日本や世界で現在進行形の最新の軍事情報を選別して、誰にでもわかるような文章で解説します。ホットな事件や紛争の背景や、将来の展開を予測したり、その問題の重要性を指摘します。J-rcomでは、日本で最も熱い軍事情報の発信基地にしたいと頑張ります。 |
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この情報の最も新しい更新日は5月30日(金)です。 |
クラスター爆弾 ダブリン会議 条約案きょう採決 日本、 全面禁止に同意 福田首相の指示で一転 (毎日 5月30日 朝刊) |
[概要]政府は29日、不発弾被害が深刻なクラスター爆弾を一部の「最新型」を除いて即時全面禁止する条約案について、同意する方針を決めた。条約案は軍縮交渉「オセロ・プロセス」のダブリン会議で30日に採択され、日本政府はその場で受け入れを表明する。 日本は同プロセスに参加していない米国との同盟関係に配慮し、条約案への態度を保留していたが、福田首相の意向を受け、人道上の観点から同意に踏み切った。日本政府が条約に署名・批准をした場合、自衛隊が保有するクラスター爆弾はすべて禁止対象となり、8年以内に在庫を破棄しなければならない。しかし米軍がクラスター爆弾を使用する可能性がある日米共同作戦に自衛隊は参加・協力することは出来る。 今回のダブリン会議で日本が同意した背景に、福田首相に公明党の浜四津代表代行から全面禁止の働きかけがあったことや、米国との共同軍事作戦を容認する条文が入ったことで、受け入れを決断したようだ。 [コメント]10パーセント台と支持率低下が著しい福田政権にとって、支持率浮上は最重要の政策課題である。その意味から、自衛隊のクラスター爆弾破棄を決めたのは、この支持率低迷が最大の功績といえるかもしれない。 しかし日本は今回の条約案では全面禁止の例外となった”最新型”クラスター爆弾を保有するのではないかと考える人もいると思う。ところが最新型は対戦車や対装甲車用のハイテク兵器で、ヨーロッパのような陸続きの国が、対機甲戦として重視する兵器なのである。日本のように対上陸戦で海岸線に押し寄せた敵陣を攻撃する対人重視のクラスター兵器にはならない。だから日本が非常に高価な”最新型”を購入するというのは説得力に欠ける。 日本が今回の条約を批准すれば、空自配備のクラスター爆弾や陸自用の155ミリ砲のクラスター弾は簡単に破棄できる。しかし陸自の自走式の多連装ロケット(MLRS)は存在意義が激減することになる。MLRSは最大射程30キロで1台の自走発射機から12発のロケット弾を発射し、1発から644個の子爆弾を散布し、広域の目標(面)を瞬時に制圧する性能が売り物だ。日本がクラスター弾禁止になれば、最も影響を受けるのはMLRS部隊であることは間違いない。 MLRSには使用上の注意として、短い射程や浅い角度でクラスター弾を発射すると、不発弾が発生しやすいというのがある。これを逆の意味で使えば、短い射程や浅い角度で発射すると不発弾(対人地雷)を大量に散布できるとことになる。そのことを実戦したのが06年にイスラエル軍が南部レバノンで400万発の子爆弾を散布した作戦である。イスラエル軍は南部レバノンから撤退するのを前に、武装組織ヒズボラに使用させたくない村や果樹園に不発弾という地雷原を作った。そこに戦火が収まって帰ってきた村人や子どもが不発弾の犠牲になった。だから一気にクラスター爆弾禁止の国際世論が高まった経緯がある。 日本は対人地雷は小渕さん、クラスター爆弾は福田さんと、2人の首相の決断で全面禁止が果たされた。そんなに簡単にできることなら、もっと早くクラスター兵器の全面破棄を決断して、平和大国・日本として国際世論をリードして欲しかった。 |
四川大地震 空自機派遣 見送り 政府 中国側の難色で 民間機で物資輸送 検討 (読売 5月30日 朝刊) |
[概要]政府は29日、四川大地震の被災者向け支援物資を、空自輸送機で輸送するのを見送ることに決めた。世論の反発に配慮した中国政府が、自衛隊機受け入れに難色を示したからだ。日本政府は早急に民間チャーター機による輸送を検討する方針。戦後初の自衛隊機派遣が見送りになったことで、過去の歴史に対する中国国内の複雑な感情が浮き彫りになった。 救援物資の提供は、27日に北京で行われた日本の防衛駐在官と中国国防省との協議で、中国側から要請されたという。テントや毛布の提供を求める中国側に対し、日本側が運搬手段について相談すると、中国側は、北京や成都などの空港まで自衛隊機で物資を運搬することを認める意向を示したという。 外務省関係者は、「自衛隊派遣が報じられたことで中国に副作用が出ている。物資を届けるという本来の目的と両立しなくなっている」と述べた。中国ではインターネット掲示板で自衛隊を旧日本軍と結びつけ、派遣に反対する意見が相次ぎ、強い反発が出ていた。中国政府は国内世論の反応を見て、自衛隊機の受け入れは難しいと判断したと見られる。北京の日本大使館関係者にも、中国側から「自衛隊が派遣されると国内世論が持たない」という声が寄せられていた。 防衛省は。C−130輸送機3機が四川省成都に陸上自衛隊や兵庫県などのテント計200張り、毛布約3600枚、食糧などを運ぶことを計画していた。政府はこうした援助物資を運ぶため、民間機のチャーター機数機で、早急に運ぶための調整を中国側と行う。 [コメント]自衛隊機の四川大地震への救援活動中止を聞いて、正直な気持ちは”残念”としか言いようがない。町村官房長官が28日の記者会見で、「(中国側が)自衛隊機で自衛隊のテントや毛布を運んで欲しいという意味と理解している」と話しているのを見て、その表現ではマズイと思った。あくまで地震被害者の緊急救援が最重要課題で、自衛隊の輸送機投入はその緊急性のための非常手段と演出することが必要だった。 四川省の成都空港に自衛隊輸送機が着陸し、救援物資を降ろして、すぐに帰国すれば中国での反発は最小限に抑えられ、むしろ緊急援助のために来たことを中国メディアが報じて対日感情が好転する可能性があった。日本の心理戦能力の欠如が今回の被災者救援作戦の足を引っ張ったと思う。 中国側が調整できないというより、日本の対応が中国で調整が出来ないようにしたと思う。まことに残念である。日本と中国との軍事摩擦を減少させるチャンスであった。しかし諦めず、次のチャンスに期待したい。 |
中国、四川大地震 自衛隊機派遣検討 「早く援助物資を」 中国被災地、切実 日中関係良好 自衛隊派遣も容認 中国は「変わった」 驚く日本 (朝日 5月29日 朝刊) |
[概要]中国が四川大地震の被災者救援のため、自衛隊の輸送機による救援物資の受け入れを容認する考えを伝えてきた。実現すれば自衛隊機が中国国内に入るのは事実上初めてとなる。具体的な活動については、「(中国側は)国内での輸送までは期待していないようだ。北京、あるいは成都の空港までということだ」(町村官房長官、28日の記者会見)。政府関係者によると、派遣を検討しているのは航空自衛隊のC−130輸送機(小牧基地 愛知県)で、提供するテントや毛布の数に応じ、中国と調整が終わり次第、出来るだけ早く派遣する方針だ。 中国の四川省北川チャン族自治県。災害指揮部のわきに日本が緊急援助物資で送った「JAPAN」のロゴが入ったテント25張りが立つ。そこに住む被災者(15才)は「(日本に)とても感謝している。日本語を勉強して日本文化を知りたい」と話す。手作りのテントで暮らす被災者(63才)は「中央政府が外国から支援を積極的に受け入れている。日本の自衛隊が来ることも大歓迎」と話す。「日本の軍隊が来ても悪い感情はしない」(被災者 58才)など好意的。 中国政府が日本側に自衛隊機による輸送容認を示した背景に、被災地での深刻なテント不足がある。「国際社会の物資提供で、特に緊急を要しているのは、テントとプレハブだ」(中国外務省 報道局長 22日の記者会見)。中国政府は被災者に330万のテントが必要と見積もるが、28日までに配給できたのは60万張りに過ぎない。中国の呼びかけに、米国やスイス、イタリアなどから21万張りのテント提供の申し入れがあった。すでにロシアと米国は、自国の軍用機でテントや食糧の緊急物資を四川省の成都まで送った。中国は救援活動にあたる人民解放軍から指導部に、日本を含む外国軍の物資輸送の提案があり、自衛隊機が中国の空港に乗り入れることも了承済みという。 中国の要請に、外務省や防衛省内から驚きの声があがっている。「あれだけ自衛隊アレルギーだった中国が変わった」(防衛省幹部)。このように前例のない動きは、最近の良好な日中関係を反映している。今月初めに訪日した胡錦涛主席と福田首相との首脳会談では「日中共同声明」がまとまり、「戦略的互恵関係」を確認した。自衛隊と人民解放軍との防衛協力も本格化しつつある。