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2008/05/30

無尽蔵殺人事件

箱根から東に降りてゆくと、小田原の町に入るわけだ。街道沿いにパッとしない古い骨董屋があって、おいら、子供の頃にはオヤジに連れられてよく行ったもんだが、店の玄関先にやたら大きな円空仏が紐でくくられて飾ってあったりして、出来が悪いので紐で結んでおかないと倒れてしまうわけだ。「ホンモノは一人でちゃんと立てる。自立出来ないようなヤツはニセモノだ」とオヤジが言っていたんだが、この骨董屋の爺さん、円空仏のニセモノを安く大量に扱っていたわけだ。なんでも足柄のほうに名人がいて作っているのだそうで、もっとも、こういう話はあちこちにある。三島には棟方志功のニセモノ作りが住んでいたし、スコータイでもニセモノ作りのオバチャンに出会った事がある。ニセモノ作りにも産地があり、工房がある。おいらの家には曽我蕭白のニセモノがあるんだが、江戸時代に岐阜で作られたモノらしい。曽我蕭白というのは強烈な個性の持ち主なので、簡単には真似できないわけで、ニセモノを作れる人となると限られているわけだな。

で、話は歴史の底から引っ張り出してきたようなネタで恐縮なんだが、



昭和57年12月4日、警視庁は東京・池袋の古美術商「無尽蔵」の店員・笹川竜則を横領の疑いで逮捕した。実はこの逮捕は別件逮捕であり警察の本丸捜査は無尽蔵の店主・長尾泰次さんが同年2月頃に失踪した事件で笹川をマークしていたのだった。

無尽蔵の店主・長尾さんは「三越スキャンダル事件」で開催された展示秘宝のニセモノに関与していたとみられる人物だった。捜査当局は、長尾さんの失踪は事件に巻き込まれた可能性があるとして捜査を開始した。その結果、同年9月頃から店員の笹川が殺害して死体を隠したとみて尾行を続けた。

9月26日以降、警察は連日2週間にわたって笹川を任意出頭させ取り調べる一方、笹川、長尾宅、無尽蔵などを家宅捜索をした。この時の家宅捜索令状の請求状には「被疑者不詳の殺人死体遺棄事件について捜査のため」と記載されたいた。警察はこの段階で(長尾さんの生死さえ判明していない)長尾さんが殺害されているとみていた。
時系列で処理すると、まず、1982年の2月24日に、池袋の骨董屋「無尽蔵」の店主、長尾泰次という人が「殺される」わけだ。ところが、死体は今に至るまで発見されていない。裁判では、店員の笹川というのが殺して運河に捨てたという事になっているんだが、死体はカケラも見つかってない。なので、この事件、「死体なき殺人事件」の典型として今でも判例にあげられる事が多いんだが、とりあえず警察のストーリーでは、2月24日に殺されたという事になっている。

で、その数ヶ月後、三越事件が幕をあげる。
岡田と竹久の崩壊は、同年4月23日号の「週刊朝日」のトップ記事で『三越・岡田社長と女帝の暗部』という見出しが踊ったときから始まった。これによると40人以上のメンバーで組織された「理論総会屋」が内部密告で三越の裏帳簿を入手。これをネタに総会屋の総攻撃が始まった。裏帳簿には竹久の経営する衣料貴金属納入会社から売れ筋でもない商品を岡田社長の指示で大量に購入。不良在庫が膨大になっているというものだった。

