンでの咲夜の切り替えし、雪路のリアクションは最高でした。
やはり咲夜のが一枚上手でしたか…。

ハヤテ抜きで女の小規模な戦いでした。
雪路の活躍どころで楽しかったです。
やはり雪路はこういう役があっているんでしょうか。

暑いですが、頑張ってくださいね。
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Re: ボケと泪と男と女 ( No.62 )
日時: 2007/08/22 00:08
名前: きらら

あ、柴之介さんこんばんは♪
雪路は雪路で・・・やはり誰が何と言おうと雪路なんだと思います(謎
ハヤテもまさか眠っている時にこんな争いがあったなんて知る事は無いよな〜(遠目

コメントありがとうございます!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


―――チュンチュン、チュンチュン。

ハヤテの目が覚めたのは朝陽も顔を出し始めた頃、小鳥が歌い出していたそんな六時半だった。カーテンはしてあるのだが、その僅かな隙間から見え隠れする薄ら明るい光は間違い無く世界を映し出している。その幻想的とも言えるその明かりなのだが、起きたばかりだと言うのにハヤテの頭の中は別の事で塞がっていた。

「あれ、昨日僕は・・・ああ、確かあれから部屋で勉強していて、咲夜さんが来て・・・」

ふと昨日の出来事を思い出してみる。特に印象的だった昨日という一日に苦笑いか、それとも純粋に楽しかったのか分からない笑みが気付かぬ内にハヤテの表情に表れていた。
そして横を見れば・・・。



「・・・どぅわ!!??」



またもや咲夜が同じベッドで眠っていた。しかも気付けば、その身体をハヤテの腕に巻き付けている。・・・そんな咲夜を見ると、昨日の咲夜の言葉を思い出した。


『好きや、ハヤテ』


『ハヤテの事が好きなんや!もう、どうしようも無いくらいに!』


「・・・・・・・!!/////////」

突然の咲夜の告白。ハヤテはまたポンっと顔が赤くなったのが分かった。・・・そして。
ハヤテは自分の唇に指を当ててみた。あの意識が飛ぶ瞬間に感じた柔らかい感触。・・・あれは現実だったのか幻だったのかハヤテには分からなかった。

「・・・」

現実だとしたら・・・どう言う事なのだろう。キス・・・したのか?自分が?咲夜さんと?俄かにハヤテは信じられなかった。だが、実際に聞いた咲夜の告白。ハヤテは物凄く戸惑っていて。・・・もし自分の意識が飛ばなかったら、どんな返答をしたのだろうか。自分自身にも分からなかった。
 だが横を見れば咲夜の幸せそうな寝顔。ハヤテはこの笑顔が見ていたい、この笑顔を守りたいとも思っていた。


「・・・」


そして塞がれている方とは逆の手で咲夜の髪の毛を撫でる。朝陽が草花を優しく照らす様な・・・そんな温かさを感じた。




「・・・ハヤテ?」




すると次第に咲夜の目が開き、ハヤテと目が合った。


「あ、咲夜さん。・・・すみません、起こしてしまいましたか」

人間の三大欲求と言われるモノの一つ、睡眠と言う幸せな生理現象を邪魔してしまった事にハヤテは申し訳無く思いつつ、その頭を撫でていた手を止めた。


「んー、もっと撫でてーな。嫌ちゃうで」


しかし幸せそうな表情を浮かべて、再び催促する咲夜。そんな表情にハヤテの心臓はドキっと揺れ動いた。


―――あれ、何だろう?この感覚・・・。


眠りから覚めたばかりと言う脳に、眠気から来る感覚なのか、はたまた別の理由なのかハヤテには分からなかった。

「・・・」

だが今はそんな事はいい。先程自分から咲夜の頭を撫でた・・・と言う事は、自分がそうしたかった事。咲夜もそれを望んでいると言う事は、ハヤテもそうする以外する事は無かった。