防衛省幹部は「日中間の防衛交流を深める意味でこれほど良い話しはない」と意欲的に話すが、今後の日中関係にどう影響するか、予断は許さないという見方も出ている。 [コメント]「中国が自衛隊機での救援物資受け入れを容認してきた」。昨日、午後にこの1報を聞いて急いで外出先から帰宅した。日中関係に画期的なことが起きたと感じたからだ。と、同時に、このシナリオ(外交・政治劇)を誰が書いたかと考えた。黒衣(くろご)は中国人か日本人か。 中国側から日本にわざわざ自衛隊機による物資輸送を提案することはない。もし防衛省が自衛隊輸送機の不足を理由に、民間チャーター機での輸送を提案すれば、中国側の好意は”否定され”顔に泥を塗られたことになるからだ。中国側が求めているのはテントや毛布で、自衛隊の輸送機による支援ではない。今回の救援要請は形の上からは中国政府から北京の日本大使館に寄せられたことになっているが、実際は日本政府内で事前に検討され、あえて中国側からの要請に答える形にしたと考えた。あらかじめ防衛省と外務省が政府幹部の要請に、自衛隊輸送機の物資輸送を確約しての依頼であると推測した。 なぜ日中両国は自衛隊機の物資輸送にこだわるのか。それは日中間の”喉に刺さった骨”を取り除くためである。その魚の骨とは、日本軍が過去の中国侵略で残した残虐行為という”魚の骨”である。今月に訪日した胡錦涛主席に、福田首相は「いちまでも過去のことにこだわってばかりいないで、未来志向の関係を築きたい」と発言した。胡錦涛主席も「寒い冬が終わり。これからは春の訪れがきたような日中関係に発展させたい」と応じた。このことが未曾有の大災害を受けた中国で、自衛隊機が救援に駆けつけることで、日中間の「喉の骨」を取り除けると考えてシナリオ(大芝居)を書いた黒衣(人物)がいた。 どのような人物がシナリオを書いたのか。現中国大使(第12代)の宮本雄二氏という可能性はないとおもう。これだけの大芝居を打つにはもっと大局的な立場で日中関係を熟知し、中国政府の中枢に影響力を持っている者である。今の宮本大使のレベル程度の要請では中国首脳は動けない。もし、構想が失敗した時のリスクに耐えきれない。その点からも日本の親中的な政治家という可能性は消える。そこで、ただ一人私の頭に浮かんだのは、福田首相とは小学生頃からの友人で、中国大使(第10代)であった谷野作太郎氏の顔である。今の外務省でチャイナ・スクールの中では最高顧問である。彼ならこのシナリオを書いて日本政府と中国政府の中枢に提案することが可能だ。 福田首相が小泉元首相の官房長官時代に、谷野氏は「小泉首相の靖国神社参拝はやめたほうがいい」と福田氏に助言し、それを進言した福田氏が小泉政権から追われる経緯に関与した人である。 ある意味では。今回の中国への自衛隊輸送機派遣は、ブッシュ政権が終焉するのを待って、外務省のチャイナ・スクールが、親米一辺倒のアメリカ・スクールに巻き返しを図った大芝居ともいえる。確かに言えることは、これで日中関係は新たなの友好の時代に脱皮できることである。 ちょっと気になるのは、町村官房長官は昨日の記者会見で、「自衛隊機で自衛隊の毛布やテントを被災地に運んで救援するとことと理解している」と話したが、毛布やテントであっても、自衛隊が装備しているものは武器である。武器とは銃器やミサイルや戦車だけではない。毛布やテントであっても自衛隊が戦争に使うための装備品は武器なのである。毛布やテントが武器である以上、中国に無条件に提供することは「武器輸出禁止3原則」に抵触する。一旦、自衛隊の備品であることを書類上抜いて廃品扱いとするか、民間のテントや毛布を購入して援助する方法となる。中国が困っているときに言いたくはないが、もし日本に侵略する意図を持った国があれば、自衛隊のテントや毛布が不足しているときが侵略のチャンスと考える可能性があるからである。 ともあれ、今回のことは日中関係を画期的に改善できるチャンスであると考える。何としても自衛隊輸送を成功させて、日中間の喉の刺さった骨を取り除いて欲しいと願っている。 ※赤字の部分は、間違いであることがわかりました。毛布やテントは武器輸出禁止3原則に該当する「武器」ではありませんでした。しばらくこの間違いのまま、赤字で掲載し、数日後に訂正するつもりです。ご迷惑をおかけしたことをお詫びします。詳しくは、本日の「メールにお返事」を参照してください。 |
STOP クラスター爆弾 ダブリン会議 「最新型除外」強まる 日本は「改良型固執」で孤立 (毎日 5月28日 朝刊) |
[概要]民間人に不発弾被害を出しているクラスター爆弾の禁止条約作りを進める軍縮交渉「オセロ・プロセス」で、「最新型」だけを例外にする流れが強まった。これは今まで例外なしの全面禁止を主張してきた約40のアフリカ諸国が、27日までに米露など十数カ国しか保有していない「最新型」を例外として認めるように転換したからだ。日本はより不発弾率の高い「改良型」の堅持を固執しており、そのためダブリン会議での存在感を失っている。 「最新型」は保有数が少なく、実戦ではイラク戦争で米軍が68発使用しただけだ。開発国によって多少の違いがあるが、基本的な構造は似ている。米軍が保有する「最新型」はセンサー付き兵器(SFW)と呼ばれ、縦79センチで直径13,3センチの筒状の子爆弾10個に、それぞれが弾頭4個を内蔵されている。 子爆弾は落下途中で弾頭を4方向に放出、それぞれがセンサーで目標を識別し、車や船のエンジンを狙う、目標を探知すると上空から弾を発射する。製造元の米テクストロン社によると、弾頭は目標を見つけられない場合、空中で自爆する。信管を作動する電池も数分で切れ、自爆に失敗しても爆発しない。ただし現在有力な禁止対象の定義では「子爆弾10個未満」との条件があり、SFWは例外として認められていないという。 [コメント]この最新型のセンサー付き兵器(SFW)のクラスター爆弾(ロケット弾を含む)は、対戦車、対装甲車、対輸送トラックや大型トレーラー、小型の船舶などへの攻撃を想定した集束(クラスター)兵器なのだ。そこが古いタイプの対人用クラスター爆弾と違うところだ。 SFWクラスター爆弾は、まず偵察ヘリや無人偵察機などで草原や森林に潜む(あるいは移動中)敵戦車や敵装甲車などの機械化部隊を探知する。そこの上空に航空機からSFWが装着されたクラスター爆弾を投下する。切り離された子爆弾は螺旋(らせん)状に空中を回転しながら降下する。そして地上の戦車や装甲車のエンジンが発する熱源からでる赤外線を探し出す。熱源を探知すれば砲弾を発射して破壊する。弾薬集積地など熱源を発しないものは、光学センサーで撮影し内蔵された画像データから目標を識別するものもある。この光学センサーとはビデオ・カメラという意味である。 このようにSFW兵器の主目標は、対装甲、対車両、対軍事物資というように、対人用の殺傷兵器ではないことが最大の特徴である。また空中自爆装置は、地上に落下した時に敵に捕獲され、感応するセンサーの性能などを敵に知られないための秘密保全である。不発弾を防ぐという人道的な目的で自爆するわけではない。 アフリカなどの国がSFW付きクラスター兵器を除外することに転換したのは、自分たちが苦しむクラスター兵器の不発弾が大量に発生しないという説明を納得したからだと思う。これに対して、日本は従来のクラスター兵器を”改良”して、自爆装置を取り付けることを主張している。しかし単純な改良ではすぐに改悪され、危険な大量の不発弾を発生させることを防ぐことは出来ない。クラスター兵器の世界では、改良した兵器が再び改悪されないという性善説は成り立たないのだ。逆に、改良されたものが一夜にして改悪されるという性悪説が支配する世界なのである。 |
英紙ザ・タイムス 「イスラエルは 核弾頭150発保有」 カーター元米大統領が発言 (読売 5月27日 朝刊) |
