市民を無差別に殺傷するクラスター(集束)爆弾禁止条約が日本など百カ国以上の賛成で採択された。今後、廃絶に向けて、この条約を支持しない主要保有国の米中ロを説得していく努力が必要だ。
この条約は加盟国に対し、いかなる状況にあっても、クラスター爆弾の使用、製造、開発、貯蔵、保有、移転を禁止すると規定している。ただ、子爆弾が十個未満で攻撃対象を識別する機能をもち、不発の場合には自己破壊できる装置のある高性能型を例外として認めている。
戦闘が終了しても不発弾として残り、多数の民間犠牲者を出してきた従来型は全面禁止となり、締約国は、この条約の発効後八年以内にすべて廃棄しなければならないともうたっている。
このほか、不発弾の処理や被害者の救済支援を定め、こうした面での国際協力を促している。
年内の禁止条約成立をめざしてきた「オスロ・プロセス」は、十九日からのアイルランドのダブリン会議で、全面禁止か部分禁止かが焦点となったが、最終的に全会一致の合意をみた。十二月初めには調印式が行われる。
レバノンやイラク、セルビア、アフガニスタンなどの紛争地域でクラスター爆弾による民間人の被害報告がいまだに後を絶たない。禁止条約は、こうした悲惨な状況に怒りを訴える国際世論が結集された成果といえよう。
日本が保有するクラスター爆弾はすべて禁止対象となるが、英独仏政府はすでに全面廃棄を表明している。町村信孝官房長官は「日本は人道上の懸念を深刻に受け止め実効性ある国際約束を目指し積極的に交渉に参加してきた」と言明した。日本政府は早急に廃棄作業を進めてもらいたい。
禁止条約が採択されても、まだ手放しでは喜べない。米中ロのほかにイスラエル、インドなどが大量にクラスター爆弾を保有しており、地球規模の全面禁止となっていないからだ。
日本は大量破壊兵器などの軍縮や拡散防止に努力してきた。想起すれば、小型武器問題について国連での政府間専門家会議の議長国を務めるなど、国際的枠組みづくりに貢献している。
日本の禁止条約加盟を非政府組織も評価している。すべてのクラスター爆弾保有国に対し、この禁止条約に加盟するか、少なくとも国際世論を尊重して廃棄に向けて協力するよう、日本政府は主導的役割を果たすべきだろう。
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