音声ブラウザ専用。こちらより記事見出しへ移動可能です。クリック。

音声ブラウザ専用。こちらより検索フォームへ移動可能です。クリック。

NIKKEI NET

社説2 社長再任を拒んだ株主総会(5/30)

 東証一部上場のアデランスホールディングスが開いた株主総会で、社長以下7人の取締役再任案が否決されるという異例の事態が起こった。同社の株式を議決権ベースで約29%保有する米投資ファンド、スティール・パートナーズなどが反対し、再任に必要な過半数の賛成を得られなかったためだ。

 株主総会は企業の最高意思決定機関であり、取締役の選任は最も重要な議題の一つである。会社の提案が否決された意味は重い。外国人株主の保有比率上昇などを背景に、企業統治のあり方が大きく変わってきたことを象徴する出来事だ。

 他の企業経営者も緊張感をもって株主と向き合う必要がある。

 スティールは、アデランスの業績や株価が低迷していることを理由に取締役の再任に反対していた。同社の外国人株主比率は2月末で約5割に達しており、業績の動向に敏感な株主の構成比率が高まっていた。注目すべきはスティールだけの意思が通ったのではなく、5割以上の株主が経営陣に不満を示し、再任反対に回ったことである。

 戦後、日本企業の株主総会では、会社提案は可決して当然とみられていた。しかし、2005年以降は東京エレクトロン、任天堂などの有力企業の株主総会で会社提案が否決されている。昨年も東京鋼鉄の株主総会でM&A(合併・買収)に関する会社提案が否決された。経営者に厳しい要求をする外国人株主や投資ファンドの増加、個人株主の意識変化が背景にある。今回の否決もこうした流れの中で起きた。

 アデランスの総会では新任の社外取締役2人しか選任されず、法律上取締役会に必要な3人に達しなかった。このため同社は会社法の規定に基づき、総会前の取締役9人を含む11人の体制で暫定的に経営に当たると発表した。臨時株主総会を開くなどして、改めて取締役の選任を求めるとみられる。

 今後は、アデランスが業績向上につながるような取締役案や経営計画を示し、スティールやほかの株主を納得させられるかどうかが焦点になる。スティールもアデランスの経営をどう変えるのか、大株主として姿勢が問われている。

社説・春秋記事一覧