[概要]26日の英紙ザ・タイムスによると、カーター元米大統領は英ウェールズで開かれた書籍フェスティバルの席上、イスラエルが核兵器150発保有していると発言した。 イスラエルは核兵器の保有を公式に認めておらず、米元最高指導者の発言だけに波紋を呼ぶ可能性がある。 イスラエルは1950年代以降、原子炉建設を本格化させ、現在は100発以上の核弾頭を保有する「中東唯一の核保有国」とされるが、詳細は不明。米高官も公式な言及を避けている。 [コメント]私が元自衛官(少年工科学校・生徒)であることと、母が広島で被爆(2次被爆)した子どもの被爆2世であることは多くの人が知っている。そのような私自身の境遇と経験から、若い頃から核兵器や核戦略に強い関心があった。しかし昔の反核・平和運動は悲惨な被爆体験を語ったり、被爆の実態を世界に知らせることが運動の中心で、現在の核兵器や核戦略を知ることとは無縁だった。逆に、そのような軍事知識を研究しようとする姿勢は、悪魔の魂に近づくことで反平和的と言われたこともある。しかし医学が病気の原因や発病の過程を知ることなく、病気の治療や予防医学は成り立たない。と、同じように平和を追求することは、軍事理論や戦争の研究は欠かせないと思っていた。 この記事が指摘しているが、カーター元米大統領がイスラエルに150発(事実はもっと多い)の核兵器があると断言しているのに、これが中東や世界で波紋を呼ぶ可能性は全くない。なぜ私がそんなことを簡単に言い切ることができるのか。それは、イスラエルの核兵器は国家・民族の存亡の危機に備えたもので、通常の戦争の範囲では核兵器による行使や威嚇は禁じられ、その力(核戦力)をイスラエル自身も封印していることを知っているからである。また、そのことをイスラエルに命じたのも、このカーター氏が米大統領時代に行っている。すなわちイスラエルの核実験(当時の南ア政府と共同)はカーター米大統領時代に行われ、カーター大統領がその事実を封印した。そのことはソ連(当時)も早期警戒衛星やKGBの情報活動で確認したが、カーター大統領のイスラエル核武装の封印に同意したという経緯があった。 このように悲惨な被爆体験を伝えるだけでは核戦争を防ぐ万全の策にはならない。核戦略、核兵器を正しく理解し、その上で、強い意志で反核運動を広めるべきと思う。 なぜ早期警戒衛星は米露といった戦略核兵器を配備した国だけにあるのか。米、露、仏、英、中という核兵器保有国には潜水艦に戦略核兵器(SLBM)を搭載し、配備する理由はなぜか。インドやパキスタンには戦略核潜水艦がない理由は。中国が開発を急ぐ多弾頭核ミサイルが必要な理由は何か。また、北朝鮮の核武装に核実験の成功が必要でも、イランの核武装には核実験が必要としない理由はなぜか。米露は旧式な大型爆撃機に核爆弾を搭載し、今も日常的(露は一時中断)に戦略パトロールを続ける理由は何か。・・・・というような核兵器や核戦略に関する素朴な疑問は説明できるのだろうか。 護憲運動という憲法めぐる平和運動も同じ境遇にあるように思う。今の憲法を守れば日本は平和でいられるというのは本当か。小泉元首相は現憲法のもとでイラクの戦場に陸自と空自の自衛隊部隊を派遣した。陸自はすでにサマワから撤退したが、空自は今もイラクの空で、戦争を戦っている米軍の兵員や物資を空輸している。先日は名古屋高裁で「空自のイラク派遣は憲法違反」という判決が出たのに、護憲運動の人たちは今の憲法が傷だらけになっているのに気がつかない。空自制服組の最高幹部である航空幕僚長が、名古屋高裁の判決に「そんなの関係ねぇ」と言っても、世論は騒がず、デモも起こらず、ただ”平和憲法を守れ”で本当に平和になれるのか。そんな光景を見ていると、大嵐が迫っており、すでに大雨で堤防の一部が決壊し始めているのに、「祈れ、祈れ」と叫んでいるだけのように感じてしまう。今の憲法を平和のために修復することなど護憲の人にはタブーらしい。まさに昔の反核・平和運動と同じである。 |
読む政治 選択の手引き ねじれる日米 幻の横田移転 グアム移転を巻き返し (毎日 5月26日 朝刊) |
[概要]03年12月、防衛庁統合幕僚会議(当時)の会議室で、陸海空自衛隊最高幹部にファーゴ米太平洋司令官(当時)が米軍再編計画を説明した。「第5空軍(横田)は第13空軍(グアム)に統合される予定だ」。すぐに空自幹部が反論した。「今の戦争は航空戦から始まる。(空自の)カウンターパートナー(米軍)が(日本に)いなくなると困る。日米の連携がうまくいっているからこそ、北朝鮮も手が出せない」。第5空軍がグアムに行けば、空自と米軍のパイプが細る可能性があった。 米軍の意図は、「西太平洋グアム基地を強化して、太平洋進出を狙う中国を牽制するのが狙いだった」(防衛省幹部)。結局、統合案は白紙撤回された。空自と知日派の米空軍幹部が連携し、巻き返したためだった。 北朝鮮を念頭に日米同盟強化を目指す日本。中国の進出に備え、兵力を西太平洋に重点配備する米国。日米両国のすれ違いが、あらわになり始めている。 ※赤字の( )は神浦が加筆した部分です。 [コメント]先日の24日(土)に、大和市(神奈川県)で「憲法9条やまとの会」に呼ばれた。護憲(平和)の立場から、最近の憲法問題を語るという講演会と対談である。対談のゲストは、雨宮処凛さんと私で、司会はオウム・サリン事件で顔見知りの滝本太郎氏(大和市在住の弁護士)だ。その時の会場(参加者)からの質問で、「軍事の勉強にお勧めの本を教えて欲しい」というのがあった。私の答えは、「軍事専門書よりも新聞の軍事記事を読んだほうがいい。軍事の専門書(書籍)よりも新聞の方がはるかに情報量が多く新しい」と答えさせてもらった。 そのようなタメになる新聞記事がこれである。今日の毎日新聞の朝刊12、13面の見開きで、「優先される米の戦略」「軽減されぬ地元負担」という「米軍再編と日本」の特集が組まれている。このような米軍再編の説明や数字や金額などは、私が軍事関連の原稿を書く時に基礎情報として重宝している。(但し、記事によっては正確かを確認したり、他の記事と比較する必要はある)。 [コメント]この記事で気になるのは、空自の戦略は北朝鮮が崩壊して、朝鮮半島に韓国と統一された新国家が誕生し、その新国家がアメリカと軍事同盟を結んだら、米第5空軍がグアムに移転して第13空軍に統合されることにどう考えるかである。この記事で空自は異存ないことになる。また米空軍も中国に対抗するために、在日米軍よりもグアム米空軍を強化するために再編を行う。 米空軍は日本でいつでも使える基地を確保し、有事には高速機動性と長距離機動能力を発揮して日本に緊急移駐する東アジア戦略である。その戦略の円滑な運用こそが、日米安保体制の強化に他ならない。日本の主要空自の5基地で始まった日米(巡回)共同訓練や、空自部隊がグアムやアラスカに長距離機動して行う日米共同訓練などは、米空軍の新戦略に沿った訓練なのである。 平時には、自衛隊はそのような日米共同訓練と、在日米軍基地の警備や整備にあたることになる。もし米軍の横田基地(東京都)、座間基地(神奈川県)、横須賀基地(神奈川県)のように、自衛隊と共同で使う基地なら普段から高い効率で運用や警備ができることになる。 と、・・・・・いうように、その日の新聞各紙の中から、1本の軍事記事を選び、それを解説するのがこのホームページの役割である。だから読者の皆さんもタメになるが、私自身も勉強(修行)になっているのは間違いない。 |
クラスター爆弾 規制強化 首相前向き 首相「私は軟着陸させる」 (産経 5月24日 朝刊) |
[概要]福田首相は23日、公明党の浜四津代表代行と首相官邸で会談し、クラスター爆弾の全面禁止に向けた取り組みを要請された。 浜四津氏によれば、首相は「現実的には難しい問題もあるが、踏み込んだ対応が必要だ。軟着陸させるので、任せてもらいたい」と述べ、前向きな姿勢を示した。 クラスター爆弾の使用禁止を協議する「オスロ・プロセス」の国際会議が、アイルランド・ダブリンで19日から始まっている。この会議にはクラスター爆弾を保有する日本など110カ国が参加しているが、大量に保有しているアメリカや中国は参加していない。 日本は今まで、不発弾の自爆装置を備えたものは規制の対象外にすることを主張してきた。この日の福田首相の発言は、従来の主張より厳しい条約を検討する必要を示した。福田首相は23日夕、記者団に「安全保障上の問題も考えながら解決にあたることになる」と述べ、政府も慎重に議論すべきだとの考えを示した。 [コメント]日本の安全保障上で考えるなら、自衛隊にクラスター爆弾は必要がない。海岸に上陸してきた敵軍を一気に攻撃するという発想が成り立たないからだ。そのような大規模な仮想敵が存在しないからである。最近流行の近接戦闘ではクラスター爆弾は使えない。避難民が逃げ遅れた都市にクラスター爆弾は使えない。 あえて問題になるのは、同盟国のアメリカ軍がクラスター爆弾を中東の沙漠で使用すると、オスロ・プロセスを批准した日本はアメリカ軍と共同行動ができなくなる。オセロ・プロセスでは加盟国がクラスター爆弾を使用した国に協力することを禁じているからだ。 そのような軍事作戦や戦闘効率だけを考えると、クラスター爆弾や対人地雷は絶対に必要な安価な兵器で、代替え兵器はない。しかしクラスター爆弾や対人地雷によって多くの農民や子どもが犠牲になっている現実を考えると、高価で高性能な自爆装置付きクラスター爆弾ならいいという発想では通用しない。日本だけでなく地球規模で残忍な兵器のクラスター爆弾を廃止していくことが大事だ。 アフリカや東南アジアでは安価で大量の不発弾が出るクラスター爆弾は、攻撃と応急の地雷原を作るために使用された。そして何十年も土の中で安全装置が解除されたまま生き続けるのである。 クラスター爆弾を廃止することは、防衛省や自衛隊の発想では解決できない。人道主義という心しか解決できない。”クラスター爆弾を廃止したければ代替え兵器をよこせ”という考えに平和で繁栄した未来はない。福田さんの英断に期待したい。 |
