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2008年5月30日

◎舳倉島から樹木化石 孤島の生い立ち解明に期待

 本紙の舳倉島・七ツ島自然環境調査団が、四十八年ぶりに行った現地調査で発見した約 千五百万年前の樹木化石は、想像を超える太古から届いたダイナミックな地球変動のメッセージと言える。化石を分析し孤島の生い立ちの解明を進めることで、北陸を軸に、日本列島の長い歴史の足取りを知る手がかりになるに違いない。

 今回発見された樹木化石が生育していた時代は、日本列島がユーラシア大陸から移動し ていく途中段階と推定され、北陸を含む日本列島も現在の輪郭とは異なる様相を呈していたとみられる。

 そうした時代の痕跡は、両島にまだまだ人知れず眠っている可能性もあり、今後の調査 への期待も高まる。同時に、それらを入念に検証することで、日本の自然環境の未来を探るヒントがつかめるのではないか。

 地質や魚介類、野鳥など広範な分野のエキスパートが参加した今回の調査では、一九九 七年のタンカー・ナホトカ号の事故で流出した重油が、無害な成分に変化して岩場に付着していることが分かったのをはじめ、舳倉島でも見られるのが数年に一度というシベリアムクドリの確認や、同島特有のウメボシイソギンチャクの新たな生息域の発見など、これまでにない成果も相次いだ。

 このことは、両島が、佐渡島(新潟)や隠岐島(島根)といった日本海の他の島と比べ 、日本列島のほぼ中央の海域で、はるかに人間の影響が少なく貴重な自然が残る一帯であることを示している。日本周辺の環境の変遷を知る「海の定点観測地」であることを、あらためて裏付けたといえよう。

 大気中のチリの採取結果なども含め、多様な分野の調査の成果を持ち寄り、総合的に検 討することで、前回の調査から半世紀を経た両島の環境変化の全体像を明らかにしてもらいたい。

 県内では、これまで白山ろくの地層「手取層群」から一億年以上前の恐竜化石が相次い で発見されている。今回の調査の成果は、海と山の太古の遺産に恵まれた、ふるさとの自然の奥行きと広がりも実感させてくれる。

◎公務員改革法成立へ 実行は与野党の共同責任

 自民、公明、民主の与野党三党が修正合意した国家公務員制度改革基本法案が衆院本会 議で可決され、今国会で成立する運びとなった。国家公務員制度はまさに国家の中枢を支えるものであり、その制度設計は本来、できる限り国会の総意を集めて行うのが望ましい。各党に政治的な思惑があったにせよ、互いに歩み寄って懸案の改革に踏み出したことを評価したい。

 もっとも、基本法案は今後五年以内に行う改革のメニューをまとめたに過ぎず、本当の 改革は国家公務員法など個別法の改正作業から始まるといってよい。社民を含め法案に賛成した与野党は、次期衆院選の結果いかんにかかわらず改革遂行の共同責任を担ったことを銘記してもらいたい。

 法案修正は、与党が民主党案をほぼ丸のみして実現した。大幅に譲歩した福田康夫首相 の判断を、敗北などと批判はできまい。最も避けなければならないのは、与野党の対立で公務員制度改革が一歩も進まない事態である。

 修正でまず評価できるのは、省庁の幹部人事について「内閣官房長官が候補者名簿の作 成を行う」とし、内閣の一元管理をより明確にした点である。政府与党案では「内閣人事庁」の権限が、閣僚に対する人事情報の提供と助言にとどまるため、実質的な人事権は各省庁の官僚に残り、名ばかりの内閣主導になる恐れがあった。

 また、国家公務員の労働基本権(団体協約締結権)の拡大方向や定年延長(六十五歳) の検討は、それぞれ国際的な流れであり、時代の要請ともいえる。

 民主党の求める天下り禁止は持ち越されたが、その前にまず取り組む必要があるのは、 天下りの温床ともいわれる早期勧奨退職(肩たたき)の慣行廃止であろう。次官昇進レースから外れたキャリア官僚の多くは五十代半ばまでに退職し、関連法人などに天下っていく。政府は勧奨退職年齢の引き上げを決めているが、実際にはさほど改善されていないという。定年をいくら引き上げても、早期勧奨退職の慣行が残る限り、天下りも続くことになろう。


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