伊那市は29日、分娩を取り扱う助産所を支援するため「助産所整備支援事業補助金」を新設すると発表した。産科医不足でお産のできる場所が少なくなる中で、助産所の建築や改修、備品購入などを財政面で支援することで、開設も促していく狙い。市によると、助産所に対する補助金制度は、国や県にもなく、県内の市町村でも初めてという。
補助金は、市内で分娩を取り扱う助産所を整備する助産師を対象に交付する。1カ所当たり250万円を上限に、2分の1を補助する。期間は事業開始から5年間とし、250万円に達するまで数回に分けて補助申請ができる。
今年度は3カ所分を見込み、補助金750万円を計上した今年度一般会計補正予算案を市議会6月定例会に提出する。
分娩を取り扱う助産所は市内に3カ所あり、年間20─30件扱っている。いずれも助産所は自宅を改修して開設しており、超音波診断装置のように数百万円と高額な機器も必要になるが、助産所への公的な補助制度はない。
上伊那では、産科医不足に伴い、分娩を取り扱う公立病院は伊那中央病院(伊那市)だけとなった。4月から里帰り出産を制限して対応しているが、出産の予約は増加傾向にあり、市では助産所の整備も必要として、独自の補助を決めた。
記者会見した小坂樫男市長は、「助産所の整備にはお金がかかる。少しでも手助けしたい」と話し、県にも助産所への補助制度を設けるよう要望しているとした。
2005年1月に助産所を開設し、県助産師会上伊那地区長を務める池上道子さん(日影区)によると、予約も含めて今年1─6月分の分娩件数は、すでに昨年1年分の20件。4月の4件は、伊那中央病院の里帰り出産の制限もあり、すべて里帰り出産だったといい、今後も増加を予想している。
今回の市の独自補助については「費用負担が大きく、開設に踏み切れない助産師にとっては開業しやすくなると思う」と歓迎。「こうした制度が広がってもらえたら」としている。