オリンピック聖火点火者 震災で救出の 3歳男児? 担架の上で救援隊に敬礼 (産経 5月23日 朝刊) |
[概要]8月の北京オリンピックの開会式で、国家体育場(愛称 鳥の巣)の聖火台に火をともす最終走者に、四川大地震でガレキの中から救出された3歳の幼児を推す声が高まっている。 最終走者には米プロバスケットNBAのスター選手、 姚 明(ヤオ・ミン)らの名前があがっていたが、地震で一転した。ネットでは「生命の奇跡といえる震災の生存者が点火者を務めることは中国の勇気を示す」という意見が殺到した。中でも、地震発生の翌日の13日に、四川省綿陽市北川県で助けだされた朗錚(ろう・そう) ちゃんの人気が高い。左腕を骨折、左手の薬指と小指を切断した男児が、救出された担架の上で救援隊に向かって敬礼するシーンは、多くの中国国民の共感を呼んだからだ。 東京五輪では、原爆投下の日に広島で生まれた19歳の坂井義則氏(当時 早大生)が最終点火者を務め「平和」をアピールした。中国人にとって朗錚(ろうそう)ちゃんは震災の記憶をよみがえらせ、人権問題などを包み隠す効果が期待できる。中国紙の新京報によると、組織委も関心を示し、検討する意向を示している。 [コメント]これは北京オリンピック組織委も実行する案だと思う。中国政府がオリンピック開催に期待する「国民の団結」に最大の貢献が期待できるからである。またこれから中国国内で、被災地の復興に莫大な資金が必要とするために、政府は共産党の政府機関などから、接待費や海外視察を減らして「復興基金」(年間1兆円規模)を捻出する運動を始める。そのためにもキャンペーン・ボーイとして活用できる人材として使える。 実は東京オリンピックの最終聖火ランナーだった坂井氏は、我が郷里に近い三次高校(広島県)から早稲田大に進んだ。中学3年生だった私は、坂井さんが聖火台に点火する光景をテレビで見て、今もその勇姿を鮮明に覚えている。しかしなぜ坂井さんが最終ランナーに選ばれたかしらなかった。原爆投下の日に広島で生まれたことを初めて知った。この人選にも驚いてしまった。 何度も書いたが、四川大地震は中国の大災難だったが、この難局を乗り切って、国民の団結を確実にする北京オリンピックを開催できる胡錦涛主席の政治運は強い。これから日本は以前にも増して中国が軍事大国に舵を切らないように積極的に関与していく必要がある。 |
チベット亡命政府 中国への抗議 停止を呼びかけ 地震犠牲者に弔意 (朝日 5月22日 朝刊) |
[概要]インド北部のダラムサラにあるチベット亡命政府は、21日、世界各地の在外チベット人向けに声明を発表し、中国の四川大地震の犠牲者に弔意を表すため、3月に中国チベット自治区などの暴動発生以来、世界各地で続いている対中抗議行動を一時停止し、被災者支援活動を始めるように呼びかけた。 [コメント]亡命チベット政府は中国を相手に心理戦を行っている。今回の抗議行動中止(一時的)声明は国際世論に好感を与えるだろう。中国でいう”池に落ちた犬を棒で叩く”のはいけないのだ。だから地震直後の中国で、聖火バスがテロによって爆破されたという情報は疑問である。もし、四川地震の混乱を利用して、チベット人が暴動やテロを起こせばチベット抗議行動は非難の嵐を浴びる。また中国政府に武力弾圧の口実を与えることになる。 ところで中国政府は国民の団結を訴える余り、全国で強制的な義援金徴集を行っているという情報がある。貧しい者からも税金のように義援金を強制的に集めて、それをメディアで報じて美談に仕立てていると情報である。軍の放射能施設についても、軍の発表では被害がなかったとしたが、昨日になって軍の核施設2か所に被害が出たと報じられた。 中国国内ではメディアが奇跡の救助劇や、解放軍の献身的な救援ばかり強調しているという。そのような姑息な世論誘導で愛国心ばかり煽っても、その刃が将来は自分(中国政府)に向かってくることになる。開かれた報道(公開)は、進化した社会では絶対に必要な要素である。 |
防衛利用 宇宙基本法 きょう成立 民主、議論乏しいまま (朝日 5月21日 朝刊) |
[概要]宇宙の軍事利用に道を開く宇宙基本法が本日の参院本会議で、自民、民主、公明3党などの賛成多数で成立する。これは平和目的に限定した従来の宇宙政策の原則を転換する内容だが、与党案を土台にした修正協議に民主党が応じたために、実質審議は衆参で各1日、計4時間というスピード成立。民主党の議論は尽くされたとは言い難く、党の姿勢に批判がでそうだ。 宇宙利用の防衛目的への解禁は、自民党国防族や宇宙産業を活性化したい経済界の一部が求めてきた。そのため69年の国会決議「宇宙の平和利用」を、今回の法案で「我が国の安全保障に資する」と文言を加え、事実上、防衛目的を解禁して解釈を変更した。 民主党は安保政策の根幹にかかわる法案について、憲法・安保では党内に幅広い考えがあり、本格的に議論すれば収拾に手間取る可能性があった。そのため党内の宇宙基本法検討プロジェクトチーム(PT)は安保を「焦点から外す」(PTメンバー)姿勢をとり続けた。 法案には、「憲法の平和主義の理念を踏まえて」との文言が盛り込まれ、内閣委の採決でも、宇宙開発に関する情報の透明性の確保、法施行後2年以内をめどに法規制の整備に努めるという付帯決議がなされた。 しかし、法案がミサイル防衛(MD)の中核となる早期警戒衛星の配備などに道を開く可能性を問われると、自民党関係者は「法律の関係では可能」(河村元文科相)と述べた。民主党のPT事務局長は「決して政府に白紙委任する法案ではない」としているが、軍事利用の「歯止め」の論議も進んでいないのが現状だ。 [コメント]軍事目的を防衛目的と言い換えれば、何だか優しい感じの言葉となる。さらに非侵略という言葉を付けると、平和のために必要と認識する雰囲気が生まれる。しかし攻撃と防御が一体化した軍事作戦であるように、この宇宙基本法は日本が宇宙戦争に参戦する決意を表明したことにほかならない。 早期警戒衛星を配備して弾道ミサイルの発射を警戒するというが、その兆候を捉えてどのように対応するというのか。地上で弾道ミサイルを発射した瞬間の光と熱を探知するだけである。北朝鮮や中国東北部のミサイル基地からなら、10分位内に日本の首都圏に着弾する。ロシア中部のミサイル基地からアメリカ東武であっても、発射から30分以内にICBM(大陸間弾道ミサイル)は着弾する。 早期警戒衛星を配備するなら、その次は大量報復のための攻撃兵器(準備時間の短い弾道ミサイル)を配備しなければ意味がない。そのような基本的な宇宙戦争の知識もなく、ただ早期警戒衛星を日本も配備する必要があるという意見に、「都合のいいウソを言っているのか、それともバカなのか」と問いただしたくなる。 アメリカは自前の核戦力のために、逆にロシアの戦略核兵器で狙われ続けている。ロシアとアメリカが互いの頭に銃口を突きつけ、互いに心臓が突ける距離でナイフを構えている。だから早期警戒衛星が気休めに必要なのである。互いの殺し合いを本当に抑止しているのは、ロシアとアメリカの「大量報復攻撃能力(確証破壊戦略 MAD)」なのである。 アメリカはロシアで民族主義的なグループが核兵器を奪った場合とか、ミサイル警戒システムの誤認による偶発戦争の恐怖や、核事故による誤発射などの脅威に怯えている。そのためにレーガン大統領時代からMDシステムに国家予算を投じて、新技術や人材育成に大金を投じている。それに日本が追随したり資金提供する必要はない。 付帯決議で「情報の透明性の確保」というが、そのようなことをアメリカが許すはずがない。日本の情報衛星でも、その秘密主義は呆れるばかりである。ただし日本の秘密主義の場合は、アメリカと違って低い性能と価格の高さを隠すためという見方が一般的である。 |
米、民主予備選 オバマ氏 「勝利宣言」へ 一般代議員 過半数は確実 (読売 5月20日 朝刊) |