「ん・・・」


そして再び咲夜の頭を柔らかく、温かく、そして優しい感触が包んだ。咲夜はこれ以上無い様な嬉しそうな表情を浮かべ、目をゆっくりと瞑った。

流れるは優しい時間。お互いの間に会話は無かったのだが、居心地は悪くは無い。二人だけにしか無い秘密の楽園。密着した二人の身体には、確かな絆と言う糸が結ばれている様な感じがして。そんな一時を共有した。




「・・・なぁ、ハヤテ?」

ふと、目を瞑っていた咲夜がゆっくりと目を開け、それまでじっと咲夜の顔を見つめていたハヤテの目と交わった。

「・・・はい、何ですか?」

ハヤテの方も撫でていた手を止め、次の咲夜の言葉を待った。



「・・・昨日の夜、ウチが話した事・・・覚えとるか?」



昨日の夜・・・その時ハヤテには、咲夜が何を言いたいのか気付いた。



『・・・好きや、ハヤテ』



ハヤテもつい先程その事について考えていて、やはり現実だったんだなと再確認した。

「・・・ええ」

ハヤテもそうとだけ返事をした。咲夜の告白・・・未だに信じる事が難しい所なのだが、咲夜の顔を見れば真剣な顔をしている。・・・真実、なのだ。

「さよけ。・・・よかった」

咲夜も言葉数少なく、だが嬉しそうに顔を綻ばせた。その顔を見たハヤテは・・・やはり不思議な感覚に捕われた。


―――この笑顔を・・・大事にしたい、と。
守らなければならないと言う義務感なんかでは無く、守りたいと言う自分自身の気持ちだった。


「・・・片思いだっちゅー事は分かっとる。ハヤテに年下には興味が無い事も。ウチには桂のねーちゃんみたいな端整な顔しとらんし、西沢のねーちゃんみたいな素直さも無い。ウチみたいな女、ええ所なんて無いねんけど・・・それでも、ハヤテの事を想う気持ちは負けとうない。・・・こんなにも好きなんや、ハヤテの事が・・・」





「好きですよ、僕も」





「・・・えっ?」





―――だから僕も言おう、自分の気持ちを、正直に。

「確かに、僕はヒナギクさんも、西沢さんも好きです。・・・でもそれはあくまでも『友人』として。咲夜さんに対する好きとはちょっと違うんです」


「ハ・・・、ハヤテ・・・」


「僕が今まで抱いた事の無かった想い。咲夜さんに対する好きは・・・一人の女の子として、なんでしょうね」


この少女は自分の気持ちをこんなにも素直になって自分にぶつけてくれた。だから、自分も素直になってそれに応えたい。
ハヤテにとって咲夜は安心できる居場所で、最も自分が素でいられる所だった。居場所が無かったハヤテにとって、何物にも代え難い心の拠り所なのだ。


三千院家で安心出来なかった訳では無い。安心しては『いけない』と感じているのだ。巨額の借金を立て替えてもらい、あまつさえ学校にまで通わせてもらっている以上、気持ちを弛める事など出来やしなかった。


だから身の安心は出来たとしても、心の安心は中々出来なくて。その時咲夜と出会ったのだった。


第一印象は『元気なコだなー』と言う事だけ。傍若無人な所にほんの少し呆れもしたのだが、時間が経つに連れて。色んな顔を見るに連れて、笑顔を守りたいと思う様になった。・・・だから咲夜のピンチの時は駆けつけていたのかも知れない。

「ホ、ホンマか・・・?」

そんなハヤテの言葉に咲夜の顔は驚きながらも・・・笑顔になった。


―――ああ、この笑顔が守りたいんだな、僕。


ハヤテもそれを見ると恥ずかしくなってしまったのだが、それでもやはり嬉しく。

「・・・うわっ!?ハ、ハヤテ・・・?」

気付かぬ内にその愛しい咲夜の身体を抱き締めていた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

あれからそうしていると、気付けば八時を回っていた。長い時間が経過したのだが、お互いの身体を離そうとはしなかった。

「なぁ、ハヤテ?」

「はい?」

先程のハヤテの言葉に未だに心臓がバクバクしながらも、咲夜は言葉を紡いだ。

「ハヤテは・・・借金なんかに負い目を背負う必要なんか無いんやで?」

「・・・!?」

きっと・・・ハヤテは借金を理由に色々なやりたい事も全て封じ込めて来たのだろう。それがいつしか、自分の事よりも周りの事を常に考える優しい少年と言う形になって、いい事だとは思うのだが。
 ・・・ハヤテは我儘を言わなさ過ぎる。どんな時も常に笑顔で、どんな時も常に優しくて。だがそれだといずれは壊れてしまう。ハヤテと言う存在も消えかねないのだ。それを咲夜はどうしても見過ごす訳にはいかなかった。

