演題番号:PC1-4-5
演題名:「急性妊娠性脂肪肝の一例」
演者:今井麻由(徳島大学大学院 救急治療医学)他6名
本文:
急性妊娠性脂肪肝は妊娠末期に発症し、妊娠10,000〜15,000例に一例といわれるまれな疾患である。急性進行性の肝不全の病態を呈し、通常妊娠を終了させない限り改善はなく、重症例では母体の救命率も低い。今回我々は、重篤な肝不全、DICを合併した妊娠性脂肪肝の母体を救命し得たので報告する。症例は31歳女性。妊娠経過は正常で胎児にも問題なかったが、妊娠36週頃より食思不振・黄疸を認めていた。38週より全身倦怠感が著明となり、歩行不能の状態となった。近医にて胎児死亡を確認、肝腎障害の急激な増悪、DICの合併などより急性妊娠性脂肪肝を疑われ、38週5日当院ICUへ搬送となった。入院時、血液検査にてGOT 34U/l, GPT 23U/l, T-Bil. 9.3mg/dl, PLT 5.8×104/μl, PT 19.6秒, PT-INR 1.70, APTT 46.6秒であった。緊急帝王切開術により胎児を娩出したが手術創よりの出血があり、再開腹止血術を行った。子宮切開部はガーゼによる圧迫でコントロールしていたが、翌日のガーゼ除去により再出血、ショック状態となった。緊急にて単純子宮全摘術を施行したが膣断端からの出血は持続し、再度止血術を必要とした。その後経過は良好で、帝王切開術後、7日目(最終手術より3日後)に抜管し、15日目にICU退室となった。最終手術以降、止血能は改善し術後4日目にはPT 12.5秒、APTT 32.0秒と正常化した。また10.4mg/dlまで上昇したT-Bil.も退室時には2.0mg/dlとなっていた。 今回我々は重症妊娠性脂肪肝症例を経験し、胎児死亡・子宮全摘は避けられなかったが救命できた過程を報告する。
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