[概要]米大統領選で民主党候補指名争いで優勢に立つバラク・オバマ上院議員(46)は、オレゴン州とケンタッキー州予備選が終了する20日夜、中部アイオア州で事実上の”勝利宣言”を行う。両州予備選で、一般代議員獲得数が過半数に達する見通しで、それを指名獲得に「必要な到達点」とみなし、本選挙に照準を合わせる狙いがあるとみられる。 しかしクリントン上院議員(60)は残る予備選が終わる6月3日まで撤退しない方針で、オバマ氏もクリントン氏の選挙戦から撤退を迫る意向ではないことを強調している。 オバマ氏は一般代議員総数4050人のうち、19日現在で投票した3253人の中から1612人を獲得し、両州の予備選で総過半数の1627人を超えるのは確実だ。また、797人の特別代議員のうち態度表明を予備選の勝敗を見極めるとしている231人がオバマ支持に広がる可能性が高い。 [コメント]クリントン候補の敗北(撤退)宣言が遅れても、これでオバマ氏が民主党の候補者指名を受けることは確実である。すでに共和党から指名を受けているマケイン氏と来年からホワイトハウスの主を争うことになる。 またイラク戦争がアメリカ国民の支持を失っていることから、本選挙でもオバマ候補が次期大統領に選ばれることは間違いないと思う。 これでイラク戦争の出口がやっと見えてきた。来年には、いよいよ米軍のイラク撤退の動きが本格化する。しかし、そのように米軍の撤退が見え始めてくると、逆にイラク戦争は今後の優位な立場を狙って戦闘が激化するのが一般的である。 反米か親米かのシーア派内の武力対立、イラン革命防衛隊の影響力拡大の工作(戦闘)、スンニ派が新政権で発言力を得るための戦い、北部クルド族の分離独立闘争の激化など、駐留米軍がイラクから姿を消せば、イラク内戦の激化は必至だ。 またオバマ候補は対テロ戦争を、イラクからアフガン東部やパキスタン北部での対アルカイダ戦争に主軸を移すと表明している。またアフリカ東部のソマリア周辺に拠点を築くアルカイダ系テロ組織に対して、アメリカ軍で新設されるアフリカ軍がどのような作戦を実施するのか。イラクから米軍が撤退しても、アメリカが抱える戦争のタネはなくならない。 私は中東を大混乱させないために、アメリカはイランと和解することが避けられないと思う。かつてアメリカはカダフィ大佐のリビアと和解した。また91年の湾岸戦争ではシリアと和解している。パキスタンとも同時多発テロの直後に和解した。アメリカが互いに悪魔の帝国と呼び合っていた敵対国と和解した事例がないわけではない。冷戦時代に敵対したロシア(ソ連)だってそうである。 それにしても、ブッシュ大統領のイラク開戦に最も強く反対したオバマ氏が次の米大統領になるというのは、やはりアメリカはたいした国である。それにしても日本政府の小粒なことよ、だ。このままでは日本が衰退していく。 |
コラム ワールド・ビュー 韓国人に潜む 「対中恐怖心」 ソウル支局長 浅野 好春氏 (読売 5月19日 朝刊) |
[概要]韓国で10年ぶりに左派から保守へと政権が代わって間もなく3か月。国民の意識が保守化した結果の政権交代といわれたが、変わらないのはデモの多さだ。 米国産牛肉の輸入規制撤廃に抗議する大小の集会がソウル都心広場や米国大使館前で連日行われている。日本大使館前でも4月に「上海義挙」(76年前に朝鮮の独立運動家であったいユン泰吉が日本軍人に爆弾投げた事件)の抗議デモがあった。しかし反米・反日と比べ、中国に対する韓国人の態度は、恨みが稀薄というわけではないが、どうも腰が引けているようだ。 4月27日、聖火リレーがソウルで行われ、動員された中国人留学生の隊列が、チベット支持団体や中国の難民政策に抗議する脱北者支援団体のメンバーに、石を投げたり角材を振り回してけが人を出す騒ぎになった。この様な中国人による集団暴力行為は、他の国ではほとんどなかったので異常だった。 しかし韓国政府が中国に行った抗議は強いものではなかった。日本の政治家らの「妄言」でもすぐ日本にいる大使を呼び返す対応とは大きく違う。暴力を振るった中国人留学生の逮捕状は裁判所が請求を棄却、留学生は身柄を拘束されずに済んだ。中国を非難する韓国マスコミは一応厳しかったが、「反中そうそくデモ」など小さなデモもなかった。 これは歴史的に中国の王朝を宗主国と仰いだ関係から類推する向きがあるかも知れない。だが今回の件は、16年間の中韓国交正常化以来初めて、中国の民族主義が「留学生の隊列」という形で突如、怒濤のように押し寄せたことへの「恐怖心」が根底にあるように思える。振り返れば、朝鮮戦争の際にも「人民志願軍」という中国民族主義の荒波が韓国を襲ったことがあるが、韓国民の脳裏に当時の恐怖がよみがえってきたのではないか。実際、中国人留学生の行動を「怖いと感じた」と話す韓国人は非常に多い。 李明博大統領は5月27日から中国を公式訪問するが、胡錦涛主席と聖火リレー騒動や朝鮮戦争についてどんな取り組みを交わすのか。 [コメント]もう10年も前のことだが、中国に語学留学に来ている外国人では、韓国から来ている学生が日本人を抜いて最も多いと聞いた。韓国では近接する大国である中国語が使えればビジネスに有利と考えたわけではないか。しかし韓国人は陸続きの中国への恐怖心は強いと思う。 もし今回の四川大地震が北朝鮮の平壌一帯で発生していたなら、救援旗を掲げた中国の救助隊が大挙して押し寄せたと思う。韓国は北朝鮮の難民(被災民)の南下を防ぐために、非武装地帯の地雷原に糸のように通じた一本の道路を封鎖するだろう。あるいはこの道路が通じていても、トッラクで救援物資を送るぐらいのことしかできない。韓国が貨物船に救援物資を積み込んで北朝鮮に向かう間に、中国は被害を免れた鉄路や道路を使い、大部隊が陸路を通り大挙して北朝鮮に入国できる。 よくヨーロッパ出身の人に、「日本人は他国と陸続きの恐怖心がわかっていない」と指摘されることがあるが、韓国人はその恐怖を理解している。 しかし今回の李大統領の訪中では、聖火リレーの騒動や朝鮮戦争について話し合う機会がないのではないか。李大統領は未曾有の大災害に対するお見舞いと、被災地復興に協力の表明で中韓の友好ムードを高めるだけと思う。胡錦涛主席も韓国の救援隊派遣に謝意を表明して、聖火リレーが中国人留学生の暴力で混乱したことは触れないのでは。そのことにあえて触れなくとも、韓国で中国に対する抗議が起きないことを知っているからだ。 やはり韓国が中国と対等に渡り合うには、在韓米軍を抜きにすることは無理ではないか。ロシアがソ連邦崩壊でも戦略核戦力を温存することで、アメリカから超大国の待遇を受けたように、韓国も在韓米軍を温存することで中国との関係を築くしかない。これが韓国民の保守政権へ転換と、中国批判に腰が引けている理由と思う。 私は盧武鉉前大統領の反米政策について語った時には、もし朝鮮半島に統一国家が誕生し、コリア国と中国が陸続きになれば反米などと決して言わない。逆にアメリカや日本と軍事同盟を含めた関係強化を求めてくると主張していた。その考えは今もまったく変わらない。 |
日本の緊急援助隊活躍 「日本人に学べ」 「感謝忘れない」 中国人の対日感情好転 (産経 5月18日 朝刊) |
[概要]四川大地震の被災地に日本の国際緊急援助隊が派遣されたことで、中国での対日世論が改善している。重慶の日本総領事館にはお礼の電話が寄せられ、ネット上では愛国主義青年の書き込みに「感謝」の文字が躍る。中国各紙も好意的に報道しており、日本の地震経験に学ぶように呼びかける論評も少なくない。 日本総領事館によると16日に湖南省の30代の男性から電話があり、涙声で「祖父から日本軍の蛮行を聞かされ日本が大嫌いだったが、今回の件で日本に対する嫌悪感が感謝と尊敬の念に変わった」と感激したという。 ネットの掲示板にも親日的な書き込みが相次いでいる。日本の救助隊が母子2人の遺体を搬出した際、整列して黙祷している様子が新華社の電子版に流された。これに対して、普段は反日的な書き込みであふれる憤青(愛国主義青年)の言論サイト「強国論壇」には、「日本人は礼儀正しい。救助隊はプロフェッショナルで、規律正しい」「中国人は日本人の質(人格)を学ぶべき」といった賛美が寄せられた。同じく憤青御用達の「中華ネット」でも、日本の救助隊が夜を徹して母子を助け出そうとしたことについて、「ありがとう! 中国人民は彼らを絶対に忘れない」「以前の嫌悪を捨て、ともに”家庭”を作ろう」といった感謝の書き込みが多かった。「日本の姑息な手段だ」という反日に徹する書き込みは少数派だ。 また国営新華社通信社は17日、日本人の地震に対する経験を学ぼうと呼びかけ、小学校で定期的に行われる避難訓練や、主婦が地震で火の元を閉め、窓を開け、防災ザックを常備していることなどを紹介している。 [コメント]まあ、日本のことをご自由に感謝してもらっていいが、だからといって日本に大挙して押し寄せないようにして頂きたい。何しろ13億人の大国である。年収が1000万円(世帯)以上が9パーセントと聞いた。その上、中国人は日本では団体旅行の観光ビザだけで、それも旅行会社が身元保証してくれる人しか発給していなかった。が、先月か、今月からは個人でも観光ビザを発給するようになった。地震の救援で日本に感激し、アニメやファッションで感動した若者が日本に大挙して訪れると、日本は中国人であふれることになる。でも、悪い気はしない。やっと日本人のいいところに気がついたかと思う。 中国人が尊敬する孫文や周恩来元首相のように、日本の良さを早く気がつけば良かったのだ。しかし本当の日中関係信頼醸成はこれからである。互いにいいことばかり言わないで、耳の痛いことも言える正常な関係を醸成すべきである。私はブッシュ政権の日米関係では、アメリカの耳の痛いことばかり言っていたような気がする。中東戦争を煽ったネオコンなど最低であった。親米であっても批判はちゃんとする。 |