「元々、ハヤテ自身が作った借金でもないやろ?けどハヤテはそれを負い目に遠慮しがちな所がある。・・・もっと、我儘になっていいんやで?」

「でも・・・、でも・・・」

抱き締めているハヤテの身体が震え出すのが分かった。辛い事を言う様だけど・・・それでもハヤテには聞いて欲しいから咲夜は言葉を続けた。

「執事も機械やない。人間なんや。機械が主を満足させられると思うか?笑顔にしたり感動を与えれると思うか?」

「・・・」

少しでも安心させてあげたかった。言葉では無いのだが、それでも少しでも大きな安心を与える様に色々な言葉を探して、ハヤテに優しく言う。

「ウチも執事を雇っとるから分かる。・・・カラッポの人に・・・執事と言う仕事は務まらんっちゅー事も。ハヤテは本来そう言う男じゃないやろ?」

「・・・」

「せやから・・・ハヤテにはもっともっと自分を出して欲しい。本当の笑顔でいてほしいんや・・・こんなにも、好きなハヤテに」

そして自分の想いをギュっと腕の力に凝縮させて、またほんの少し強く締めた。

・・・すると。




「・・・・・・えぐっ、ぐす・・・・・・・」




「ハ、ハヤテ!?」

急に・・・ハヤテの泣き声が咲夜の耳に届いた。見ると涙で頬を濡らしいて。ポロポロと流れる泪を拭う事無く、枕にもシミを作っていた。

「うわぁぁ・・・あり、ありがとう、ございます・・・さく、やさん・・・」

普段のハヤテを見ていても・・・こんな弱い部分は見た事が無かった。常に強く、常に笑顔で。だからこそそんなハヤテに驚いていたのだが。

―――ハヤテも・・・本当は誰かに甘えたかったんやな。
そのハヤテの言葉を聞いた咲夜は驚き顔からフッと優しい慈愛に満ちた顔になって。

「・・・泣きたい時は泣いてええんやで。ウチがいるから・・・」

―――ウチが守ったるから。
パジャマの袖でハヤテの目元を拭きながら、またハヤテの頭を撫でながら言葉を紡いだ。

「うわぁぁ・・・うわぁぁ・・・」

そこからハヤテは少しの間、支えが取れたかの様に泪を流し続けていた。

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Re: ボケと泪と男と女 ( No.63 )
日時: 2007/08/26 00:38
名前: きらら


あれから落ち着きを取り戻したハヤテと共に咲夜は朝食を摂っていた。

「そーいや、ナギんとうはいつ頃帰ってくんのや?」

パンを頬張り、口をモグモグさせながら咲夜はハヤテに尋ねた。

「うーん、詳しい時間帯は聞かされてないので分からないんですよ。ですので今日一日はお屋敷にいないと」

身に染みる程の熱さのコーヒーを味わいながら、ハヤテはそう答える。屋敷にて主を出迎えなければならない、そういうのが執事でハヤテも例に違わなかった。

―――そう言えば、いつ頃なのだろうな。
ハヤテは特に気にはしていなかったのだが、咲夜の方はしきりに時計を見ていた。

―――少しでも、一緒にいたい。

咲夜はそう思っているのであった。

「しかしお嬢様達が帰ってくるまで暇ですね〜。昨日出来なかった分も含めて、お掃除をしようと思ったら既にエイトが済ませていましたし」

朝食後に日課である掃除を予定していたのだが、介護ロボ・エイトが既に掃除をしていたのだ。しかもバージョンアップも伊達では無い様で、事後確認で掃除箇所をよーく観察しても塵一つ落ちていなかった。・・・それだけなら完璧なのに。




