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社説2 米中ロもクラスター弾廃止を(5/31)

 子供を含む民間人に大きな被害を及ぼすクラスター爆弾を事実上、全面禁止する条約案が30日に採択され、日本政府代表も福田康夫首相の指示を受けて同意した。クラスター弾被害の根絶への一歩だが、この武器を大量に持つ米国、中国、ロシアなどは、なお禁止に反対している。これらの国々を含めた実効ある禁止条約の締結に向けて各国は一層の努力を求められる。

 クラスター(房の意)爆弾は1つの容器に数個から数百個の子爆弾を詰め、空中で開いて広い範囲に落とす。不発に終わる子爆弾が多く、それに触れ死傷する事故が後を絶たない。そうした事故で死傷したのは1万人を上回り、その3分の1は子供、という推計がある。

 アイルランドで開いた国際会議では「爆弾に自己破壊装置が付いている」などにより不発で残る恐れが低い高機能のものを除いて事実上、全面禁止する条約を採択した。12月に署名する。この実質全面禁止の案に英、仏、独は当初、反対していたが同意に回り、日本もそれに続いた。日本が持つクラスター爆弾はすべて禁止の対象になり、8年以内に在庫を全廃する。

 ところが米、中、ロは今回の会議に参加すらしなかった。大量保有国が条約を支持しないのでは悲惨な事故の根絶は到底望めない。実効ある条約にするために、これら3カ国の参加は欠かせない。日本を含む先進各国は米中ロに粘り強く参加を呼びかけるべきだ。

 もし米中ロが参加すれば発展途上国がクラスター爆弾を持ったり、増やしたりするのを防ぐ効果も大きい。また核兵器や生物・化学兵器など大量破壊兵器の削減や廃止に向けた国際社会の動きを加速することにもつながるはず。

 さらに、この問題で欧州と日本が手を結び、米国や中ロを説得できたなら、地球温暖化対策など多くの課題に応用できるかもしれない。そのためにも米中ロの説得へ日欧が結束して当たるときだ。

 今回、防衛専門家らの消極論を踏まえつつも条約案への同意を指示した首相の決断を評価したいが、クラスター弾被害根絶への闘いはこれからが本番ともいえる。

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