日本の救援隊受け入れ 「命救え」中国全土 寸断道路、阻む支援 (朝日 5月16日 朝刊) |
[概要]日本の国際緊急援助隊の第一陣が15日夜に出発した。震災で生存率が急激に落ちる「72時間」のタイムリミットを過ぎてからの派遣。まだ被災地で待っている命がある。 震源地に近いブン川に至る国道は3本あり、西の山岳地帯から入る国道は15日夜にようやく開通した。ただ四川省の省都である成都と結ぶ国道2本は寸断されたままだ。「重機が入っても1台しか動かせない場所もある。爆薬も危険で使えない」(交通運輸省の幹部)と話し、復旧作業の長期化を示唆した。 四川省には約13万人の兵士、約1万人の医師らが投入されているが、ブン川のように孤立した被災地にはヘリや水路、徒歩で向かうしかない。都江堰から車で約1時間のダム湖にかかるコンクリート橋が真ん中で崩落し、軍用トラック30台が足止めされていた。10隻ほどのゴムボートが行き来して物資や人を運んでいる。機材不足の深刻で、救助現場では多くの兵士が素手でセメント除去に当たっている。工業情報省は15日、シャベル、チェーンソーなどの機材31種類の提供を国民に呼びかけた。 天候が回復した15日、ブン川の家族を心配する人々が自転車や段ボールに入った食糧などをかついで次々と山道を登っていく。日本の国際緊急援助隊が向かう広元市青川も、ブン川と同じように道路が寸断されて孤立し、救助活動が遅れている。温家宝首相は15日朝、現地視察の際、船を使って移動した。1400人余りが死亡し、家屋の80パーセントが倒壊。25万人が住居を失い、最も被害が大きい地区の一つという。 [コメント]地震の被災地が高地の山岳地域であったために、傾斜地に建てられた建物や、谷底の川に沿って作られた道路が土砂や岩石の崩落で寸断された。やはり輸送ヘリの大量投入が緊急輸送のカギになっている。 中国政府は解放軍や武装警察を13万人投入し、さらに軍や警察の派遣規模を拡大しようとしているという。いよいよ中国軍が得意の人海戦術がこれから被災地で威力を発揮してくるだろう。そのような中国軍の大災害投入作戦は別の機会に解説するが、今は中国政府の心理戦(メディア戦略)について話しをする。 私は今回の大地震を胡錦涛主席の「千載一遇のチャンス」だと書いた。今は被災者の家族や友人たちが、「政府の救助が遅い」とか、「救援物資が届いてない」と不満を口にする。生存の可能性がわずかでもあれば、不安や焦燥感が強くなるからだ。 しかし、そのことは時間が過ぎていくほど、被災者は天災に対する諦めや、援助が拡大することで安心感が増してくる。それよりも「奇跡の生還」「奇跡の救助劇」「献身的な解放軍の活躍」「感謝する被災民」といったメディアでの報道が大部分を占めてくる。すると多くの被災者の気持ちが軍や警察に対して感謝に変わっていく。 チベット族も例外ではない。チベット族に差別のない手厚い支援を行うことで、中国のチベット問題は休戦状態になる。逆に中国政府に感謝をする者も増えてくるだろう。そのような特徴から、今回の大地震は「国民の団結」を主張する胡錦涛政権にとって、北京オリンピックよりも国民を団結できる「千載一遇」になるのだ。その演出を最高度に高揚するために、今は出来るだけ悲惨な被害を報じることも心理戦のテクニックである。 北京オリンピックの開会式は、四川大地震という未曾有の国難に耐え、復興に立ち上がる中国国民を大団結を誇示できる場になる。もはや中国は内部分裂を起こして国力を衰退させるというような分析はできない。13億人の国民が海外の同胞を含めて大団結するのである。今回の災害を中国のマイナス要因とするのは間違いである。チベット問題も解決するとは言わないが、当分の休戦は保障されたと考えるべきなのである。 |
石原産業 ホスゲン製造隠す 猛毒ガス、無届けで170トン (毎日 5月15日 朝刊) |
[概要]大手化学メーカーの「石原産業」(大阪市)は14日、同社の四日市工場(三重県)で猛毒のホスゲン計170トンを届け出なしに製造していたと発表した。ホスゲンは化学兵器に使われる毒性の強い気体。石原産業は農薬の材料として製造するための設備を04年9月に工場内に建設し、2年間で170トン余りを生産した。 ホスゲンは製造施設を設置したり、30トン以上を製造する場合、化学兵器禁止法に基づいて国や都道府県などへの届け出が必要。しかし石原産業の製造担当者(当時)が住民の理解を得にくいとみてホスゲンの明示を避けたとみられる。この設備は06年10月以降は稼働を中止している。 石原産業の織田建造社長は会見で、ホスゲンの漏出や、農薬以外への転用はなかったと話した。同社はこの他にも、放射線量の自主管理基準値を超えた産廃汚泥「アイアンクレー」を四日市市内の産業廃棄物処分場に搬出し、虚偽の測定結果を国や三重県に報告していたなど、計9件の不正行為を明らかにした。 [コメント]毒ガスの化学兵器の特徴に、”町工場規模で国家の需要をまかなえる”というのがある。まさにその通りのことが行われた。ホスゲンは毒ガスの中でも窒息剤に分類される。加圧して液化させて砲弾などに充填する。開けた野外では致死効果は低いが、くぼ地など局地的に高濃度に発生させることができる。この毒ガスの被害症状は、軽・中程度の濃度で、咳や吐き気、胸部圧迫、頭痛、呼吸困難などが起こる。高濃度の場合は、呼吸器がけいれんを起こして窒息死する。ホスゲンの死体は血液の酸素不足から、暗紫色(チァノーゼ)に変色する。 戦場では奇襲的に使用するか、このガスを使うことによって敵兵にガスマスクの使用を強制し、行動に制限を加えることに使われる。ホスゲンに皮膚から吸収される経皮作用はないが、この解毒剤がないことも特徴のひとつである。 現在の化学水準や薬品類の流通では、サリンやVXを含めて製造することは難しいことではない。しかし個人や企業を含めて、そのような可能性のある化学物質を製造する場合は慎重な対応が求められる。このニュースを最初に聞いた時、石原産業は何か政治性を持った会社なのかと疑った。 原子力発電の技術を追求していたら、いつのまに原爆が出来ちゃったという話しではない。(この例が今のイラン)。石原産業の場合は最初からホスゲンを作る意図があり、国や住民に知らせないという考えがあった。もしホスゲンを製造する四日市工場で、大地震や工場火災などが起きれば、大変な事態を引き起こす可能性があった。そのことを考えれば、この件で石原産業への厳罰は避けられない。日本がそれを行わないと、中国の食品が農薬に汚染されていると非難できなくなる。 |
中国大地震 異例の救援態勢 温首相 被災地に急行 五輪控え 政権衝撃 米と台湾が協力申し出 (毎日 5月13日 朝刊) |
[概要]中国内陸部の四川省で12日に起きた大地震では、中国政府は温家宝首相が被災地に急行するなど異例の救難態勢を敷いた。中国政府はこの地震を近年例のない被害規模を想定している可能性が高い。北京五輪に向け「団結と安定」を重視する政府は、内陸部の貧しい地域で災害の救援・復興という重い課題を突きつけられた。救援の遅れは国民の政府批判に直結し、北京五輪の円滑な実施に影響を落としかねない。北京の外交筋は、「貧しい内陸部での救援で胡錦涛指導部の真価が問われる」と指摘する。 温家宝首相は12日夜には四川省成都市郊外の都江堰市に入り、現地指揮を開始した。中国政府は主要閣僚をトップとする医療△生活△生産△インフラ△治安など8つの救援グループを設置。軍隊や地方機関と被災地で救援活動にあたる。 この地震の起きた内陸部は、北京や上海などと比べて経済発展が遅れ、最近の物価高や賃金の低い伸び率で庶民の不満が高まっている。さらに、3月に暴動が相次いだチベット族の居住地とも重なっている。中国の公安省は各地の公安機関に、混乱に乗じた犯罪や流言の流布、反政府運動の扇動などの取り締まりを指示した。 米ブッシュ大統領は12日、地震の犠牲者と遺族に弔意を表明を発表した。声明では「米国は、あらゆる手助けをする準備が整っている」と協力を申し出た。また台湾の国民党も、中国共産党に見舞いの書簡を送り、「必要であれば救助要員を被災地に送る」表明した。 [コメント]今日の朝刊各紙の1面では「犠牲者が8700人を越す」という数字が大見出しで書かれているが、とてもその程度の犠牲者数では収まらないだろう。今後、崩壊した建物などの下から、新たな犠牲者数が加えられる。中国政府が想定しているように、この地震の規模は近年例のない大災害であることは間違いない。