・・・すると。




『レディース&ジェントルメーン!』




再び昨日のあの声が二人の耳に響き渡った。

「え、これ・・・エイト!?な、何故・・・?」

「な、何や!?」

ハヤテは何故この場面で?と狼狽え、そして咲夜は驚いた。咲夜は昨日、エイトのオプション(もはや暴走)を見ていなかった為に驚くのも無理は無かった。

「・・・あ、さっき」

そう言えば先程『暇』と言う言葉を口にしてしまった事を思い出したハヤテ。


『い○き!ボン○イェ!い○き!ボン○イェ!』


そしてその場に某カリスマプロレスラーのテーマ曲が流れ、何故か煙が吹き上がる所にエイトは再び登場した。

「ハ、ハヤテ・・・何なん、これ?」

咲夜は戸惑い、ハヤテの方とエイトの方を忙しなく見合った。

「えーと・・・エイトなんですけど、退屈だと思われるキーワードを口にした途端、暴走し始めるんですよ(汗」

もはや頭を抱え、下手こいたぁと自分を責めていた。エイトのネタの余りにもの失笑さに、見ているこっちが辛くなってくる様な気がして。・・・いっそバージョンアップなんかしなくても良かったのになと感じていた。

「このアタシを暴走なんて言う奴はドコのドイツだ〜い?」

((あれ、にし○かす○こ?))

そのやけに甲高い声にハヤテと咲夜の思念はシンクロした。

「イタリアだよ!」

(あれ、オリジナリティに来たぞ?」

本来のネタを少しアレンジしていたのだが。・・・そこでハヤテは妙なオーラをすぐ隣から感じた。

 ・・・ワナワナワナワナ・・・。咲夜だった。俯いてプルプル震えていて・・・何かを我慢している様な。



「・・・パクリの上に、つまらんボケをかますなあぁ――!!」


そしてスパ――ン!といつの間にか持っていたハリセンでエイトの頭に当たる部分を思い切りドツいた。・・・さすが咲夜。どんな小さいボケも逃すつもりは無かったみたいだ。やはり期待に応えてくれた。

ハヤテも、おお、ツッコんだ!と感心していた。またそれでこそ咲夜だとも感じていて、自分でも気付かぬ内に拍手を送っていた。

 ・・・だが。



「ガガガ・・・ギブ、ス・・・ピ――――」


「「・・・?」」

急にエイトの様子がおかしくなり、イカれたかの様な電子音が辺りに響いた。

「よくも・・・よくも・・・」

そしてエイトの目と思われる箇所が泪で滲み出した(オイル)。

「よくもそんな事言ったなぁ―!」

エイトのその声と同時に胴体部分が開き、中に装備してあったミサイルがヒュンっ!と音を立てて咲夜に向かって飛んできた。

「・・・!?」

「・・・!咲夜さん、危ない!」

そしてミサイルが咲夜の身体を焦がそうとする寸前にハヤテが咲夜を抱きかかえ、横に跳躍して躱した。

「・・・ハ、ハヤテ・・・」

正に間一髪。ミサイルが当たったテーブルと椅子は粉々に砕け散っていた。

「大丈夫ですか!?咲夜さん!」

「あ、ああ・・・大丈夫や」

「よかった・・・」

咲夜が無事な事に心底安堵したハヤテ。その表情からして・・・本当にそう思っていた。そしてキッとエイトを睨み付け、臨戦態勢を取った。


「ガガガ・・・スピ――――」


そして再び電子音が聞こえる。・・・やはり、何かエイトの様子がおかしかった。


「ガガ・・・ハヤテ様・・・さ、咲夜様・・・スピ――ガガ、ど、どうやら・・・ギギギ―――先程の・・・ガギゴピ―――衝撃で・・・ガゴ、ゴゴ・・・ピ――システムが・・・ポポピ――・・・損傷した模様で・・・ホポ――ピ―――・・・滞在しているウイルスが・・・ガガピ――・・・CPUに・・・ギャポ―――・・・侵入しつつ・・・あります・・・。ピ―――・・・危険ですので・・・ピ―――お逃げ・・・下さい・・・ピ―――・・・」


