グルメ・情報

2008年05月30日 紙面より

ぶらり絶景の旅 日暮里・舎人ライナーで新発見

舎人ライナー

菖蒲園

東京都荒川区の日暮里と、足立区の見沼代親水公園間の9.7キロを結ぶ新交通システム、「日暮里・舎人(にっぽり・とねり)ライナー」が開業して、2カ月が経過した。かつては「陸の孤島」ともいわれた地域が、新線開通で利便性が格段にアップ。首都高速の高架橋の、さらに上を走る車窓からの眺めや、沿線に点在する自然豊かな公園を楽しもうと、沿線住民だけでなく、行楽客の利用が目立つ。新緑の季節。新線に乗って、のんびり知らない街を訪ねてみるのはいかが。

東京都北部の荒川区と足立区をほぼ南北に、直線で貫く「日暮里・舎人ライナー」。お台場を走る「ゆりかもめ」同様のゴムタイヤの無人運転車両だ。

終点の足立区の北西部にある舎人地区は、もともと交通の便が悪く、渋滞時にはバスで日暮里まで1時間もかかることがあった。それが、ライナーならわずか20分。しかも朝のラッシュ時には5分間隔で走る。

沿線住民にとっては、待望の新線開通。東京都交通局によると、3月30日の開業から1カ月が経過した4月の1日平均の利用者数は約4万人。朝夕は通勤・通学の人たちの利用だが、「実は平日よりも休日の乗客が多い」と同交通局。新線を使って新しい発見を求める観光客が、こぞって利用しているのだ。

実際、4月12日の土曜日に行われた「日暮里・舎人ライナー沿線ウォーク」には約3000人が参加。荒川土手や西新井大師など、沿線の名所を散策して楽しんだ。5月3〜6日の連休中は日中に臨時便を走らせたほどだ。

観光客や、子供たちのお目当ては、ガラス越しに眺める隅田川、荒川水域の絶景。無人の自動運転のため、最前部に陣取ることができれば、運転士気分が味わえる。

沿線一番のビューポイントは、足立小台駅と扇大橋駅の間、荒川を渡る地点。首都高速の高架橋のさらに上、地上から約30メートルという非常に高い場所を走るため、眺めがいい。「空気が澄んでいれば、富士山も見える」(同交通局)とか。

沿線で最も乗降客でにぎわうのが、舎人公園駅。駅の両側に広がる都立舎人公園には、陸上競技場やテニスコートなどのスポーツ施設、大池や親水広場などの自然と親しむスペースや、日暮里・舎人ライナーの地下車両基地まで。同公園サービスセンターによると、例年4月上旬の来園者は4000人程度だったのが、今年は約3万人と激増。「あきらかに新線効果」と話す。

園内はバードサンクチュアリーがあるほど自然に恵まれており、黄菖蒲に続き、6月には花菖蒲が咲き始める。沿線のおもな見どころはの通り。初夏の日差しに誘われて、知らない街を探検に出かけませんか。

日暮里駅

【日暮里・舎人ライナーの基礎データ】

東京都荒川区のJR、京成電鉄の日暮里駅=から東京都足立区舎人の見沼代親水公園駅までの9・7キロ、13駅を約20分で結ぶ。運賃は160円〜320円。コンピューター制御による自動運転で、高架軌道をガードレールに沿ってゴムタイヤで走る。日中は7分30秒〜10分間隔で運行している。沿線を満喫するなら、「都営まるごときっぷ」が便利。都営地下鉄、都バス、都電荒川線、日暮里・舎人ライナーで利用できる1日乗車券。大人700円、子供350円。詳しくは東京都交通局TEL03・3816・5700(9時〜19時、年中無休)


そり遊び

【子供連れにはそり遊びが人気】

舎人公園で家族連れに人気なのが、4月に新しく登場した「そりすべりゲレンデ」。最大斜度16度と20度の人工芝の斜面をそりで滑り降りる。小学生までの子供が対象で、小さい子には保護者の付き添いがないと乗れないが、なんと無料。オープンから20日で延べ約1万2000人が遊んだという。2歳の息子と一緒にそりすべりを楽しんだ男性は、「車で遠出するよりいい。子供連れでのんびり楽しめる」。