それは現地との通信や交通の遮断からそのように推測する。 さて、この地震が中国政府や胡錦涛主席にとってどのように作用するか。中国政府に対する国民の非難や批判が高まるのか、それとも災い転じて福と成すのか。 私は被害者の悲惨な状況を無視するわけではないが、胡錦涛体制にとって国民の信任を得る千載一遇のチャンスが来たと思っている。なぜなら、中国政府が大災害の救援のために軍隊や救援組織を現地に派遣できない理由は何もない。また世界の報道機関(記者)をミャンマーのように被災現地に入れない理由もない。そこで胡体制は歴史的な救済活動を中国国内ばかりか、世界に向かいメディアを通じて発信できるのである。 日本でも阪神・淡路大地震でも、自衛隊に批判的だった地方自治体は自衛隊の救援活躍に謝意を示した。また被災地から自衛隊に入隊希望する若者が続出した。それと同じことが中国の被災地でも起きると思う。 このような大災害では、人民解放軍の兵士は献身的な活躍をする。かつて大雨による川の氾濫で、堤防決壊を防ぐ解放軍兵士の活躍に中国国民は喝采した。また中国の報道機関の発達で、中国全土から援助物資や義援金が現地に届けられるだろう。それを報じる中国メディアの報道に国民は感動するだろう。チベット族にも同じことが起きると思う。 胡錦涛主席にとって、今回の大地震は北京オリンピック以上に国民を団結させるチャンスとなる。また自身の政治指導力を誇示できるチャンスである。被災地にはこれから壊れた道路が整備され、建物などの建設ラッシュが始まる。被災地で復興資材が高騰してインフレになることを厳しく取り締まれば、四川省などで空前の復興景気が期待できるのだ。 ただ今回の大地震を恨む者がいるとしたら、それはミャンマーの軍政ではないだろうか。これから中国の復興援助を期待できないからである。それでも中国がミャンマーに戦略的な復興援助すれば、中国のミャンマー支援をだれもどの国も非難できない。まあ、中国とはそのような策士が操る国家だと思う。これで北京オリンピックを中国(世界ではない)の祭典として最高に盛り上げる演出が可能になった。 |
高解像度衛星に道 宇宙の防衛利用 解禁 基本法案を衆院委可決 (産経 5月10日 朝刊) |
[概要]衆院内閣委員会は9日、自衛権の範囲内で宇宙の軍事利用に道を開く「宇宙基本法案」を、自民、公明、民主3党の賛成多数で可決した。13日に衆院を通過し、今国会中に成立する見通し。この法案によって、高解像度の偵察衛星や、弾道ミサイル発射を探知する早期警戒衛星の保有が可能になる。 宇宙の利用については昭和44年に宇宙の平和利用に関する国会決議が採択されたが、日本政府は66年(昭和41年)に国連で採択された宇宙条約(宇宙憲章)で定めた「宇宙の平和利用」を「非軍事」と解釈していた。このため民間水準を超える技術の活用が制限され、日本の宇宙開発が遅れる要因になっていた。例えば、日本は北朝鮮のテポドン発射(1998年8月)を受けて、2003年3月に情報収集衛星を導入したが、衛星の解像度は米国が15センチに対して、日本は1メートルにとどまっている。 日本は2009年度に次世代衛星を打ち上げる予定だが、解像度は現時点で民間水準の60センチにする方向だ。しかしこの基本法成立後は「解像度をアップさせないための機能上の制限は考慮に入れなくていい」(政府関係者)ということになる。 基本法案ではこのほかに、内閣に首相を本部長とする宇宙開発戦略本部を設置し、宇宙基本計画を策定するとしている。また、法施行後1年をめどに内閣府に「宇宙局」を設けるほか、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のあり方を見直し、内閣府や文部科学省などにまたがっていた宇宙開発政策を総合的に推進することになる。 [コメント]この記事は2日前の土曜日の朝刊に掲載されていた。しかし土日は同居している義母の米寿(88歳)の祝いで、朝から車で箱根の強羅温泉に家族旅行で出かけ、更新する時間がなくて下段の記事しか掲載できなかった。しかし強羅で温泉に入っていても、この記事のことが頭から離れなかった。これではあまりにも誤解が多いと感じたからである。 この記事では、日本は高解像度の偵察衛星を開発できるのに、国会が”宇宙に関する国会決議”をしていたため、わざわざ技術に制限を加えて、性能が落ちた偵察衛星を打ち上げたと解釈できる。この話しを聞けば、初の国産偵察衛星を開発した技術者たちは驚くだろう。日本はあえてアメリカの偵察衛星に依存しないで、大金の2500億円をかけて国産衛星の開発にこだわり、解像度1メートル(?)でもやっとだったというのに、わざと性能を落としたとは笑い話である。(1メートル説も疑問) それが宇宙基本法案の必要要件だとしたら、政治家の大ウソと屁理屈である。 また内閣府に「宇宙局」を置く理由は、03年の情報収集(偵察)衛星の運用を始めるにあたり、防衛省、警察庁、文部科学省、外務省、国交省などの省庁が、多目的情報衛星の予算権限を自分の監督下に置きたくて対立が高まった経緯がある。その省庁間の利権争いを避けるために、内閣府の中に情報衛星の運用部門が置かれた。しかし情報衛星の運用は内閣府に置かれているが、画像情報などを分析などは、市ヶ谷で防衛省職員によって行われている。だから実態はまぎれもなく軍事偵察衛星で、防衛省が管理する軍事情報機関の一部になっている。だから新設される「宇宙局」は「宇宙戦略軍」の司令部で、実際の運用は防衛省が軍事目的のために行うことになる。 それではなぜ今になって宇宙基本法が必要になったのか。それは21世紀になって宇宙戦争(宇宙軍拡競争)が激化するからだ。例えば日本はアメリカとミサイル防衛(MD)で共同開発と導入を行っているが、次世代のMD計画では迎撃ミサイルは多弾頭が計画されている。さらに次次世代のMD計画ではレーザー兵器を宇宙に配備することも重要な課題になっている。これから日本がアメリカの宇宙戦争計画に追随するためには、宇宙の軍事利用が可能な法根拠が必要になったからである。 宇宙法の施行1年後のJAXA見直しは、もはや日本は独自の宇宙開発衛星(国産ロケット)の開発を断念し、アメリカの宇宙開発に依存するしかなくなったのだ。そのアメリカは宇宙開発の第一目的は軍事活用(宇宙戦略)であることは言うまでもない。そのために宇宙基本法で宇宙の軍事利用に突破口を開いたわけである。 私はそのことを非難したり批判しているのではない。しかし国民を騙して鎧(よろい)の上に浴衣を着るようなマネをするなと言いたい。政府が国民にウソをいったり、騙そうとすれば、それを見逃すことができないのがジャーナルストの性分である。 ※ 03年に日本が導入した情報収集衛星の開発については、”春原 剛(すのはら つよし)氏著 「誕生 国産スパイ衛星」 日本経済新聞社刊 05年5月初版” が詳しい。 |
ミャンマー水害 救援要員 軍政が拒否表明 憲法採択へ国民投票強行 (毎日 5月10日 朝刊) |
[概要]ミャンマー軍政のニャンウィン外相は9日の国営紙で、大水害での救援要員の受け入れを迫る欧米諸国に対して、外国の救援チームや報道関係者の入国を拒否することを公言した。支援物資の空輸受け入れも中国やインドなど関係が良好な国だけだった。医療関係者などの入国は拒み続けている。このようなミャンマーの対応は北朝鮮の大水害被害(90年代)と比較しても異様さが際立っている。 この強硬姿勢の背景に、被災地の一部を除き10日に行われる憲法草案への賛否を問う国民投票の存在がある。政府は翼賛団体を通じて国民に「賛成」を強調し、「反対」を唱える一部の民主勢力を拘束したり暴行してきた。もし外国の援助組織や報道記者を受け入れれば、そうした実態が国際社会の目に触れ、国民投票の正当性が問われることを極端に警戒している。 軍事政権は2010年の総選挙実施を国際社会に公約しているため、民主化運動指導者アウンサンスーチーさんを排除して、軍の権限を保障する憲法の成立は至上命令だ。 [コメント]ミャンマーではサイクロンで犠牲になった数万人の他にも、その後も食糧や飲料水の不足で餓死したり、不衛生な環境のために伝染病が拡大して死亡者が増加することは必至である。その上、コメなどの価格が高騰してくる。被災地では軍政に対して住民の不満が高まっていく。 これに対してアメリカは、ミャンマーへの人道支援のために米海軍の強襲揚陸艦「エセックス」搭載のヘリをタイで待機させ、別にC−130輸送機6機をミャンマーに緊急投入出来る体制を整えた。またエセックスを中心とする米海兵隊の任務統合部隊(MEU)の3〜4隻をミャンマー沖で待機させるという。 ゲーツ米国防長官はミャンマー政府の許可を得ないで、領空侵犯してまで食糧や医薬品を空中投下することはないと明言したが、あくまで”許可を得ないで”と語っただけである。