徒然亭の紋

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落語家さんの一門には、それぞれ独自の紋があります。徒然亭にもドラマで使用される紋があり、これは美術スタッフが考案した番組オリジナル。その形は“セミ”です。タイトルバックなどにも登場するため、すでにお気づきになっている方も多いのではないでしょうか? しかし、一見“セミ”に見えるこの紋のモチーフとなったのは実は“ヒグラシ”。なぜ“ヒグラシ”がモチーフとして選ばれたのか?様々な意味が込められている徒然亭の紋について、ご紹介します。 。

●由来1 その日暮らし

落語家は実力勝負の世界。若手の頃はなかなか仕事がないことも。特に年季が明けたばかりの落語家さんは生活が苦しいと言われることから、その日暮らし=そのヒグラシ。

●由来2 ヒグラシの一生とかけて…

ヒグラシ(セミ)は生涯のほとんどを土のなかで過ごし、成虫になって初めて外の世界に出て鳴く。落語家も長い修業時代を経て初めて高座に上がり、大きな声で芸を披露することから。

●由来3 徒然なるままに 日暮らし

ドラマでは喜代美が好きな古典作品として登場する『徒然草』。一門の名前が徒然亭であることから、冒頭部分の「徒然なるままに 日暮らし」とヒグラシをかけている。

●折り紙のセミをアレンジ

折り紙のセミ(ヒグラシ)<写真・い>がモチーフの元となっている。落語家一門の紋ということで、折り紙という伝統的なものをベースにデザインされた。

●ドラマのあちこちに登場

徒然亭一門の落語会で使われる膝隠し※<写真・ろ>や、草若や草々が着ている紋付きの羽織<写真・は>。喜代美が稽古で使う手ぬぐいや扇子など。ほかにも草若邸の至るところ<写真・に>にヒグラシの紋があしらわれている。
 また、小浜の和田家にある喜代美の部屋には、折り紙で折ったセミ(ヒグラシ)<写真・い>が飾られていた。これは喜代美がいずれ徒然亭に入門することを暗示したスタッフの遊び心。お気づきだった方は、かなりの「ちりとてちん」通!

※上方落語特有の小道具で、木製の小さな衝立て。膝の前に置いて、演者の下半身などを隠す。