「「・・・えっ!?」」

エイトはどうやら何かのウイルスに侵されている様で、先程の衝撃でそれが制御出来なくなりエイト自身最後の力を振り絞って二人に逃げる様に促したのだが。


「さぁ・・・ピピ――早く・・・!!??ガガガガガ―――ピピピ・・・ザァァァァァ・・・・・・・・」


そこでエイトの回路は・・・完全にそいつに支配されていってしまった。


「・・・コロす・・・、コロす!俺様の笑いをコケにした奴・・・ユルさない・・・!」

「・・・エイト!?」

エイトの目の色が変わった。オレンジっぽい光だったのだが、それはまるで血の様な真っ赤な色に。



「グワアアアァァァ!!俺様の名はピエーロ!笑いの神様だ!ボケが素晴らしきこの世界に不要な・・・この世に生まれしツッコミを全て排除する!先ず手始めに・・・ほれ、そこにいる女よ」



そのエイトと言うハードを支配したピエーロと名乗ったウイルス。・・・もしかしたらコイツが、エイトのコメディアン・モードを司っていたのかも知れない。

((・・・随分と限定した奴だな))

もはやそれ自体がツッコむ対象だったのだが、今はふざけている場合ではない。奴は本気で咲夜を狙っているのだ。

「ハ、ハヤテ・・・どうする?」

エイトの回路が侵入され切る直前、逃げろと言う言葉があった。それを踏まえて咲夜はハヤテの顔を見たのだが。

「・・・咲夜さんはそこで見ていて下さい。必ず、エイトを元に戻して見せます」

ハヤテはそんなエイトを助けたかった。だからこそあえて、ピエーロに挑む事を決めていた様だ。
 そこでハヤテは一歩前に踏み出した。


「この人に指一本触れさせません。もしそうしたければ・・・この綾崎ハヤテを亡き者にしろ!!」


気合を込めて叫び散らしたハヤテ。咲夜はそんなハヤテにドキっと心を動かされ、ハヤテに委ねる事にした。


「ラブコメってんじゃね――!ではこちらから行くぞ!」


そしてそのピエーロとハヤテの死闘の火蓋が切って落とされた。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「でもそんなの関係ねぇ。そんなの関係ねぇ」

「くっ、速い!」

今、巷で話題の小島よ○おのネタなのだろうか、そのフレーズを口にしながらパンチにてハヤテに襲い掛かったピエーロ。エイトの胴体を借りているのだが、見た目とは裏腹な俊敏な動きで、ハヤテは一撃目をやっとの思いで躱した。

そしてすかさず二打目。

「―――!」

躱したハヤテにとって、体勢も完全に立て直す事が出来なくその鋭いパンチが飛んで来た。

―――ブオン!

