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【社説】

羽田の国際化 『24時間空港』を生かせ

2008年5月30日

 国際線の需要急増と航空自由化に対処するには羽田空港の徹底強化が必要−国土交通省は従来の「成田・羽田すみ分け」政策を転換した。両空港の一体運営とともに成田空港の再強化が課題だ。

 成田空港と千葉県など関係者にとってはショックな一日となったことだろう。成田開港三十年を祝ったその日、福田康夫首相は経済財政諮問会議で「羽田からアジア主要都市への路線の早期開設が重要だ」と述べ、冬柴鉄三国交相に工程表を年内に作成するよう指示した。

 国交省は成田と羽田を一体的に運用するというが柱は羽田の国際線強化だ。羽田は二〇一〇年十月に四本目の滑走路が完成。約十一万回増える年間発着回数を国内線に八万回、国際線に三万回配分する。これに午後十時から翌朝午前七時までの時間帯約三万回を追加し国際線枠を計六万回とした。

 成田も一〇年三月に平行滑走路の延長が完了。新たに二万回の発着が可能になるが騒音問題のため深夜早朝は離着陸できない。この時間帯をカバーする羽田は、首都圏初の二十四時間空港となる。

 同時に羽田の国際線の距離制限(約二千キロ)も廃止する。これまでは国内線最長の羽田−石垣空港の距離がめどだった。この結果、チャーター便が飛んでいるソウルや上海に加え北京や大連、シンガポール、欧米へも定期路線が就航できるようになった。

 さらに成田・羽田の両空域と航空管制システムを一〇年秋までに統合する。懸案だった米軍管理の横田空域の返還交渉も〇九年秋までには決着する予定である。

 羽田の国際線強化は利用者の立場から見れば当然だ。都心近くに立地しているため利便性が抜群によい。工夫すれば深夜早朝の発着枠は最大四万回まで増やせる。

 羽田の強化は米国や欧州、アジア諸国で本格化した航空自由化に対処するためでもある。路線や運賃などの規制を取り外して利便性を高める。それが世界経済の活性化や環境対策にもつながる。

 国内的には観光振興の強力な拠点となる。十月には観光庁が発足する。これを機に政府は来日外国人観光客を一千万人以上に増やすほか、国際会議の誘致や国内観光地づくり、人材育成などに取り組む。

 課題は成田の再強化だ。同空港の発着回数は三十万回まで拡大が可能という。それには地元の理解が不可欠だ。高速鉄道の整備とともに早急な対策が必要である。

 

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