【舎人ライナーの由来】

終点の舎人地区は半径2・5キロ内に鉄道駅が全くなかった、都内でも珍しい空白地帯で、計画から開業まで20年以上の歳月を要した。駅名などは一般公募によって決定したが、路線名のほか、13駅中の2駅に「舎人」を採用。地名への地元住民の誇りと愛着を感じさせる。「舎人」の由来は、戦国時代の武家・舎人氏が拠点としたことにちなむという説が有力だが、日本書紀を編纂(へんさん)したことで知られる舎人親王由来説や、聖徳太子命名説まで諸説ある。


あんこ玉

【駄菓子屋問屋の街】

始発駅の日暮里駅周辺は大規模な駅前再開発の真っ最中。日暮里の名所だった駄菓子屋問屋横丁も、平成16年11月に取り壊された。跡地には4月に、都心最大級のジーンズ売り場を持つエドウィンの旗艦店などが入る40階の高層ビル「ステーションガーデンタワー」が完成したが、そのビルの一角で、2軒の駄菓子屋が営業を続けている。

1階に村山商店、2階に大屋商店が、装い新たにオープン。足を踏み入れると、懐かしいお菓子、おもちゃが目白押し。戦前からの名物「元祖植田のあんこ玉」=も健在。コロコロ転がして丸めた餡にきな粉を付けたもので、お茶うけにお新香と一緒に食べるのが通の食べ方だ。


村山商店の村山正幸さん

「もう横丁とは言えなくなってしまったが、繊維街も頑張っているし、新線の開業で日暮里の街が再び活気づいてほしい」と村山商店の村山正幸さん〔右〕。最近は小売業者よりも一般客がほとんどという。

村山商店TEL03・3806・2280、大屋商店TEL03・3801・2530。月曜と第3火曜定休日、営業時間は9時〜17時(各店共通)。


◆日暮里・舎人ライナー沿線の見どころ◆
★日暮里繊維街(日暮里駅)=布と服の品ぞろえと激安ぶりが人気。日暮里駅東口から東に伸びる日暮里中央通りを中心に、約65店舗の繊維の店が並ぶ。生地問屋はもちろん、「生地より安い」が売りのオリジナル製品や既製品の激安店なども
★はっぴいもーる熊野前(熊野前駅)=都営荒川線(都電)の駅前から伸びる商店街。青果店、鮮魚店、精肉店に、レトロな風情のおもちゃ屋などが軒を連ねる。昔ながらの風景で、映画やテレビの撮影もしばしば
★尾久の原公園(熊野前駅)=隅田川沿いの旭電化尾久工場跡地に造成中の都立公園。芝生広場、クローバーの広場、小さい子供を対象とした人工の流れなどの施設が整備されている
★西新井大師(西新井大師西駅)=駅から徒歩15分。その昔、弘法大師が立ち寄り、疫病に苦しむ村人を救ったと伝えられる真言宗豊山派の寺院。境内に5つあるぼたん園が有名だが、年間を通じさまざまな花を楽しむことができる。今月中旬から6月にかけては花菖蒲やあじさいが見ごろ。毎月21日が縁日で、フリーマーケットも
★舎人公園(舎人公園駅)=園内の北東側には噴水やウオータースライダーのある池があり、子供たちの水遊び場として人気。森林浴やバードウオッチングなども楽しめる動植物の宝庫で、バーベキューやキャンプができる広場も整備されている(予約制・利用場所指定制)。申し込み問い合わせは同園(電)03・3857・2308
★見沼代親水公園(見沼代親水公園駅)=駅の北側、東西に伸びる見沼代親水公園は、農業用だった見沼代用水を整備したもの。約1.7キロにわたり、「水生植物園」「こもれび」「せせらぎ」「まどろみ」の各ゾーンがあり、変化のある水辺の風景が広がっている