大量退職する団塊の世代を対象に、U・I・Jターン者争奪戦が全国で展開されている。いち早く取り組んできた和歌山県でも「本番はこれから」と意気込んでいる。 県の試算によると、3年間で計500世帯、1000人の団塊の世代が60歳で県に移住した場合、その後、30年間の生産誘発額は計約730億円、雇用誘発者数は約4900人に上る。約5万〜7万人の観光宿泊客が毎年、地域に与える経済効果に匹敵するという。 県の「田舎暮らし支援事業」で、2006〜07年度の2年間に、田辺市や古座川町などモデル7市町に、県外から53世帯113人が移住した。今後は受け入れ市町村を拡充し、10年間で1000世帯の移住を目標にしている。 田舎暮らしの人気は沖縄県と北海道だが、定住化が進まない例も出ている。リゾート感覚で移住し、理想と現実のギャップに直面するためだ。移住施策を停止する自治体も出ているという。 県のモデル市町では、役場と連携して受け入れ活動を行う民間の協議会が充実。本当に来てもらいたい人を見極める「ノー」といえる定住対策を推進している。 古座川町では「田舎で暮らす極意」として「都会時代より生活レベルは落ちる覚悟がいる」「相互扶助意識が高いことを理解しないと失敗する」と助言。「地域に解け込める人」「気心の知れた人」を歓迎している。 わかやま移住推進委員会委員で都市農山漁村交流活性化機構広報情報センター部(東京)の鳴島礼子参事は「ミスマッチは双方に不幸。地域を担っていく人材を得るためにも、大事なのは人数ではない」と指摘する。 06〜07年度の移住者で20、30代が27世帯と半分以上を占めたことは県にとって「うれしい誤算」。他県でも同様の傾向があり、職、住居の確保が課題となっている。 県地域交流課は「移住の前段階として交流事業に力を入れ、宅建業界と連携した物件紹介なども行いたい。これまでのノウハウを生かし、受け入れ組織の充実を図る」と話している。