もしミャンマー軍政のトップであるタン・シュエ国家平和発展評議会(SPDC)議長がクーデター(あるいは暗殺)などで追われ、新たな軍政指導勢力がアメリカに救援を求めれば、一気にアメリカ軍はミャンマーに入国できることになる。すなわちミャンマーのクーデター勢力にとっては、アメリカ軍がミャンマー近くに集結した今こそが、クーデターを試みる絶好のチャンスなのである。 ミャンマー軍の中には、ヤンゴンで発生した民主化要求デモの際、兵士が僧侶に対して暴行し銃殺したことで、独裁的な軍政に批判的な勢力があると聞いた。今回の水害で社会不安が高まっていることで、一気に軍内部の反独裁勢力が動き出す可能性がある。 同時にこれは、もし北朝鮮情勢がさらに悪化すれば、中国が北朝鮮に人道支援と称して流れ込む(介入)のと同じ構図である。ミャンマーのアメリカ軍、北朝鮮の中国軍らはともに、武器のかわりに食糧や医薬品を大量に持ち込むことになる。 とにかく、食糧や飲料水が過度に不足し、感染症が拡大するここ2〜3週間が山になる。日本も自衛隊の国際緊急援助隊に情報収集と派遣準備を密かに命じ、大災害時に国際救援ができる各組織もミャンマーの急変に備える時である。ミャンマーが国際救援活動のオリンピックになる可能性がでてきた。今までにも独裁政権が倒れる時は、あっけないほど簡単に倒れるという特性がある。国際政治を勉強している人は、その理由(政治的な特性)を考えておくいい機会だ。 |
防衛省改革・官邸会議 防衛省が改革案 提出先送り 石破案に否定的意見も (読売 5月9日 朝刊) |
[概要]政府の防衛省改革会議(主宰・町村官房長官)は8日、首相官邸で第8回会合を開いた。この日は防衛庁が検討を進めている組織再編案について説明を受ける予定だった。しかし石破防衛相が私案として提唱した内局(背広組)と自衛隊の各幕僚監部(制服組)の統合・再編案に対する省内の反発が強く、防衛省としての再編案提出は今月下旬に開かれる次回会合に先送りされた。8日の改革会議では出席者から、石破案に否定的な意見が出されたという。 石破私案は、内局を制服・背広組が混在する組織に変え、「防衛力整備」「作戦」「国会対応・広報」の3機能に再編し、現在の陸海空の格幕僚監部は大幅に規模を縮小する。また格幕僚長は指揮命令系統から切り離され、防衛相の補佐に専念し、部隊指揮は防衛相が直接行うといういうもの。 しかし、省内では制服組を中心に、石破案は「制服組の発言力低下と背広組の権限強化だ」という強い反発がある。このため防衛省では石破案と並列する複数の再編案を改革会議に提出する方向で調整を進める。政府内にも、「急激な組織改革で混乱を招くのは避けたい」との意見が広がっている。 [コメント]石破氏の再編案は机上の空論と思う。現在は防衛政策では政治家や官僚(防衛・外務など)が暴走する時代である。その最たる例は03年12月のミサイル防衛(MD)導入が決定した事例である。MD導入は石破防衛長官(当時)と守屋防衛局長(当時)が技術的な検証もなく暴走した結果である。まさに防衛長官が訪米中の衝動買いであった。予算規模で約1兆円というMD配備が一夜にして方針が変更されたのだ。(朝日新聞社刊 「自衛隊 知られざる変容」 05年5月発刊に詳しい) 方針が変更したというのは、当時の防衛白書で「日本のMD導入は技術的な問題が解決するのを確認するため、今は米国との共同研究の段階である」と明記していたのにである。この1件で石破氏が防衛利権の凄さを会得したと想像しても間違いはない。(平成15年版 「防衛白書」 を参照) だから石破案には、政治家(いわゆる国防族)が防衛利権を背広組や制服組から奪う魂胆(こいたん)があると想像するのである。まさに政治家と官僚の暴走を可能にする再編案と思う。金丸元防衛長官が築き上げた防衛利権の構図を壊し、防衛省再編で新たな利権獲得を狙う者たちが石破氏を焚きつけているのではないか。 要は防衛省再編といっても、政治家と官僚の暴走を検証しないで、これからの防衛利権の奪い合いの場にしかなっていない。その上で、石破案には軍事専門的な立場からの助言を断ち、政治家が暴走する危険を高める危険な要素を含んでいる。 |
日中首脳会談 ガス田「早期解決」 夏までの合意目指す (朝日 5月8日 朝刊) |
[概要]日中間の最大の懸案である東シナ海ガス田の共同開発について、日本政府は7日の日中首脳会談で早期合意を目指す方針が確認されたのを受け、7月の洞爺湖サミットの際に胡錦涛主席が再来日までに決着を目指すという。 福田首相が昨年12月に訪中した際、温家宝首相と会談して「具体的解決について積極的な進展が得られた」との認識を共有したが、今回は胡主席が「問題解決の展望が見えてきた。双方は協議を加速し、出来るだけ早く合意出来るようにすることで一致した」(共同記者会見)と発言し、さらに踏み込んだ表現で一致した。 日本政府関係者によれば、「残っているのは技術的な細部の調整だ」と指摘し、共同開発の対象海域の特定や、中国側が単独開発している春暁(日本名・白樺)ガス田の扱いなどを巡って、最終調整が行われていると見られる。 [コメント]今回の胡錦涛主席の訪日で、農薬混入りギョウザ問題やオリンピック開会式への福田首相の出席問題よりも、東シナ海ガス田の日中共同開発問題がはるかに重要だと思う。 ギョウザ事件は日中の捜査当局が科学的捜査での協議を行えば、中国側で農薬が混入したことが明白になる。しかし中国側がその犯人を特定できて、逮捕できるかといういう問題と、中国政府が社会不安が高まる問題を認めるかは別だ。これは単に中国の捜査技術と国のメンツの問題である。 チベット問題も北京オリンピックまでに全面解決するのは不可能で、中国は何だかんだとチベット亡命政府と協議を続け、開会式には福田首相が喜んで出席することは間違いない。すなわちギョウザと開会式出席は、日中首脳会談の重要な懸案事項ではない。やはり東シナ海ガス田の共同開発をいかに合意がなされるかが最重要である。 ところで今回も話題になった日中の”戦略的互恵”関係の意味だが、これは単に日中2国間のことを調整するだけではなく、これから国際的な政治・外交・軍事などの分野にも双方が協力するという考え方を示す言葉である。そのように考えると、日中で対立している東シナ海の排他的経済水域(EEZ)を、どの様に合意するかが問われている。日本が主張している日中の中間線にするか、中国が主張している大陸棚にするかという調整である。 このEEZ問題が片づけば、日中間の軍事的な対立は激減させることができる。日本は東シナ海という浅い海で、対潜水艦ソナー(低周波ソナー)を張り巡らせたり、新型の無音・潜水艦(小型)で待ち伏せる軍事的な投資が軽減される。まさに東シナ海を日中の争いの海から、平和と繁栄の海に変えるぐらいの変化が期待できる。それで撤退した沖縄の米軍基地の跡地には、日中が共同して建設的な産業や観光施設を誘致できる。それほど東シナ海ガス田開発は日中間の重要な問題を内包している。単に日本と中国が海底ガスを奪い合っているだけではないのである。 |
充電して更新再開! 連休は日光街道 自転車で走破 140キロを1,5日行程 (5月7日 水曜日) |
東京の日本橋から日光までの日光街道(約140キロ)を自転車で走破する。そんなことを連休中に思いついて実行しました。選んだコースは最後が上り坂で苦しくなる日本橋→日光の方向です。帰りの日光→日本橋は自転車を輪行バッグに収納して、電車で帰ることにしました。往復とも自転車ということも考えられますが、今年の連休は天気が今イチよくありませんでした。ぎりぎり1日半の行程というのが限界でした。
簡単な旅行記を「所長 ご挨拶」に書きました。自転車でのツーリングなどに関心のある方はそちらをお読み下さい。 というわけで、かなりリフレッシュして元気になることができました。連休期間中に皆さんから励ましのメールを多数頂きました。ありがとうございます。4月の中頃にはかなり気持ちが滅入ってましたが、もう大丈夫だと思います。 さて胡錦涛主席の訪日で、日本と中国が本当に戦略的互恵関係になることができるのか。ロシアと中国は戦略的互恵関係と宣言したのに、今では中露関係がかなり冷え切っています。 またサイクロンの大被害を受けたミャンマーは、医療援助など、他国の軍による援助(入国)を拒否していますが、同じような大被害が北朝鮮で発生したらどう出るのか。北朝鮮も食糧や飲料水だけの援助に限定して、他国の軍隊が国内に入っての緊急援助を拒否するのか。今まで北朝鮮はそのように対処してきました。しかし意外と独裁国家の弱点が露骨に現れてきました。 本日は新聞休刊日、さあ、また明日から頑張ります。これからもよろしくお願いします。 |
※これ以前のデータはJ−rcomFilesにあります。