喜代美とはドジという共通点があって、最初は「自分と似ているな」と思って演じていました(笑)。でも、喜代美はお話が進むにつれてどんどん進化を遂げ、毎日落語を練習したり、三味線もすごく上手になりましたよね。いつの間にかこちらが背中を押されているような気分になっていました。
落語のための努力は、好きだからこそ出来ることでしょうし、そういう努力が出来るということはすごく恵まれていると思うんですが、やっぱりその情熱ってすごい!全てのシーンを撮り終えた今は、はるかに大人になった喜代美から「がんばれよ」って言われている気がしています。
「印象的なシーンは?」という質問をよく受けるのですが、本当にいっぱいありすぎて選べないんですよ。そんな気持ちにさせられるほど、藤本(有紀)さんの脚本には、ステキな場面やセリフがちりばめられていました。毎週、笑って泣かされて、いつもがんばろうっていう気にさせてくださって、本当にすばらしかった。喜代美だけではなくて、登場人物それぞれについても丁寧に描かれていて「藤本さんの中に一体何人の人物がいるんだろう?」と思うほどでした。
また、共演者のみなさんと仲よくなり、とっても楽しく毎日を過ごさせていただいたことは何よりの宝物です。お客さんと生で接する機会が多い桂吉弥さんや茂山宗彦さんと共演したことで、サービス精神も学びました!キム兄(木村祐一さん)や松尾(貴史)さんは、本当におしゃべりがうまくて、それもいい刺激に。私も最初の記者会見から比べると人前で随分しゃべれるようになったのでは?と思っています。
24週は、小草若さんが戻ってきてくれるのかちょっとハラハラしましたよね。草若の名前を誰が継ぐのかという問題は、私も直前まで「どうなるんだろう?」と思っていました。小草若兄さんから「若狭だって、草々が継いだほうがうれしいんやろ」と言われて、言葉につまる場面もありました。普通のヒロインなら「そんなことは思っていない」という風に描かれがちなのですが、喜代美の場合は内心「うれしいかも」と思っていたりして(苦笑)。とっても人間らしい。そういう風に『ちりとてちん』では、人間のきれいな部分だけじゃなくて裏側も描かれているんですよね。そこが魅力のひとつだと思います。
草若の襲名問題はようやく落ち着きましたが、最後まで『ちりとてちん』は『ちりとてちん』らしく25週、26週もバタバタと予想外のことが起こります。最後はどうなるのかも含め、やっぱり一日たりとも見逃せませんよ!
去年の今ごろはオーディションを受けている最中だったんですよね。どうしても喜代美役をやりたくて「もし自分以外の人に決まったら絶対に焼きもちを焼いてしまう…」と思っていました。
ヒロインに決まってからはアッという間で、『どんど晴れ』の比嘉(愛未)さんからヒロインバトンタッチを受けたときに「先は長いな〜」と思っていたことがうそのよう。あと半年、3か月と言っているうちにクランクアップの日が来てしまいました。スタジオに行くことが日常の一部になっていたので、いまだに「今日はリハーサルですよ」と言われそうな不思議な感覚でいます。
共演者、スタッフのみなさんとは毎日のように顔を合わせて、家族のような雰囲気で撮影をしていました。だから、会えなくなってとっても寂しいです。でも、次にみなさんにお会いした時に成長した自分を見せられるよう、これからまた新たな気持ちで頑張ろうと思います。