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2008年5月31日

◎後部座席シートベルト 「必ず着用」を早く習慣に

 六月一日から自動車に乗る時はどの席であってもシートベルトを着用しなければならな くなることを、どれだけの人が認識しているだろうか。後部座席の同乗者にもシートベルト着用を義務付ける改正道交法の施行に向け、石川県警などが周知に努めてきたにもかかわらず、県民にはまだ浸透しきってはいないようにも思われる。交通事故による死者を一人でも減らすため、自動車に乗ったら必ず着用する習慣を早く定着させていきたい。

 改正道交法が成立したのは昨年六月。だが、警察庁と日本自動車連盟(JAF)が昨秋 に実施した調査によると、県内の後部座席のシートベルト着用率は、一般道では7・2%に過ぎず、全国平均を下回った。高速道路などは22・9%で、栃木県に次いで二番目に高かったとはいえ、まだ四人に一人にも達していない。この数字を見る限りでは、どれだけ広報活動を展開しても、やり過ぎということはないはずだ。

 運転席や助手席に比べて後部座席のシートベルト着用率が低いのは、法律で義務付けら れていなかったことに加え、「後部座席は安全」との思い込みのようなものがあったためかもしれない。しかし、警察庁がまとめた昨年の交通事故発生状況を見ると、必ずしもそうではないことがよく分かる。

 自動車に乗っていて死傷者が出るような交通事故に遭った時の致死率は、運転席でシー トベルトを着けていた場合が0・17%であるのに対して、後部座席でシートベルトを着けていなかった場合はその倍。つまり、後者の方がはるかに危ないのである。県警などはデータや実例を分かりやすく説明しながら、着用率を高める努力を重ねてほしい。わたしたちもこうした状況を認識して「自衛」を心掛けなければならない。

 タクシーやバスの後部座席でもシートベルト着用が義務付けられるため、運転手の中に は客とのトラブルを懸念する向きもあるようだが、それを恐れて法律に違反するのは筋違いだ。まずは客にきちんと説明して理解を求め、それでも反発する場合は毅然と対処することも必要だろう。

◎五箇山で全通イベント 金沢の伝統芸能招いては

 南砺市観光連盟が、五箇山の合掌造り集落で七、八月に開催する東海北陸自動車道全線 開通イベントの期間中、藩政期から五箇山と縁の深い金沢の伝統芸能なども披露できないか検討してもらいたい。

 イベントでは、地元の民謡やライトアップが予定されている。世界遺産ブランドで誘客 を図るのは大いに結構だが、北陸の玄関口となる五箇山で開催するからには、「塩硝の道」によって歴史的つながりのある金沢から、たとえば加賀鳶(とび)はしご登りや能楽の舞台を招へいし、茶会なども催すことは、「加賀藩」というくくりから言っても不自然ではなかろう。

 計画では、全通初日の七月五日と六日に、五箇山民謡の舞台発表と合掌家屋のライトア ップが行われる。八月には、南砺市内の宿泊客を対象に「合掌街道・越中五箇山伝統芸能祭り」と銘打って計四回、五箇山で地元芸能団体が歌や踊りを披露する。

 麦屋やこきりこなど、全国に知られた郷土民謡がある土地柄だけに、これらがイベント のメーンになるのは当然であろう。南砺市観光連盟はこの二カ月間を全通イベント月間と位置づけているが、期間中、より多彩な五箇山の魅力を知ってもらうために、加賀藩の縁を活用していきたい。

 二月に策定された同市の五箇山地域再生ビジョンでは、富山における加賀藩文化圏の象 徴とも言える五箇山の活性化策として、百万石まつりや、こきりこ祭りの会場で、それぞれの伝統民謡を披露し合う試みなど、加賀藩との歴史的つながりを切り口にした提案が随所に盛り込まれた。

 さらに、七月末には地元NPOの発案で、初の「五箇山音楽祭」が開催され、その中で 石川と富山の吹奏楽部員を指導する企画も考えられているように、県境を超えた両地域の連携を強く意識したイベントも生まれてきている。

 山間の静けさの中で演じられる加賀鳶の妙技や、格調高い能の舞台は、重厚な合掌造り 集落との意外なマッチングを引き出し、遠来客にも強い印象を残せるのではないか。


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