さらに追い討ちをかける形で、この年の夏に日本橋本店で開催した「古代ペルシャ秘宝展」への出展品47点のほとんどがニセ物であることが発覚した。しかも、秘宝展開催中にこのニセ物を仕入れ価格の17倍の価格で販売していたことも発覚した。このニセ物はイラン商人につけ込まれて竹久の会社を経由して購入したものだった。
無尽蔵骨董屋のオヤジが「殺された」のは、総会屋が三越攻撃をはじめた時期にあたるわけだ。世間を騒がせたペルシャ秘宝展事件は夏なんだが、こういう企画展というのは半年以上前から準備するわけで、「殺された」時期にはすでに無尽蔵からイラン人バイヤーの手に渡っているわけだ。で、
「海外ルート」はロンドンなどで出回っていたものを集めたものですが「国 内ルート」は東京都内の骨董店「無尽蔵」から買ったもので、そのうちの6 点に関しては横浜の彫金工が『自分が作ったものだ』と証言しており、この 彫金工が千葉県の古美術商に売ったものを無尽蔵が買い、それがサカイ兄弟 に売られていたことまで突き止められました。サカイ兄弟は国際手配され、 うちネジャトラ・サカイのみがアメリカで捕まっています。
ペルシャ秘宝展で一気に三越疑惑はブレイクするんだが、社長の解任で「なぜだ!」と叫んだというのが、竹久みちという女帝の名とともにマスコミを騒がせたわけなんだが、この大騒動の鍵を握る人物が、事件がオモテに出る直前に「殺されて」いるというのも奇妙な偶然だ。で、裁判では、「ホモ行為を迫られた店員が言い争いになって殺した」という結論になり、有罪になっているんだが、これがまた奇妙な裁判だったわけだ。というのも、
この裁判には、殺されたはずの長尾に、殺されたとする日以後会い、あるいは、電話で話したという証人が五人も出廷していた。有罪判決を下すにあたって、彼らの証言は信用できないとすべて退けたのはいうまでもない。
で、話は円空の骨董屋さんなんだけどね。このオヤジが、当時、「買い場で殺されたはずの長尾さんに会った」と証言して新聞にも取りあげられている。買い場とは何か? 業者が品物を持ち寄って売買する会なんだが、会員制で鑑札を持ったプロしか参加できない。なので基本的に、参加者はみんな顔見知りだ。見間違えるわけがない。また、円空の骨董屋も、口から出任せで何の得にもならない嘘をつくような人ではないわけだ。というので、色々と謎が多い事件で、
夢の屍―無尽蔵殺人事件の謎を追う
価格:¥ 1,365(税込)
発売日:1985-04
という本も出ているようなんだが、読んでません。で、無責任ながらに推理なんぞしてみると、だ。

無尽蔵のオヤジが、謎のイラン人骨董屋に偽作のペルシャ秘宝を売るわけだ。もちろん、売買している連中というのは、偽作である事は承知の上なんだが、オトナなので詳しく問いつめるような真似はしない。そら、清純派女優にオトコの経験を聞いちゃイケナイようなもんだ。で、イラン人がそれを三越に持ち込んで、秘宝展の企画が決まるんだが、三越は
仕入れ値の17倍の値段で売ろうとしたらしい。こうした動きは、ニセモノの出元である無尽蔵のオヤジの耳にも入っていたと思われるんだが、総会屋といえばバックには暴力団も絡んでいたりするわけで、オヤジは身の危険を感じて「逃げる」わけだ。逃げるにもカネが必要なので、買い場に現れて品物を換金したり、まぁ、人前に姿を現す必要もあったというわけだな。そう考えると辻褄が合う。

で、その後、この秘宝と称するモノがどこに行ったのかというと、イラン人骨董屋がニューヨークに持ち込んで「盗まれた」という事にて保険金搾取に使われたという噂もあるようなんだが、まだ世界のどこかを巡っているのかも知れないです。

コメント

「無尽蔵殺人事件」→例の22回引越しした輩の事かと思いましたぜ>>さすが鍛えられた直感力(爆)

>そら、清純派女優にオトコの経験を聞いちゃイケナイようなもんだ。

野次馬さんのこーいうクスグリが、また美味っす。

殺された古美術商は音楽家とも自称していたんでしたっけ?
自分の奥さんが見ている前で、「度胸を付けるためのレッスン」と称して殺した店員と交わったりしていた、ということもあったような気が…
インターネットが発達する、ちょっと前の事件とかは検索で掛からないから記憶が曖昧で済みません...

見れば見るほど本質が分からなくなる、朝日の「有害サイト規制をめぐる与野党の構図」マトリクス図。犯罪的と言ってもいいナ。
http://soba.txt-nifty.com/zatudan/2008/05/post_c55d.html

をアップしました。

>そら、清純派女優にオトコの経験を聞いちゃイケナイようなもんだ。

ましてやその男のお友達の関係とか金属バットとか、、、

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