「たこ焼きくんが行く!in大阪」
本場大阪で大人気の達人の技とは意外にも、ひっくり返しが中途半端だったり、作る過程で開いた穴に生地を継ぎ足してふさいだりと、一見雑に見えてしまうものでした。にもかかわらずやわらかくて美味しいのはなぜでしょうか?
達人のたこ焼きは、表面が「サクッ」、中が「ジュワッ」という、生地の食感にバリエーションがあることが最大の特徴です。なぜ、2段階の食感が生まれるのでしょうか? 実は、達人のたこ焼きにはあって、初心者のたこ焼きにはない“あるものの存在”が大きくかかわっていることが明らかになったのです。
達人 vs. 初心者 水に浮く?沈む?
ここで実験。達人のたこ焼きと素人のたこ焼きをそれぞれ5個水槽に入れてみると、達人は5個すべてが浮いたのに対し、素人は5個すべてが沈みました。いったいなぜ?
達人のたこ焼きの最大の特徴は、中に空洞があることです。多量の空気を含み、体積が大きいために、水に浮かびました。一方、初心者のたこ焼きは、空洞がほとんどなく、体積も小さく、「たこ団子」とでも呼ぶべきようなものでした。水に沈んでしまったのもこのためです。
素人は、作る過程でひっくり返したあと、丸くしようと何度も触ってしまいます。一方達人は、まず半分返して中の生地をドロッと出し、そこが固まるのを待ってからさらに半回転します。
つまり、空洞を作ることを意識して、わざと2段階に分けてひっくり返していたのです。さらに、1回目と2回目の返しの合間はほとんど触りません。その結果、空洞の有無という決定的な違いが生じたのです。
達人 vs. 初心者 内部温度は?
達人のたこ焼きと初心者のたこ焼き、今度は、焼きたてのときの内部温度を比べました。達人は102℃、初心者は85℃。なぜ17℃もの差があるのでしょうか?
達人のたこ焼きの内部は、空洞があることで「蒸した」状態となり、素早く温度が上昇し100℃前後で安定します。また、水分も十分に保たれます。一方、初心者の空洞のないたこ焼きは、温度が上がりにくいばかりか、多くの水分がたこ焼きの外に逃げてしまいます。
その結果、空洞のあるたこ焼き内部では効率よく「糊化(こか)」が起こり、外側とは全く違う「ジュワ」という食感になります。糊化とは、小麦粉に含まれるデンプンが水分と熱によって化学変化を起こし、糊のような食感に変わることです。
これにより、外は「たこ焼き」で「サク!」という食感に、中は「たこ蒸し」で「ジュワ!」という食感になります。2種類の調理法を巧みに使い分けることが、極上の食感「サク・ジュワ」を生み出す秘けつだったのです。
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