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【政治】

クラスター弾搭載陸自システム 2000億円の装備全廃へ

2008年5月31日 07時08分

クラスター弾を搭載するため廃棄が浮上する多連装ロケットシステム(陸上自衛隊提供)

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 クラスター弾の使用を一部を除き全面的に禁止する条約案に日本政府が同意したことで、陸上自衛隊が保有する多連装ロケットシステム(MLRS)が全廃される見通しとなった。約二千億円を投じた九十九両がすべて無駄になるばかりでなく、代替兵器の購入に巨額の防衛費が投じられることになる。

 MLRSは子弾六百四十四発を内蔵したロケット弾(クラスター弾)を十二発搭載できる専用の装甲車両。海岸に上陸してきた敵にロケット弾を発射して、子弾を一面にばらまき、一瞬にして地域を制圧する。

 「着上陸侵攻対処」の切り札として一九九二年度から米国から購入を開始し、現在は五個の特科大隊が合計九十九両を保有している。

 陸上自衛隊幹部は「戦術の見直しが必要になるだろう。MLRS一両の火力は、大砲三門分に当たる」と言う。一両約二十億円のMLRSを補うには一五五ミリ砲が三門、合計約十二億円が必要になる計算だ。

 MLRSには、クラスター弾ではない地対地ロケット弾「ATACMS(エータクムス)」も搭載できるが、自衛隊は保有していない。ATACMSについて、別の幹部は「防衛専門商社『山田洋行』が輸入に関係しており、収賄罪に問われた前事務次官、守屋武昌被告が熱心に購入を主張した。筋が悪すぎる」としており、購入の見込みはない。

 クラスター弾の廃棄にも巨費がかかる。自衛隊が保有するクラスター弾は、ほかに戦闘機から投下すると二百二個の子弾に分かれるタイプと、一五五ミリ砲から発射されるりゅう弾がある。空自は「百億円かかる」(田母神俊雄航空幕僚長)とし、陸自は「不明」としている。

 政府が対人地雷禁止条約を締結した後、防衛省は約百万個の対人地雷を約二十億円かけて処分した。「大局的な見地」(田母神氏)とはいえ、六年連続して減り続ける防衛費をさらに圧迫する材料となるのは間違いない。

(東京新聞)

 

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