「・・・ちっ!」

だがそれもハヤテの恐るべき身体能力で後ろに3mくらい跳躍で何とか躱す事が出来た。当たらなかったピエーロは少し忌々しそうに舌打ちをしたのだが。

「もらった!オッパッピ――!!」

ピエーロはその場でパンチを繰り出した。・・・それも、手がピョ〜ンと伸びて。

「えっ!?し、しまっ―――!?」

何とか立て直そうと一旦距離を取ったのだが、ハヤテにとって予想外の長距離攻撃にそれはハヤテの腹部にクリーンヒットしてしまった。

「ハヤテぇぇ――!!」

そしてその場に倒れるのを見た咲夜はハヤテの名前を叫び、ハヤテの元に駆け寄ったのだが。



「ハヤテっ・・・って、ええ!?」



そこで咲夜が見たものは・・・ハヤテの上着を着たコ○ン君の銅像だった。余程の衝撃だったのか、ヒビが入っている。


「な!?か、変わり身!?」


勝ち誇った様子のピエーロがそれに気付き、咄嗟にサーモグラフィ機能を使ってハヤテの体温を検知すると。
 ・・・そのターゲットは、ピエーロの真裏にいた。

「へー・・・機械でも油断するんですね」

そのピエーロが後ろをバッと振り向こうとしたのだが。

「・・・!?」

いつの間にかフォークが足を貫いて地面に突き刺さっており、身動きを出来なくしていた。

「それは三千院家特製純銀のフォーク」

そしてハヤテは備え付けのランプのコンセントを千切り、それをピエーロにちらつかせる。

「そしてこれは純国産100V電源!」

「ま、まさか・・・」

ハヤテが次に何をするのかが分かったピエーロ。やめろと言わんばかりに手をハヤテに上げて見せ、降参だと言うジェスチャーをした。

「ま、待て!そいつを俺にしてしまうと・・・俺どころか、エイトまでダメになってしまうぞ!」

エイトを盾にして、何とかピエーロは凌ごうとした。このままだと・・・エイトは消えてしまう、と。


・・・その瞬間、ハヤテの頭にエイトとの思い出が駆け巡った。





『ククク・・・動き出したオレの熱いパトスはもう誰にも止めれないぜぇ・・・』

『でもほら・・・みね打ちにするし・・・』

『そうだな・・・強いて言うなら・・・・・・直接的な恨みかな』

『死ね――――!!』




だが。

「・・・」

エイトとの出来事は全て衝撃的過ぎて。

「構いませんよ」

とハヤテは何と躊躇いも無しに電撃をピエーロに浴びせた。


―――ビリリっ!!

「あろぷぺぽっひゃらむ――――ん!!??」


そしてピカっ!!と一瞬部屋の中が眩き、ピエーロはその場にゆっくりと仰向けに倒れた。


「・・・よし」

ハヤテはクールに手をグッと握り締め、勝利を確信し。・・・気を緩めてしまった。


「・・・ぢ、ぢぐぞ・・・」

そんなピエーロが倒れる散り際に、最期の力を振り絞ってハヤテに向けて手を伸ばした。

「ハヤテっ!」

「な、何!?」

そしてその手がハヤテの握り拳に・・・触れてしまった。



―――ビリリっ!

「あぴかちゅぽぺっ!!??」


ほんの少し掠めただけなのに、この凄まじい程の威力。意識が飛びながら、やっぱり人間は電気を通すんだなぁ・・・と言う科学の法則を身を以って、改めて思い知りハヤテもまた仰向けに倒れていった。

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Re: ボケと泪と男と女 ( No.64 )
日時: 2007/08/26 13:18
名前: きらら


「ハヤテ!」

その場に倒れたハヤテに咲夜は一目散に駆け寄った。そしてピクリとも動かないハヤテを見て。

・・・・・・感電死。

最悪な状況が頭の中を過ぎる。咲夜にどうする事も出来ない不安が襲い掛かった。
・・・だが。


「ぴ○ちゅ〜・・・・・・」


ふと、ハヤテの口からそんな声が聞こえてきた。それに気付き、咲夜はハヤテを抱き起こそうとするのだが、ほんの少しビリっと言う静電気にも似た刺激が咲夜にも感じた。

「おわっ!?」

それに一旦手を引っ込めるのだが。・・・またすぐにハヤテを今度は抱き起こせた。目をグルグル回して、確かな呼吸もしている。その様子に咲夜はこれ以上無い様な安心感を感じた。

「・・・よかった」

ハヤテを失う・・・それ以上の苦しみは咲夜にとって無かったのだ。だからそんなハヤテが無事だと言う事にとてつもない安堵を与えていて。ほぼ無意識の内にきつくハヤテをぎゅっと抱き締めていた。




