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【コラム】撤去された韓国人特攻隊員の慰霊碑(上)

 死を厭わず自ら敵に突っ込む日本の特攻隊「神風特攻隊」の一員として短い生涯を終えた韓国人青年、卓庚鉉(タク・キョンヒョン)さんを悼む慰霊碑が故郷の慶尚南道泗川市に完成した。ところが、慰霊碑は除幕式を前に突然撤去されてしまった。

 卓庚鉉さんは1945年5月11日、日本陸軍の戦闘機で鹿児島基地から出撃し、25歳にして沖縄沖に散った。慰霊碑建立は「親韓派」として知られる女優の黒田福美さんが主導した。黒田さんは「韓国人としての名を持ちながら、日本人として亡くなった青年の魂だけでも故郷に帰そう」と訴え、これに多くの在日韓国人が共感した。泗川市も慰霊碑建立用地を提供するなどして、積極的に協力していた。

 そして今月10日、黒田さんら日本人関係者や在日本大韓民国民団(民団)関係者、「太平洋戦争沖縄遺族会」のメンバーらが出席し、慰霊碑除幕式が行われる予定だった。しかし、韓国の市民団体のメンバー約50人が現場で座り込みをしたため、除幕式は取り消しになった。この市民団体のメンバーらは「卓庚鉉さんは朝鮮人だが、当時日本のために命を捨てるという反民族行為を行った人物」「強制連行の犠牲者たちとは違う」と主張した。黒田さんは慰霊碑の近くまで行ったが、警察のバリケードより先には近付けないことが分かると、仲間と共に黙祷を捧げ、引き返した。そして三日後の13日、泗川市は「石碑が壊される恐れがある」として慰霊碑を撤去してしまった。

 現地で取材に当たった毎日新聞の堀山明子特派員は、ソウル発の記事で「現場にいたわたしには、バリケードが日韓の壁のように感じた。記者ですら、壁を越えようとすると阻止された」と書いている。

社会部=鄭権鉉(チョン・グォンヒョン)次長

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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