文明開化は海からやってきた。言われてみればその通りなのだが、飛行機が発達した現代では忘れられた感がある。
尾道市出身の映画監督大林宣彦さんが、日本港湾協会発行の「みなとだより55号」に寄せたエッセーで、長い鎖国を解き、門戸を開いた明治初年の港のにぎわいに思いをはせ「港とは、文明開化に華やぐ“晴れ”の場であったのだ」と強調している。
海外から珍しい文物が入ってきただけではない。「開国し、青い海が大きく開け、その向うに見知らぬ世界が遠くだが、それ故により希望に充ちて臨め…。自由である。未来がある。沸き立つような発展が期待できる」とも書く。港に夢があふれていた。
活気を取り戻そうと、みなとだよりは港湾を核とした新たな観光振興を特集し、事例として玉野市の宇野港を取り上げる。造船の街らしく、三井造船玉野事業所の進水式を中心に市の産業や景勝地をバスで回る産業観光ツアーなどに力を入れる。
官民が一体となった取り組みに加え、特徴的な活動として紹介しているのが女性の視点から港の活性化について考え提言する「うの港(ポート)13」だ。行動力もあり「宇野港はいま大きく変わりつつある」と同誌は評価する。
海に囲まれた島国である。各地の港が晴れの場を取り戻せば、日本は輝きを増そう。