「・・・ん、咲夜、さん・・・?」

それから少し時間が経つとハヤテも意識を取り戻した。ハヤテも身体に感じる咲夜の体温に心地良い様な、そんな目覚めだった様で。

―――ポツ、とハヤテの頬に一滴の液体が滴った。

「・・・え?」

それに何だろうと咲夜の顔を見ると・・・。

「さ、咲夜さん!?」

泪を流していた。

「ウチ・・・ハヤテがいなくなる思うて・・・不安やったんや・・・ウチをおいて・・・いかんといてや・・・ハヤテ・・・」

・・・初めて見た咲夜の泣き顔。いつも明るく、元気である筈の咲夜の泣き顔を。

「咲夜さん・・・」

そんな咲夜が泣いてくれている・・・自分に対しての泪。本当に、自分の事を好きでいてくれている証拠の泪なのだ。そんな咲夜にハヤテは嬉しくもあり・・・そして心配掛けてしまった事による申し訳無い気持ちもあった。
 手で咲夜の目元の泪を拭い、ハヤテは咲夜を安心させる様に笑顔で囁いた。

「大丈夫ですよ。咲夜さんを置いていく事なんて出来ません。何より・・・僕が嫌ですから、咲夜さんに会えなくなってしまうのが」

だから自分の素直な言葉で咲夜に告げる。

それを聞いた咲夜の顔は、頬を濡らしたままなのだが・・・正に笑顔と言う一輪の花が咲き誇っていて。


其の花は何よりも綺麗だとハヤテは感じた。


二人の間に交わる視線。お互いの目を見つめて・・・。


考えている事は同じで・・・。





(咲夜さんが
       苦しい時は・・・
(ハヤテが







(守ってあげるから・・・






・・・そして熱い想いと共に・・・。




どちらからともなく、その熱い唇を重ねていた。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・だが、そんな永遠とも取れる慈愛に満ちた時間も、終幕を迎える事になる。


―――ガチャ。


「ハヤテくーん、ただいま戻りまし・・・・・・・ってええっ!?」

「ハヤテー、帰って来たぞ・・・・・・・・・って何しとるかお前ら――――!!!!」





「「っ!!??」」




とうとう二人が・・・帰って来たのだ。参ったな・・・―――こんな所を見られようとは。

「ハヤテと・・・サク!何故お前ら・・・抱き締め合っておるのだ!?」

「ハヤテくーん・・・?私達のいないお屋敷で何をしているんでしょうかね〜・・・?」

何やら尋常ではないオーラを二人から感じたハヤテなのだが。咲夜は用意していたらしき言葉を二人に向けた。

「ハヤテならこのロボと闘ってたんや。ウチはそれを介抱したげてるんやで」

咲夜は転がっているエイトを顎で示した。

((何とか言えばこの場は逃れれる!!))

ハヤテと咲夜はそう思って上手くいくと踏んでいたのだが。



だがそれを見たナギとマリアは・・・。

「「・・・」」

納得している様な、納得していない様な・・・そんな表情をした。

「ならば何故二人は手を握り合っておるのだ・・・?」

「ええ。ハヤテ君の片方の手も咲夜さんの背中に回っているのが気になりますし」




「「・・・はっ!!」」



ハヤテと咲夜は気付いた。お互いをより近くで感じようと無意識の内に抱き寄せていた其の手を。



「介抱してるのは分かるのですが、なら何故ハヤテ君は咲夜さんを抱き締めているんですか・・・?(ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・」

「ハヤテも何故上着を脱いで、シャツのボタンも少しはだけているのかも説明してもらおうか・・・(ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・」





((・・・前言撤回。弁明の余地無し、かな?))




この二人を見ればもう納得させる事は不可能。ハヤテと咲夜の次にする行動は決まっていた。





「「・・・逃げる」」




その言葉が同時に口に出た瞬間。二人は頷き合って脱兎如く、その場から逃げ出した。




「っあ!!こら、待て!待たんか――!!ハヤテの浮気者ぉぉ!!」


「待ちなさ――いハヤテ君!!」



・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・



逃げながらも二人は思う。


―――この人を・・・絶対に守る。

―――この人を・・・絶対に幸せにする。


逃げながらも二人は笑顔で。





(ハヤテが・・・
           傍にいてくれればそれでいい)
(咲夜さんが・・・





この二人の未来は・・・既に決まっているのかも知れない。




それは二人の笑顔を見れば分かり切った事。





こうしてハヤテと咲夜の三日間は終わりを告げたのだが、この二人にとっては『始まり』の三日間。





二人の間に『終わり』など無かった。













・・・その後。ハヤテに暫くお暇が出されたのだが、愛沢家にお世話になったり。
たまたま買ってみた宝くじが三等を当たり、借金の内の半分近くを一瞬の内に返せた事があったり。
嫉妬に狂ったヒナギクと歩がハヤテと咲夜の二人に襲い掛かったり。
また白皇学院の行事で、優勝賞金を持ち前の強靭な身体能力で全て掻っ攫ったり。気付けば白皇在籍中に借金全て返済出来たり・・・

