満退者の素浪人日記

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help リーダーに追加 RSS マレーシア 女子学生の制服は性的に過ぎるのか?

<<   作成日時 : 2008/05/27 00:30  

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 いまマレーシアで、「女子学生の制服は、性的に過ぎる」ということが話題となっている。学生の団体が「恥ずかしい」と言い出したことに対し、政府や与野党がコメントを寄せるなど、国民的関心事へと発展した。日本でも、「ブルマーは性的だ」としてハーフパンツに変わった経緯があるだけに、日本人にとってもその動向には注目があつまることだろう。


 事の発端は、マレーシア全国イスラム生徒協会(National Islamic Students Association of Malaysia)なる団体が5月22日、「女子学生の制服は、性的に過ぎる」とする声明を発表したことにある。同団体の副会長であるMunirah Bahariさんは会見の中で、「制服は白いブラウスなので透けてしまう」と指摘、「制服のせいで女子学生は、レイプやセクハラ、婚前性交渉の危険に晒されている」と、批判を展開した。


 マレーシアでは、公立の小〜高校において制服が指定されている。女子学生の場合は、白いブラウスの上に水色のベスト、下は同じく水色のスカートが標準だ。また、マレー系ムスリマについては、白いトゥドゥン(髪を隠すスカーフ)と、水色の足首まであるバジュ・クロンの着用も可能である。


 こうした制服を着ている女の子たちの声に対して、マレーシアの大人たちはどのような反応を示しているだろうか。まず、学校教育を司る教育相の大臣であり、UMNO青年部長であるヒシャムッディンは、「制服がセクシーだとうことはない。制服が性犯罪の原因になっているという主張は不当」と、同団体の主張を否定するとともに、現在の制服には問題がないことを強調した。


 では、何かと与党に対してイスラムの面から噛み付く野党、PASはどのような考えを持っているのだろうか。党内の立場はヒシャムッディンと同じとなるPAS青年部長のSalahuddin Ayubは、「バジュ・クロンが、伝統的な解釈に則りタイトにならないよう作られている限り、私には問題ないように見える」との見解を示した。さらに、同団体による「制服の着用が性犯罪を助長する」という主張に対しては、「制服がそのような社会問題に寄与しているとは思えない」「そうした問題は、1つや2つの原因で発生するわけではない」とバッサリ切り捨てた。


 それでは、同じムスリム女性はこの問題をどう考えているだろうか。保守的なイスラム主義をベースとしつつ女性の権利を主張する女性イスラム教徒のNGOであり、社会に向けての発言・行動が活発なことでも知られるシスターズ・イン・イスラム(SIS)という団体は、次のようなコメントを出している。「その団体の主張には、まったく同意できない。(伝統的な)バジュ・クロンを着るだけじゃ、まだ満足できないのか?」とこれまた否定的である。「白は透ける」という主張に対しては、「喪に服している女性は、白いバジュクロンを着る。UMNOのメンバーの女性も、白いバジュ・クロンを着る。それで、何が問題なのか?」と、手厳しい。


 今回の、学生による「制服騒ぎ」は、教育省、与党、野党、保守系女性のいずれからも支持を得ることはできていないようである。要点を整理すれば、「白は透ける→性犯罪が増える→制服を変えろ」というロジックに対して、「バジュ・クロンは伝統だ」と「制服のせいで性犯罪が増える、という因果関係が不明確」という点を根拠として、「変える必要なし」との反論がでている。


 日本では、ブルマーからハーフパンツに変わった際には、「女子学生に羞恥心を起こさせる」「女子学生が性的な目で見られる」という性的な問題意識と同時に、ブルセラショップの存在によって金銭取引が行われるという、金銭的、あるいは倫理的な問題が生じた、という背景があった。


 マレーシアの制服の場合は、日本と異なり「伝統的」な服装という要素もあるため、これを否定すると保守層の反発を招いてしまうのは当然だろう。、どうやらこの一件はその後沈静化の方向に向かっているようだが、「国民を国家の期待通りの存在に作り上げる場」である学校を象徴する「制服」が、今後どのように扱われていくのか、注目していきたい。


 参考: New Straits Times
      The Star
      Sisters in Islam 公式サイト
      マレーシアナビ!


【写真】 マレー系女子学生の制服姿 The Starより

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