片岡孝太郎が6月の国立大劇場・歌舞伎鑑賞教室で「神霊矢口渡・頓兵衛住家(とんべえすみか)」のお舟を演じる。
お舟は矢口の渡し守・頓兵衛の一人娘で、宿を求めた新田義峰に一目ぼれする。頓兵衛は、義峰が落ち武者と知って命を奪おうとし、お舟は身代わりとなる。
福内鬼外こと平賀源内の作による江戸浄瑠璃の人気作品である。お舟は義峰に言い寄り、父に逆らってまで逃がしてやるような能動的な娘だ。孝太郎は06年に大阪松竹座で初演し、これで2度目となる。
「今どきの女の子みたいですよね。前回は気持ちを優先させるあまり、形の決まりが流れてしまったところがありましたので、気をつけます。演じていても楽しい。女形で、お舟のように最後に思い切り暴れて幕を閉められる役は少ないですから」
4月には大阪松竹座で義太夫物の大作『妹背山(いもせやま)婦女(おんな)庭訓(ていきん)』のお三輪をつとめるなど、大役の機会が増えている。「いちずな恋という意味では、お舟とお三輪は通じるものがあります。この2年で身につけたものを役に反映できたらと思います」
片岡市蔵の頓兵衛、坂東亀寿(かめとし)の義峰、澤村宗之助のうてな。解説の「歌舞伎のみかた」が付く。6月1日から24日まで。問い合わせは03・3265・7411へ。【小玉祥子】
毎日新聞 2008年5月29日 東京夕刊