 と言った様な出来事があったり、なかったり。


それでもどんな事があっても、ハヤテとそして傍にいた咲夜には。


この人と一緒にいれて『幸せ』。


と言う想いが二人の中から消える事は絶対に無かった。見えない絆は大木よりも太く、銀河系よりも果てしなく、太陽よりも熱く、深く根付いていた。




ちゃんちゃん♪



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Re: ボケと泪と男と女 ( No.65 )
日時: 2007/08/26 13:18
名前: きらら



きららです。

これにて『ボケと泪と男と女』は完結と言う事でございます。

ボケを重視しようと思って筆を取ったのはいつぞやの事。書いてみたのはいいのですが、頭の中にはユニークな発想が中々思い描けず、それでも渾身の作品のつもりです。

殆どノープランでした。それでも諦めたくなかった自分としては、とにかく最後までやりきろうと。最期まで・・・←ってええ?字が違う?w

とにかく、今まで読んで下さった方々、コメント入れて下さった方々、感謝の恩はいくらしてもし切れません(泪
皆さんのおかげで書ききる事が出来ました。

では本当に、ありがとうございました!!
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Re: ボケと泪と男と女(完結) ( No.66 )
日時: 2007/09/14 23:00
名前: ナマツ

どーも! やっと復活できましたナマツです!

堂々完結おめでとうございます!

いやびっくりしました。
しばらく「ひなゆめ」に来れなくてやっとアクセスできたと思ったら、
いつの間にか咲夜とハヤテが結ばれてたんですから(笑)

いやぁ〜、原作では今、誕生日ですからねぇ〜・・・重ねておめでとう咲夜♪

しかしハヤテは今後も大変ですね♪

ナギやヒナギクをかわしながら咲夜と愛を育まなければいけない上に、
義弟や義妹がいっぱい居るわけですから(笑)

でもなんだかんだで、毎日夫婦漫才で楽しそうな日々になりそうですね。

さて、自分も執筆中の小説を完結に向けてがんばらねば!

それでは、完結お疲れ様でした!
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Re: ボケと泪と男と女(完結) ( No.67 )
日時: 2007/09/16 11:14
名前: きらら

ナマツさん、復活しましたね!感想ありがとうございます!

義弟と義妹達を果たしてハヤテはかわしていけるのでしょうか・・・?否、出来ない(反語)w

きっと毎日、ハヤテの頭に咲夜のハリセンが飛んでくるのは間違いありませんw否、咲夜に鍛えられていつしか腕が上がり、二人で芸能界デビュー・・・なんて事も想像次第でございますw

ナマツさんも、素晴らしい作品期待してますよ!頑張って下さい!

ではでは〜♪
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Re: ボケと泪と男と女(完結) ( No.68 )
日時: 2007/09/16 14:15
名前: 柴之介

きららさん、おめでとうございます!
遂に完結ですね!

最初から見ると、ギャグ〜ラブコメという何とも難しそうな…。
それを物ともせず、上手く書かれていて羨ましいです!
ギャグの部分も、物凄く笑わしてもらいましたし。
ラブコメのラブの部分も、見てるこっちが恥ずかしいイチャイチャっぷりでした!

さて、ハヤテを見事勝ち取った咲夜ですが…。
原作でも恋すると、こうなっちゃいそうです。
凄く期待しながら読むことができました!
あと、最後のヒナギクと西沢さんが咲夜の襲い掛かるという描写…大人げなさに拍手したい!
最初から最後まで楽しめました。

お疲れ様でしたァ!! ではでは!
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