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【主張】空自機派遣問題 極めて残念な見送りだ

2008.5.30 03:32
このニュースのトピックス主張

 政府は、四川大地震の被災者を支援するため、航空自衛隊の輸送機を近く中国に派遣する方向で調整を進めていたが見送った。自衛隊部隊の中国派遣が実現すれば初めてだっただけに残念だ。日中関係にとどまらず、地域の安定に寄与する意味合いを持つだけに仕切り直しを求めたい。

 外国軍による支援に関しては米軍輸送機が18日、成都までテントなどを運んだことを皮切りにロシア軍も野戦炊事車などを届けており、空自も加わる予定だった。

 当初の予定は、こうだった。空自はC130輸送機を使い、自衛隊などのテントや毛布などを中国の空港に運ぶ。空港から被災地までは中国側が担当する計画であった。

 四川大地震の被災者は4500万人以上とされる。各国は、中国の呼びかけに応じて約21万張りのテント提供を申し入れ、うち約4万7900張りが被災地に送られているが、テントや仮設住宅などはなお著しく不足している。中国側が外国軍を受け入れたのも、こうした事態を放置しておくことがもはやできず、軍による緊急対応を求めているためだろう。

 国際緊急援助隊法では被災国の要請を受け、外相と防衛相が協議して自衛隊を派遣するが、迅速かつ有効な支援がなによりも必要である。3年半前のインド洋大津波では派遣決定から空自の第1陣部隊出発まで10日以上かかったこともある。

 見送りの背景には旧日本軍のイメージと重なる自衛隊に対し、反発する声もあったようだ。旧日本軍の残虐さを強調する抗日教育も強化されてきた。軍の中にも対日強硬派がいたに違いない。

 それだけに今回、中国側としても空自を受け入れる環境が整わなかったといえるが、日本側の調整に問題がなかったかどうか。

 胡錦濤国家主席来日時の日中共同声明は、安全保障分野におけるハイレベル相互訪問の強化や交流促進をうたった。中国ミサイル駆逐艦が昨年11月に東京港を訪れたのを受け、6月には海自護衛艦が初めて訪中する。

 中国軍との信頼醸成に努めることは必要だ。その一方で中国が東シナ海などで軍事力を誇示してきたことも忘れてはならない。

 自衛隊派遣は日中関係を建設的なものにし、両国民の感情も改善させる可能性があった。今回の見送りを大きな教訓にしたい。

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